Act.8-160 西端の地ウォーロリア山脈帯の古代竜と精霊王 scene.4 下
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
「闇纏魔剣・圓式無双」
闇の魔力を剣に纏わせ、圓式の斬撃をまずはポーチヴァに、続いてロイーゼに浴びせる。
「――まだ息があるんだ。流石は古代竜というところかな?」
すれ違い様に浴びせた二十の斬撃でロイーゼは完全に息絶えて「L.ドメイン」の外に転送された。
『ご無事ですか!? ロイーゼ様』
『うん、ボクは無事。……さっきまで本当に痛かったのに、嘘みたいに五体満足だよ。……本当にあの人とことを構えなくて本当に良かった』
ロイーゼとポーチュラカ達は最早終わった戦いというムードだけど、まだ息があるんだよ? もう、『フハハハハ』と高笑いをするだけの体力も気力もないようだけど。
「これでチェックメイトにさせてもらうよ。――ダークマター・カタストロフィ」
上空に斜め下を向くように三つ、そして地面に一つ漆黒の魔法陣が展開され、一気に暗黒物質が中心――宛らポーチヴァを包み込むように勢いよく噴射される。
ローザがレベル95で習得する闇魔法「ダークマター」の純粋四倍威力――この一撃に流石に古代竜であっても手負の状態で耐えられる筈もなく、ポリゴン化する間もなく戦場から姿を消した。
◆
『フハハハハ! 負けた負けた! 吾輩が負けるなど何百年ぶりだ? やはり、上には上がいるということであるな!!』
負けたのに何故か楽しそうに高笑いをしているポーチヴァと、なんとも言えない表情になっているロイーゼ、そして、敵意を抱けるところを通り越して怯えまくっているポーチュラカ達。
「別にボクって悪くないよねぇ? 侵略しに来た訳じゃないって明言しているし、実戦を提案してきたのはロイーゼさんでしょう? それに、戦いになった時点で卑怯なんて言葉は通じない。どんなえげつない方法だとしても勝利は勝利なんだから。それに、これでも、十分手加減したんだけどねぇ……」
……なんか、ますますポーチュラカ達の表情が青褪めていっているねぇ。
「なんか、えげつないっスけど、あんまり本気じゃないなって感じがしていたっスよね。リーリエの姿になっていない時点であからさまな手を抜いているなって感じがひしひしと伝わってきたっス」
「……一応、ローザも強いんだけどねぇ。もう一度言うけど、ボク達の目的はポーチヴァさんの強化とロイーゼさんとの契約、そして他の精霊王に関する情報ということになる。別に多種族同盟への参加を強要するつもりも、開国を求めることもないよ? まあ、現時点ではデメリットの方が大きいからねぇ」
巻き込まれる可能性があるんじゃないか? とは思っていたんだけど、ここ最近の傾向を考えても『管理者権限』を持つボクの居る場所が中心に狙われている。
全ての『管理者権限』を揃えた時、真の唯一神となった者は地上を支配することになると思われる。そうなれば、関係せざるを得なくなるだろうし、未来はお先真っ暗、バッドエンドまっしぐらなんだけど。
「まず第一に多種族同盟に加われば『管理者権限』を巡る戦いに巻き込まれる可能性が出てくる。まあ、こっちもむざむざとやられるつもりないから着々と準備を整えているんだけどねぇ。とはいえ、危険が増えることになるからデメリットと言える。メリットがあるとすれば、多種族同盟諸国との取引が可能になるということかな? 服飾や雑貨、その他諸々、色々なものを得ることができる。勿論、これまでの生活からは大きく変わってしまうことになるから、こちらもメリット一辺倒という訳ではないんだけど。まあ、あんまり急ぐことでもないから、興味があればお二人のどちらか経由で連絡をくれればいいよ」
その後、ポーチヴァに自己強化をしてもらい、ロイーゼと契約を結ぶことに成功した。
名前:ポーチヴァ・ファウケース・カブルストーン
種族:古代竜、岩地竜
所有:ポーチヴァ・ファウケース・カブルストーン
HP:50,000,000
MP:10,000,000
STR:30,000,000
DEX:30,000,000
VIT:81,000,000
MND:51,000,000
INT:10,000,000
AGI:8,000,000
LUK:8,000,000
CRI:8,000,000
▼
ちなみに、相談してから方針を決めて欲しいと言った多種族同盟への加入についてなんだけど、あっさり加入する方向で決まったらしい。
……原因はエイミーンだと思われる。あの族長、ポーチヴァを強化している間に何事かポーチュラカ達と話していたみたいだからねぇ。まあ、大凡、カレーとか食事の話題で釣ったんだろうけど。
「結局、ローザ――お前達が負ければ世界は支配され、滅びを迎えるのだろう? 私達でどれほど戦力になれるかは分からないが、これは私達にとっても決して無関係な話ではない、寧ろ存亡にも関わる重要な問題だ。私達を多種族同盟に加えてもらいたい。……他人に世界の命運を握る骰子を握られるというのはあまり気持ちのいいことではないからな。それに、外の世界の文化というものにも興味がある。……いつまでもこの地が暮らしやすいからと閉じこもっている訳にもいかないからな。それに、地上の世界の料理というものも興味をそそられる」
