表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
660/1359

Act.8-232 アネモネの登城と、ダブルデートの下準備 scene.1 下

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 王子宮の一角にある応接室に向かうと、既にルクシアとフレイが待っていた。


「アネモネ閣下、お越しくださりありがとうございます」


 ルクシアの背後に控えていた第二王子専属侍女のクレマンス=ハントがボクが来賓用のソファーに座るなり、紅茶と焼き菓子を用意してくれた。

 侍女でありながら、同時に科学者でルクシアの助手も兼任しているクレマンスは、第一王子専属侍女のレインと共に派閥意識が全くなく、主人に心から信用されている侍女の一人に数えられる。と、同時にボクの前世の情報やこの世界の真実についても知っている人物の一人でもある。


 他の宮の筆頭侍女であるボクとはあまり接点がないものの、第一王子と第二王子の微妙な力関係や次期王位を目指す二人の王子という立場を利用した悪意を持つ貴族の炙り出しにも理解があり、陰ながら第二王子のルクシアを補佐する有能な人材であることは知っていて、ボクもレインと共に彼女のことも心から尊敬している。


 このクレマンスという侍女――実は侯爵家の生まれで学園時代と学院時代はルクシアの同期だったという。恋愛に一切興味を示さず学院時代は研究一筋で常にルクシアと常に張り合ってきたライバルだったそうだ。

 そんなルクシアとの関係から、一時はルクシアの婚約者となり、第二王子の妻となるのではないかと囁かれていたものの、実際はご存知の通りフレイ=ライツァファー公爵令嬢が婚約者に選ばれた。


 恋に敗れたクレマンスがフレイへ陰湿なイジメを行うのではないかといった懸念もされたようだけど、そのようなこと当然なく、クレマンスはフレイに対して第二王子の婚約者に相応しい態度を取っていて、二人の関係も極めて良好なのだそうだ。

 ……ただ、フレイによると、侯爵家からは早く結婚相手を見つけろとせっつかれていて、これまでは馬耳東風で聞き流していたようだけど、そろそろ結論を出さなければならない時期に入ったとのこと。……といっても本人は研究に生涯を捧げたいようで、結婚願望は皆無だそうなので、もう結果は決まったも同然のようだけどねぇ。

 ちなみに、ルクシアも本人の意思を尊重したいという方向性のようで、クレマンスが結婚を望むのなら人脈を駆使してクレマンスに相応しい結婚相手を探すつもりのようだし、クレマンスが望まないのであれば、ルクシアからも彼女の意思を尊重して欲しいと願い出るつもりのようだ。……どこぞの第一王子と比べたらその差は歴然だよねぇ。あの兄を見て育ったからこうなったのか、或いは本人の性格の問題か。


「早速ですが、フレイ様からご要望があったゲーム音楽の演奏について、目処が立ちましたのでご報告に伺いました。練習も既に完了して、いつでも行うことができますわ。当日は、ヴィニエーラ管弦楽団と私が演奏を担当致します」


「避暑地に同行している際は仕事を減らしているのではと思っていましたが……暗躍していたのですね」


「……まあ、多少は。元々はヴィニエーラ管弦楽団にお願いして、ボクは楽譜の提供だけで済ませてしまおうと思っていましたが、ヴィニエーラ管弦楽団の楽団長兼指揮者のペトルス=ポワヌルフ氏とコンミスを務めるロザリンド=ヴァーツレイク女史が頑なにボクの演奏参加を求めてきたので……当日はボクも演奏をさせて頂きます」


「ローザ様に演奏して頂けるなんて、本当に光栄ですわ! ところで……不勉強で申し訳ないのですが、コンミスとはどのようなものなのでしょうか?」


「大きな楽団だと指揮者一人で全ての指示を出すのではなく、指揮者と各奏者を統率して、指揮者の意図を音楽に具現する役職――コンサートマスターとの二人三脚で行われることになります。コンサートマスターとは、指揮者だけでは指示しきれない部分をしっかりと指示し、演奏を纏める役割ですね。一般には第一ヴァイオリンのトップが務めることになっていますが、ヴィニエーラ管弦楽団でも第一ヴァイオリンのトップが務めているので、立ち位置的には定石通りです。前世の頃には女性のコンマス――区別するために今回はあえてコンサートミストレス、約してコンミスとしていますが、そういった立ち位置の方も多くいましたが、この世界ではコンサートマスターの役割を担う方はいるものの、女性ではいないようです。まあ、そういう意味では革新的なのかもしれません」


