Act.8-161 水の精霊王と滅んだ文明の遺跡 scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
「サーキュレーション・エアー・ボール」
今回も『サファギンエンペラーの戴冠』と『深淵の洞窟の大海の主』が同時に氾濫した例の事件の時と同じ海底探索御用達魔法でさくっと空気の玉を作って各々、海に飛び込むことになった。……よく考えれば、あの時と同じメンバーって一人もいないねぇ。
海底は複雑な海流に加え、リヴァイアサンの群れによる「慈悲なる大海嘯」でもう潮の流れがめちゃくちゃ。
「海流支配」
だったら、海流そのものを操作してしまえばいいということで、水の魔力で海水の流れを丸ごと掌握――これにより、「慈悲なる大海嘯」も無意味化された。
海流が支配され、完全に止まってしまった時点でエイミーン達はそれぞれ魔法を発動し、一瞬にしてリヴァイアサンを撃破する。
リヴァイアサンには「慈悲なる大海嘯」以外にもいくつか技はあるけど、それを使わせるほどの猶予をエイミーン達が与える訳がないよねぇ。
瞬く間にリヴァイアサンの群れを殲滅し終え、ボク達は海底遺跡の探索に乗り出した。
……遺跡は流石は元大都市というだけあって結構な範囲に広がっていて、また、どこから流されてきたのか海賊船やら商船やら、様々な船が夢の跡のようにボロボロの沈没船となって落ちていたから全て探索するのに結構掛かるとは思っていたのだけど……。
『……まさか、こんな海底までお越しになる人間がいるとは驚きでした。それに、エルフだけでなく獣人や……ほう、古き竜までとは、このようなこともあるのですわね』
足首よりも長い水色の髪を持つ、マーメイドドレスを着た女神と形容しても過言ではない美女。
「水の精霊王イセリアさん、だよねぇ? はじめまして、ボクはローザ。今日はこちらのエイミーンさん、ミスルトウさん、マグノーリエさん、プリムヴェールさん、ミーフィリアさん、レミュアさんと一緒にボクもイセリアさんと契約を結びたいと思って来たんだよ。……既に火と土の精霊王のお二人とは契約済み。ボクにもエルフと同じように適性があることはイセリアさんも分かっているよねぇ?」
『……ええ、ワタクシも驚きましたが確かに精霊と契約できる資質をお持ちのようですね。それもエルフ以上とは……。しかし、イフェスティオとロイーゼが契約を認めたということは貴女の人柄を認めたということなのでしょう。ワタクシも拒否する理由はありませんが……それほどの大人数と契約をしてもいいのでしょうか? 精霊王は各属性に一人ずつ、多重契約をしていても分裂することはできませんわ。そうなると、優先順位をつけるべきだと思いますが……』
イセリアの言う通り、同じ精霊王を呼び出そうとする場合、どちらかが召喚を諦める必要が出てくる。
一応、各精霊王召喚の優先順位についての取り決めがなされていて、レミュア→マグノーリエ→エイミーン→プリムヴェール→ミスルトウ→ミーフィリア→ボクという順で優先順位が低くなっていく。この取り決めには精霊術法以外に切り札となり得るものがあるか、その切り札はどれほどの効力を持つのか……という二点が基準を設ける時の判断材料となった。
「まあ、ボクに関しては精霊王を呼び出すことはないと思うけどねぇ。ただ、戦術の幅が広がるし、各精霊王と契約を結んだ時に獲得できる『精霊王の加護』もあるのだから、契約を結ばない手はないんじゃないかな?」
『精霊王の加護』は四大属性と光・闇の六つ。それぞれの属性に関する能力全てに加護の効果で補正が入る。
そう、精霊術法でなくても、例えば魔法や原初魔法であっても加護が働くのだから、仮に精霊王そのものを召喚できなくても、何一つメリットがないという訳ではない。
『……分かりました。こちらも断る理由がありませんし、精霊との契約に適性がある皆様全てと契約致しますわ。しかし、それほどの力を持ちながらまだワタクシのような精霊王とも契約したいと思われるとは……何事か事情があるようですね』
ボクの方も隠し立てする理由はないし、イセリアにもどの道協力してもらわないといけなくなると思うから、ボクの前世を含め、この世界の真実というべきものをイセリアに話した。
