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Act.8-213 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  第二部 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「とても……とても嬉しいですわ。大切に致しますね!」


「喜んでくれて良かった! あのね、メイナからね、実家のお母様に日頃のお礼でハンカチを渡したりするんだって話を前に聞いたの。それで私はいつもお世話してもらっているのに、ローザ母さまに何もできていないのだなぁって思ったものだから……勿論、普段は私は姫だし、ローザは侍女なんだけど……でも……えっと」


 うん、気持ちを伝えたくて必死に言葉を選ぼうとしているプリムラも可愛い。でも、充分気持ちは伝わったからねぇ。


「無理に言葉になさる必要はありませんわ、プリムラ様。お気持ちは充分伝わりました。……もしや私にお休みを与えられたのは、刺繍をなさるためだったのですか?」


「うん、そうよ! あっ……でもローザにゆっくりして欲しかったのも本当だからね!」


 慌てて訂正しようと必死になるプリムラも愛らしい……うん、本当に優しい子に育っているんだねぇ。

 ……まあ、悪役姫のプリムラも、実際は愛に飢えて寂しかった故だった訳だし、根っこの部分はとても繊細で寂しがりやな子なんだよねぇ。


 完全無欠の美少女……というか、どこに出しても恥ずかしくないブライトネス王国の姫へと着々と成長していっているプリムラ。

 これならヒロインが現れて誰とイベント起こそうが、プリムラが苛めたり立ちはだかったりはしないだろう。そうなれば彼女の人生は安泰だ。


 ブライトネス王国の第一王女として、王族の一員として一刻も早くその立場に恥じない女性になろうと努力を重ねているプリムラ。

 この健気な少女には、その頑張りに相応しい幸せな未来が訪れなければならないと思うし……だからこそ、ボクもシェルロッタとプリムラの幸せのために打てる手を着実に打っていかないといけない。


 まあ、ある意味プリムラ関連で問題があるとすれば、シェルロッタとプリムラの関係強化にラインヴェルドが全く意外なことに非協力的であること以外は、ルークディーン=ヴァルムトのことくらいか。

 今のルークディーンはプリムラに夢中だし、今の所ドM要素は見受けられない。……でも、まさか今回のヴァルムト宮中伯主催の騎士道合宿で目覚めてたりなんかしないよねぇ!? いやいや、勉学にも目覚めているし、アルベルトにも手紙で遠回しにあまり剣術ばかりに打ち込ませず、勉強もさせるべきだと伝えておいたし、きっと……大丈夫だと思いたい……不安になってきた。


「ローザ? どうしたの?」


「いえ、なんでもありませんわ。そういえばプリムラ様、ルークディーン=ヴァルムト様には何かお贈りになられないのですか?」


「勿論贈るわ! ネックレスのお礼も申し上げたいし……お父様にまたお茶会をしたいってお願いしたらね、近いうちに叶えてくださるってお約束してくださったの。それまでに何かご用意したいと思っているのよ。何か良い案はあるかしら?」


「そうですわね……最近は勉学の方も楽しくなって来られたとのことですし、ペン先は沢山お持ちでしょうから軸の方を贈られてはいかがでしょうか」


「……ペン軸かぁ! そうね! 良いと思うわ!! 後、インクも贈ったら、その内社交界デビューした後にお手紙を書いてくださるかしら?」


 ……うーん、それは気が早過ぎるんじゃないかと思うけどねぇ。

 まあ、プリムラからペン軸を受け取ったことでより勉強に前向きになる可能性は恋する者なら充分あり得るし、一種の起爆剤としては希望が持てるかもしれない。

 文字の方ももう少し綺麗になるかも? ……多分?


 社交界デビューはもうしばらく先だし、プリムラの希望が叶うのはもう少し先になると思われる。

 ラインヴェルドはプリムラとルークディーンをくっつけようと画策しつつも、実際は当事者二人に判断を委ねるみたいだし、ラインヴェルドが勝手に婚約を発表してしまうということはまずない……まあ、とりあえずボク達大人は彼女達の恋の進展を陰ながら見ているしかないってことなんだよ。まあ、それが普通なんだけどねぇ。



 晩餐会といってもダンスパーティーが開かれるとか、そういうのでは断じてない。

 単純に普段の食事よりは豪勢なお客様をお迎えするちょっと公式的な夕食会……それが、アストラプスィテ大公家の晩餐会だ。


 出席者はナジャンダ大公に、ヘンリー、ヴァン、プリムラのブライトネス王国王族年少組、ルーネス、サレム、アインスのフォルトナ王国三王子、そしてアストラプスィテ大公領の代官とその奥方という少人数だった。


 ちなみに、ナジャンダには奥様はおらず、ずっと独り身なんだとか。明らかに超優良物件なナジャンダの妻の座を巡り、眼をギラつかせてガツガツと仕掛けてくる肉食女子達に恐れを感じた大公様はすっかり社交界が苦手になってしまったのだそうだ。


