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Act.8-193 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  scene.3

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「まあ、ローザは色々なことを知っているのね」


「デビュタント前の私が筆頭侍女になるためには、やはり越えなければならないハードルというものがありました。第一王女殿下に相応しい侍女になるためにと、就任前にとりあえずブライトネス王国や多種族同盟諸国の主要な方々については使用魔法や戦闘スタイルまで全て、それ以外の方についてもブライトネス王国に所属する騎士、執事、下男、侍女、メイド、文官、その他貴族についてはお名前や家系、派閥までは全て頭に入れております」


 プリムラは純粋に驚いたようで「凄いわ」と言ってくれた。ヴァン、ナジャンダ、シェルロッタ、ソフィス、アルマ、アクア、エアハルト、カルコス、レオネイドはさほど驚いていなかったようだけど……他のメンバーはボクの言葉を虚言と受け取ったらしい。


「流石にそれは不可能なのではありませんか? 一メイドや下男までその出自を把握するなど」


「第三王子殿下、世の中には自分の持っている常識という名の物差しで計れないものもあるのですよ。……お嬢様は完全記憶と呼ばれる特殊能力を持っています。一度見聞きしたことを、例えば本の内容なら一言一句完璧に思い出すことができるようですわ」


 ……素性を隠しているし、あまり目立ちたくないんだけど、なんかどんどん雲行きが怪しくなっているねぇ。


「とはいえ、私もアネモネ様から色々とお聞きしただけで、あくまで伝聞による記憶ですから把握できていないこともありますわ。……例えば、ブライトネス王国の精鋭騎士である近衛騎士の皆様がまさか闘気を習得どころか、その知識すらないなどということには流石に私も驚き呆れました。アネモネ様によれば、もう随分と昔に騎士団長の方々は習得されているというのに」


「私が前方からやってくるのに気づいたのが少数しかいなかったと聞いた時には、流石に私も驚きましたよ。……フォルトナ王国では、各師団長は全員最低でも武装闘気と見気は習得しています……段階的には未来視や読心の域に到達しているかどうかについては個人差がありますが。各師団所属の一般兵も金剛闘気、剛力闘気、迅速闘気の三種闘気は全員習得しています。……各騎士団長は習得されていたので、ブライトネスもフォルトナと同じような段階に至っていると思いましたが」


「……私の方からもアネモネ様には謝罪をせねばと常々思っておりました。ブライトネス王国は魔法の国……騎士団も魔力ありきの戦術が主流となっています。純粋に剣技を極めているアルベルトのような者もいるにはいるようですが、やはり魔法という力に過信しているところがあるようで、新技術への貪欲さがありませんでした。それに、シモン王国宮廷近衛騎士団団長も含め、各騎士団長も後進の育成よりも自己の強化を優先したいようでして……第二騎士団と第三騎士団はそれでも各種闘気についての情報を公開して広めているようですが……騎士団同士は派閥というものもありますからね。なかなか新しい技術というものが他の騎士団に伝わらないのですよ」


 「ちなみに、私は武装闘気と見気を最大まで強化しています」と続けて近衛騎士達の梯子を外すエアハルト。

 抜け駆けみたいだけど、これが本来あるべき姿なんだよ。


「……俺の勝手な想像ですが、うちのクソ陛下は中途半端な戦力に期待していないのだと思いますよ。戦死というものは避けなければならないものです……生きて帰ることが大前提ですからね。それでも、やはり意味ある戦死と無駄死にというものが生じます。想定される敵も『怠惰』の比ではないですから、近衛騎士も含めて非戦闘員の避難要員という程度にしか考えていないと思います。これが、人間同士の戦争ならともかく、想定される敵はあのスティーリアさんと対等に渡り合える程度じゃなければお話にならないレベルですからね。『というか、そもそも俺より弱いのに近衛騎士とかクソウケるんだけど!』とか、あの陛下なら言いかねませんし。実際、戦争になれば表も裏も、貴族も王族も庶民籍も種族も関係なしに本当に強い人達が迎撃に当たるものです。あの陛下が向上心の欠如を知りながら何も言わないのも、はなから期待していない故だと思いますわ」


 このアクアの言葉には流石に今回同行している護衛の近衛騎士達も随分怒りを覚えたようだった。そりゃ、分かりやすく戦力外通告されたら怒りを覚えるよねぇ。


「……全く返す言葉もありませんね。その通りですが……国王陛下よりも弱い近衛騎士というのは、ブライトネス王国やフォルトナ王国では仕方がないことだと諦めています。お二人も天才を通り越して化け物ですからね。……本来の近衛騎士の役目からは外れますが、それでも陛下に戦力に数えて頂けるくらいにはならなければならないと考えております」


「まあ、丁度いい機会なのではありませんか? 護衛もカルコスさんとレオネイドさんがいれば十分ですし、何より今回はシェルロッタさんもいますからね。大公様に許可を頂ければ、丁度プライドをへし折られて内心腑煮え繰り返っている白花騎士団所属の近衛騎士と王子殿下の護衛の近衛騎士、全員に現実というものをお教え致しますが? お嬢様、あれって持ってきていますよね?」


