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Act.8-212 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  第二部 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「そうですか。晩餐の際は私が給仕に付きます」


「はい、かしこまりました! ……ところで、ローザ様は本日も試作をなさっていたのですか?」


「ええ、そうですね。アクアさん達に手伝ってもらって……まあ、なんとか形になったかと。そのアイスクリームもその試作品の一つです。三つあるのは、ソフィスさんとシェルロッタさんの分も含まれているからなので、三つ全部食べないでくださいね」


「分かっていますよー。――ッ!? 美味しい! 薔薇の香りが爽やかで、苺味のアイスとマッチしています! これ、商品化したら絶対に売れますよ!」


「そうかしら?」


 メイナは元々商家の出だから、家の伝を使ってこれを売り出したいと思って……は多分いないねぇ。

 ボクもビオラ商会と繋がりを持っていることを知っているだろうし、そっち方面で出したらどうかと思っているらしい。


 ……まあ、気に入って頂けたら大公様と大公家のシェフに作り方をお教えして、ジリル商会方面で売り出してもらってもいいんじゃないかと思っているけど、ボクがビオラから商品化する気は更々ないんだよ?


 メイナは先日十六歳になったばかり。下男のダンのことを弟のように可愛がっているけど、どちらかと言えば、そんな『みんなの妹』みたいな属性を持っている。……うちの侍女達は全員メイナより年下だから、侍女相手には妹属性をいまいち発揮できていないけどねぇ。

 今回連れてきたのは勿論、メイドから侍女に昇格した優秀を見込まれて、というところもあるんだけど、他所の家での侍女やメイドの立ち居振舞いを見て学ぶことも多いだろうと考えて選定したのだけど……どうも緊張し過ぎて疲れているようだねぇ。

 まあそれも仕方がないのかもしれない。プリメラの意向でボクがいない時間が多かった分、気疲れしてしまったのでしょう。……少しウトウトしているような気がする。


 ソフィスはある意味鍛えられているし、シェルロッタも体力があるから大丈夫だけど……まあ、そりゃ、十六歳の女の子が慣れない環境で頑張っているんだから、疲れも溜まってくるよねぇ。


「……メイナ、少し眠っても良いのよ」


「えっ……あっ! す、すみません!! 大丈夫です、起きてます」


「大丈夫よ、時間になったら起こしてあげるから」


「ごめんなさい……恥ずかしい」


 顔を真っ赤にしているのは年頃の女の子だなぁ……って思う。可愛いなあと思いながら、座る彼女の頭を撫でた。

 いつも明るく元気に頑張る彼女だけど、やはり親元を離れようやく王女宮での生活に慣れたところで大公家に来ているのだから緊張しない方がおかしいんだろうねぇ。


 ……今回は色々目的があってそれを熟そうと動いた結果、この年下の女の子の緊張を気遣ってあげる気持ちが足らなかったのかもしれない……反省だねぇ。


「少し横になりなさい。私も楽に過ごしますから」


「……すみません。じゃあ、あの、ちょっと、だけ」


 やっぱりすごく疲れていたのだろう。すぐに寝てしまった。

 ……すうすうと寝息が聞こえてくるのを確認してから、メイナの髪を一撫で。


「おやすみなさい、良い夢を見られるといいわね」



 さて……と、時間もあることだし、少し刺繍でもしますか?

 服飾系のものはなんでも自作してしまうんだけど、本日は初歩の初歩――ハンカチの刺繍だ。というのも、アルベルトから受け取った髪飾りのお礼を流石にしないのはいけないかなっと思って。


 随分と時間も経ってしまったことだし、大公領の名産品とセットにして日頃のお礼も兼ねて……って渡すのがベターかと思ってねぇ。勿論、お土産はブライトネス王国で待っている面々にも買っていくつもりだから、その頭数にアルベルトを入れるだけなんだけど。


 ……正直、アルベルトと関係はそんなに深いものにはしたくない。まあ、男性を恋愛対象に見れないし、そもそもボクには月紫さんという想い人がいる。

 ……だから、できるだけ波風立てずに行きたいんだけど……それがなかなか難しいんだよねぇ。ホント、クソ陛下も面倒な仕掛けを……って、今回の件、ラインヴェルドがほとんど(・・・・)何も仕掛けずにこういう事態になっているから余計にまずいのか!? アルベルトはロリコンか、ロリコンなのか!?


 ……いくらなんでも一回り以上歳の離れた女児を恋愛対象にするかよ!? こっちはまだ十歳だぞ!?


 とにかく、ボクとしてもヴァルムト宮中伯家との関係はできるだけプリムラのために良好にしておかないといけないと思う。……あー面倒だなぁ。

 もし、仮にだよ? ボクが自分の考えを曲げないといけなくなったとして……月紫さん以外に選ぶとしたら、スティーリアとソフィスの二人、後はまあ、百歩譲ってルーネス、サレム、アインス、ネスト……この辺りはアリかもしれないと思いつつある。でも……うん、無いでしょ、アルベルトは。トラブルの予感しかない上に、ボクはイケメンより遥かに可愛い女の子が好きなんだから、趣味に合わない。


 窓の外ではうっすらとした夕焼けの始まりで、ボクの眼下に広がる白薔薇が、少しずつ茜に染まっていく。その光景を眺めながらボクは針をゆっくりと動かした。

 白地に銀糸で、目の前に咲き誇る薔薇を真似て刺繍する。折角薔薇の美しいところに来ているんだから、手本ににさせてもらおうと思ったんだ。

 普段使いできるように華美にはせずにひっそりと小さく薔薇と葉を縫っていく。……白薔薇の花言葉は「尊敬」だし、若くして近衛騎士として頑張っているアルベルトにはピッタリなんじゃないかな?