かなり驚いていた一方で、ボクの説明で納得した部分もあるようで……。
『確かに世界の創造主であるならば、本来契約できない筈の精霊ともエルフの姿に変化せずとも契約を結ぶことができることも納得できますわ。……『管理者権限』を持つ神々――彼らに世界を支配されてしまえば、この世界は高確率で破滅を迎える……それだけは絶対に避けなければなりませんわね。微力ながら、ワタクシもご協力させて頂きますわ。……土の精霊王、火の精霊王と契約し、ワタクシと契約すれば残りは風と光と闇……このうち、風の精霊王はロイーゼさんが上手く話をしてくれると思いますので、残るは光と闇……ですわね。彼女達の居場所は残念ながらワタクシにも分かりません』
「まあ、イフェスティオさんの話を聞く限り、あまり精霊王同士で連絡を取り合っている風ではないみたいだし、寧ろ精霊王三人の居場所が知れて、うち二人との契約ができたという時点で相当幸運なことだと思うよ」
イセリアとも契約を結べ、ロイーゼとも既に契約を結んでいるから六体の精霊王のうちの半数ともう契約を結べてしまったということになる。今日一日で随分進展したから、これ以上を求めるのは相当欲張りだと思うんだけどねぇ。
……イセリアが申し訳なさそうにしていると、本当に心苦しくなってくるよ。こっちは、平穏に暮らしているところに押しかけて契約を結んでいる訳だしねぇ。
「ところで、ウォーロリア山脈の山エルフ集落が多種族同盟に所属することがほぼ決定したんだけどねぇ……土の精霊王ロイーゼさんから頼み事があれば多種族同盟経由で聞けるからまあ、問題ないとして――」
……少しおどおどしているし、あまり気の強い方ではないから頼み事があっても溜め込んでしまいそうではあるんだけど。
まあ、何かあればポーチュラカ達が何か言ってくるだろうし、山の村落組に関してはあまり心配はしていないんだけどねぇ。
「もし、何か頼みたいこととかがあれば遠慮なく言ってねぇ。ほら、精霊契約をして一方的に力を借りているんじゃ釣り合いが取れていないでしょう?」
『……ワタクシ達に気を遣ってくださる契約者様はエルフを含めてもほとんどいらっしゃいませんでした。……折角ですからお言葉に甘えさせて頂きますわ。……その、実はずっと海の中で暮らしているとあまり他者と関わりを持てないので、ロイーゼさんの申し出を受けたのも山エルフさん達と関わりを持ってみたかったからなのですわ。正直、人間の暮らしというものに興味があります。エルフを受け入れてくださっている多種族同盟の国内でしたらワタクシでも歩いて色々なものを見て回れるのではないかと思うのですが……』
「多種族同盟諸国……その中でオススメなのは、やっぱりブライトネス王国だけど、色々なところを巡ってみたいと思っていると思うし、やっぱり数日かけて色々な国を巡ってみた方がいいと思うんだよねぇ……そんなことで良ければ是非ともお手伝いさせてもらいたいよ」
「レミュア殿は聖人の修行に迎う途中でしたね、ローザ殿はお忙しいですし……ここは、エイミーン様か私の方で案内を引き受けさせて頂きましょうか?」
「エイミーンさんならともかくミスルトウさんが抜けると困るし……ボクが引き受ける予定だったんだけど、それなら……マグノーリエさん、プリムヴェールさん、この阿呆族長だけでは心配だから、フォローしつつイセリアさんを案内してもらえないかな?」
「阿呆族長って酷過ぎるのですよぉ〜!? プリムヴェールさん、マグノーリエ! 私のことを擁護するのですよぉ〜!」
「分かりました、私の母が暴走しないようにしっかりと国々を案内させて頂きます!」
「うむ、任せておけ! 私とマグノーリエさんでしっかりと案内する!」
『よろしくお願いしますね、プリムヴェールさん、マグノーリエさん、エイミーンさん』
「なんで誰もフォローしてくれないのですよぉ〜!? しかも、娘まで塩対応なのですよぉ〜」
エイミーンが嘘泣きをしているけど、それって日頃の行いが悪いからなんだし、仕方がないよねぇ。
その後、イセリアと具体的に各国を案内する日を取り決めてから、ボク達は再び陸に戻り、ブライトネス王国に転移した。
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