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Act.8-227 早秋の頃、慌ただしい王女宮と成長した行儀見習いの貴族令嬢達 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「王家から雇われた家庭教師と、学園の講師ではやっぱり必要なものが異なってくる。実際、ローザは学園で教鞭をふるうための講師の免許を持っていないから仮に現時点で雇うなら名誉講師の立場でということになる。王家の場合は、そういった免許の有無よりもその人が信頼に足るかという信用の方が重要になってくる。俺がローザを信用してプリムラの家庭教師をお願いするといったことも可能だが、学園となればそういうのは難しくなる。まあ、つまりプリムラ達が学園に入学するまでに講師の免許を取得してもらおうって話だ。この学園の講師の立場は学院の講師も兼ねているから、学院で講師として認められる必要がある。学園を卒業すると学士、普通に学院を卒業すると修士の学位を取得できる。そこから講師になりたければ、学院の博士課程を受けた後に博士論文を提出する必要がある。……まあ、本来ならな。だが、別にルクシアみたいに真面目に博士課程を卒業する必要はないという言質をフューズから取ってきた。つまり、だ。博士論文に相当する論文を書くことができれば、その分野を博士の学位を授与することができるということだ。……文学、数学、薬学、芸術学、魔法学、魔物学、天文学、政治学、法学、歴史学、宗教学……これだけの博士論文に耐えうる論文を五年以内に執筆してフューズに提出してもらいたい。まあ、フューズからの宿題ってところだな。ちなみに実技科目の講師は論文ではなく、実技で実力を証明すればいいみたいだから、ダンスやマナーなどについてはそれとは別の形で試験を行うようだから、そのつもりで。まあ、そっちは心配してねぇけどな」


「大丈夫なのかしら? いくらローザでも……」


「承知致しました。十一本の論文ですね。どうせなら面白いものを書きたいですし、ネタを探しておきますわ」


「ってか、魔法分野で今更博士論文書く必要があるかと思うんだけどなぁ? 新作魔法でも作るのか?」


「まあ、そこはお楽しみということで。……それで、大公様のご用事は一体どのようなものでしょうか? 課題の内容は既に説明が完了しましたよねぇ?」


「学園の改造案の方だ。今のうちから相談しておきたいんだとよ」


「一応草案は完成していますので……私はいつでも構いませんが、姫殿下の都合と大公様の都合で日程を決めなければなりませんね」


「私はいつでも大丈夫よ! ローザのお仕事が増えてしまうし大変だと思うけど、大切な仕事なのよね? 私もできる限りお手伝いしたいと思っているわ……少しだけ寂しいけどね」


「……姫さま」


「なんか悪いな。あっ、あいつはいつでも良いって言っていたな。でも、都合がつくなら夜の方が良いんだとよ。二十三時から四時とか……って言っていたなぁ」


 つまり、侍女生活はそのまま続けつつ、支障のない夜に相談する時間を設けて欲しいということだねぇ。……ボクじゃなかったら、普通に睡眠時間不足に陥るよ?


「でも、それだとローザの睡眠時間が」


「承知致しましたとお伝えください。姫さま、ご心配には及びません。私、ショートスリーパーですから」


 プリムラ達は心配そうにしていたけど、ラインヴェルドは「相変わらず徹夜中毒だなぁ」と呆れていた。……最近は徹夜はしてないんだけどねぇ? 徹夜(・・)は。ちゃんと寝ているからねぇ?


「おっ、草案できているのか? 折角だからこの場で見せてくれないか?」


「……はぁ、承知致しました。姫さま、本日の講義は比較的早く終わりましたし、食事まで少しお時間を頂いても宜しいでしょうか?」


「えぇ、私もローザがどのような改革案を用意しているのかとても知りたいもの。お願いできるかしら?」



 調理室にメイナを送ってから、ボクはメルトラン達料理人が食事の準備を進めている間に説明を終わらせるために説明内容を頭の中で纏めつつ、フューズに手渡そうと用意していた草案を取り出した。


「左が現在の魔法学園と魔法学院のカリキュラムの一覧表で、陛下から頂いたものになります。右はそれを参考にしつつ用意したカリキュラムになりますわ。この計画では、魔法学園と魔法学院を廃止し、ブライトネス王立学園(仮)を設立することが念頭に置かれています。四年での卒業が想定されていまして、最長の在学可能期間は八年――それ以降は満期退学という扱いになります……まあ、流石にそこまで学園を卒業できないということにはならないと思いますわ」