 ロザリンド=ヴァーツレイクは、苗字からも分かると思うけど、劇団フェガロフォトの支配人兼演出家のゴードン=ヴァーツレイクの娘さんだ。

 元々は宮廷管弦楽団を目指していたようだけど、ゴードンがビオラから融資を得ることが決まった際にゴードンの友人だったペトルスがボクの融資を受けて楽団を設立することを決意、その際に真っ先に誘われたという経緯で入団している。ボクが出会った時点で独学とは思えないほどのレベルで、この話が持ち上がらなければ普通に宮廷管弦楽団に入団できていたと思うよ? まあ、庶民籍だし、実力があっても中心人物にはなれなかったと思うけど……コンマスとか、まず無理だよねぇ。


「ビオラ関連のところは、やはり革新的ですね。明文化こそされていませんが、やはり、コンサートマスターは男性に限るという暗黙のルールが存在しているようです。……私の場合、音楽は門外漢ですが。貴族社会では下世話なものもされていた小説を大きなコンテンツへと育て上げたことも含め、やはり既成観念をぶち壊すという意気込みがビオラにはあると私は思っています。勿論、それをよく思わない者達も貴族を中心にいるとは思いますが、私はとても良い流れだと思っています」


「……別にボクは既成観念を破壊するとか、そういう意気込みを持ってやっている訳ではないんですけどねぇ。ボクも、職業選択の自由というものは、制限されるべきだと思っています。ただし、それは公共の福祉に反する場合のみです。公共の福祉をどう捉えるかという点は、例えばそうですねぇ……ルクシア殿下、もし、毒薬を誰もが手軽に入手し、扱えるとしたらどうでしょうか? 医師の資格がないのに、医療行為を行っているとしたら?」


「……危険ですね。なるほど、確かにそれは制限されるべきです。医療などの一歩間違えば危険に行うような行為を行うに足る知識と経験を持っていなければ、その仕事を任せると問題が発生します。しかし、それ以外の条件は問わないと、圓様は仰るのですね」


「えぇ、流石はルクシア殿下、その通りです。身分、性別、年齢……まあ、体力や身体能力などの問題も絡んでは来ますが、基本的にそういったもので仕事は制限されるべきではないと思います。なので、そもそも、ボクは心から融資をしたい、力を貸したいと思う相手に融資をしているだけであって、既成観念をぶち壊すためにやっている訳ではないのです。まあ、結果論として睨まれてはいるようですけどねぇ。正直、そんな有象無象はどうでもいいです」


「……失礼なことを言いました、謹んで謝罪致します」


 別に謝ることでもないと思うけどねぇ、実際に既成観念ぶっ壊している訳だし。結果論的には。


「かなりのレベルに達していますから、お二人とも楽しみになさってください。さて、後は二点ほど決めておかないといけないことがあります。まずは日程をいつにするかということですねぇ。それから、他にデート内容の希望も聞いておくべきだと思っています。ビオラ関連ならこちらから連絡を入れて予約を取っておくことができますからねぇ。新星劇場(テアトル・ノヴァ)の第一大ホールは既に劇団フェガロフォトの公演で抑えられていますので、第二大ホールか、小ホールのどれかを当日抑えようと考えています。ちなみに、陛下からは七日後にデートプランのご予約を頂きましたので、七日後となりますと、店そのものは貸切にしてあるものの陛下と妃殿下のデートと被ってしまう場合があります。勿論、それはこちらで調整致しますが」


「……えっと、私がお願いしたのはコンサートであって……その、他のものまでお願いすると殿下にもご迷惑が」


「問題ありません。折角のデートですから、フレイさんに楽しんで頂きたいですからね。デート内容はサプライズにしたいので、後で私と二人で内容を詰めさせて頂いても良いでしょうか?」


「では、後ほど内容の方は相談させて頂きましょう。……日程の方はどうなさいます?」


「圓様もフォローに回ってくださるのですよね? それだと、父上とは別の日の方が良いのでしょうか?」


「今回のデートはルクシア殿下とフレイ様、クソ陛下とカルナ王妃殿下の――お二人の時間を大切にして頂きたいと思っているので、直接的なフォローは致しませんわ。全てルクシア殿下とクソ陛下に主導して頂きたいと思っています。当日は不測の事態があった場合に備えて待機する予定でいますが、護衛は別の方にお願いするつもりですし、そもそも、護衛が必要になる事態にもならないと思いますわ。デートのスケジュールを把握しておけばかち合う心配もありませんし、同日でも問題はありません」


「でしたら、父上の希望したのと同じ一週間後でお願いします」


「畏まりました」


 その後、ルクシアとボクの二人で話を重ね、具体的なデートプランが決まった。

 クソ陛下とカルナのデート、ルクシアとフレイのデート――どちらもどうなるか楽しみだけど……その前にイベントが二つ待っているんだよねぇ。


 『剣聖』達との模擬戦と、パーバスディーク侯爵の件……園遊会っていう大きなイベントを前にした準備期間の筈なんだけど、なんかイベント尽くしだなぁ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