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Act.8-209 ローザ所有の屋敷にて〜情報交換〜 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「さて、ここからはペドレリーア大陸から戻ってきたボク達と『這い寄る混沌の蛇』との敵対を振り返っていくとしよう。ボク達はペドレリーア大陸から帰還した後、『這い寄る混沌の蛇』が加担しているラングリス王国の革命を止めに向かった。そこで、革命を王国側で操っていた大臣モルチョフ=ヴァレスコール侯爵を捕縛し、王太后を操っていた冥黎域の十三使徒の一人フランシスコ・アル・ラーズィー・プレラーティ配下の人物と戦闘を繰り広げ、その人物を『這い寄る混沌の蛇』から解き放った。創世級(ジェネシス)となった『漆黒魔剣ブラッドリリー』に『這い寄る混沌の蛇』の絆を断つ力を組み合わせて……ねぇ」


「本当に滅茶苦茶なことをするわね。『這い寄る混沌の蛇』の『絆斬り』をそんな風に使うなんて……あたしじゃ絶対に思いつかないわ」


「汀さんももし仮に二つの手札が手元に揃っていたら簡単に思いつけたと思うよ? これくらい誰でも思いつけるって」


 ……全員揃って「こいつ何言ってんの」という視線を向けられたんだけど……えっ、思いつけないの?


「そして、いよいよ今回の一件。……まあ、一箇所で起こったものではなく、いくつかの事件が群発して、それを総称して今回の一件と呼んでいる上に、まだ解決している訳じゃないんだけど。まず、前提として『這い寄る混沌の蛇』には『蛇の魔導書』というものがあることをヴィオとアンブラルの一件で掴んでいたんだけど、そこには闇の魔法というものが含まれていた。この闇の魔法というものは、後天的に会得するためには儀式を必要とする……この時、魔物でも人間でもなんでもいいけど、命を捧げないといけないことから禁忌とされ、王家の一部と五摂家、そして【血塗れ公爵】とも称されるラピスラズリ公爵家の当主のみが代々その秘密を継承することになっていたんだ。……さて、問題です。この状況下で闇魔法の情報が漏れた……ということはどういうことでしょうか?」


「王家、或いは四大大公家、そしてラピスラズリ公爵家のいずれかが情報を漏らしたということでしょうね。……でも、王家の人間が漏らすとは考えにくいし、ローザさんの生家のラピスラズリ公爵家も候補から外れる……となると、この時点で候補に上がるのは五大大公家ということになるわね。……もう、この時点で四大大公家の中に裏切り者がいることを掴んでいるなんて、本当に圓さんは恐ろしい人だわ」


「クレールさん、褒めても何も出ないよ? さて、ここから絞り込んでいきたいところだけど、その前に事件が起きた。現在王子宮筆頭侍女を務めるアルマ=ファンデッド子爵令嬢の生家――ファンデッド子爵が、ガネット商会の金貸部門に入っていった姿が目撃されているというもので、王弟殿下から前王子宮筆頭侍女に連絡が入り、前王子宮筆頭侍女が一人では解決できないと判断して後輩のボクを頼ってきたってことになる。そのファンデッド子爵令嬢はレイン先輩――前王子宮筆頭侍女がとても可愛がっている優秀な侍女でねぇ、正直ボクも欲しいと思った人材だったんだけど……まあ、それはいいとして、ファンデッド子爵家の領地の経営は安定していたが、投資話が仕事仲間の貴族間で出てファンデッド子爵は欲を出した。最初はマルゲッタ商会で借金をしていたからなんとかなっていたものの、マイナス生活で家族にもバレたくないものの返済が加わったため、領地経営はカッツカツ。どうしたらいいかと思っていたところで仕事仲間から「ギャンブルで一括返済!」と仕事仲間に誘われ、後ろめたさがあったもののそれ以上のスリルにハマった。実はこの賭博場にはシェールグレンド王国出身のオルフェクトラ公爵夫人の姿もあって、田舎人丸出しの子爵にも無礼講だからと優しく接し、「いつでも館においでなさい」とハンカチを手渡してくれたということであっさりと心酔し、結果、貢物と借金で首が回らなくなり……慌てて更なる借金に行くもマルゲッタ商会に行って、困ったところでガネット商会の方から声を掛けてもらったということだそう。そんな訳で、借金は嵩むばかり。ファンデッド子爵令嬢にまで仕送りを増やすようにお願いしていたみたいなんだけど……妻が散財していることにしていたみたいだよ」


「最低ね」「最低だわ」「二股掛けた挙句、奥さんのせいにするなんて最低ね」


 うん、ロウズの知らないところで汀、クレール、デルフィーナの女性陣三人にボコボコにされているけど、自業自得だからボクし〜らない。

 ってか、奥さんいるのに別の女性に手を出そうとかこの世界でもアウトだから。……例え女神と称して、手を出さなかったとしても疑惑を持たれた時点でどの道社交界的にはアウト。


