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Act.8-195 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  scene.5

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 第三王子と第四王子の専属侍女であっても、王子宮筆頭侍女は直属の上司で、家の権力も表立って使えない侍女の立場では職場の上司の言葉を無視することはできない。

 内心腑が煮え繰り返っていても、アルマの指示は絶対だ。情報交換は既にしっかりとしたし、レナーテとパトリアはアルマから指示を出してもらえば問題ない。


 ……もし、仮に気に入らない時って仕事をサボタージュなんてしてしまったら、それこそ自分達の主人である王子達の顔に泥を塗ってしまうことになる。

 専属侍女は長年王子に仕えて王子の為人から趣味趣向まだ全てを知っているから、そして、王子達当人にとっても付き合いの長い侍女がいた方が安心できるだろうからという理由で例の大規模な配置換えの際にもそのまま残されたけど、もし、王子がその専属侍女に気分を害されたら、ボク達の配慮も関係なしに解雇もあり得るからねぇ。まあ、解雇されなくとも王子の側に置いて置けないということで別の宮への異動が行われることになると思われる。


 ただでさえ、時間を掛けて作り上げてきた王子宮内の派閥というものが実質粉々に粉砕されてしまっている状況なんだから、レナーテとパトリアも下手な手は打たないだろう……打たないといいなぁ。


 プリムラに用意された部屋に向かい、しばらくお世話をしていたところ、プリムラが当面ボクに自由時間を与えると言いました。

 ……ナジャンダの依頼もあるし、こちらから多少時間を作ってもらえないかと事情を説明してお願いしようと思っていたんだけど、手間が省けたねぇ。


 ……しかし、アストラプスィテ大公からの依頼の件は知らないだろうし、それならどういう理由なんだろう? と思ったんだけど、プリムラのそれがまさに悪戯をしようとする女の子の顔だったので、ボクは素直に受け入れることにした。

 折角サプライズで何かを考えてくれているんだから、それを見気で詮索するなんて野暮ってもんだよ。


「あっ、でもねでもねローザ!」


「はい、なんでございましょうか?」


「夜はね! ローザがちゃんと私に寝る前のお茶を頂戴ね。それから朝起こすのもローザじゃなきゃ嫌なのよ。お願いね!」


「――畏まりました」


 ああ、もう本当に可愛いよねぇ!! アクアがいたら鼻血を出して蹲っていただろうし、かくいうボクだって尊さで一瞬成仏し掛けたよ!

 本当に可愛いよねぇ。……これだけ一緒にいれば分かるよ。ラインヴェルドが溺愛したくなる気持ちも。



 翌朝、プリムラとの約束通り起床に合わせて朝の準備を済ませると、早速、今日の午後はお休みしていいと言われた。

 まあ、プリムラもプリムラでサプライズを用意しているなら、ボクもボクで何かサプライズを用意しようということで、もらった午後の休暇を利用して早速行動に移すことにした。


「メルトラン、準備は良いかしら?」


「そりゃ、まあ……基本的にプリムラ様がご希望なされない限り、俺が調理場にいる必要はないと分かっているから構わねぇんだけどよぉ……筆頭侍女ともあろうお方が護衛なしで出るつもりなのかい? 一応、闘気とやらが使えるってことは、護衛要らずなのかもしれねぇが」


「……私、これでも一応普通の公爵令嬢ですからねぇ? 護身用に闘気は体得していますが、ただ魂魄の霸気が比較的珍しいものなだけで、とても実戦経験豊富な騎士様や元腕利き冒険者のメルトランには敵いませんわ。……きちんとプリムラ様にご相談申し上げた上でしっかりと護衛をつけていただく算段をつけていますわ。……もうそろそろ来ると思うのだけど」


 前世の頃から大切にしているスケルトン・機械式の百合の彫刻が施されたオーダーメイドの懐中時計(実は月紫さんから贈られた大切な品)で時間を確認していると、丁度約束した通りの時間ピッタリにディマリアが姿を見せた。


「お待たせ致しました」


「えっ……おい、ディマリアじゃねぇか!?」


「何よ、メルトラン。アタシがいたら仕事ができないとでもいうの!?」


「いや、そういう訳じゃねぇよ! なぁ、ローザ様? これはどういうつもりで?」


「あら? たまには恋人の時間も必要かと思って。なかなか一緒に過ごせる時間がないのよねぇ? まあ、今回は仕事がメインだから邪魔者もいる上にイチャつけないから不完全燃焼になるかもしれないけど……それについては申し訳なく思っているわ」