 ……まあ、婚活に文字通り残りの人生全てを賭けている女性ってエネルギッシュだからねぇ。そりゃそうなんだけど。

 ナジャンダが老齢に差し掛かっているのに気にせずアタックしてくるのはやはり地位と名誉とお金目的だからねぇ……あからさま過ぎるって。

 ロマンスグレーの紳士という点も好意的に捉えられてそうだけど……まあ、それよりも彼の持っている肩書きや地位や財産の方がよほど魅惑的なのだろう。

 ……そんなんだから、肝心のナジャンダが社交界に近づかなくなって本末転倒な事態になる訳なんだけど、何故それに気づけないのか。


 代官のブレイザー=セイファート、メイーザ=セイファート夫妻は大公の幼馴染なのだそう。

 とても優秀な人物で、領地がこうして維持できているのは彼らのおかげなんだとナジャンダが嬉しそうに話していた。……まあ、流石に彼ら二人だけの功績という訳ではなく、大公やその他領地の人々の尽力の賜物なんだろうけど、ナジャンダがそれほどまでにこの二人を信頼しているということは確かなんだと思う。


 ちなみに料理はとても豪華で美味しそうだった……まあ、一つ一つの料理の量は少なくて品数が豊富という形だから量が欲しいアクア達は好まないだろうけど。

 ボク達の食事はこの給仕が完璧に終わってからだよ。……まあ、アクア達は待ちきれなさそうなので、先にターキーとか、骨つき丸焼き肉とか、そういった腹に溜まりそうな料理を置いてきたけど……しかし、あれだけ試食で食べた後にまだ食べられるって凄いよねぇ。


 食卓を飾るのは淡いピンクの薔薇、そして前菜のトマトも薔薇の形に飾り切りされた物だった……本当に薔薇に対する執着が筋金入りだねぇ。

 メルトランもきっと今頃技術を身につけようとあの睨みつけるような顔してるんでしょうねぇ。交流によって触発され、更なる高みを目指そうとすることは良いことです。うんうん……ガタイが良くて少し顔が怖いから怖がられてないといいけど。


 プリムラも王子達と楽しそうな笑顔で会話をしていてとても可愛い! ……何故かルーネス達の瞳に嫉妬の炎みたいなものが宿ったように見えたけど、きっと気のせいだよねぇ。

 しかし、可愛いなぁ、プリムラ。本当に癒しだよ。……ボクの周りには欅達やプリムヴェールとマグノーリエ、レジーナとユリアみたいな心癒される素晴らしい百合がいるし、お姉さん的にはとても充実していると思うんだけど……折角癒されたボクにそれ以上のストレスが降りかかってくるという、この異世界はボクにとっての超ストレス社会でもあるんだよねぇ。……まあ、その中にも楽しみは見出せるし、本気で嫌なら真っ先に仕事を放り投げるボクが続けるってことは、本気で嫌だとは思っていないのかもしれないけど。


 ラインヴェルド達に振り回される……そういう騒がしい日々が、実は嫌いになれないんだよねぇ。


 ナジャンダもニコニコしていて「明日からはここまで豪勢な食事はお出しできないが」と前置きをしていた。……ただ、王族が来ている訳だし、本当にレベルが低いものを出すってことは絶対にないのだから、単なる社交辞令か、もし仮に落ちるとしてもほんの僅かだろうけど。


 また、ナジャンダは明日以降は遠乗りや近くの森を案内をして差し上げよう」と仰っていた。明日からは遠乗りを始めるみたいだし、ナジャンダとレオネイドもそれに合わせて打ち合わせを進めている。

 何故かボクにも是非打ち合わせに参加して欲しいみたいな雰囲気だったけど……なんでただの王女宮筆頭侍女に過ぎない公爵令嬢を有識者扱いで参加させようとするのだろうか? ってか、レオネイドも『空翔ける天馬の召喚笛(ペガサス・ホイッスル)』をプレゼントしたその日に空翔ける天馬(ペガサス)を乗りこなしていたよねぇ?


 ……まあ、今回同行する護衛騎士全員に供給している上に、召喚された空翔ける天馬(ペガサス)は決して召喚者に逆らわないから寧ろ普通の馬より乗りやすい。シャルナールを乗りこなせられるのなら問題はないと思うけど。

 寧ろ、問題なのは搭乗者の方で……もし、空の上が怖いと恐怖心に駆られて暴れたら流石に空翔ける天馬(ペガサス)でもフォローはできないけど。結局、高所に慣れられるかどうかが課題になるんだよねぇ……でも、空からの景色ってとても綺麗で素晴らしいんだよ?

 まあ、ボクもプリムラの遠乗りと空の旅に同行すると約束しちゃったし、無関係という訳ではないんだけど。


 ……それでも、ここは波風を立てないようにレオネイドに代表として頑張ってもらいたいものだよねぇ。……今回、ボクも随分と目立ってしまったし、これ以上悪目立ちするのはボクとしても不本意というか……できれば、避けたいんだけどなぁ。


 まあ、そんな感じで和やかな晩餐会は終了した。

 その後はボク達が賄いを食べることになるのだけど……ボクはプリムラの所に行くことになっていたので辞退することにした。ちなみに、辞退した賄いはローストビーフの切り落としでやるらしい。……豪華だよねぇ。


 ちなみに、お仕事とは入浴と就寝の準備だよ。これも、いずれはシェルロッタに引き継がないと、とは思っているんだけどなかなか上手くいっていないんだよねぇ。……本当にシェルロッタに引き継ぎができるのかちょっぴり不安……でも、やらないといけないけどねぇ。

 今はプリムラがボクにお願いしたいというボク限定のお仕事……でも、いずれは、この特別をシェルロッタだけのものにする。


 ――それが、ボクの役目だ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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