「教養教育科目と専攻専門科目っていうのがあるのか……ってか、もしかしなくてもこれって自分で時間割を好きに組み立てられるんじゃねぇのか!?」


「えぇ、そうですわ。一応、五つの学科を用意してはいますか、それは講義の選択の自由度を制限するものであって、自由に選びたい方には総合科というものをご用意させて頂きました。学園の卒業のためには教養教育科目と専攻専門科目を必要単位数以上取得し、その後、卒業試験、卒業論文、卒業実習のいずれかで優秀な成績を収める必要がありますわ。教養教育科目は魔法実技(教養)と魔法座学(教養)が必須になります。これは、魔法学園の体裁を保つために最低限必要なものということになりますわ。この教養教育科目は他の専門科目と被るところがあるものの、専攻専門科目よりもレベルは数段落ちるものとお考えください。専門過程には騎士科、魔法科、魔法騎士科、研究科、貴族科がありますわ。これらは必修科目が定められており、多少の選択の自由はあるものの、それも決められた範囲から選んでもらうことになります。騎士科は武術や剣術系の科目が多く、騎士や冒険者が就職先として想定されます。魔法科は魔法系の科目が多いですが、実技だけではなく理論や工学系の科目も含まれます。就職先としては宮廷魔法師と魔法省が想定されますわね。魔法騎士科は騎士科と魔法科の良いところを合わせたものですが、必修科目数は最多ですわ。これら三つの課程は卒業実習という実技で卒業に見合う能力があることを証明して頂きます。続いて研究科――もっともバリエーションが多い課程ですわ。主に一つの分野を選択し、研究発表やレポートの提出などの課題をこなし、最終的に卒業論文の完成を目指します。知識を得るための講義……これは他の授業でも同じですが、それに加えて研究・演習科目とゼミナールの二つがあります。研究討論・演習科目はそれぞれでテーマを決めて発表するというもので、発言や発表内容、期末レポートなどで評価をつけます。ゼミナールはこの研究・演習科目の延長線上にあるもので、卒業論文をどの先生のところで書きたいかで選択することになります。基本的に、ゼミナールで選択した分野以外では卒業論文の執筆はできません。主な就職先は研究者、講師ですわね。そして、貴族科――マナーやダンス、音楽や絵画などの芸術分野など文化的な科目が豊富な課程ですわ。主な就職先は領主、文官、貴族夫人……王侯貴族として普通に暮らすのであれば、教養教育科目と貴族科の授業を取れば十分だと思われます。これは最短二年で卒業できますわね。卒業方法は卒業試験ですが、そこまで難しい内容にはならないでしょう。最後に総合科――最低必要単位数のみ決められていまして、各課程の専門科目を好きなように選択し、受講することができる課程となります。ただし、『マナーⅠ』を受講せずに『マナーⅡ』を受講するといったことはできませんわ。卒業方法も卒業試験、卒業論文、卒業実習のいずれか好きなものを選択することができます。一番幅広い学びを得たいのであれば、八年学園に残るつもりで、様々な課程の講義を組み合わせてみるのも面白いかと。そうした八年間はきっと人生を豊かにする糧となりますわ」


「あー、俺も学生だったら八年満期で遊び倒すんだけどなー」


「遊び倒すって……学内の部活動・クラブ活動・サークル活動についてはそのまま維持するべきだと思いますし、学園祭も存続させるべきだと思いますし、必要ならば他のイベントも用意して盛り上げていくべきだと思いますが……一応、学びの場ですからねぇ?」


「……俺的には良いと思うけど、これから学園に通うっていう若い奴らの意見も聞いてみたいな。ということで、プリムラから順番に意見を聞かせてもらえないか?」


「私はとても面白そうだと思うわ。でも、王女の私がそんなにも長く学園に通っていて大丈夫なのかしら?」


「別に気にしなくて良いと思うぜ? 婚約者候補筆頭のルークディーンも通うことになるし、二人で過ごせる時間もきっと沢山作れるぜ。それに、学生時代にしか得られない経験ってもんもあるんだ。あの時、もっと色々と経験しとくんだったと後々後悔することはあるからな? それに学園も小さな社交界だ。学生同士の繋がりは、そのまま今後の貴族社会で重要なものになる。別に無駄になることは何一つないぜ?」


「私もとても面白そうだと思いますわ。自由度が高ければ先生方は苦労されるでしょうが、例えば、騎士学校に通わなければ満足に学ぶこともできなかった剣術を貴族令嬢でも学ぶことができるようになるというのは良いことだと思いますわ」


「スカーレットさんは剣術にも興味があるのですわね。……剣術などの武術と貴族の所作には大きな繋がりがありますわ。それに加え、精神の統一という面でも武術は優れたところがあります。貴族科の科目に武術系科目を加えてみるというのも面白いかもしれませんね」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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