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Act.8-174 第一王女の誕生パーティ scene.12

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「お初にお目にかかりますわ、ランレイク=エタンセル大公様」


「おっ、そういう堅苦しいのは抜きで頼むわ。初めまして、俺はランレイク、昔は騎士団長と軍務省長官をやっていたんだが、今は引退してただの大公だ。まあ、とはいえ世界最強の剣士にして『剣聖』が尻尾を巻いて逃げ出したくなるような猛者と聞いちゃ、一回剣を交えたくなるよな!」


 瞬時に氷の刃を形成し、ランレイクは斬りかかってきた。


『――ッ! ご主人様!』


「大丈夫、ボクが対処するから」


 裏武装闘気で剣を作り上げ、更にそこに武装闘気と覇王の霸気を纏わせる。

 圓式の斬撃で、ランレイクの剣を打ち砕き――。


「ちょっと、狙いが分かり易すぎたかな?」


 裏武装闘気で剣を作り出して斬りかかってきたラインヴェルド、オルパタータダ、シューベルト、ティアミリスの剣を圓式の斬撃を放って打ち返した……流石に一撃じゃ砕けないか。


 斬撃が命中する瞬間に、覇王の霸気同士がぶつかり合って漆黒の稲妻を迸らせる。

 この一件で再び場は恐慌状態に陥った。……そりゃ、実戦経験のない貴族ばかりだからねぇ。


『……アルベルト、彼女の斬撃――目で追えたか?』


『いえ……全く』


『これが実力の差というものじゃからよく覚えておくといい。……全く、『剣聖』には敵わないと言いながら二人とも普通に対応しているじゃないか。あれを目で追えている時点で既に人の領分を脱しておるぞ』


 ……今、ナチュラルにミリアムがボク達を人外扱いしたよねぇ? 全く、心外だよ。


「ん? なんで今の攻撃、気づけたんだ?」


「ランレイク様が挨拶も終わらぬうちから実力を確認するために斬りかかってくることは予想できましたし、ラインヴェルド陛下のことですからランレイク様を囮として仕掛けてくることは容易に想像がつきました。そして、この場に乗じて攻撃を仕掛けてきそうな方がパーティ会場に三名――オルパタータダ陛下、シューベルト様、ティアミリス様がいらっしゃったので警戒していたというただそれだけですわ」


「ちっ、こんなことならアクアとかオニキスとか、ディランとかポラリスとか……後そうだなぁ、ジルイグスとか……そうそう、師匠にも声を掛けておけば良かったな」


「ラインヴェルド陛下、クソつまらないはた迷惑な悪戯に沢山の人を巻き込まないでください」


 ……まあ、呼んでもアクアとディランは来なかったと思うけどねぇ。エイミーンと一緒に色々無視して食道楽しているし。

 お前らは空気の読めないどこぞの野猿な悪役令嬢か!!


「そもそも、ポラリス騎士団長相手ならそれこそ全く手加減できなかったですわよ。あの目障り極まりないヅラを吹き飛ばすまで止まれません」


 あっ、露骨に反応したヅラが「アネモネ、また貴様私のことをヅラ扱いか! 大体貴様という奴は――」と無限ループ説教を始めやがった。

 まあ、風魔法でポラリスの声だけ消したから序盤の時点で最早ボクの耳朶を打つことは無くなったんだけど。


「……本当、お前ってエゲツないことをするよな?」


「オホホホホ、何のことでしょうか? さて、国王陛下、次の方のところへ案内してくださるかしら?」



「お初にお目に掛かりますわ、フューズ=シンティッリーオ大公様」


「初めましてだね。魔法学園の学長をしているフューズだ。貴女の噂は耳にしていたよ。剣だけではなく、魔法においても類稀な才能を持つ存在であると。……私としては、是非貴女に学園の教師になって頂きたいと思っていたが」


「えぇ、国王陛下経由でお伝えさせて頂いた通り、私は辞退させて頂きますわ。生憎と、私の身体は一つしかありませんから、冒険者に、大統領に、商会の長――これ以上の仕事を抱えることはできませんわ。それに、私以上に学園の教師に相応しい方はいらっしゃるかと」


「ローザ公爵令嬢ですか。確かに、類稀な才を持つ令嬢だとお聞きしております。陛下も彼女には学園の教師となる約束を取り付けてくださったそうですが……しかし、残念なことです」


 アネモネとローザの業績の境界は割と曖昧な形に暈してある。しっかりと証言を集めればアネモネ=ローザという図式がすぐにでも分かってしまうほどに。

 勿論、杜撰にしている意味は後々、正体を明かす時のための布石だ。


 まあ、この点フューズはしっかり濁してくれているし、大丈夫だろう。

 ちなみにフューズとは初対面だけど、ラインヴェルド経由でアネモネ=ローザであることと、この世界の真実については説明がなされているそう。


 当然、フューズも白だねぇ。今回、見気で思考を読んでボクも確信することができた。


 フューズとの挨拶は本当に挨拶程度で終わった。詳しい魔法の話や今後の学園改良計画についてはローザとして面会の時間を作ることが決まっている。まあ、そこで色々と質問や話をするつもりなんじゃないかな?

 この人も魔法学園の学長をしている訳だし、相当な魔法ヲタクだと思われる。スザンナとは物凄い話が弾むんじゃないかな?



