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Act.8-199 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  scene.9

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「まず、青薔薇というものは、この世界では希少な薔薇というだけで済まされますが、前世にそのようなものは存在しませんでした。青薔薇が開発されたのは、2004年――それまでは不可能という花言葉を持っていましたが、「奇跡」、「神の祝福」、「夢叶う」という花言葉が新たに加わりました。しかし、完全な青薔薇の完成までは更なる時間経過を待たなければなりません。この完全な青薔薇を初めて開発したのは、化野さんと斎羽さんの共同チームです。こちらはラピスラズリ公爵家のものと違ってあれを肥料として使用していませんし、ご了承いただければ代わりにこちらを進呈しようかと思っておりました」


 「まあ、ラピスラズリ公爵家の青薔薇に比べたら数段劣るかもしれませんが」といいながら、ラピスラズリ公爵家の青薔薇の鉢植えの隣に並べると、ナジャンダは興味深そうに二つを見比べ。


「本当に二つとも頂いて良いのか? そして、どれくらい支払えば良いものか。ラピスラズリ公爵家の青薔薇は市場には出回っていないものだからな……どれくらいが相場か分からないので、言い値で買い取らせてもらうよ」


「お支払いは特に必要ありませんわ。この青薔薇の鉢植えもお願いしたらタダで譲られたものですし、こっちの青薔薇も前世で持っていた鉢植えをたまたま二つ四次元空間に入れておいたもので、これもお二人から頂いたものですから」


 というか、今からナジャンダが育てたアストラプスィテ大公家の秘宝と呼ぶべき食用薔薇をいくつかもらおうとしているんだし、ボクの方だけお金を取るのは流石に気が引けるからねぇ。


「では、この薔薇は後で運ぶとして……まず私の研究用の庭へ移動しようか。エスコートさせて頂けるかな、レディ」


「えぇ、喜んで」


 ……しかし、ボクがレディ扱いされるなんて人生で初めてなんじゃないかな? トキメキはしないけどねぇ。



 ロマンスグレーの老紳士にエスコートされて美しい薔薇の庭を歩く……貴族のご令嬢方なら黄色の声を上げそうだけど、ボクは特に感慨もなく……なんだか、色々と勿体無いような気がしてならないよねぇ。猫に小判、豚に真珠、犬に論語、兎に祭文、百合好きにBL……まあ、色々言い方はあるけど、まあそんな感じだねぇ。


「どうかしたかな、ローザ嬢」


「いいえ、何も。見事な薔薇だと感動しておりました。流石と言いますか、薔薇にかける情熱は他の追随を許さないなぁ、と実感しております。王城の薔薇園やラピスラズリ公爵家の薔薇園よりも数段上だとは思いますが……正直、前世でもここまでのものは見たことがございません」


「まさか、王城やラピスラズリ公爵家のものと比較してそこまで褒めて頂けるとは思っても見なかったよ。しかし、それは私達があまりにも薔薇に特化している故だと思う。他の植物を含めれば、王城やラピスラズリ公爵家にも見劣りするだろう」


 まあ、そりゃそうなんだけどねぇ。アストラプスィテ大公家は薔薇に特化し、薔薇について知り尽くしている。その見せ方もきっと誰よりも理解しているんだろう。最も薔薇が美しく見えるように、その魅力を最大限引き出せるように本当に計算し尽くされている。

 一方、ラピスラズリ公爵家や王城では、薔薇を含めた総合芸術としての園芸が行われている。薔薇に特化している庭園と薔薇に特化していない庭園を薔薇という一つの指標のみで測ればどちらが上かは明々白々。


 まあ、それを抜きにしてもアストラプスィテ大公家の薔薇園は本当に素晴らしいと思っているんだけどねぇ。

 薔薇しかないのか、と思うかもしないけど濃い赤から鮮やかな赤へ、そして薄らいで行き次は薄いピンクから濃いピンクへ……といった薔薇のグラデーションは見事だ。

 甘いのに香りが違うと解るほど、薔薇の種類によって変わっていく香り、そこまで計算し尽くされているのだと思うと、この計算し尽くされた薔薇園とこの薔薇園を作り上げた庭師に畏怖の念すら覚える。……圧倒されるよねぇ。


 ナジャンダの案内に導かれて薔薇園の奥に進むと、そこにはドーム状の、小さな建物があった。


「あの小さな建物が私の研究室だ。あそこに食べられる薔薇の品種が植えてある」


「小さいと言っても温室付きの一般家庭の一軒家サイズですけどねぇ。……流石は大公様というべきでしょうか?」


「君ならもっと大きな温室を持っているんじゃないかな? 私なんてまだまだだよ」


「残念ながら、前世はプロに植物関係は任せていたもので、個人で植物は育てていなかったので個人所有の温室も持っていなかったのですよ。……それに、こっち来てから手に入れた土地も大規模農園(プランテーション)型で温室ではなく直植えを採用しているので、温室は保有していないんですよねぇ。精霊の加護を使った強引な方法である程度の無茶な栽培も可能ですし。……温室とはこれまで縁がなかったですねぇ」


 ……まあ、斎羽さんを手伝ってボクも何個か育てていたし、一部苗木や苗は四次元空間に放り込まれているんだけどねぇ。


「精霊の加護か。この地でもその加護は得られるものなのか?」


「精霊が常駐するようになれば自然と豊かになっていくものですからねぇ……ボクの方から精霊に働きかけておきましょうか?」


「頼んでも宜しいかな?」


「ええ、勿論。お任せください」


 ちょっと精霊達に働きかけてしばらくの間、大公領一帯に留まってもらえるようにお願いした。

 これで、この地もきっとスポット化するだろう。


「ここは品種改良や今までの資料を纏めている場所でね。まああまり片付いていないんだが……食用の薔薇は申し訳ないが、あまり量が作れないからね。ジリル商会にも僅かに下ろしているが、大した量はないんだ。ただ花弁を乾燥させてサラダに混ぜたりするようのものがここに大量にしまい込まれている。それで良かったら持って行くといい」


