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Act.8-192 二人の王子と王女が征く薔薇の大公の領地への小旅行withフォルトナの問題児達  scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 朝方にブライトネス王国の王都を出発し、夜にアストラプスィテ大公領へ到着した。

 野営のような真似はせず、それなりに大きな街に行って領主の館で休息を取り、出発を繰り返しただけだけど、プリムラは公務でクソ陛下に着いていく以外の景色の見え方がとても輝いて見えたようだったた。

 『管理者権限・全移動』や空間魔法を使えば一瞬で到着できるけど、やっぱり旅ではこういう過程を楽しむのも醍醐味だなぁ、と思ったよ。……ボク達の場合は目的優先、いつも最短距離で突っ走っちゃうからねぇ。


 伝令としてやってきたレオネイドもボクが開発した特殊な召喚笛を使って馬を亜空間に転移させ、プリムラ達の求めに応じて王族専用馬車に乗り込み、プリムラ達にフォルトナ王国の話をしていた。

 ヘンリーは興味深そうにその話を聞いていたねぇ。国王となれば同盟国である隣国フォルトナ王国とも関わることが増えてくる。今のうちから隣国について学んでおこうという姿勢は素晴らしいものだと思ったよ。

 ……後で、ヘンリーを国王に推す気満々のラインヴェルドに良い報告ができそうだねぇ。


「やあやあよくおいでくださった、第三王子殿下、第四王子殿下、王女殿下。ようこそアストラプスィテ大公家へ! 他の方々もようこそ、歓迎いたしますぞ」


 領地に着くと、大公様が諸手をあげて歓迎してくれた。相変わらずロマンスグレーという言葉を贈りたくなるような紳士だねぇ。


 そして、アストラプスィテ大公といえば薔薇と言われるほどだけど、よく手入れされた入口を彩る庭園は、まさかの全て薔薇だった。……まさか、ここまでとはねぇ。

 噂によると、四季全てで薔薇がいつでも咲いているのだとか。


 そもそも、大公領はとても薔薇を育てるのに適した土地らしい。その土地の人々に感化されてアストラプスィテ大公家も次第に薔薇にのめり込んでいったとか。領地というものは領主の意向に染まりやすい傾向があるんだけど、アストラプスィテ大公領はその逆という結構珍しいケースだねぇ。

 代々薔薇研究に余念がなく、今代では遂に食べられる薔薇にも手を出したとか。その薔薇を利用して何か特産品を作れないかな? というのが今回の依頼。それとは別にラピスラズリ公爵家の青い薔薇も届けて欲しいという仕事も受けていたけど。


「お初にお目にかかります、私はレオネイド=ウォッディズ、隣国で騎馬総帥を務めております。既にフォルトナ=フィートランド連合王国から一行が到着していると思いますが……その、何かございませんでしたか?」


 レオネイドが嫌な予感が当たって欲しくないと思いながら尋ねると、アストラプスィテ大公も苦笑いになって。


「本日の昼頃、フォルトナ=フィートランド連合王国の第一王子殿下、第二王子殿下、第三王子殿下の三名は無事ご到着されました。御三方に関しては問題ありませんでしたが……護衛としてお越しになった近衛騎士団長殿が薔薇の迷路で五度ほど迷子になり、屋敷の使用人全員とフォルトナ=フィートランド連合王国の統括侍女殿と同行した二人の侍女で捜索を行いました。……そして、現在、六度目の迷子になっております」


「……こうなるとは予想していましたが、案の定ですか。……もしや、女好きでもないのに唐突にプロポーズ紛いの言葉を投げかける例の癖も発動していたりしませんか?」


「……はい、何人か侍女に声を掛けていたようです。全員、笑って誤魔化して上手く切り抜けたようですが……」


「本当にうちの莫迦がすみません!」


 レオネイドが思いっきり頭を下げた。……問題はもう一人の方な気がするけど、このタイミングで謝っちゃっていいの?