 そして、いよいよ最後の大公家。最早、確定事項だけど、五摂家の裏切り者で『這い寄る混沌の蛇』に連なる者――ジェム=フンケルン大公兼辺境伯だ。


「お初にお目に掛かりますわ、ジェム=フンケルン大公様。お会いできる日をとてもとても(・・・・・・)楽しみにしておりました」


「初めまして、アネモネ様。しかし、私はしがない田舎貴族でね、とても貴女のような方が楽しみにするものは何もないと思うよ」


 どこか素朴な雰囲気を感じさせる、身なりのいい壮年の男。

 この五摂家の中で最も貴族というイメージから隔絶した彼こそが『這い寄る混沌の蛇』に連なる者だとは誰も思わないよねぇ。


「その事実をご説明させて頂く前に、まずは少しだけ関連のある話をさせて頂きたいと思います。……ほんの少し前の出来事ですが、フォルトナ王国のフォティゾ大教会枢機卿邸で大規模な作戦行為が行われました。これは、フォルトナ王国に旧ルヴェリオス帝国の暗殺者兼医療術師――グローシィ=ナイトメアブラックをフォルトナ王国内に招き入れた売国奴を捕縛するための作戦でした。この売国の首魁の名はフォティゾ大教会の枢機卿アンブラル――彼はフォティゾ大教会を裏切り、上手くフォティゾ大教会の思想を歪めてフォルトナ王国を内部から滅ぼす毒へと変えようとしておりました。ほぼ同刻、私は所用でマラキア共和国を訪れていました。そして、冒険者ギルド本部長ヴァーナム=モントレー氏からマラキア共和国内で奇妙な動きをしていた商業ギルド役員の一人だったヴィオ=ロッテルの尋問を依頼され、彼がとある邪神を信仰する宗教の信者であることを突き止めたのです」


「……邪教徒ですか?」


「そうとも言えますし、違うとも言えます。彼らの中には邪教を信じる者も大勢いますが、一方で邪教徒ではない者も混じっています。彼らの中核とされる立場にある者達は弱者に感染する思想(ミーム)だと考えているようですが、実際はそれも正しい答えとは言えない、まあ、そんな極めてまどろっこしい連中です。彼らの中にもその真相を知っている者達がどれだけいるのやら。ただ、一つだけ言えるのは彼らが秩序の破壊を目的としていることでしょうか? ヴィオもアンブラルも共にその邪教『這い寄る混沌の蛇』の関係者でした。アンブラルがフォルトナ王国を滅ぼそうとしたように、ヴィオはマラキア共和国を蝕む毒となると共に、同時に隣国ラングリス王国の革命を煽ってもいました。このラングリス王国では、モルチョフ大臣閣下が蛇の信徒として革命へとラングリス王国を突き進ませておりました。こちらも既に討伐が完了しております。このように、我々の知らぬ間に『這い寄る混沌の蛇』という世界の秩序を滅ぼしかねない思想は大陸を蝕んでおりました……そして、ヴィオによればその思想は船で運ばれ、遠い地ペドレリーア大陸にも伝わっていたのです。フィートランド王国のフォルトナ王国への併合にも大きく関わるペドレリーア大陸の探索はこのような理由で行われることになりました。……さて、この大陸でこれだけの毒がばら撒かれているというのに、どうしてブライトネス王国だけが無事だと思えるのでしょうか? 私は、このブライトネス王国にも蛇の毒が紛れ込んでいると考えております」


「……はて、『這い寄る混沌の蛇』という宗教の名は聞いた覚えがないですが、その邪教とやらがブライトネス王国に関わることをどのようにして証明するのでしょうかな?」


「えぇ、疑問はもっともです。私も何も根拠なく言っている訳ではありませんよ。『這い寄る混沌の蛇』には『蛇の魔導書』と呼ばれる彼ら専門の魔導書があります。これは、アンブラルが持っていた『蛇の魔導書』の現物です。ここには、本来、魔族しか扱えないとされてきたとある属性の魔法が書かれています。しかも、それは魔族の場合、先天的に持っているもののため、後天的に得る方法は知らないようです。……ブライトネス王国には、その獲得方法があまりにも禁忌に触れるため、王家と五摂家の当主のみに伝えられてきた属性があります。それが、闇の魔力」


「……つまり、その禁忌の闇の魔力をブライトネス王国の王族、あるいは五摂家のいずれかが『這い寄る混沌の蛇』に伝えたと……アネモネ殿はそう言いたいのですか?」


「理解が早くて助かりますわ」


 とりあえず微笑んでみたけど、会場の空気は怯えや恐怖に支配されつつあるようだ。

 ……全然効果無かったねぇ。


「しかし、私の記憶ではラピスラズリ公爵家も闇の魔力を持っていた筈ですか?」


「ジェム大公殿、すっかりお忘れのようだが、私の家の闇の魔力は先天的なものだよ。私の娘のローザも闇の魔力を持って生まれた……まあ、彼女の場合は闇だけではなく時空と聖属性以外のほぼ全ての属性を扱えるようだけどね」


「ということのようですわ。まさか、ジェム大公様はラピスラズリ公爵家が禁忌の闇の魔力を会得する術に手を染めているとでもお考えなのでしょうか?」


 ラピスラズリ公爵家のイメージはクリーンだ。

 ……そして、【ブライトネス王家の裏の剣】は、バルトロメオを除く五摂家には知られていない。

 勿論、その存在を知っているだろうけど、ここでそのことを語ればボクらに大打撃を与えられる代わりにジェムも大きなダメージを喰らうことになる。


 この話題に触れるべきではないということはジェムも理解している筈だ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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