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Act.8-204 ネスト=ラピスラズリ誘拐事件 scene.4

<三人称全知視点>


 『魔法少女暗躍記録〜白い少女と黒の使徒達〜』は高槻斉人とフルール・ドリスがタッグを組んだ第十二作である。

 スマートフォン向けのゲーム版として発売されたが、後に家庭用ゲーム版が発売された。


 世界を滅ぼそうとする黒の使徒達と戦うために普通の女子中学生だった真白(ましろ)雪菜(ゆきな)はマスコットに懇願されて魔法少女となる。

 仲間となった他の魔法少女達と共に戦う雪菜達だが、ある時魔法少女の真実について知ってしまうことになり……終盤には『アンダーワールド・クエスト』のオマージュである魔法少女側として戦うルート、黒の使徒側について戦うルート、世界のためにどちらとも戦うルート――合計三つのルート分岐が起こる。


 このゲームにおいて、諸悪の根源とされるのがQueen of Heartという魔法の国の女王だ。

 ハートが溢れた赤いドレスを纏った赤髪の美女で、傲慢で白痴な女王でいつも癇癪を起こしている彼女は、無くなりつつある魔力を補填するために地球に侵攻する計画を立てていた。

 体から魂を抜き取ることで生み出した魔法少女の本体と呼ぶべきものである魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)を変身の鍵とする新型魔法少女を開発し、その新型魔法少女を絶望させることで膨大なエネルギーを取り出そうと企み……その計画が頓挫した際には魔法少女を溶かすことで魔力を抽出しようと画策し、ルートによっては真白達の邪魔によって頓挫し、遂には命を失うことになる。


 この魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)を利用した絶望作戦の思わぬ副産物が、魔女(ヘクセンナハト)だ。

 魂の結晶体である魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)を種として生まれる異形の存在で、一度絶望によって魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)が闇に覆われてしまえば二度と元の魔法少女に戻ることはできない。その力は強力無比で、「自分に対する攻撃を全て無力化し、一方的な干渉を可能とする」チート魔法を有するQueen of Heart以外では、単独無傷での討伐は極めて困難。

 制御することもできず、厄介極まりない存在であるが、異世界化後は冥黎域の十三使徒のルイーズ・ヘルメス=トリスメギストスにより、新たなゴーレムの素材として大きな期待が持たれている。


 しかし、魔女(ヘクセンナハト)というのは魔法少女からしか生まれない。男性や動物を元の姿とする魔法少女の前例がない訳ではないが、魔法少女化させた後に絶望させるのは余計なプロセスが多いとルイーズは考えた。


 そこで、ルイーズが生み出したのは魔人の種子(デモニア・シード)と呼ばれるものだ。

 服用させるか、身体に埋め込むことで魂と同化し、魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)のような働きをする魔人の種子(デモニア・シード)を投与することで、魔法少女以外の人間を魔女(ヘクセンナハト)の如き存在――魔人(デモニアナハト)へと比較的簡単に変化させることが可能になった。


 更に、『這い寄る混沌の蛇』には『絆斬り』と絶望を加速させる魔法――暗黒魔法「不感情増幅ネガティブ・エグザサベート」、そして絶望を与えて闇堕ちさせる特殊な能力『絶望堕ち』の三つがある。

 本来、『絆斬り』は『絶望堕ち』の反転を成立させるためのものとして考案された。その技術は冥黎域の十三使徒の一人で人間離れした美しさを持ち、慈悲深い皇女として国民から慕われているイェウッド国の第一王女でありながら、一方で非合法組織「666(ビースト・ゲヘナ)」の支配階級「第四圜(ジュデッカ)」の地位にあるベラトリックス・クイネラ・イェウッドが有する属性の有する正の面を負の面への反転させる『絶望者の反転』へと発展し、冥黎域クラスの中でも一部の者達が保有する『這い寄るモノの書』に書き加えられている。


 属性の反転と同時に不可逆の闇堕ちのために生まれた『絆斬り』と『絶望堕ち』は、魔女(ヘクセンナハト)化や魔人(デモニアナハト)化とも極めて相性が良く、属性の反転こそ起こらないものの、比較的簡単に魔女(ヘクセンナハト)化や魔人(デモニアナハト)化が可能となったのである。


 マーヴォロにとって、唯一の希望はシーラだった。そのシーラに裏切られ、再び切望に叩きつけられたマーヴォロ……しかし、それでも完全に心が折れた訳ではなかった。

 しかし、トータスの放った「不感情増幅ネガティブ・エグザサベート」によって絶望が増幅されたことにより、遂にマーヴォロの心が――魔人の種子(デモニア・シード)が、完全に絶望に染まってしまう。


