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Act.8-206 ネスト=ラピスラズリ誘拐事件 scene.6

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「てっきり、英雄(ヒーロー)ってもんは遅れてやってくるもんだと思っていたが、案外早かったな? 連絡してからすぐじゃないか」


「……ボクって、遅れてくるヒーローがあんまり好きじゃないんだよねぇ。後から美味しいところ掻っ攫っていくなら最初から戦えよって思うんだよ。……それとも、レナードさんの言うように遅らせた方が良かったかな? 何故かこの場にいる魔法の国派閥の魔法少女の汀さんが降伏しているし、マーヴォロとトータスは死亡。ネストが対象しているシーラは壁まで吹っ飛ばされて気絶している。当初の予定通りシーラは生捕にできているけど、まだ同じく何故かこの場にいる懸賞金のかかった【討夷将軍】と神父様の戦いが終わっていないみたいだし……先にそちらに加勢した方がいいかな?」


「随分と僕を舐めてくれているみたいだけど……ウォーミングアップをしていただけだからね? ここから本気を出すよ」


 音と気配を絶つ「絶音」、緩急をつけることで残像を生み出す「幻身」、そして一瞬にして地面を十回以上蹴って超高速移動する「俊身」を組み合わせたジョナサンは一瞬にしてミズファの前に大量の自身の残像を残して注目を集めると同時に自身は背後を取り――。


「魂魄の霸気《落花生》」


 更にダメ押しとばかりにジョナサンは自身の魂魄の霸気によって二人に分裂――偽物ではない、本物のジョナサン二人が覇王の霸気と膨大な魔力を纏わせた斬撃を放ってミズファの首を落として心臓を刺し貫いた。

 ……なるほど、ヨナタンとジョセフ――まるで双子のように性格もそっくりな二人の魂の形がそのまま魂魄の霸気になったってことか。もしかしたら、ジョナサンはジョセフの転生体と未だ会えていなくて寂しいのかもしれないねぇ……アクアによれば、少し不器用なところもある素直な子みたいだし……少々どころかかなり悪戯好きで、いつだって平気そうな顔をしてドSしているから、アクアやオニキスくらいしかその心の中は分からないんだろうけど。


「それで残り二人だねぇ。……待たせたねぇ。ボクが百合薗圓だ」


「貴女が……母様を殺した……許さない、許さないわッ!」


「……私はブライトネス王国とシャムラハ王国の戦火に巻き込まれて父を失って、母と離れ離れになってしまった時から、ずっと母さんと再会するために頑張ってきたの……それなのに、貴女は……貴女は私とデルフィーナの母を殺したのよ! 絶対に許さない……言い訳も聞かないわ! その命で必ず贖わせる」


 ……まあ、どの道分かっていたけどねぇ。何を言ったって復讐の炎は消せやしない。

 それに……皇帝を狂信して自爆魔法「最後の忠誠ラスト・ロイヤルティー」を使って自爆した……そんな末路を二人に聞かせられる訳がないじゃないか。


 本来は、ボクが死んで全てが解決するならこの身一つ差し出せばいいんだけど……ボクにはまだ沢山やらないといけないことがある。

 それに、月紫さん達のためにも……ボクはこんなところで死ねないからねぇ。


「言い訳をするつもりはないよ。……どう言い繕ってもボクのせいでグローシィが死んだという事実には変わりないからねぇ。……だけど、ボクもむざむざと殺されてやるつもりはないんだ。復讐をする意思があるということは、今ここで殺されても仕方がないということだよねぇ? その覚悟は、ちゃんとあるのかな?」


 クレールは、ショートの濡羽色の髪と紫紺色の瞳を持つ色白の、ロリィタ風に改造したナース服を纏った少女へと変身し、それとほぼ同時にデルフィーナもゴシックドレスを纏った蒼から赤へのグラデーションのある髪を肩まで伸ばした翡翠色と紫水晶のオッドアイの女性から黒ロリィタのドレスを纏ったグローシィ=ナイトメアブラックそのものの姿へと変身した。


 ――これが、クレールとデルフィーナの魔法少女としての姿か。


魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム


 クレールを中心に青白い薄い膜のようなものが部屋全体へと広がっていく。……名称からして、クレールは外科系の魔法を使うのかな?


幻想魔法毒(マジカル・ポイズン)凝膠弾(ゲルバレット)


 一方、デルフィーナの方は毒系の魔法を使うらしい。聞いたこともない毒だから恐らく自然界には存在しない魔法の毒なんだろうけど……もしかしたら自然界に存在するあらゆる毒を作り出せるのかも知れない。


 そして、毒と薬は匙加減。その用法・用量さえしっかりと守れば治療も行える。

 外科と内科か……グローシィの娘達らしいコンセプトの魔法だねぇ。


「《天照日孁大御神アマテラス・ヒルメノオオミカミ》――《天ツ巫女姫》」


 《天照》を【再々解釈】して再編した《天照日孁大御神アマテラス・ヒルメノオオミカミ》の派生――巫女の姿へと変化し、結界や障壁の展開が可能になる《天ツ巫女姫》を発動して巫女の姿に変身してから、自らの体を光そのものに変えることが可能になり、光速以上の速度での攻撃や光の操作が可能になる《太陽神》を発動して、自らの身体を光に変化させた。