「フォルトナの近衛騎士団長を務めるウォスカー様は幼子のように移気で、そのお考えは何人にも分からないという方ですわ。恐らく、今回の迷子も全て別のことに気移りした結果だと思いますわ。……まあ、犬属性で可愛らしい方ですけどねぇ」


「ローザさんもオニキスさんみたいなことを言うんですね。……まあ、事情を知らない方には鍛えられた大きな体格で恐ろしい騎士に見えるかもしれませんが、オニキスさんに全幅の信頼を置いて付き従っている姿は確かに忠犬みたいで可愛らしいかもしれません。そういえば、ローザさんならアイツをどうにかできるのではありませんか?」


「……まあ、それよりも問題はもう一人の方ですわ。通称、【騙し討ちの天才】――大臣直属の部下の」


「ファイス=シュテルツキン……だよな。ウォスカーがやらかしているってだけでストレスで胃がキリキリするんだなら、聞きたくなかったんだけど……もう一人の護衛として来ている赤毛の青年は何かやらかしていませんか?」


「……問題は、ウォスカー様よりもファイス様ですね。既にかなりの被害が上がっています」


 ……セクハラ被害。スカート捲り……は卒業したそうだから、恐らく床に寝そべってバストチェックだかなんだがしているんじゃないかな?

 いずれにしてもタチの悪い奴だ。……よく愛娘に毒牙を掛けそうな奴の派遣を拒否しなかったよねぇ。


 ボク達のやりとりを聞いていたプリムラも相当心配そうにしている。……いずれにしても、このまま憂いを残したまま屋敷に向かうのはあり得ないよねぇ。

 じゃあ、うちの近衛騎士達でどうにかなるかというと……普通に反撃されそうな気がする。ボクが教育的指導に行くのもプリムラに怯えられそうだから却下だし……。


「やはり、教育的指導をする必要があるかと」


「……オニキスさんか。確かに、あの二人を止めるならあの人くらい適任はいないけどな。でも、流石に無理だろう? 今、ティアミリス大公令嬢との婚約とかで忙しいみたいだし。となると、アクアさんか? それとも……」


「陛下は減らすことについては禁止しておられますが、増やす方については禁止しておりませんよね? ……アストラプスィテ大公様、一名侍女を増やしても問題ないでしょうか?」


「構わないよ。……しかし、今から呼びに行くのかい?」


「はい、すぐに連れて戻って参りますので、しばらくこの場をよろしくお願いします。……それと、あの二人を御三方に接触させると厄介なので」


「分かりました。では、ローザ嬢が戻ってくるまで暫しこの場でお待ちして頂くように私からお伝えしておきましょう。どれぐらいかかりますか?」


「五分くらい頂けましたら」


 プリムラにこの場を離れることを伝えてから、シェルロッタに任せてボクは《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》を発動して、アクアが遊びに行っているヴァルグファウトス公爵邸に転移した。



