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Act.8-165 第一王女の誕生パーティ scene.3

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「お久しぶりですね、ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下」


「「「お久しぶりです! アネモネ先生! 先生にお会いできる日を楽しみにしておりました!!」」」


 ルーネス、サレム、アインスは三人とも一国を担う王子に相応しい、礼儀正しい挨拶をしてくれた。

 その立派な姿をイリス、シヘラザード、アルマンの三人が微笑ましそうに見つめている。


「国王陛下、お久しぶりでございますわ」


「お久しぶりってほどでもねぇだろ? つい最近画面越しに会っているしな。……しかし、随分と面白いことになっているなぁ」


 「クソつまんねぇパーティの暇潰しのネタができたせ!」って喜んでいるんだけど……。


「それはちょっと、お姉さんも看過できない話だよ? 今日は姫さまの誕生パーティだからねぇ。それを、つまんねぇって言うのは」


「そりゃ、姫さんに罪はねぇよ。……寧ろ、俺は姫さんが可哀想だと思うけどな。こんなの全然祝われている感がしねぇだろ? まあ、俺も王族だし、国王始めてから随分と経っているからこういったパーティが重要なものであることは分かっているぜ。勿論、社交の意義も重要性とな。ただ、ついつい思っちまうんだ。打算も何もない本当に心から祝ってくれるのがどれほど幸せかって。例えどんなに質素であっても、心から大切に思える数人との時間は変え難いと思うんだ!」


「ご心配には及ばないと思いますわ。王女宮の方では後ほど小規模な内輪の誕生日会のようなものが催されると筆頭殿から聞いております。……確かに、姫さまの誕生を純粋に祝おうとしているのはごく少数、限られた方だけかもしれません。この場に出会いを求める者、繋がりを作ろうとする者、領地の事業の宣伝をする者、他も含め、様々な思惑が交錯する極めて複雑な場と化しているのは間違いありません。彼ら彼女らにとって、姫さまの誕生を祝うことなど二の次なのかもしれませんわ。……勿論、中には姫さまの婚約者の地位に子息をつかせたいと考えておられる方もいらっしゃいますし、そう言った方は少しでも姫さまの心証を良くしておきたいとお考えなのでしょうが」


「そう言うお前はどうなんだ? ……何か企んでいるんじゃねぇのか?」


「さあ、どうでしょうね? ただ、少なくとも私は姫さまの誕生日を心より祝福しておりますわ。そうですわよね、スティーリア」


『……えぇ、わたくしスティーリアが保証しますわ』


 スティーリアはほんの少しだけ不機嫌そうに言った。……自意識過剰とかではないけど、スティーリアもボクのことを好いてくれているからねぇ。

 ちょっと嫉妬心を燃やしてくれているんだろう。……本当に可愛いよねぇ。


 もし、仮に……まあ、あり得ないことではあるのだけど、ボクが側室を持つなんてことになれば第一候補に上がるのはスティーリアだと思う。

 やっぱり、それだけスティーリアはボクの従魔……いや、家族の中でも特別な位置になりつつあるんだよねぇ。まあ、ハーレムなんて作らないけど。


「……国王陛下、少し良いですか?」


「おう、丁度お前に振ろうとしていたところだったんだ。オニキス、お前、アネモネに話があるんだろう?」


 不機嫌そうなシューベルトと、僅かに嬉しそうに(見えなくもない)ティアミリスに挟まれている困惑顔の【漆黒騎士】さん……まあ、何となく言わんとしていることは分かるよ。


「先日、ティアミリス大公令嬢から婚約のお誘いがありました。……これ、どうすれば良いんでしょう?」


「普通に受ければ良いんじゃないですか? お似合いですよ? お二人」


「でも、ティアミリス殿下って……シューベルトなんだよな?」


「たまに、私も考えることがあるのですよ。性別を超えて魂と魂が引き合うというか、そう言った恋愛もあるのではないかと。……まあ、詳しくは省きますが、お二人はお似合いだと私は考えております」


「それってつまり、お前的にはBL(薔薇)もありってことか?」


「そこのところ濁したのに、何でしっかり言うんですか!! ……はぁ、あくまで、それはそれ、これはこれです! 差別主義者だと何と言われようとも、私は生粋の百合派で、薔薇否定派ですから! ほら、頭では分かっていても受け付けられないものってありますわよね? やおいはまさにそれなんですわ!」


「……そういや、男の娘同士ってのはアリなのか?」


「まあ、許容範囲……って、何言わせるんですか!」


「なんとなくこれでアネモネの性癖が分かってきたな。ああ、分かっているぜ。あれだろ? 最初は完璧な騎士で気に食わないと感じる存在だったが、自分の気持ちに無自覚で、だからこそ気づいた時には自分でも信じられなかったってところじゃないのか? まあ、オニキスとティアミリス、アクアとシューベルトっていう組み合わせはいいと思うけどな? ってか、めっちゃ面白くない?」


「ティアミリス様とオニキス様の婚約は祝福しますけど、アクアは嫁に出しませんわよ? 全力で阻止させて頂きます」


「……それは、どういうことだ?」


 シューベルトの周囲の温度が五度ほど下がった。

 最近、ティアミリスが登場してようやくシューベルトは自分の気持ちに気づいたらしい。別世界の自分の転生者とはいえ、オニキスを奪われるのは腹立たしいが、自分とオニキスでは結ばれることは困難。