「このオルフェクトラ公爵夫人が妊娠し、公爵夫人に心酔していた他の信者達はファンデッド子爵に責任を擦りつけた。さて、このシェールグレンド王国では宝石価格暴落が起こっており、シェールグレンド王国ではこちらに嫁いだ公爵夫人を利用し、外貨を獲得することに乗り出していた。それに加えて、シェールグレンド王家からは以前にプリムラ姫殿下の結婚話を持ち掛けられ、それを断ったという因縁もある。その理由は表向き向こうは前回の友好として嫁いできた公爵夫人が子を成していないから、というものだったけれど、こちらとしてはその公爵夫人が存命中に同じような形をとるのは望ましくない……ということでねぇ。まあ、本来なら向こうの王太子の妻、つまり次代の王妃にと望むべきだったのだけれど、向こうの王太子にはすでにあちらの公爵家から嫁いだ女性がいてすでに御子もいらっしゃる上に側室まで状態。流石に正妃の座を挿げ替えるのは無理と考えたらしくて結果、側室にということで……プリムラ姫殿下を側室に、なんて言ってきちゃったから娘を溺愛するクソ陛下……じゃなかった、ラインヴェルド陛下が一方的にお断りしちゃったんだよ。まあ、そういうこともあってねぇ、ブライトネス王国の外貨獲得と醜聞を利用してシェールグレンドの王太子はプリムラ姫殿下との婚約を結び、ブライトネス王国の後ろ盾を得ようという策略が同時に進められていたんだよ。勿論、この中には至る所に『這い寄る混沌の蛇』が絡んでいる。まず、シェールグレンド王国で腕の良いデザイナーが幾人か出てきたんだけど、調査を進めると彼等は全てタナボッタ商会に縁のある者達だった。そして、その側室もタナボッタ商会に縁があった。更に更に、ファンデッド子爵家に融資を進めた文官も実はシェールグレンド王国の出身で、ファンデッド子爵に借金の話を持ちかけたガネット商会の担当者はシェールグレンド王国の出身でタナボッタ商会の縁の者だった」


 汀、クレール、デルフィーナが「うわぁ」と言いたげな表情になっていく……ってか、やっぱりその辺りの事情は知らなかったんだねぇ。


「勿論、これはシェールグレンド側の蛇からのブライトネス王国への攻撃であり、同時にシェールグレンド王国内部での切り崩しも起きていたことが確実視される。さて、もし、この計画がしっかりと実行されたとしましょう。主に狙われたのは地方貴族や文官なので、この一件で完全に露頭に迷うことになるよねぇ? 『這い寄る混沌の蛇』とは弱者から弱者へと伝染する一種の病のようなものなのだから……当然、蛇にとって彼らは格好の獲物ということにはならないかな? 耳元で甘言を囁けば新たな火種にもなる。……そもそも、ブライトネス王国を壊滅に追いやるのにはシェールグレンド王国側からの干渉だけでは足りないからね。ボクは、これが一番の狙いだったと踏んでいる。国を内から蝕む猛毒を時間を掛けて醸成させ、それを王家打倒の革命の火種とする。彼らは民衆と同化し、民衆を率いて国を滅ぼすために暗躍する……そして、新たな政府が誕生し、再び滅びの連鎖が始まる」


「……本当にどこまで考えているのって言いたくなるよ。それを圓さんは全て読み切ったってことよね……あたしじゃ無理ね、既に頭がくらくらしているよ」


「まあ、簡単に言うと今回の件に乗じて露頭に迷った下位貴族を増やしておきたかったってことになる。さて、四択問題に戻ろう……五摂家のうち、王弟バルトロメオの家は除いた四つのうち、誰が今回の黒幕かと推理していく時、重要になるのは何十年も前に起きたルーセンブルク戦争。フンケルン大公家率いる反乱軍はその規模も勢いも決して侮ることができるものではなく王国を二分する大きな内乱が起きることは確実とされていた。しかし、結末は些か呆気なく、当主の弟の手によって倒れ、反乱軍はあえなく瓦解することになる。協力した貴族達は全員処刑され、その者達の家の名声は地に落ち、『反乱を防いだ功績を称えられる立場の弟もそもそもが問題を起こした大公家、その問題を自家で解決しただけではないか』と揶揄する者が現れて苦境に立たされた。更に、弟が陰謀に加担した家の者に対して、助命嘆願を行ったことも大きく向かい風になる。一族郎党皆殺しの憂き目にあっても仕方のない立場の者達を庇い立てした彼に対する非難は小さくは無かった。それでも庇われた家の者達はその弟に感謝し、フンケルン大公家の派閥に身を寄せることになる。以来、フンケルン大公家派閥には抗争に敗れた敗北者や、あぶれ者の貴族などが次々に訪れるようになり、その規模は無視できぬものとなり、逆賊の汚名を着せられたにも拘らず、剥奪されていた辺境伯の地位を再び与えられるまでに地位を回復した。……もし、今回の一件で爵位を失った彼らが頼るとしたらどの家か、もう明らかになったんじゃないかな?」

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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