「仕事用に「E.DEVISE」は持ってきているので、問題ありませんわ。後は、大公様の許可さえ頂ければ」


「構わないよ。良かったら、我が寮の領軍も鍛えてやってもらえないかな? いい経験になるだろうからね」


 ……まあ、アクアが来た時点でバトルが発生しない筈がないと思っていたけど、やっぱりこうなったか。

 絶対にお腹を空かせて戻ってくるだろうから、沢山料理を用意しないといけないねぇ。



 アクア達による教育的指導の方針が決まったところで、ボクも求められていた闘気に関する説明をすることになった。

 ……より正確には《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》についてだけど。


「皆様もすでにおおよそ察しがついていると思いますが、《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》は魔法ではございません。先程の転移について説明する前に、まずは先程から説明が上がっている闘気というものについて説明させて頂きます。そもそも、闘気とは『意志の力を具現化した身体エネルギー』ですわ。様々種類があることが判明していますが、『王の資質』という資格を必要とする特別な霸気というものについては後述するとして、まずは……そうですわね、体を硬化させる金剛闘気、強力な膂力を得る剛力闘気、速度を上昇させる迅速闘気、体の自己治癒力を上昇させる治癒闘気というものがあります。闘気の性質をそれぞれの性質に変化させることを意識することで変えるイメージですわね」


 闘気の種類を剛力闘気、金剛闘気、迅速闘気、治癒闘気へと変化させつつ、説明を続ける。


「このうち剛力闘気、金剛闘気、迅速闘気を束ねることで完成するのが武装闘気と呼ばれるものです。このように手に纏わせることもできます。黒く変化する硬化の他に直接相手に触れずに武装闘気を衝撃波として放つことで吹き飛ばす武気衝撃、相手の身体に直接武装闘気を流し込むことで内部から敵の身体を破壊する武流爆撃など様々なバリエーションがあります。また、武装闘気には他の闘気を遮断する絶縁性質を有しておりますので、自分に劣る闘気による攻撃を無効化することもできますわ。また、この武装闘気を使うことで、例えば自らの身体を焔などに変化させることができる敵との戦いでも実体を掴んで攻撃を与えることができます。細かい派生はとりあえず置いておきまして、続いて武装闘気と対を成す見分の気、約して見気――鍛えることで視界に入らない相手の位置、数、行動が読めるようになりますが、更に鍛えることでは未来視や他者の心を読むこと、生き物の感情を感じ取るなどの領域に達することができるようになりますわ。最終的には霸者の気に至ることができるものが持つ『王の資質』を見ることができるようになります。勿論、闘気の得意不得意はその人の性質も関係あるようですし、レベルは鍛え続けることで上がっていきます。例えば、王太后様は唯一見気を有していますが、その力はブライトネスの陛下の裏の見気――つまり、心を閉ざして相手に心を読まれないようにする見気ですわね――を突破し、隠し事を見通してしまうほどです」


「……祖母上も、その闘気というものを使えたのですね」


「王太后様以外にも、国王陛下は判明している全て、王弟殿下も判明している全て、第一王子殿下は霸気未解放でそれ以外全て、第二王子殿下は見気を獲得されていたと記憶しております。第一王子殿下も、第二王子殿下も霸気の獲得の条件を満たしておりますが、どちらも解放の必要性を感じていないのでしょう。……さて、ここからは『王の資質』を持つ者にのみ扱うことができる三つの霸気をご紹介致します。『王の資質』は所謂カリスマ性を指し、上に立つ者に備わっていることが多いものです。王族の場合は遺伝することもあるようですが、『王の資質』は王族以外にも発現します。前世の記憶を持つ転生者は魂の強度が高い傾向にありますから、『王の資質』を持つ場合もありますし、魂を鍛える修行によって『王の資質』を獲得する者もおります。第一騎士団騎士団長様が例に挙げることができるかもしれませんね。この霸気は闘気と異なり、当人自身の人間的な成長でしか強化されません。霸気にも種類があり、一つは覇道の霸気。相手を威圧することで自分の実力よりも遥かに劣る実力を持つ相手を気絶させることができる他、武装闘気、見気に上乗せすることでその上限を突破することも可能です。圧倒的実力を持つ者の覇道の霸気の場合は周囲の環境にも影響が及び、直接物理的なダメージを与えることすら可能になります。また、覇道の霸気を更なる段階まで高めた先にある力を使えば他者や世界の形を自分が望むように改変する能力で周囲を取り込む空間を展開したり、自分を中心に一部分だけを異界にすることも可能だということも判明しています。恐らく更なる段階も存在していると思われますが、私の知る限り現時点その領域に到達している者はおりません。続いて、求道の霸気――これは、本質的には覇道の霸気と同じものですが、それが内側に宿り、強化や変質を引き起こすものが求道の霸気と呼ばれます。霸気をその身の内部に纏うことで肉体変化や特殊能力の付加が可能となる。求道の霸気を更なる段階まで高めると自分に対する敵対者の干渉を無効化し、独立した個として存在することができるようになります。発現している最中は世界から独立した存在となり、基本的に己と接触しなければ外界に影響を与えることが無くなるのですわ。覇道の霸気が得意な方は『世の中がこのような形であって欲しい』、『世の中をこのような形したい』といった思想が強い傾向にあり、問題の解決方法を自分の成長や変化より、周囲の環境や世界に対して変化を望むタイプとも言えます。よく言えば王者の気質ですが、悪く言えば周囲の都合を斟酌しない傲慢の性と表現することができるかもしれませんねぇ。逆に求道の霸気が得意な方は『こういう人になりたい』、『こういう人でありたい』といった思想が強い傾向にあり、世の流れに興味を持たず、ただひたすらに自分の道を究めようとする傾向が強いと言えます。よく言えば孤高、悪く言えば視野狭窄な精神性を持ち、他者や外界を省みない傾向にあると言えますわねぇ」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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