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Act.8-159 西端の地ウォーロリア山脈帯の古代竜と精霊王 scene.4 上

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


古代竜エンシェント・ドラゴンと精霊王相手って無理ゲーっスよね?」


「……そうかな? アルティナさんは時空騎士なんだよ? まあ、二対一くらい勝ってもらわないと」


「あれ? これってウチ一人で戦うパターンっスか!?」


 ポーチュラカ達が見守る中という圧倒的なアウェーの中、ボクとアルティナは人間体のままのポーチヴァと土の精霊王ロイーゼと対峙していた。


「でも、どう考えても一番恐ろしいのはローザさ――「ん? 誰よりも先にボコボコにされたいって?」


 「L(リリー).ドメイン」を展開しているから死ぬってことはないけど、ボコボコにされるのは精神衛生上あまり宜しいことではない。

 「や、やめて欲しいっス! ウチ頑張るっスから!」とやる気を出してくれたので、お姉さんはにっこり。


「もう、先手必勝でいくっス! 『時空魔導剣クロノスソード』!!」


 自重も何もあったもんじゃないアルティナさん。

 時空騎士(クロノス・マスター)の本領発揮って……レイドでもするの?


「妖狐さんの本領を見せてやるっス! これぞ、狐人族の御家芸! (まわ)れ、(めぐ)り、(めぐれ)や、水車(みずぐるま)! 劫火よ我が手で渦巻きて、円環を成して焼き尽くせ! 九尾の火球ファイアフォックス・ナインボール


 へぇ……オリジナルの火魔法に、狐人族の妖術を組み合わせたか。獣人が魔法を使えないという点はものでしっかりと補っている。

 見た目は九つの火球魔法。威力もそこまで高くはなさそうだけど……ほう、なかなか面白い仕掛けがされているらしい。


『フハハハハ! 大道芸でも見せてくれるのか!? ならば、吾輩は《タネも仕掛けも(スケープ・)ない土人形(ゴート)》!』


 なるほど、土の人形を二十体出現させて自分への被弾の可能性を減らす作戦か。

 火球は本体を含む(・・・・・)九体に命中する。……まあ、流石に位置の入れ替えを行っていない訳だし、騙される筈がないよねぇ。


 ポーチヴァにとっては些細なダメージだったのだろう。だけど……恐らく、この魔法には続きがある。


 時空が歪み、宛ら映像が早回しで巻き戻るように世界の時が巻き戻った。


「ウチの作戦、成功っス!」


「なるほどねぇ……特殊な時間魔法を加えることで攻撃の着弾と同時に世界の時間を巻き戻したってところか。そして、攻撃の着弾という事実のみが『運命』として残り、着弾した時間になれば条件を満たしても満たさなくても必ず寸分違わないダメージが与えられる。そして、時間が巻き戻ったことを知っているのは魔法を使った自分のみ。……ということは、相手の能力を知った上で無傷の状態からリトライができるという利点もあるということだねぇ」


「そうっス……って、なんで、圓師匠がそのことを知っているっスか!? 時間の巻き戻しの記憶を引き継げるのは使用者のみの筈!?」


「気づかれないようにさりげなく『時間解脱魔法-クロック・エスケープ-』を使ったからねぇ。世界の時間が巻き戻っても、これを使っていればボクだって過去に巻き戻ったことを理解できるって訳」


「――というか、さりげなくウチの奥の手を説明したっスね!? これじゃあ、ウチの折角考えた必殺技がただの一発芸に成り下がるじゃないっスか!?」


 ……個人的には、一発芸ではないと思うんだけど。

 まあ、実際、この魔法にはかなりの利点と、一方で欠点もある。利点はやはり情報――無傷で過去に巻き戻ることで敵に関する情報を得たまま戦闘を再開できる。それに、時空魔法が使えなければ対策もできず、『運命』として刻まれたダメージを取り除くこともできない。この『運命』というのは厄介で、恐らく時空魔法の使い手であっても消し去ることはできないと思われる。


 弱点があるとすれば二つ。そもそも、時空魔法を無効化できる存在なら、そもそも通用しない魔法だし……そういう時は諦めるしかない。

 そして、攻撃を命中させなければ意味がないということ。全て結局自分で与えたダメージの蓄積なんだから、蓄積ができなければ意味がないって訳。


『フハハハハ! つまり、ダメージを受けなければいいということであろう!?』


「……それ、当たり前のことだよねぇ。『運命刻時フェイト・クラック・タイム』が含まれていようといなかろうと、とりあえず攻撃は回避するべきもの。わざと攻撃にあたりにいくのは阿呆か、ボクの嫌いなドMだけだよ」


 攻撃ってものは、基本的に受けなければノーダメージなんだよ。

 実際、エンノイア戦でも即死級の攻撃を躱すことで、ある程度は死亡回数を減らすことができたし。

 まあ、中には回避不能の攻撃というのもあるからねぇ。


「さて、それじゃあボクもそろそろ仕掛けさせてもらいますか? 【万物創造】」


 オリハルコン、ミスリル、アダマンタイトの合金であるアトランタイト製の剣を素早く生成。武装闘気を纏わせて黒剣化し……。


剣屑の暴斬嵐クレイジー・ダスト・ストームランス


 武装闘気と覇王の覇気を纏わせた左手で黒剣そのものを無数の破片へと打ち砕き、重力魔法によってその全てを掌握し、操作――目に見えないほどの薄い大量の刃の破片をポーチヴァとロイーゼへと放つ。


『ん? 何かしたのであるか? まあ、良い! 我の力、とくと見るが良い! 流石群(ミーティア・ストーン)


