Act.8-217 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達 第二部 scene.6
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
「文芸メディアに関する早押しの問題です。近年、旧ビオラ商会、現ビオラ商会合同会社の書肆『ビオラ堂』を中心に多数のライトノベルや、ライトノベルを原作とした漫画が出版されています。代表的な作家としてはブランシュ=リリウムとソフィアの二人が挙げられますが――」
ここで押したのは、プリムラだった。……大丈夫かな?
「『エメラルドの王女と仮面の伯爵』かしら?」
うん、惜しい……凄く惜しい、本当は正解にしたいのだけど……。
「第一王女殿下、誠に残念ながら過不足解答なので不正解です」
プリムラが不正解の解答をした直後にソフィスが早押しボタンを押した。
「原作者ソフィア、作画ブランシュ=リリウム先生、作品名『エメラルドの王女と仮面の伯爵』――ですわね?」
「ソフィス様、正解です」
……これはちょっと……うん、まあ、ソフィスにとっては答えられて当然の問題だからねぇ。
「『近年、旧ビオラ商会、現ビオラ商会合同会社の書肆『ビオラ堂』を中心に多数のライトノベルや、ライトノベルを原作とした漫画が出版されています。代表的な作家としてはブランシュ=リリウムとソフィアの二人が挙げられますが、では書肆『ビオラ堂』で初めてライトノベル原作の漫画として発売されたのは、誰と誰の何という作品でしょうか?』というのが今回の問題でした。まず、フォルトナの第三王子殿下の解答は二人の担当編集者の名前でした。あの時点で書肆『ビオラ堂』に絞り、編集者の名前を解答したのは素晴らしい決断だったと思います。続いて、第一王女殿下の解答ですが、残念ながら作品名のみの解答でした。今回の問題では、『誰と誰の何という作品』ということでしたので、残念ながら過不足解答となってしまいます。しかし、代表的な作家の名前が出たところでソフィア先生のデビュー作に焦点を絞り、解答されたのは素晴らしい判断だったと思いますわ」
「でも、ソフィア先生も漫画を描いているわよね?」
「姫さま、デビュー当時のソフィア先生は漫画を描く技術が無かったので、初めての漫画家作品はブランシュ=リリウム先生に作画をお願いしたのですよ」
「そうだったのね」
プリムラは小説や御伽噺は読むけど、漫画には読んでいなかったからねぇ。かなり不利だとは思っていたけど、「誰と誰の何という作品」というところまで言われればきっと解答できたと思う。
あまりにもみんな相手に押されて解答されてはならないと張り合うように押した結果、連続の誤答に繋がってしまったんだよねぇ。
とはいえ、ルーネスとサレムも最後まで聞けば十分に解答できた……と思う。どちらにしろ、一騎討ちは避けられなかったねぇ。
「第三問――ブライトネス王国の貴族の歴史に関する書き取りの問題です。フリップをご用意ください。ブライトネス王国には王家から分家した五摂家と呼ばれる大公家が存在します。では、その五摂家の各初代当主の名前を〇〇=ブライトネス〇〇王子という形でフルネームでお答えください」
この問題は、ヘンリーの一人勝ちだった。……いや、まさか答えられるとは思わなかったよ。
「凄いわ、お兄様」
「……流石に全員お答えできるとは驚きでした」
「これくらい当然です」
レナーテが我が事のように喜びながら「あらあら、第四王子殿下と第一王女殿下はご存知無かったのかしら?」という視線を向けてくるけど、これ、ボクも知らなかったんだよ? やっぱりヘンリーはよく勉強をしているねぇ。
ここまで、ヘンリーが一点、ヴァンが一点、ソフィスが一点、プリムラが零点、ルーネスが零点、サレムが零点、アインスが零点……さて、ここからどう動くかな?