 マーヴォロの身体を内部から食い破るように猛烈な黒い光が発生し、その光が青い炎のように揺らめく巨大な牛の頭、人間の胴体、大鷲の翼と獅子の足を持つ異形が姿を見せた。


『――Grooooooooooooooooo!!』


 猛烈な雄叫びと共に、自我を失った魔人(デモニアナハト)が青い炎でできた巨大なハルバードを振り下ろす……が。


「攻撃の筋があまりにも見え見えだわ! 図体がデカくて力があっても、アタシ達は倒せないよ!」


「その力で思い切りぶっ飛ばしてもらいたいとも思いましたが……あまりにも遅過ぎます」


「本当に遅え。あくびが出ちまうよ」


 『双極の英雄殺し剣-ブルートガング・アンド・ナーゲルリング-』に武装闘気と覇王の霸気(・・・・・)、そして【纏黒稲妻】の黒い稲妻を纏わせたラルとモネが使っていた剣を素材とした特製の『王国騎士の剣(エスカリボール)』に武装闘気と覇王の霸気を纏わせたヴァーナム、そしてこれまで滅焉銃(フィニッシャー)や刀身の存在しない滅焉剣(フィニッシャー)を抜くことなく手や足を刃に見立て、超人的脚力や腕力で飛ぶ斬撃を放つ「刃躰」と神速闘気のみで戦ってきたレナードが、三人同時に空歩を使って一瞬にして魔人(デモニアナハト)の死角に回り込み、ほぼ同時に斬撃を放った。


 聖人の修行を独自に進め、最近ようやく聖人に到達すると同時に覇王の霸気を覚醒させたラル――非合法暗殺組織時代から独学で習得したやや喧嘩殺法寄りで変則的な暗殺特化剣技に霸気が加わることでその一撃一撃の破壊力は異常なレベルにまで高められている。

 覇気の黒い稲妻は、【纏黒稲妻】を大幅に増強しており、たった一撃浴びせるだけでも魔人(デモニアナハト)の肉をズタズタに切り裂くほどだ。たった一人であっても魔法少女数人での討伐が前提な魔人(デモニアナハト)を半殺しにできるほどの一撃――そこに、同じく化け物じみた強さのヴァーナムとレナードの斬撃が加われば、魔人(デモニアナハト)に勝ち目などない。


「まさか、魔人(デモニアナハト)が一撃!? そんな、あたし達魔法少女でも数人掛かりで長期戦が前提になる相手なのに」


 汀達も流石にこれには衝撃を隠せない。

 マーヴォロの魔人(デモニアナハト)は、トータス達の切り札の一つだったのだから、まさか、三人掛かりとはいえ一撃で倒されるとは思いもよらなかったのである。


「透明なゴーレムも残り僅か。ローザさんもまもなくお越しになるようです。……私に思いっきり気持ちいい一撃を浴びせてくださるでしょうか?」


「義姉さんは変態に構わないと思いますけどね。……残るメンバーは義姉さんが対応してくださる二人を除けば、僕が対応しているシーラ、ダラスさんが対応してくださっている汀、ラングドン教授が追い詰めてくださっているトータス、ジョナサン神父が対応してくださっているミズファの四人。マーヴォロは生き絶え、ラルさん、ヴァーナムさん、レナードさんの三人ももうすぐ透明なゴーレムを討伐し尽くします。残念でしたね、そちらの勝機は皆無です」



 美青木汀の固有魔法は「水操作」だ。大気中の水を操ったり、水を生成したりといったことだけでなく、自身の身体を水へと変化させることも可能で、その力を駆使すれば斬撃を含む物理攻撃を全て無効化することが可能だ。

 絶縁性質を有する純水へと変化させることで雷撃も無効化可能で、派生である水蒸気や氷への変化も自由自在。この三体への変化を利用して水蒸気となって相手の内部から攻撃するという芸当が可能になったり、氷へと変化させた体を粉々に砕かれた瞬間に冷気により再生し、触れるとそこからあらゆるものを一瞬で凍結させる冷気を流し込んで氷結させるといったこともできる。


 ゲーム時代には能力の有無に関係なく攻撃をすればダメージを与えることができた。そのため、攻撃が多彩であるとはいえ討伐そのものは困難ではない敵として立ち塞がった汀だが、異世界化後は上記のようなある種の不死身性を有するが故に、汀は自分の強さに絶対の自信を持っていた。


氷槍雨アイシクル・ランス・レイン


 だからこそ、まさか自身が敵から距離を取り、遠距離攻撃での切り替えざるを得なくなるとは予想だにしなかったのである。


「随分と能力に頼った戦い方をしてきたようですな。その力に甘え、研鑽を怠ったのでございましょう。だからこそ、この老骨相手に苦戦する」


 戦闘開始直後、たった一瞬で俊身によって近づかれ、利き腕を切り落とされた。その腕は瞬時に大気中の水分を使って生成し直した……が、無敵だと思っていた自分の攻撃が通用しない筈の物理攻撃によって自分の身体を傷つけられたという衝撃は未だに汀の心を強く揺さぶっている。


 四肢はまた再生できる。だが、もし、魔法少女化に伴い、脳や心臓といった急所を攻撃されても死なない一種の不死性を得る代償として生まれた魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)という新たな急所――もし、水へと同化させることで己の体を変化させた水の中を循環させるように動かしているこの急所を的確に貫かれた場合……それは、汀の死に直結するのである。


「しかし、困りましたな。ネスト殿は生捕にして欲しいと仰せだ。……だか、一瞬にして水を吸収し、欠損部位を治してしまうその力を相手にして即死を狙わぬとなれば千日手となるのは目に見えている。……私もかつては『剣聖』の異名で知られ、剣一振りで今は無きアスタリス王国の近衛騎士団長として王国のために戦ってきた。騎士として正々堂々とした戦いに誇りを持っていたものだ。それは、ブライトネス王国に亡命し、カノープス様に拾われて【ブライトネス王家の裏の剣】に加わってからも決して曲げずにきたもの。……汀殿、どうか悪く思わないで頂きたい。私は人生で初めて、この戦いで志を曲げる」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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