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Act.8-228 早秋の頃、慌ただしい王女宮と成長した行儀見習いの貴族令嬢達 scene.3

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「私も大賛成です! 学園では、ローザ先生のゼミナールに所属して八年間研究を楽しんで卒業したいですわ!」


「ソフィスさんのゼミナールはもう決定しているんですねぇ……まだこの形で改革をすることが定まっている訳でもありませんし、私が教師になれるかも分かりませんよ?」


「……いや、もうここまでしっかりと出来上がっていて、しかも聞いているだけでも面白そうだし、フューズもそのまま草案を通してしまうと思うぜ」


 ……それは流石にないんじゃないかな? そのまま採用ってことはないと思うよ。


「私も良い案だとは思うのだけど……改革前の学園に通っている生徒もいるよね? その方達はどうするのかな?」


「騎士のカリキュラムを導入するのですよね? でも、それでは騎士学校から不満が出るのではありませんか?」


「おう、ジャンヌの言う通りだな。そっちは俺の方でも懸念事項だったんだ。フィネオの質問に回答する前にそっちサクッと答えてもらえないか?」


「承知致しました。……魔法学園と魔法学院に既に入学されている場合は現時点のカリキュラムで卒業できるという認識で入学しているので、新体制に移行する場合はご指摘の通り不満が出ることが予想されます。そこで、新体制に移行する前に入学した学生は新体制以前のカリキュラムで卒業するか、新体制のカリキュラムに移行するかを選択できるようにするという方法を検討しております。新体制に移行する場合は、総合科に移行し、これまで履修した授業分の単位を得た上での再スタートになりますわね。その際、魔法実技(教養)と魔法座学(教養)は履修済みという扱いになります」


「総合科なのは、貴族科と魔法科のカリキュラムと完全一致はしないからだよな? より専門性が高くなっている分、従来の学園のカリキュラムは当て嵌まらなくなっているみたいだしな」


「一律学園で魔法を教えても、その後魔法を使わないまま暮らす貴族もいますし、でしたら必要最低限の魔法の知識と技術を丸一年魔法実技(教養)と魔法座学(教養)を受講してしっかりと学んで頂き、後はそれぞれの興味のある方向で学びを深めるのが良いと思います。例えば、魔法科でしたら最先端の研究に触れる機会、騎士科ならば現役の騎士から教授を受けられる機会を作るというのはいかがでしょう? 現役の騎士も学園の学生の実力を把握することができますし」


「魔法研究というとスザンナとか喜んで教鞭を取ってくれそうだよな。魔法学園は良くも悪くも閉鎖的だから、その後の就職や進学は成績は多少加味されるものの、面接や実技、試験の結果の方が配点は大きいことになっている。スカウトも超大型新人で噂になるくらいじゃなければまず起こらない。だけど、これなら現場と学園に繋がりができる。互いにとって悪くないシステムだと思うぜ。……まあ、ここで問題になってくるのがフィネオの指摘するように騎士学校だが、こいつは事前に話を進めて学園との合併を進めるつもりだ。つまり、魔法学園と魔法学院、騎士学校の合併……ということになるな。まあ、どれも王立だし問題ねぇだろ? そっちの調整はまた検討するということで、最後はメアリーだな」


「は、はい! 私も新カリキュラムに賛成ですッ! こ、これまでの学園で得られたものは問題なく得られるようなので……ですが、在学期間が伸びると、困る方々も、いるかもしれません」


「なんていうか……お前ら凄ぇな! しっかりと説明の補強が必要な部分を的確についている。……最短で何年で卒業できるんだ?」


「……最低一年で卒業は可能ですわ。最も早いのは騎士科と魔法科の実技専攻と魔法騎士科で、こちらは実習科目を無理矢理詰め込めば一年の学期末で卒業実習を受けて卒業できます。教養教育科目は一年に受講できる最大数に制限はありませんが、流石に無理があるので裏技を使う以外に方法はありません。続いて貴族科は各科目、下級と上級、『Ⅰ』と『Ⅱ』とついた科目しかありませんので、無理に詰め込めば最短二年で卒業できます。魔法科の魔法理論専攻と魔法工学専攻と研究科は三年にならないと正規の形でのゼミナール所属はできませんので、四年間の在学が必須になります。これは、単位数の関係上致し方ないものということになりますが、やむに止まれる事情のある場合は何かしらの方法を検討するという形が良いかと思います」


「まあ、実習自体日程が被ることもあるだろうし、日数も掛かるから難しいよな? ……それが可能ってことは何かしらの方法を用意するってことか」


「アネモネ閣下にお願いしたところ、時遡時計(タイム・ターナー)の作成と提供が可能という回答を頂けました。これを使えば並立存在が可能になり、同時に行われている二つ以上の講義を受けることが可能になります。この時計を使った場合、そのログが残るので誰がいつ使ったかも把握できるようですわ。申請制の形とした上で、授業以外のために使った場合、処分の対象とするというのはいかがでしょう?」