 アクアを連れて戻ってくるとプリムラ達が驚いていた。……この転移能力の説明をしないといけないねぇ。

 まあ、それは後回しということでアストラプスィテ大公に断りを入れてからアクアを屋敷の内部に派遣した。


 アクアはまず屋敷の中で騒ぎを起こしていたファイス(覗き魔)を拳一撃で仕留め、続いて庭の迷路に迷い込んだウォスカーを見つけて腕を引いて戻ってきた。


「お嬢様、無事に終わりましたわ」


「うむ、久しぶりだな? どうしたんだ?」


「どうした……じゃありませんわ。またウォスカーさんは迷子になっていたのですよ」


「うむ? そうなのか?」


 相変わらず思考が迷宮入りしているなぁ……と思いながら、とりあえずアクアに「こいつら二人のお守りお願いねぇ」と押し付けた。


「そういえば、ディランの奴がこっちに来るって言っていました。溜まっている有給を纏めて使えるように宰相閣下に申請しに行くっていっていました」


「有給? いつも会議と仕事サボって逃走しているのに有給があるのですか?」


「案外簡単に受理されると思いますわ。仕事放り出して騒ぎを起こすくらいなら、いっそいない方が仕事が進むんじゃないかと宰相閣下もきっとお考えです」


 ……うん、容易に想像できる。


「大公様、ということで近いうちにディランがこちらに来ると思いますが、大丈夫でしょうか?」


「分かりました、部屋の用意をしておきましょう。――ありがとうございました、リボンの似合うメイドのアクアさん」


「……いえ、お礼をされるようなことではありません。寧ろ、うちの莫迦共が大変申し訳ございませんでした」


 屋敷で発生していた問題も解決したところで、ボク達もようやく屋敷の中に入ることができた。

 今回は隣国の面々もいるということで、自己紹介という流れになった。本来は、フォルトナ=フィートランド連合王国の三王子と簡単な挨拶をして終わるところなんだろうけど。


 今回はやたら濃いメンツが揃っているので、自然と自己紹介の流れになった。使用人の自己紹介や情報の共有は使用人同士で後ほど済ませる筈だったんだけどねぇ。


「お初にお目にかかります。私はこの度、フォルトナの陛下から護衛騎士の仕事を賜りました庶民籍のカルコス=バーキンスと申します。元々は大聖堂のあるルネリスの街で警備隊隊長をしておりましたが、枢機卿の汚職事件をきっかけに区画整理がなされてルネリスの街の警備隊が解散されましたので、現在は陛下直属の騎士として活動しております。本日は【漆黒騎士】様の転生者様、漆黒騎士団の隊長補佐、副隊長補佐の名コンビとして知られているお二方、元騎馬隊の名コンビの片割れである名将と共に仕事をさせて頂けること、心より嬉しく思っています」


 プリムラ達も初めて出会うタイプのカルコスに大変驚いているようだ。……うん、ボクでも表情が全く変わらないから感情が読みにくい相手なんだよ。


「第三王子殿下、第四王子殿下におかれましてははじめまして。第一王女殿下についてはお久しぶりです……とご挨拶すべきでしょうか? ラピスラズリ公爵家の使用人のアクア=テネーブルと申しますわ。前世はフォルトナ王国の【漆黒騎士】オニキス=コールサック――フォルトナ王国の擾乱と『怠惰』戦の褒賞としてテネーブルの姓を賜りましたので、ディラン大臣の義妹という立場でもありますわ。近衛騎士隊長のウォスカーと、元漆黒騎士団副団長のファント大臣の部下のファイスは漆黒騎士団時代の隊長補佐と副隊長補佐で、よくチームを組んで行動していました。この度は私の部下がご迷惑をおかけしました」


 アクアの素性にはブライトネス勢のほとんどが驚いていたねぇ。


「アクアはブライトネス王国の戦力を上から数えても上位に位置する強さを持っておりますわ。えっと……上からだと国王陛下、王弟殿下、大臣閣下、第一王子殿下、ミーフィリア様、アンブローズ男爵令嬢、そこにアクアが加わってこの辺りで団子になっているのでないでしょうか?」


「お嬢様、『風獣顕現・暴風恐鳥-テンペスト-』を編み出したディーエル第二騎士団騎士団長、やや暗殺剣技寄りの変幻自在な剣技と影魔法を組み合わせた搦手を得意とするモーランジュ第三騎士団騎士団長、『魔術改変マジック・モディファイ』を獲得して戦術の幅を広げたイスタルティ天馬騎士団騎士団長、『蒼騎士』の異名に相応しい蒼焔を操るペルミタージュ陸上騎兵団騎士団長、【献身の近衛団長】の異名を持つ強化魔法のスペシャリストのシモン王国宮廷近衛騎士団騎士団長……各騎士団の騎士団長もなかなかの手練れが揃っていると思いますわ。ただ、解脱によって地仙し、限界まで魂を鍛え、聖人に至ったジルイグス第一騎士団騎士団長はやはり頭ひとつ抜けていると思いますわ。なんたって、あのスティーリアさん相手に後一歩というところまで追い詰めたのですから」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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