「……案外、一番最後のものが主目的だったりするかもしれないねぇ。多種族同盟の承認についてはまた後日諸国の代表に確認を取ってさせてもらうよ。まあ、断られた先例はないし問題ないと思うけどねぇ」
ポーチュラカ達の多種族同盟に加わるかどうかの意思確認も無事終えたし、後は三つ目の目的だけだねぇ。
『風の精霊王シュタイフェ=ブリーゼの居場所は知らないんだけど、定期的にここに来てくれるからボクから話しておくよ。その時になったらまた連絡させてもらうね。そして、水の精霊王のイセリア・リヴィエール・ファンテーヌなんだけど、彼女はリヴィア岬の付近を住処にしているそうだよ』
リヴィア岬……最西端の地だねぇ。海流が極めて特殊で尚且つ強力な魔物が多く生息することから海側からの侵入は困難だと言われる岬。このリヴィアもリヴァイアサンの名前から取られているそう。
『深淵の洞窟の大海の主』のボスクラスがウヨウヨしている海域……って言ったらそのヤバさが分かると思う。えっ、お前なら余裕だろうって? ……まあ、そうだけど。
物凄い古い文献によると、この地域には昔栄えた文明があったそうだ。まだ、ウォーロリア山脈帯が地殻変動でここまで大きな山脈になる以前――権勢を誇った文明だったそうだけど、地殻変動で海の中に沈み、呆気なく滅んだそう。今もその文明の痕跡が綺麗な形で海の中に残っているんじゃないかという見解も存在している。
ポーチュラカ達と別れ、ボク達はそのままレヴィア岬を目指すことになった。
千メートル級と八百メートル級の山を越えることで到達できる……つまり、山そのものの難易度はそこまで高くないんだけど。
巨大な牛やカバを彷彿とさせる牙持つ魔物――ベヒーモスと、赤から黄色へとグラデーションの入った巨大な翼を持つ鳥の魔物――ジズ。
どちらも強力な魔物でリヴァイアサンと同等の強さを有すると言われている。恐らく、古代竜があの地に留まっていたからこそ、あの集落は強力な魔物に襲われる心配が無かったんじゃないかと思う。
「猛威の風斬なのですよぉ〜!!」
「風刃空断!」
「月の力よ、我が武器に宿れ――ムーンライト・スティング」
「暴狂の下降気流」
「真・夜魔の女王の息吹-局所暴風-」
「焔獄追尾孤斬」
『龍神の鉤爪』
「――極大付与術ッ!」
「妖力収束・指鉄砲っス!」
ただ、いくら強力な魔物と言ってもレイドランクと比べるとやっぱり見劣りする。
エイミーン、ミスルトウ、プリムヴェール、マグノーリエ、ミーフィリア、レミュア、ナトゥーフ、オリヴィア、アルティナ――ボクが双剣を鞘から抜き払うまでもなく、みんなが次々と魔法や攻撃を浴びせて一撃で魔物達を撃破していく。
……少しはボクにも獲物を用意しておいてもらいたかったんだけどねぇ。
……うん、待っていても勝手に殲滅されそうだし、殲滅する前にボクも仕掛けるとしようか?
「ダークマター・フォージ! からの、ダークマター・カンタフェイト!!」
『漆黒魔剣ブラッドリリー』の剣先から圧縮した暗黒物質を剣先から飛ばし、敵に命中させたところで解放する魔法でまずは空中のジズを連続で五体撃破し、そのままの流れで圧縮した暗黒物質を剣先からベヒーモスに飛ばし、敵の足元に命中させると同時にそこから暗黒物質を顕現して勢いよく地面から噴き上げさせる。
「……ローザの『ダークマター』を模倣した私の『ダークマター』系魔法を更にローザが模倣したということだな? ……複雑なことになっているな」
「本当に仲がいいよね? ローザさんとプリムヴェールさんって……嫉妬しちゃうわ」
「マグノーリエ様……じゃなくて、マグノーリエさんもローザと充分仲がいいと思いますよ」
「……そういうことじゃないのに。……ばか」
プリムヴェールって男の鈍感さ的なものがあるよねぇ、男じゃないけど。なんで、こんな簡単な女心が分からないかな?
「まあ、オリジナルの『ダークマター』は『ダークマター』しかないからねぇ。ローザの固有魔法以外は全て模倣――フェイクなんだよ。ボクがローザアカウント以外で使う場合は確実だし、ローザの状態で固有魔法に頼らないと『ダークマター・フェイク』になる。バリエーションを増やそうとすれば、当然、固有魔法の枠を外れることになるから使用魔力も増えるんだけど、色々と使い分けができるから重宝するんだよねぇ。……例えば、ボクのだと『ダークマター・フェイク』、垂直にダークマターを放つ『ダークマター・バーチカル』、水平にダークマターを放つ『ダークマター・ホリゾンタル』、通常の『ダークマター・フェイク』に加えて『ダークマター・バーチカル』或いは『ダークマター・ホリゾンタル』が発生するダメージカードを∞枚設置する『ダークマター・パーマネント』、そして、さっきの模擬戦で見せた『ダークマター・カタストロフィ』……まあ、バリエーションはまだまだ増やせるけどねぇ。プリムヴェールさんも遠慮なく真似していいんだよ?」
まあ、真似しろと言わなくても必要なら模倣して、手を加えてどんどん新しい魔法を生み出していくだろうけどねぇ。そうやって、みんなの魔法のバリエーションが増えてきている訳だし。
……しかし、そろそろレヴィア岬が見えてきたけど……見た感じ何もないし、やっぱり深海調査をしないといけないのかな?
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