 ……まあ、彼も沢山プレゼントをもらっているだろうし、これもきっとその山の中に埋もれていくだろう。イケメンって凄いねぇ……まあ、ボクの好みは可愛い系か美しい系の女の子が百合百合している姿だけど。


「ん……」


「あら……メイナ、そろそろ起きて。時間よ」


「んぁ……ろーざしゃまー……?」


「私は先に行くから、ちゃんと鏡を見て髪も整えてらっしゃいね」


 まだ眠いのだろうメイナは目をこすってへらりと笑った。

 ああ、可愛いなあ。妹に欲しいくらいだ……って、妹枠は既に欅達が居たか。でも、ほとんど姉属性な気がするんだけどねぇ……椛、槭、楪、櫻の四人は妹属性がある気もするけど。


 でも、相対的に見たらローザより全員年上に見えるんだよ? 全員、ボクのことを「お姉様」って慕ってくれているけど。


「あらローザ様! 丁度よろしかったですわ!」


「……どうかなさいましたか?」


「はい、晩餐の準備は恙なく。いえ、王女殿下がローザ様をお呼びでしたので……晩餐はこのままでよろしいですか?」


「はい、よろしくお願いいたします。少し遅れてメイナがそちらに行きますので手筈の通りにしていただければ……」


「はい、よろしくお願い致します」


 大公家の侍女の方とお辞儀をし合ってボクは足を厨房からプリムラの部屋へと変更した。

 部屋に向かうとソフィスとシェルロッタが部屋の外で待っていた……どうやら、プリムラはボク一人に用事があるらしい。……しかし、人払いまでして一体どんな企みがあるんだろうねぇ? あの悪戯顔と関係があるのかな?


 シェルロッタとソフィスは楽しそうな気配を隠し切れずに微笑んでいる。……あの普段は冷静沈着な侍女のシェルロッタが、珍しいねぇ。

 やっぱり、きっと何か良いことがあったんだろう。そして、それはソフィスにとっても歓迎すべきことで……うむ、分からん。


「失礼致します、ローザが参りました」


「お入りなさい」


 なんだか声が弾んでる? 何かボクがいない間にいいことでもあったのかな? と室内に入るとプリムラがお一人で立って出迎えてくださった。

 畏れ多い……とは言わない。護衛も気を遣って外へ出したみたいだし、ここはプリムラの気持ちを素直に受け取るべきだろうねぇ。


 静かに歩み寄ってほんの少しだけ声を潜めて笑う。


「プリムラ様ったら!」


「だって……ちょっと寂しくなっちゃったんだもの!」


 うん、可愛い! 可愛すぎる! 尊過ぎて浄化されちゃう!

 護衛騎士が出て行ったのを確認してドアをしっかり閉めたボクを確認して、プリムラが両手を広げて抱き着いてきたんだからこれがニヤけるなって言われても無理でしょ! うん、本来ならこの立場はシェルロッタのものだけど、ボクももう少しだけこの名誉を賜っていたい! ああ、尊い! 尊いッ!!

 寂しかったんだって! ボクがいなくて寂しかったんだって!!


「ふふふ、いつからそんなに甘えん坊さんになってしまわれたのですか?」


「あら知らなかったの? 私はずぅっとそうよ!」


 ここは大公邸だからねぇ……流石にお互い声を潜めてだけれど……けれどねぇ、誰もいない状態でなら、ちょっとくらい、ね? いいよねぇ?


「どうしても晩餐の前に来て欲しかったの」


「まあ、何かございましたか? プリムラ様の苦手な野菜は晩餐のメニューには無かったと思いますけれど」


「ち、違うわ! メニューをこっそり変えて欲しいとかじゃないの! あのね、あのね」


 うん、可愛い! まあ、何となく想像がつくけど、そこはあえて言わぬが花……プリムラが折角驚かせようとしているんだから、水を差すのは野暮ってものだよねぇ。

 プリムラはちょっぴり顔を赤くしてボクから離れると、綺麗なレースのハンカチを取り出した。……うん、ハンカチだ。なんだかついさっきまでボクが睨めっこしていたものを思い出すけど……あれよりももっと遥かに上質なもので、綺麗な刺繍が施されている。図柄は赤い薔薇が二つです……赤薔薇、まさに赤薔薇をモチーフしたローザのために誂えたような品だ。


「あのね、ローザ母さまに作って差し上げたかったの。普段からプリムラの為にありがとう。これからも元気で、そばにいてね!」


「……プリムラ様」


 うん、可愛い! 可愛過ぎて決心が揺らぐんだよッ! 本当に尊いの、尊過ぎるッ! というか、反則じゃない! 可愛くって仕方ありません!!!

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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