「ありがとうございます。これで、研究も捗りそうですわ」


「……しかし、今更だが食用薔薇はローザ嬢もお持ちなのではないのか? 前世にもあったのだろう?」


「まあ、あるにはありますが……この地の特産品にする以上はこの地の薔薇で作り出す必要がありますからねぇ。では、ドライエディブルローズの花弁は遠慮なく頂きます。お代はどの程度お支払いすればいいでしょうか?」


「ローザ嬢が宜しければ、相殺という形にしてもらえると助かるよ。こちらの方が多くもらっているし、寧ろこちらが支払うべきところだからね。……その薔薇の花弁もこの地の特産品の一つにこれからなるのだろう?」


「まあ、その前に姫さまに食べて頂きたいと思っています。勿論、完成した暁にはナジャンダ様にも薔薇ジャムやお菓子類で成功品ができたら試食して頂くことになると思いますが……やはり一番は姫さまに喜んで頂くことですからね。ボクが心の底から納得がいったものを是非プリムラ様にも食べて頂きたいのです」


 そして、月紫さんと再開した暁には、そのお菓子を是非食べてもらいたい……まあ、それはいつになるか分からないんだけど。

 プリムラに食べてもらいたいという気持ちは本心だし、名産品の提案も生半可な気持ちでやるつもりはないよ。



 王女や王子と共に大公領にやってきたボク達には、ナジャンダの配慮からそれぞれの所属ごとに部屋を割り当てられている。

 王女宮組に男女別二部屋、第三王子付き組に男女別二部屋、第四王子付き組に男女別二部屋、フォルトナ王国組に男女別二部屋といった形だねぇ。


 ボクと同部屋になったのは、シェルロッタ、ソフィス、メイナ、そしてアクアだった。そして、この部屋にアクアがいるのでウォスカーとファイスがちょくちょくやってくる。

 まあ、消灯の時間になればこの二人はアクアとレオネイドによって強制退去させられるので、特に問題はないんだけどねぇ。


「ソフィスさん、一体何をしているんですか?」


 さて、侍女として付いてきていると言っても二十四時間主人に仕えていなければならないということはないので、主人であるプリムラが寝静まった後は基本的に自由時間だ。

 ソフィスもこちらに来ることになった時点で仕事を持ってくることを決めていたようで、大量の漫画用紙と原稿用紙とトーン、そしてGペンと万年筆を持ち込んでいる。


「漫画の執筆ですよ。小説の方の連載もありますが、こちらの方が大変なので先に片付けておこうと思って。待っている読者の方もいらっしゃいますし、休んでなんていられません」


 ……避暑地にいる時くらい休めばいいんじゃないかと思っているんだけど、待っている読者のためにも連載漫画は一週も休む気がないようで、ソフィスは王都と行き来ができるボクに原稿を運んで欲しいとお願いしてまで続けるつもりでいるらしい。

 まあ、ボクもこっちで執筆の仕事する気満々で来ているし、あんまり人のことを言えないんだけど。


「ソフィスさんって漫画を描いているんですね! どこかで発表したりしているんですか?」


「ソフィアという名前で細々と作品を発表させて頂いております。私なんてまだまだですわ。ローザ様はあのブランシュ=リリウム大先生なのですよ!」


 ……ってか、その話てっきりもっと広まっていると思っていたんだけど、旧侍女組だけで留まっていたんだねぇ。

 あまりにもショックだったようで、メイナの魂がどっかに飛んでいった。


「ろ、ローザ様がブランシュ=リリウム先生なのですか!?」


「そして、私が小説家と漫画家を志望したきっかけでもあります。先生が居たからこそ、私は作家の一歩を踏み出すことができたのです」


「……えっ、つまり今王都で話題の二大巨塔がこんなにも身近に!? わ、私どうすれば」


「何も関係が変わる訳ではありませんし、そのままでいいと思いますわ。……しかし、本当に随分量を抱えていますね。普段お手伝いなされているニルヴァス様もいらっしゃらないことですし、トーン貼り、私とシェルロッタで手伝いましょうか?」


「さりげなく私も手伝うことになっているんですね。……トーン貼りなんてやったことありませんが」


「トーンの切り抜きは得意じゃないんですか? 刃の扱いにシェルロッタさんは長けているでしょう?」


「あの、宜しかったらメイナさんも……って、どうしました!?」


「えっ……あの【魔性の伯爵】と呼ばれるニルヴァス様がトーンの切り抜きをしていたなんて」


 あー、色々新しいことを知り過ぎて遂にメイナが限界を迎えたらしい。

 しばらくソフィスから受け取った用紙にトーンを貼っているとメイナがようやく復活したようで。


「わ、私にも手伝わせてくださるのですか? トーン貼りなんて初めてで」


「シェルロッタさんだって初心者ですし、やり方は私とローザ様でお教え致しますから。ただし、明日の業務に差し障ってはいけないので、時間を決めて切り上げることに致しましょう」


 こうして、メイナも加わり王女宮組の侍女三人でソフィスの漫画を手伝うことになった。

 えっ、アクアはって? こういう細々な仕事は苦手だから最初から戦力外だよ?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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