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Act.8-226 早秋の頃、慌ただしい王女宮と成長した行儀見習いの貴族令嬢達 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 もはや恒例となったボクが教師となる授業。

 プリムラの他にスカーレット、ソフィス、ジャンヌ、フィネオ、メアリー――それに加えて侍女に昇格したメイナも参加している。

 ただし、園遊会の準備が本格的に始まるので侍女組が授業に参加するのは一旦今日までだ。


「今回は先にクイズで一部出題してしまったところですが、五摂家の成り立ちとその歴史について学んでいきたいと思います」


「お兄様が一人だけ答えていた問題よね?」


「はい……正直、私もまさか答えられるとは思いませんでした。私も存じ上げなかったので、それを機に知ろうと本を漁り、ようやく調べ終えたという丁度良いタイミングでの出題だったので私も驚きました」


「ローザにもできないことってあるものなのね?」


「……私、決して万能ではありませんよ。ただ、少しだけ負けず嫌いなだけだと思いますわ」


 「ちょっとだけなのかな?」とシェルロッタがジト目を向けてくる。……正直かなり負けず嫌いです。


「それでは、始めましょうか」


 流石は優秀な人材が揃っているだけあって、やっぱり理解力が高いねぇ。質問も打てば響くというように的を射たものばかりだ。

 若干メイナが少し遅れている気がするけど、メイナは最近授業に加わったのでついていけないのは当然。まあ、勉強しておいて損はないし、本人にもやる気があるのなら是非ここでしっかりと学んでもらいたいよ。


 最も歴史の浅いアグレアスブリージョ大公家、武闘派のエタンセル大公家、代々学問分野で優秀な成績を収めているシンティッリーオ大公家、そして反乱を起こしながらも最も人気のある裏切りの一族――フンケルン大公家。

 それぞれの家が設立された経緯と、その周辺史をしっかりと講義していく。


 その中にはプリムラの嫌いな戦争史も含まれる。平和な世界であって欲しいプリムラにとって、血で血を洗う戦争はやっぱり嫌みたいだからねぇ。

 まあ、覚えないという訳ではないし、その戦争を経たからこそ今のブライトネス王国があるということも理解しているのだから、何も問題はないと思うけど。……寧ろ戦いを好きだっていうのはあんまり趣味がいいとは思えないからねぇ。……ボクも若干戦闘狂なところがあるし、ラインヴェルド達はバトルを好んでいるタイプだからその趣味の悪いタイプに属するんだけど。


「でも、最近は戦争も起こってないわよね? こうして平穏な生活を送ることができるのも騎士の皆様が頑張っているおかげなのよね?」


「……まあ、それが微妙なのが辛いところだよなぁ」


 プリムラの問いに答えたのはラインヴェルドだった。まさかの状況にプリムラも困惑しているみたいだねぇ。


「お父様!?」


「おう、悪いな邪魔して。プリムラがどんな授業を受けているのか気になって遊びに来ちまった」


「お出口はあちらですので、お帰りください」


「酷くねッ!? 今来たばっかりだっていうのに!!」


「誠に残念ながら、授業はたった今終わりました」


「全く残念そうにしてないよな!!」


 スカーレット達はボクの不敬な態度にどうしたら良いのかと不安そうにしている。

 プリムラは普段とは違う父親の姿に驚いているようだねぇ。


「まあ、多分大丈夫だぜ! アーネストの奴に仕事任せてきたから」


「……だそうですが、ソフィスさん?」


「失礼ながら……お父様に仕事振り過ぎですわ! 少しはお父様の身になってくださいませ! きっと本日も逃亡癖を拗らせた方々の大脱走のせいで胃痛に苦しんでおられますわ!」


「……おっ、おう。ソフィスにストレートに怒られると悪いことをしているみたいで罪悪感が湧いてくるぜ」


「……悪いことしているみたい、じゃなくて悪いことしているんですよ。姫殿下、この方はなんでもできるのに、面倒だからと何もしないというもっともタチの悪い人間の典型みたいなものですから、是非反面教師にしてくださいね」