 そっと笑ってみせればメルトランは厳つい顔を一瞬にして茹で蛸のように染め上げた。


「ローザ様、かつてないくらい楽しそうですね」


「そういえば、ディマリアさんはご存知ないかしら? 私、身近な方の恋を応援するのが個人的な趣味の一つなのよ。そういった系統の話だと少々お節介になってしまうのが玉に瑕だと自覚しているのだけどねぇ」


「――そ、そういや、ローザ様には恋人とかいたりしねぇのか?」


 あっ、メルトランが明らかに話の方向性を変えてきた。

 こういった恋バナでは定石中の定石。自分達から注意を逸らせるだけでなく、一気に形勢を逆転させることができる。恥ずかしがらせることもできるし、恥ずかしがらずに話せば相手の好きな人が誰かを把握できる。恥ずかしがって話を切り上げるなら、それもまた良し。少なくとも自分達がこれ以上話題にされて恥ずかしくなるという状況は避けられるよねぇ。


「あら、私にもお慕いしている人くらいいますわよ」


「それって、もしかして例の近衛騎士のホープでしょうか?」


「……それが誰かは明かさないでおきましょう。ただし、その方は随分以前からお慕いしている方で、今はとても思いを告げることができません。しかし、それでもその機会が訪れたら必ず想いを伝えたいと思っています。その方は可愛らしい方、ですわよ。抜き身の刃みたいに張り詰めていて……真面目で一途で……時々見せる笑顔が可愛らしくて。私の全てを捧げたいと心から願いたくなるような、そんな方です」


 ボクの惚気話に、メルトランとディマリアが砂糖でも吐き出しそうな表情になっていた……あまりにも予想外だったかな? ウブな反応をするんじゃないかと楽しみにしていたようだけど、アテが外れたみたいだ。


「それじゃあ、つまり例の近衛騎士のホープのことは何とも思ってないンだな?」


「恋仲とかではありませんわ。姫さまとヴァルムト宮中伯令息の婚約を上手く運ぶためには私とアルベルト様の関係が良好である必要があるとは考えていますが……この話、勿論他言無用ですわよ。私が原因で今回の婚約話に傷がつく訳には参りませんから」


「おっ、おう……」


「……分かっております」


 ただ、二人ともあまり納得がいかないようだ。……いや、寧ろボクからしてみれば、恋仲になる方がおかしいと思うけど。年齢差考えてみなさいよ。

 

 それよりも、今はメルトランとディマリアのデート……擬きだ。

 二人とも自分の仕事にとても誇りと情熱を持っているから、互いに休みが合うことも少なくない。では、こちらが合わせてあげようと動こうとすれば、二人とも遠慮するという徹底ぶり。流石に申し訳ないというのがボクを含めた王女宮で働く者達の総意だ。


 今回の件も白花騎士団騎士団長のラーニャ=ルーシャフに伝えたら、「ありがとうございます、ローザ様」とお礼まで言われてしまった。

 白花騎士団でも、ディマリアとメルトランの恋を全面的に応援することになっているらしく、全力でバッグアップがなされている。あの後、ラーニャからディマリアを除くメンバーにも伝わったらしく、その日は祝賀ムードになっていたようだ。

 

 ……まあ、これも短い非日常。その後王宮に戻れば、いつも通りまあ休みが合うかも分からない関係に戻ってしまうのだけど。たまにはこういうこともあってもいいんじゃないかって思うんだよ。


 ……ってか、この二人の爪の垢を煎じてブライトネスとフォルトナと緑霊の森のサボり魔連中に飲ませてやりたい。

 おまえら揃いも揃って仕事抜け出して遊びとか舐めとるのか!? って感じだよねぇ。ああ、ヘクトアールさんと斎羽さんは別にいいんだよ? あの二人はちゃんと自分のペースで仕事ができる立派な大人だから。


 勿論、一王女宮筆頭侍女にプリムラの護衛がつくなんて特例中の特例。絶対に慣例にしちゃいけない奴だよ。

 ……まあ、実を言えばこのパーティの中で一番強いし、護衛なんていらないんだけどねぇ。それを言うならラインヴェルド達もか。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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