 そこで、シューベルトはもう一人のオニキスに狙いを定めた。シューベルトにとってはアクアもオニキスもオニキスで、恋愛対象としては問題がない。しかも、アクアは女性だからねぇ……年齢的には見た目がアウトだけど実年齢的にはセーフ。

 ならば、婚約を結んでしまえばいいと考えたもの、シューベルトが送ったお見合いの提案は悉く無視されてしまった。


「もしかして、オルパタータダ陛下もこの二つのケースが似て非なるものであることに気づいていないのですか?」


「まあ、な……正直、全く分からねぇ」


「オニキス様にティアミリス様が嫁入るとなれば、今の価値観で言えばティアミリス様がオニキス様のものになるということ……つまり、中心に据えられるのはオニキス様ということになる。そうなれば、ティアミリス様が家事をするのかどうかは知らないけど、オニキス様が大きく拘束されること自体はないだろうし、ファント大臣との親友コンビも存続する。私がティアミリス様に協力を依頼された時、条件としてファント大臣との親友コンビを存続させ、かつ優先させることを求めました。一方、シューベルト様とアクアとなると、アクアとディラン大臣のコンビが危うくなってきます。……特に、この総隊長殿は独占欲が強そうですからね、家事ができないことについては全てフォローするので心配はなさそうですが、このコンビの存続が危うくなるのは、私にとっては避けなければならないことでございます。……まあ、つまり、ボクにとって大切な親友コンビの中に異物を混入させたくないと、ただそれだけです」


「そもそも、私もシューベルト総隊長様は無しだと思いますわ」


「だ、そうだ。……しかし、こんな小姑がついていたらアクアは一生結婚できないんじゃないか? まあ、アクアが誰かと結ばれてウェディングドレス……って、なんか全然想像できねぇけどな」


「まあ、正直、今のところは結婚に必要性を感じませんね。……いつかは私もと思っていましたが……新しい道も拓けてきていますし。俺はただ、大切な仲間達と家族達と同じ時を過ごすことできたなら、それだけで幸せです」


「そうだよな、相棒!」


「本当に、欲のないお二人ですわね」


 まあ、実際シューベルトがどこまで不機嫌な表情をしたところで、ボクがアクアを嫁に出すつもりはないという事実は動かないし、ラピスラズリ公爵家もアクアを嫁に出す意思はないことは確認している訳だし、そして何よりアクア自身がシューベルトを恋愛対象として見られないのだからどうしようもない。

 ……酷かもしれないけど、さっぱり諦めるべきだと思うんだけどねぇ。総隊長とリボンの似合うメイドという関係のままで、別に次のステップに進む必要も、関係を変える必要はないと思うし。


 ……ボク自身も何と無く分かっている。やっぱり、ボクはあの関係が好きなんだと思う。


 オニキスが居て、ファントが居て、漆黒騎士団のメンバーが居て、騎馬隊コンビが居て、総隊長が居て……ドM眼鏡が居て、ヅラ師団長が居て……あの空気感に憧れるし、いつまでもあの空気感のまま変わって欲しくない。

 アクアがシューベルトと結ばれることを受け入れられないのは、何かが決定的に変わってしまうことを恐れているからなんだと思う。


 ……それだけ、やっぱりボクは乙女ゲームの背景だった【漆黒騎士】とその仲間達に思い入れがあるんだろうねぇ。

 ……現実と創作の区別くらいつけないといけないし、アクアが誰かを好きになったら祝福しないといけないんだけど……ボクにそれが本当にできるのか、正直、不安になってくるねぇ。


「……まだ俺は諦めた訳じゃないからな」


「総隊長様は随分、執念深いですわね。何度アタックしても私は絶対にアクアは渡しませんわ」


 シューベルトを真っ向から睨め付け、ボクは不敵に笑ってみせた。



「お久しぶりですわ、ランチア様、ベルサリア様」


「久しぶりだな、アネモネ嬢、スティーリア殿。いつも弟がお世話になっている」


「本当に久しぶりね。お忙しいとは思うのだけれど、たまにはうちに遊びに来てくれると嬉しいわ」


 ちなみに、ランチアとベルサリアにはこの世界の真実やボクの正体についても明かしている。

 ディランは家を出奔して独立し、大臣になったんだけどランチアが家督を継いでからは仲の良かった公爵家にも結構な頻度で行っているようで……アクアと二人で迷惑を掛けていないか心配なんだよねぇ。


「ランチア様、ベルサリア様……アクアがそちらでご迷惑をお掛けしておりませんか?」


「それ、どういうことです!? アネモネ様!!」


「流石に酷すぎると思うぜ、親友! まるで、アクアがトラブルメイカーみてぇじゃねぇか!?」


「……問題児ですわよね? アクアもディラン様も」


「ハハハ、私の知る限りヴァルグファウトス公爵邸では問題を起こしておりませんよ」


「アクアちゃんも力仕事とか手伝ってくれるから、それに可愛いし、うちのメイドさん達には大好評だわ。これからも是非、遊びに来てくれると嬉しいわ」


「それなら、良かったですわ。これからもアクアをよろしくお願いします」


「……おい、ちょっと待て親友! 良い感じに纏めようとしているが、それってつまり俺達が問題児ってことなんじゃ――」


「そういうことじゃねぇか? お前もよく分かっているだろ?」


 あっ、もう一人問題児がご到着だ。アグレアスブリージョ大公家当主のバルトロメオ=アグレアスブリージョこと、王弟バルトロメオ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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