「――酷くねッ! 俺だってやればできる子なんだぜ?」


「なら、最初からやってください」


「お父様が以前言っていた通り、お父様とローザって本当に仲が良いのね」


「おう、年齢も全然違うがローザは俺の親友だぜ! ってか、そうじゃなかったら最愛の娘の教師兼侍女の仕事なんて任せられないだろう?」


「親バカですからねぇ……陛下は」


「お前にだけは言われたくないぜ」


 ……しかし、この陛下、一体何しに来たんだろうねぇ? 普段は授業参観になんて来ないのに、今日に限ってくるとか……意図がわからないねぇ。


「話を戻すが、戦争の種類が変わってきているのは確かだ。これまでは内乱か隣国との小競り合い――領土の奪い合いが主軸だったが、今はそういった戦争は鳴りを潜めている。最近起こった最もでかい戦争は『怠惰』戦だが、これはある意味魔物と人との戦いの延長戦にあるものだった。まあ、向こうには向こうなりの戦争する理由があって、国土とは別の……言ってみれば、今後の世界の支配権を賭けた戦いの一つだった。こういったタイプの戦争は、表面化していないだけで各地で起こっている。まあ、多くは小規模に見えるものばかりだ……ルヴェリオス帝国の革命などだな。そういうものは直接敵の本陣を叩くから従来みたいな騎士団と騎士団が喧嘩するみたいな規模のでかいものにはならない。……だが、たまに『怠惰』戦みたいな規模のでかいものになる場合もある。そういったのは厄介だ。別に攻める分には楽だが、守りに回れば一気に不利になる。……平和が一番かもしれない。俺だって、戦争とはまた別のレベルで剣片手に暴れたいものだが、なかなかそうはいかないみたいでな。ディストピアにしないために、もう少し戦う必要がある。分かって欲しいとは思わないけどな」


「……難しいわ。でも、お父様達も大切なものを守るために戦っているのよね?」


「そうだな。……別に国民全員を守りたいとか、みんなを守りたいとか、そんなんじゃねぇんだ。だけど、プリムラや俺の大切な友人達を守りたい、守り抜きたい……だから、絶対に負けられないんだ」


 こういう時のラインヴェルドは良い顔している。やんちゃ坊主な性格はなりを潜めて威厳ある国王であり、父親らしい顔をしている。

 ……普段からこんな感じであってくれると助かるんだけど。


「まあ、プリムラの授業風景を見ておいたいっていうのもあったが、今回はローザ――お前宛てに伝言を預かってきた。シンティッリーオ大公のフューズからだ。魔法学園の件って言ったら伝わるよな?」


 ……伝わるけどねぇ、ボクには。でも、プリムラ達にはしっかり説明した方がいいんじゃないかな? わざわざここで言うならねぇ。


「プリムラと、ここにいる行儀見習いで侍女として働いているメンバー……つまり、ローザ、スカーレット、ソフィス、ジャンヌ、フィネオ、メアリーの六人は行儀見習いが終わり、社交界へデビューを果たす十五歳の時になると召集されて、十六歳を迎える年に全寮制の魔法学園へ入学し、二年間魔法について学ぶことになる。まあ、魔法学園といいつつ魔法以外の貴族として必要な教養についてもここで学ぶんだけどなぁ。そして、ここで無事に卒業し、更に魔法を学びたい者は魔法学院へ、騎士を目指す者は騎士学校に入るということになっている……ルクシアは学園卒業後は魔法学院に入学し、薬学で博士の学位を得ていたなぁ。まあ、魔法学院といっても魔法だけを専門にしている訳じゃなくて、それ以外の学問――魔法と関係ないものも研究できる土壌はある。やっぱり、うちの国は他国より魔法が発達しているから、魔法系の学部の方が力関係的には強いけどな。まあ、そんな感じで騎士になりたきゃ騎士学校、研究したければ魔法学院、文官になりたきゃ文官採用試験を受けて文官を目指す、後は侍女として働いたり、良縁を結んで領主の妻になったり、領主を継げるなら領主になるっていうのがまあ、よくある進路だ。つまり、うちの国で魔力持ちの貴族として生まれてきた以上、誰もが学園に通わなければならないものだが、そのシステム自体あんまり時代にあってないんじゃないかという意見が、具体的に言うと俺とフューズの口から出ている」


 ……つまり、学園と学院の頂点に立つ学長と、学園の運営母体であるブライトネス王国の国王が揃って改革に前向きだってことだねぇ。


「そこで、だ。プリムラ達の世代は冗談抜きで優秀な奴が多いし、他国の者達の中にもそのタイミングに合わせてうちの学園に入学することを狙っている奴がいる。期間は五年――その間に学園のシステムそのものを改革したいと思っている。……それと共に、ローザにも教壇に立ってもらおうと思っているんだ。こいつの授業、分かりやすかっただろう? 教員の素質はあるし、レベルも聞いていた限りだと学園の講義と大差ないどころかこっちの方が上かもしれない。これだけの授業ができる奴を二年も遊ばせておくのは勿体無いだろう? うちも優秀な人材を遊ばせておくほどの余力はねぇんだ」


「でしたら、是非優秀な陛下にも逃亡癖を出さずに真面目に仕事をして頂きたいものですわ。この国には余力がないのでしょう?」


「あー、なんでそういう話になるんだよ! いいだろ、少しくらい。俺だってずっと模範的な王様をやっていたらストレスが溜まるッ! というか、俺のキャラじゃねぇ! とにかく、このレベルだとプリムラ達は間違いなく授業面では面白味もない、新鮮さもない、つまらない学園生活を送ることになるだろうし、学園自体も時代にそぐわないものになりつつある。そこで、教師としての経験もあるローザにも協力してもらってこの五年の間に改革方針を定めておこうと思ってな。……まあ、その前にローザには魔法学園で教員として働くための資格――講師免許を取得してもらわないといけないけどな」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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