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Act.8-173 第一王女の誕生パーティ scene.11

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「改めて、アネモネと申しますわ。ビオラ=マラキア商主国で大統領を務めております。ラインヴェルド陛下とは多種族同盟の話が持ち上がった頃からの腐れ縁ですわ。……カルナ王妃殿下、ヘンリー殿下、ヴァン殿下、プリムラ姫殿下、先程は怖がらせてしまい申し訳ございませんでした」


「あら、わたくしも恐ろしかったのだけど?」


「……王太后様もこうなることはお見通しだったのではありませんか?」


「えぇ、その通りね。流石にどこかで決着をつけなければならない問題だったから、このタイミングで付ける可能性が高いと思っていたわ。貴女がスティーリア様をエスコート役に選んだとお聞きした時から。……とはいえ、わたくしも武の力は何一つ持ち得ない非力な女に過ぎないから実際に恐ろしかったわ。ラインヴェルドやヴェモンハルトあたりはきっと何とも思っていなかったのでしょうけど」


「いや、どさくさに紛れて斬りかかってやろうかとか思っていました。折角、スティーリアと本気で戦えそうな機会だったんで逃してなるものかって……」


「相変わらず父上はバトルマニアですね。理解できかねます」


「ヴェモンハルト、お前だってそんな感じだっただろ? 血は争えないっていうじゃないか」


「……お父様とお兄様のお考えは理解できかねます」


 ルクシアがラインヴェルドとヴェモンハルトを見て溜息をを吐いている。

 ヘンリー、ヴァン、プリムラはもう恐ろしくて声も出ないって感じだな。……プリムラに関しては後でしっかりケアをしないと。他二人はどうでもいい。


「まあ、実際に斬りかかっていた場合、スティーリアの前に私が動いてお二人を抹殺していた可能性が高いですが。……バトルの機会はまた今度、作らせて頂きますわ」


「おい、アーネスト! 言質取ったな? 取ったよな!?」


「はい? 私は何も聞いておりませんが」


 ナイスです、アーネスト宰相閣下!


「おっ、そういやアネモネ。お前ってなんか面白いものをプリムラにプレゼントしてくれたんだよな? あれの説明、折角だし今してくれないか?」


 もう既に猫被る気が失せたクソ陛下。ただ、怯えているプリムラの気分を少しでも変えるために話題を変えるという考え自体はナイスだと思うよ。


「あれって見るからに相当宝石が使われているんだろ?」


「ああ、あれはほとんど硝子ですわ。金細工も施されていますが、素材単価自体は大して高くありませんわね」


 文官の一人に例のエッグを運ばせつつ、現物を遠目からしか見ていないラインヴェルドの質問に答える。

 これには、ラインヴェルド達も相当驚いていたみたいだねぇ。


「……てっきりアネモネさんのことだからふんだんに宝石や希少金属を使った素晴らしい品物を用意してくださると思っていたのだけど」


「王太后様のご期待に添えず申し訳ございませんでした。……しかし、私は宝石を使わずとも十分な価値を付加させることはできると思っております。別に姫殿下を軽んじたという訳ではありません」


「それは勿論、承知しているわ。……ということは素材的な価値はないものの美術的価値が高いものということになるのよね?」


 宝石を使ってないと聞いて、内心不機嫌になっていたカルナもビアンカの「美術的価値が高い」という言葉を聞いて少し機嫌を直したらしい……やっぱり、なんだかんだ言って内心じゃプリムラのことを心配しているし、貴族達に舐められない淑女になって欲しいって思っているんじゃん。


「えぇ……まあ、いくつか仕掛けを施させて頂いておりますわ。まずは、この螺子を巻きますと」


 プリムラの前に『インペリアルプリンセスズ・イースター・エッグ』を掲げて螺子を巻く。

 オルゴールの音色と共にラインヴェルド、カルナ、ビアンカ、ヴェモンハルト、ルクシア、ヘンリー、ヴァン、プリムラを象った小さな黄金の彫刻が迫り出し始めた。

 やっぱり、インペリアル・イースター・エッグといえばかみ合わせ式の留め金だからねぇ。


「凄いわ! ありがとうございます、アネモネ様」


「……驚くのはまだ早いですよ。アーネスト閣下、暗幕を締めて会場の明かりを消してくださいませんか?」


 アーネストに会場の明かりを消してもらえるように頼み、暗くなったところで「光芒(ライト)」を発動して下から『インペリアルプリンセスズ・イースター・エッグ』を照らした。


「おおぅ、こりゃ凄えな」


「うふふ、これはなかなか幻想的ね」


「魔鏡技術といいまして、平面鏡の鏡面に僅かな凹凸をつけることで、平行光線ないし点光源からの拡散光線を反射すると、反射面の僅かな歪みにより反射光の中に濃淡が現れるように加工したガラスを使っております。写し出される絵はローザ公爵令嬢にもお手伝い頂き、ご用意させて頂きました。こちらのガラスは取り替え可能ですので、他のガラスに入れ替えることもできますわ」


 ほう、皆様結構食いついてくれているようだ。

 ……魔法が発達しているからか、密教化する理由が無かったからなのかは知らないけど、こういった魔鏡技術ってこっちの世界には存在しないみたいだからねぇ。


「……でも、流石にこれだけってことはないよな? お前に限って」


「……これだけでございますが。寧ろ、これ以上何を私に求めているのですか?」


「いや、お前なら魔法の一つや二つ仕組んでいるんじゃないかと思って。まあ、これでも美術的価値は相当なものだろう。同盟国の姫への贈り物としてはそれで十分なんだろうが……」