 空中に土の魔力で大量の岩石を錬成――隕石のように降らせてくる魔法だねぇ。まさに、流星群の岩バージョン……第二次宇宙速度を突破して地上に落下してくる訳ではないから威力そのものが向上しているという訳ではないみたいだけど。


金剛石の砲弾ダイアモンド・ランチャー


 一方、ロイーゼの方は無数の大粒のダイアモンドを生成――しかも、その全てが精霊王の力によってより強固なものへと変貌している。まあ、熱に弱いのと、ある一点から攻撃されれば簡単に壊れてしまうという弱点はそのままみたいだけど。

 世界最硬度の宝石と言われるダイアモンド――その弱点は意外と多い。


魔力域掌握(マナフィールド)! ダークマター・フェイク」


 マナフィールドでフィールドの全魔力を支配し、降り注ぐ大量の岩石と迫りくるダイアモンドの塊をほぼ暗黒物質で消し飛ばし、ボクの頭上に降り注いだ――運良く暗黒物質(ダークマター)の範囲から逃れたものについては、「ダークマター・バーチカル」を放って消し飛ばした。


『ヌッ!? 吾輩、魔法が使えなくなっている!? これでは、岩地竜の咆哮アース・ドラゴン・ブレスロアも放てないではないか!?』


『う、嘘だよね……古代竜エンシェント・ドラゴンほどの強さを持つ相手の魔法を封じるなんて……』


「相手はローザさんっスよ? 別段不思議でもなんでもない……って、それじゃあウチも魔法が使えなくなるっス!?」


「……別にアルティナさんには魔力に頼らない魔法や妖術があるから大丈夫でしょう? それに、魔法を封じたからって『運命』を消し去ることはできない。ほら、問題なし」


 ……さて、そろそろ効いてくる頃合いかな?


「ところで、古代竜エンシェント・ドラゴンも人間と変わらず呼吸をするようだねぇ。空気が肺に送られ、酸素をヘモグロビンを利用して体内に行き渡らせる。呼吸をせずに生きることは、生物である限りは不可能みたいだねぇ。また、精霊は大気から酸素を摂取しなくても生きられる一方で、生命を維持するためには大気中から精霊力を吸収する必要がある。……当然、大気中からねぇ」


 ポーチヴァとロイーゼが同時に顔を歪めたのは、丁度ボクが口を閉じた瞬間だった。


『く……苦しい、わ、吾輩……に、一体、何、が……』


『くっ……ゴホ、ゲホ……』


「効いてきたみたいだねぇ」


『――ポーチヴァ様ッ!? ロイーゼ様!? 貴様、一体何をした!?』


 ポーチュラカ達が戦場の外から睨め付けてくる。……まあ、そりゃ、自分達にとって神のような存在が命の危機に瀕しているのだから、当然の反応だよねぇ。

 ……別にこの戦いで命を取られるって訳じゃないんだけど。


「……先程、作り出したばかりの剣を砕いていた。あれから何も起きないから妙だとは思っていたが、今の説明でローザ嬢の思惑が分かった。打ち砕いた剣の破片は鋭利な刃となる。重力を操作することでその極小の刃を操作すれば、それはもう立派な自由自在に対象を切り裂く武器だ。呼吸を利用して体内に吸い込ませることで、呼吸器を中心に体内を切り裂く……なかなかえげつない魔法だ」


「……よく、そんな恐ろしい魔法を思いつくわよね」


「流石は外道な魔法に定評のあるローザだ」


 ミーフィリアの解説に、レミュアが呆れ顔で感想を付け足し、プリムヴェールが納得気に頷く……って、誰が『外道な魔法に定評のある』んだ!? 酷くない!?

 おまけにエイミーン、ミスルトウ、マグノーリエ、ミーフィリア、レミュア、ナトゥーフ、オリヴィア、アルティナ――つまり、こっちの陣営の全員も首肯しているし!?


「しかし、師匠らしくない魔法っスよね? 実際、剣で切り裂いた方が強くないっスか? 折角作った剣も破片になっているし、なんだか少し勿体無い魔法なような気がするっス?」


「アルティナ君、減点だよ」


「なんかよく分からないけど減点されたっス!? よく分からないけど、なんか嫌っス!!」


 二人が苦しむ中でもこんな調子で会話するボク達に、ポーチュラカ達のヘイトが高まっていったのは言うまでもない。


時空騎士(クロノス・マスター)というものが情けない。……時空魔法だよ、時空魔法。何故、槍の形状をしていないのに『剣屑の暴斬嵐クレイジー・ダスト・ストームランス』なのか、まさか、引っ掛からなかったのかな?」


『――もしや、この魔法は打ち砕いた剣を再生することで完結する一連の魔法ということなのか!? 確か、ローザ嬢には『時間遡行魔法-クロック・アップ・ストリーム・リバース-』という時間を巻き戻す魔法があった。対象の時間を巻き戻す――つまり、体内にある破片にも干渉し、剣を打ち砕く前にまで戻すことができるということが可能なのだな』


「ミスルトウさん、正解。アルティナさんにもこれくらい簡単に察しがついて欲しいものだよねぇ」


「そんなの絶対に無理っスよ!」


 ……まあ、流石に時空騎士(クロノス・マスター)だからってあらゆる時空魔法に精通している訳ではないことは承知の上だから、別にそれで幻滅するってことはないんだけどねぇ。

 実際、アルティナの新たな時空魔法を生み出すセンスはなかなか高いようだし。


 『運命』として刻まれたアルティナの放った「九尾の火球ファイアフォックス・ナインボール」のダメージがポーチヴァに入る中、ボクも剣の破片を取り出す際に激しい出血と痛みに襲われ、未だ苦しんでいる二人を終わらせるために剣を構えて武装闘気と覇王の霸気を纏わせた。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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