「それでいいんじゃねぇか? これで、『あの先生の授業聞きたいのに必修と被っている!』みたいな事態も回避できるんだな」


「……まあ、そこまで需要はないと思いますけどねぇ」


 一度履修して単位取得した授業を聴講する人ってあんまりいないからねぇ。……余程熱心な人くらいだよ。


「同じ授業を毎年教える従来の学園から、時代にあった講義に毎年更新していく新しい学園になるってことは、中には聴講で毎年講義を聞きたい奴も出てくるんじゃないのか? そういう奴にとっては時遡時計(タイム・ターナー)は必須になってくるんだろうなぁ」


「聴講を希望する場合は聴講申請を提出頂く必要がありますわね。いずれにしても、学びたいという意思はいかなる理由であっても妨げられてはならないものだと思いますわ。学園は学びたい生徒により広い門戸を開くべきです。ただ卒業したいのであれば、最低限の単位を取得して卒業してしまえば良いだけ。その機会を生かすも殺すも、その人次第だと思いますわ」


「……しかし、聞けば聞くほどますます新生学園に通いたくなるぜ。国王の仕事休んで学園に再入学してもいいか?」


「ダメですわ! ちゃんと国王として為すべきことを成してください!」


「『学びたいという意思はいかなる理由であっても妨げられてはならないもの』なんじゃねぇの?」


「……はぁ、畏まりました。学園の生徒以外も希望があれば参加可能な地域連携企画――公開講座の方も草案を纏めておきますわ」


「おう、分かっているじゃねぇか! 後、授業参観の制度も採用を進めてくれ」


「……モンスターペアレントによる授業妨害が起きそうなので、あまり採用したくはありませんが……対策も含めて検討しておきますわ。モンスターペアレントの典型のような陛下の仰せの通りに」


「誰がモンスターペアレントだ! 俺は別に空気を読めないんじゃなくて、読まないだけだ!」


 それ、もっとタチ悪い奴だからねぇ。

 陛下の前で溜息を吐くという不敬極まりないボクをプリムラ達が(いくらなんでも大変過ぎるんじゃないのか? お仕事のし過ぎで倒れてしまうんじゃないか? という意味で)心配そうに見つめていた。



 午後からは神学の授業ということで、天上の薔薇聖女神教団……というか、例の怪しい宗教団体(ファンクラブ)から迎えが来ることになっていたんだけど。


「やあ、ローザさん。久しぶりだね」


 手には聖典を持ち、神父の衣装を纏った――神父然とした柔和な笑みを湛えるジョナサン・リッシュモンの姿があった。


「……挨拶をする相手を間違っていませんか?」


「ん? 間違っているかな? 挨拶はより地位の高い人間から順にするのが社交界の常識でしょう? ……まあ、いいや。しかし、本当に侍女なんてしているんだねぇ、全く想像できなかったよ――貴女が誰かに仕えている姿」


「あら? どなたかと混同されているのではありませんか? 私は一介の侍女であり、その前に公爵令嬢です。公爵令嬢よりも王女殿下の方が地位が高いものですわ」


「まあ、そういうことにしておいてあげるよ。はじめまして、姫殿下。僕はジョナサン・リッシュモン、今は天上の薔薇聖女神教団で神父をしているよ。今日はちょっと無理を言って姫殿下を神殿まで案内する役を担当することになったのでよろしくね」


「初めまして、プリムラですわ。本日はよろしくお願いします、ジョナサン神父」


 ……しかし、この胡散臭い神父が何故わざわざ王女宮に来たのか気になるねぇ。嫌な予感がするよ。


「ところで、ローザさん? 面白いことを聞いたんだけどねぇ……噂に名高い『剣聖』候補が『剣聖』と共にアネモネ閣下に勝負を挑むんだってねぇ? なんでそんな面白い話になっているのに全く僕に一言も断りがないんだろうね?」


「……さあ、ジョナサン神父には全く関係ない話だからではありませんか? それに、そもそも、ジョナサン神父に断りを入れる理由が分かりませんが」


「まあ、そうなんだけどね……正直、『剣聖』はともかく『剣聖』候補の方は身の程を知らなさ過ぎると思うね。八技も闘気も使えずに聖属性抜きのジュワイユーズ流聖剣術だけで勝てるような相手ではないでしょ。『剣聖』の方は弟子に現実を見せようというのが目的でしょうが……正直、あまりにも釣り合いが取れていない。正直な話、基礎もろくにできていない者がいきなり猛者に挑んだって結果は見えているし、そこから学べることもあるかもしれないけど、身の丈にあったところからやっていくべきなんじゃないかなと僕は思うんだよね?」


「……つまり、何を仰りたいのですか?」


「僕だって暴れたい」


 神父然とした表情を引っ込めたジョナサンが、悪戯っ子のような表情を浮かべて脈略も何もあったものじゃないとてもとても面倒なことを言い出した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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