ちなみに、今の問題――正解はバルトロメオ=ブライトネス第八王子(アグレアスブリージョ大公)、ナポリオン=ブライトネス第二王子(エタンセル大公)、アオリオン=ブライトネス第二王子(シンティッリーオ大公)、ロードスター=ブライトネス第三王子(フンケルン大公)、アルドバーツ=ブライトネス第二王子(アストラプスィテ大公)でした。
◆
「第四問――フォルトナ王国の騎士団に関する――」
ここで誰よりも早く押したのはサレムだった。
「ポラリス=ナヴィガトリア伯爵です」
「正解ですわ」
いや、本当にどういうことなの!? って感じだよねぇ。
眼鏡をクイっと輝かせてサレムがドヤ顔をしている。あら、やだ、少し生意気そうなところがちょっと可愛い。……まあ、実際のところはとても寂しがりやで優しい子なんだけどねぇ。
「ローザ様なら、確実にポラリス=ナヴィガトリア伯爵を絡めた問題を出すと思いましたから」
「あっさりと思考を読まれましたね。ですが、シューベルト=ダークネス公爵の可能性もあったのではありませんか?」
「問題が総隊長を問うものならば、多少隣国の知識があれば答えられます。ただし、もし師団長の名前を問う問題ならば、一気に難易度が跳ね上がりますからね」
「ちなみに、問題は『中央軍銀氷騎士団第六師団長は次のうち誰でしょうか? お答えください。1.ミゲル=セラヴィス子爵。2.シューベルト=ダークネス公爵。3.ポラリス=ナヴィガトリア伯爵』というものでした」
まあ、さっきの問題よりも予想が簡単な問題だったかもしれないねぇ。
「第五問――味覚に関する問題です。今からお出しするプリンのうち、ロック鳥の卵を使用したものはどちらでしょうか? 不正解のものは鶏卵を使用したプリンです」
第五問は、実食した上で解答する問題。調理はメルトランにお願いした。
解答者だけではなく、全員分のプリンの用意をお願いしたので、しばらくおやつタイムだ。全員が食べ終わったところでいよいよ解答に移る。
正解者はヘンリー、ヴァン、プリムラ、ルーネス、サレム、アインス、ソフィス――つまり全員だった。やっぱり、高級な品を食べてきた王族とドルチェを愛し過ぎるアクアマリン伯爵家のご令嬢だ。
……うん、解答者ではない参加者達のほとんどがどちらがどちらか分からなかったのは、やっぱりメルトランが腕の立つ料理人であることを証明しているねぇ。後で、結構騙されていたよって伝えないと。
「第六問――大陸における宗教の歴史に関する書き取りの問題です。フリップをご用意ください。今から述べる宗教の中を並べ、成立順が二番目と五番目の宗教をお答えください。選択肢はシャマシュ聖教教会、天上の薔薇聖女神教団、金色の魔導神姫教、兎人姫ネメシア教、竜皇神教、緑の使徒、フォティゾ大教会、天上光聖女教です」
ここで、正解したのはプリムラ、ソフィス、ルーネス、サレム、アインスの五人だった。
ヘンリーとヴァンはシャマシュ聖教教会→緑の使徒→天上光聖女教→フォティゾ大教会という前半部分の順番を悩んだ結果、制限時間内に解答できなかったらしい。……まあ、地域がバラバラだし、互いに影響し合っているという訳でもないから、宗教の特色は知っていても、できた順番は知らないか。
ちなみに、順番はシャマシュ聖教教会→緑の使徒→天上光聖女教→フォティゾ大教会→天上の薔薇聖女神教団→兎人姫ネメシア教→金色の魔導神姫教→竜皇神教で、正解は二個目が緑の使徒、五個目が天上の薔薇聖女神教団……個人的にはそこまで難しい問題にしたつもりは無かったんだけどねぇ。
「第七問――音楽に関する問題です。今から高級なヴァイオリンの一つパガニーニ・クァルテットの完全模倣、もう一つは初心者用のヴァイオリンです。完全模倣は全盛期のヴァイオリンのそのままの性質を有していると考えて頂けたら幸いです。パガニーニ・クァルテットの完全模倣がどちらかをお当てください」
解答者が全員後ろを向いた状態で公平にボクが初心者用のヴァイオリンとパガニーニ・クァルテットの完全模倣をそれぞれ演奏する。
結果はヘンリー、ヴァン、プリムラ、ルーネス、サレム、アインス、ソフィス――全員正解だった。もう、この格付け形式の問題、差がつかないしやめた方がいいかな?
ソフィスは最近、演奏会にも通っているようで一流楽器の演奏を間近で聴いて、聞き分けられるようになったらしい。他の面々は、まあ、王族だし舞踏会などでかなりの回数、一流楽器の演奏を聴く環境にあるからねぇ。まあ、当然これは聴き分けられないといけない問題だったと思うよ。
「第八問――多種族同盟の歴史に関する書き取りの問題です。フリップをご用意ください。ブライトネス王国とフォルトナ=フィートランド連合王国は現在大陸の巨大秩序の一角、多種族同盟に所属しています。では、多種族同盟に所属した国家を順番に並べた時、三番目、五番目、最後に加盟した国をそれぞれお答えください」
なかなか難しい問題だったけど、正解者はルーネス、サレム、アインス、ソフィスとかなりの人数だった。
ヘンリーとヴァンとプリムラは山エルフの国――マウントエルヴン村国をカウントに入れなかった結果、正解に辿り着けなかったようだ。まあ、確かにあのパーティには出席していなかったからねぇ。それに、プリムラにも授業で解説していなかったから酷だと思うんだけど……寧ろ、なんでソフィスは知っていたんだろうか?
現時点で得点はヘンリーが三点、ヴァンが三点、ソフィスが五点、プリムラが三点、ルーネスが四点、サレムが五点、アインスが四点――サレムとソフィスが一歩リードか。さて、このまま二人の一騎打ちとなるのか、それとも逆転の展開や同点決勝になるのか……勝負は分からなくなって来たねぇ。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