「……はぁ、陛下には敵いませんね。実は二つほど自動で大気中の魔力を吸収し、発動する魔法を付与させていただいております。細筆を利用し、極めて小さな魔法紋を刻印しておりますので、芸術性を損なうことはないかと存じます。魔法は全状態異常の自動解除と永続的な回復魔法です」


「……お前、俺のことを親バカというけど、お前も大概だよな。少しは自重しろって……ヴェモンハルト」


「間違いなくこれは国宝級の秘宝でしょう。付与されている魔法も神聖魔法でしょうから、本来ならば『大聖女』様ほどでなければ制作は不可能です。とはいえ、この方なら朝食のベーコンエッグをあくびしながら作る片手間程度で作ってしまわれるでしょうが?」


「ヴェモンハルト殿下、私をどこぞの堕落王か何かと勘違いしておりませんか? 姫さまの誕生日プレゼントをそのような手抜きなやり方で作る訳がないでしょう?」


「ところで、この『インペリアル・イースター・エッグ』、私にも一点作って頂けませんか?」


 あっ……これって大好きな弟達と妹の写真を真っ暗な部屋に照射して鑑賞するという変態な趣味のために欲しいってことじゃないか。


「生憎と『インペリアル・イースター・エッグ』は二つ目以降を作る予定はありませんわ。一点ものだからこそ意味があると思うのです」


「それはそうでしょうが、今回の一件できっと『インペリアル・イースター・エッグ』の注文がビオラに殺到するのではありませんか?」


「……仕方ありません。まあ、これだけ注目も集めてしまいましたからね。とりあえず、朝食のベーコンエッグをあくびしながら作る片手間に作ったものでよろしいでしょうか?」


「……本当にアネモネさんは相変わらずですね。一応、私は第一王子なのですが」


「第一王子だろうとなんだろうと、所詮は国王陛下の子供だから尊ばれているに過ぎません。貴族の子息や令嬢も結局は父親や母親の身分によってその身分が保障されているに過ぎない……そういった前提条件をすっ飛ばして貴族の令息や令嬢だから自分を尊い人間であると勘違いされている方が昨今は多いように思えます。爵位を得ていない令息、令嬢の時点では立場的には平民と何ら変わらないのでございますから」


「まあ、実際は明確に違うんだけどなぁ。王族や貴族ってものは国を治め、守っていかなきゃならない。いずれ上に立つ人間が無自覚じゃいけないからな。本来、国の次世代を担う者達はその責任を自覚せねばならない。民から得た税で生きているんだから、彼らのために国を良くしていかなければならない。それが王侯貴族の役目だ。しかし、そういった根本的なことを忘れている貴族は残念なことに大勢いる。爵位が高い者が偉い……まあ、国家のシステム上はそうなっているが、その意味をもう一度改めて捉え直す必要があるんだろうな」


 「お前らはそうなってくれるなよ」と言いながらラインヴェルドはヘンリー、ヴァン、プリムラの頭を撫でた。

 珍しく父親らしくしている姿を見て、ビアンカが微笑ましそうに笑い、カルナは表情に出すことはなかったものの温かい気持ちになったようだ。

 ヴェモンハルトとルクシアはその光景を嬉しそうに見つめている。


「母上、しばらくこの場を任せてもいいか? ちょっとアネモネに紹介したい奴らがいるんだ」


「えぇ、そういう予定でしたものね」


 ラインヴェルドと共にその場を離れる。プリムラの防波堤にはビアンカ、ヴェモンハルト、ルクシアの三人がなってくれるだろうし、問題ない。


「さて……まずは、よし、あいつにしよう」


 ラインヴェルドに先導され、まず挨拶に向かったのは――。



「初めましてだね、アネモネさん。私はナジャンダ=アストラプスィテだ。ジリル商会の会頭から話は聞いていたよ。彼は私の友人でね。尋常ならざる新進気鋭の同業者が現れてくれたととても楽しく話してくれたよ」


 ナジャンダ=アストラプスィテ――五摂家の一つで最も古い大公家であるアストラプスィテ大公家当主で薔薇の有名な領地を持ち、自身も薔薇好きとして知られている。

 ジリル夫妻とは長い付き合いで、ラインヴェルドが側妃を迎えるためにメリエーナを一時的に養子にしたことから最もプリムラに縁深い大公と言える。


 ちなみに、彼とは既に顔合わせ済みで、ボクの事情やこの世界の真実についても説明してある。

 当然、彼が白であることも確認済みだ。まあ、彼が『這い寄る混沌の蛇』の手勢なら色々な意味で絶望的だからねぇ。


「お初にお目にかかります、アストラプスィテ大公様。会頭様からお話は伺っておりますわ。とても薔薇がお好きで、ご自分で手入れなされているとお聞きしております。私も植物を育てる趣味がありますので、勝手に親近感を持っておりました」


「ほう、植物ですか……一体どのようなものをお育てになっているのですかな?」


「草花から野菜、香辛料、樹木まで様々。私の友人が庭手入れが趣味だったということもありまして、今はラピスラズリ公爵家の庭師の方々に教えてもらいながらバリエーションを増やしております」


「ラピスラズリ公爵家といえば、特別な青い薔薇というものがございましたね。私はラピスラズリ公爵家には縁がないので、良ければラピスラズリ公爵家との青い薔薇の取引契約の仲介をして頂けないだろうか?」


「畏まりました。すぐにラピスラズリ公爵家の方にお願いさせて頂きますわ」


 とりあえず、一件目はこんな感じで終わった。……とはいえ、これは社交界での顔合わせの意味しかないので大したことはないのだけど。

 ……さて、残る三件が問題だな。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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