 《太陽神》で作り上げた光を収束させた剣を構える……と同時に無数の鏡を生み出す《神聖鏡》を展開し、光の変化すると直線距離で鏡を経由してデルフィーナの背後に回り込んだ。


「完全に光へと変化させると直線的な行動しかできなくなるみたいだねぇ。《神聖鏡》と組み合わせれば複雑な軌道を描けるんだけど……やっぱり光の速度で体術を使った方が制御は効くみたいだ。……千羽鬼殺流とか、静寂流十九芸の体術とか、八技とかねぇ」


 そういえば、最近は千羽鬼殺流の技をあんまり使ってなかったねぇ。まあ、実際、ボクの習得している技術って重複があるから、気分や状況次第で戦術を組み立てる中でどうしても使うものと使わないものっていうものが出てくるんだけど。

 光の速度で武装闘気を纏わせずに霊力を纏わせて弧を描くようにして、対象に斬撃を浴びせるおおぐま座ζ星の名を冠する鬼斬の技――「千羽鬼殺流・武曲」を放ってデルフィーナを両断する……んだけど、まるで手応えがない。


 デルフィーナの身体がまるで毒のゲルのようになり、斬撃を浴びた部分が毒液となって四散した。


「……デルフィーナさんも自分の身体を何かに変化させるタイプなのか。なかなか面倒だねぇ……しかも、ある意味、汀さんよりタチが悪い」


魔法の刃の舞ダンシング・スカルペル・アンピュテート


 なるほど……「魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム」とはまさに手術室――外科医の魔法少女にとっては独擅場ってことか。

 この手術室と化した空間では恐らくあらゆる物理法則を超越して執刀がなされる。突然出現した大量のメスが縦横無尽にボクに殺到してくるのも、外科医であるクレールの魔法の効果なんだろうねぇ。……とはいえ、いくら早いとしても速度に限界はあるから、光速で移動するボクには追いつけない。


「圓流耀刄-光速比翼-」


 一歩分音もなく距離を詰めるのと同時にもう一振りの光の剣を生成――素の状態でも剣の残像すら捉えられない無音の神速太刀を光の速度ベースで放つ。

 最早、その速度は鍛え抜かれた見気であっても捉えることが不可能な領域――光りの速度など生温いと思えるほどの人外の斬撃がクレールに殺到した。


瞬間止血(ヘモスタシス)! 無縫接合(サターラエ)


 まさか、ボクの圓式を喰らって生存できるなんてねぇ。

 瞬時に止血し、切り刻まれた部分を魔法で接合することで生き延びたのか。

 ……斬撃が効かないって本当に面倒だ。


「なら……仕方ないねぇ。ダークマター・バーチカル」


 魔力(・・)に武装闘気を混ぜ込むことで、魔法そのものに武装闘気を付与し、垂直にダークマターを放つ「ダークマター・バーチカル」を放つ。

 ダメージを期待した訳じゃない。狙いはクレールを館の外へと――遥か上空へと吹き飛ばすこと。


 予想通り、「魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム」の効果範囲はデルフィーナ自身を中心として展開されている訳ではなかった。そして、上空に打ち上げられて「魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム」の効果範囲から脱出すると、「魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム」は維持できなくなって解除される。


「一度試したかったんだよねぇ……光の速度の蹴りってどんな味なのかな? 召し上がって天に召されな!」


 天魔纏身を使って天使の片翼と悪魔の片翼を展開して空中で羽搏いて高度を維持しつつ、光の速度で蹴りを放った。

 クレールは尋常ならざる速度で落下し、デルフィーナに激突して……そのまま床に人型を作る。


 デルフィーナはクレールに毒が回らないように猛毒化を解除していたみたいだ。……だから、クレールに追加ダメージは無かったようだけど、結局二人揃ってかなりのダメージを受けているようだ。

 とはいえ、この一撃で死亡しないのは流石は頑強な魔法少女と感心してしまう……まあ、流石にこの一撃で死なれたら味気ないんだけどねぇ。


「クレール、デルフィーナ。まだ戦うつもりかな? もうとっくに力量差が分かっていると思うけど」


「……はぁ、はぁ……あ、当たり前よ! 母様を殺した貴女を、私とクレール姉様の大切な人を殺した貴女を、私達は絶対に許さないわ」


「そ……そう、よ! 絶対に、貴女を殺すんだから! 私は……デルフィーナのためにも、ここで、諦める訳には」


「……二人には申し訳ないけど、ボクは二人に同情しているんだ。できれば、殺したくないと思っている。……でも、一方で、その復讐の炎を尊重して……このまま復讐者として死なせてあげるのが、グローシィのところに送ってあげるべきなのかもしれないとも思っているんだ。だから、好きな方の選択肢を選んで欲しい。一つは、ボクの話を聞いた上で戦いを続行するか否か……そして、もう一つはボクの話を聞かずに挑んで死ぬか。……聞いてからだときっと元には戻れない。復讐の心が揺いでしまうかもしれないしねぇ……でも、ボクにだって何も咎がないという訳ではないし、別に弁解をしたいっていうつもりもない。……さあ、どうする? 何を選ぶのも二人の自由だ」

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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