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Act.8-158 西端の地ウォーロリア山脈帯の古代竜と精霊王 scene.3

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 ウォーロリア山脈帯は規模としては標高二千メートル級の山々が連なる地域だ。

 フォトロズ大山脈地帯ほどではないにしろ過酷な環境であることは間違いない。この山が一種の防波堤となって人間達から山エルフ達を守っていたのだろう。


 山の下方では魔物もかなりの数が生息したけど、登っていくと魔物の数も次第に減っていき、その分、そこそこ歯応えのある魔物達が増えてきた。やっぱり過酷な環境に適応できたごく少数の魔物のみが生き残れるということみたいだねぇ。

 ちなみに、フォトロズ大山脈地帯の最高峰ではスティーリアが意図的に魔力を放出して特殊な魔物が生まれる環境を整えていたみたいだけど、ボクも含め、全くと言っていいほど強力な魔力を感知できていない。古代竜エンシェント・ドラゴンの影響を受けた魔物の姿もない……ということは、魔力を上手く隠しているということなんだろうねぇ。


 山を登り始めてから二時間後、茅葺の屋根の建物がいくつか建っている集落に辿り着いた。

 ……そう、茅葺。茅は細長い葉と茎を地上から立てる一部の有用草本植物で、代表種にチガヤ、スゲ、ススキがある。

 この茅系の植物は河川及び湖沼の水際で育つ。こんな森林限界では絶対に育ちはしない。


 ……まあ、明らかになんらかの力が働いているのは確かだろう。


 警戒心を持って現れたのは、小麦色の肌に日焼けしたエルフ達だった。ダークエルフほどの肌の黒さではなく、健康的な日焼けという感じだねぇ。

 やっぱり、エルフらしく特に人間であるボクに警戒しているようだけど、その他にも同族である筈のエルフ達に対しても警戒心を露わにしている。……既に、エルフと山エルフは別種と化しているのかもしれないねぇ。


「人間、それにエルフと……獣人か。妙な組み合わせだな。それよりも、貴様だ。我々を奴隷にするつもりか! そうはさせんぞ!」


 子供ローザではなく大人ローザの方で来たので侮られるということは無かったみたいだけど、やっぱり警戒されるよねぇ。ナトゥーフやオリヴィアも含めて睨まれているよ。

 代表者らしい女性の山エルフを含め、彼女達は多種族同盟が奴隷を廃止したことを知らない。まあ、こういう反応をされるのは当然な訳で。


「皆様の平穏な生活に水を差したこと、謹んで謝罪致しますわ。私が暮らしているブライトネス王国をはじめ、多種族同盟という国際組織に加盟している国々では亜人差別と奴隷の所有を禁止しております。こちらに、エルフやハーフエルフの方々がいらっしゃることがその証明になるかと思いますわ」


「ほら、見れば一目瞭然なのですよぉ〜。奴隷の首輪が誰の首にも嵌っていないのですよぉ〜」


 とりあえず、ボクに対する警戒は多少解けたようだねぇ。まだまだ、信じられないという人が大勢いるみたいだけど。

 実際、山エルフ達はまだ武器(木製の弓矢や木製の農具)を下ろしていないし。


「レミュアさん、先回りしてあちらのことについてもしっかりと説明して警戒を解いておいた方がいいのではありませんか?」


「そうね。初めまして、皆様。私はレミュア=サンクタルクよ。もうお気づきだと思うのだけど、かつて存在したサンクタルク王朝の王族の生き残りなのだそうよ。私も知らなかったのだけど……もう既にサンクタルク王朝は存在しないわ。捨てられていた私を私の師匠でハイエルフと人間のハーフエルフのミーフィリアさんが拾って育ててくれたのよ」


「ミーフィリアだ。こうして、山エルフの集落に辿り付けたのは、残っていた文献のおかげだ。しかし、私達にはこの地を併合する意思も、サンクタルク王朝を再興する意思もない」


「……そうか、もう、あの集落はないのか」


 袂を分かったとはいえ、思うところはあったのだろう。山エルフの女性が指示を出すと一斉に武器が下された。


「私はこの集落の族長をしているポーチュラカ=ヒュームルだ。ところで、私達にはサンクタルク王朝の滅亡を伝えに来た、という訳ではないのだろう? 奴隷にするつもりでないとすれば、目的は――」


『それは、吾輩から説明させてもらうとしよう!!』


 土が盛り上がり瞬く間に人の形を作った。

 茶色の髪を肩まで伸ばした、アンシンメトリーな髪型が特徴で、瞳は鈍色。手には石でできた丁度顔半分が隠れそうな特徴的な装飾が施された仮面を持っている。


「――ッ! ポーチヴァ様!!」


『フハハハハ! 初めまして、世界の創造主とそのご友人達よ! 吾輩の名はポーチヴァ・ファウケース・カブルストーン! 旧友や有象無象は吾輩のことを〝巌窟竜〟と呼ぶ! ナトゥーフから話を聞いているぞ! 自称〝火竜帝〟と〝白氷竜〟、そして〝暴風竜〟を従え、最古の古代竜エンシェント・ドラゴンであるナナシに名を与えた化け物の如き力を持つ人間がいると! フハハハハ、さあ、勝負だ! 吾輩を軍門に下すために、その力を思う存分、吾輩にぶつけるが良い!』


「……いや、ナトゥーフさんから本当に事前連絡行ったんだよねぇ? ボクは軍門に下す気はないって伝わってないの? そもそも、古代竜エンシェント・ドラゴンを三体も従魔にしている時点で世界の均衡何それ美味しいの? って状態だし、ボクとナトゥーフさんみたいは良好な関係を築いておきたいって思っているんだけど。だからさぁ、ポーチュラカさん達に『貴様、我々の神を支配するために来たというのか! 許さん!』みたいに武器を構えさせないでくれないかな?」


『ボクもちゃんと説明した筈なんだけどね』


 ナトゥーフが露骨に嫌そうにしている。……これだけ温厚な人を呆れさせるって相当だよねぇ。

 まあ、なんとなく察しがついていたけどさ。


『これは失敬! しかし、吾輩も吾輩よりも遥かに強い圧倒的強者との戦いを期待していたのである! ……確か、目的は吾輩の強化であったな』


「……ちゃんと覚えているじゃん。さっきの明らかにわざとだよねぇ?」


 ……まあ、戦いたいからこういった回りくどい方法を取っているんだろうけど。新手の戦闘狂か?


「勿論それもなのですが、本日はそれに加えて土の精霊王様との契約をお願いしに参りました」


「せ、精霊王様と契約だと!? 人間にそんなことができる筈が……」


『うむ、それができるのだよ!』


 あっ、呼んでもないのにイフェスティオが現れた。


『我が名はイフェスティオ! 火の精霊王である! 我はローザと、ミーフィリア、レミュアと契約しておるぞ! ……しかし、まさか、土の精霊王がエルフに味方しておるとは驚いた。……いや、その反応だとこの地の守護神的な存在というところか? 狡い! 我も崇められたいのだ!!』


「はいはい、偉い偉い」


『私の扱いがぞんざい過ぎる!!』


「同情するっスよ。なんか、師匠って結構酷い……いててて! 耳千切れる! 耳引っ張ってぐるぐるぶん回すのやめて欲しいっス! ち、千切れる!!」


 イフェスティオまで怯える中、満面の笑みで耳を中心にグルグルと回す。勿論、回復魔法を絶えずかけているから、耳が痛くても千切れることはない。


「流石は、ドSですね」


「あら? マグノーリエさんほどではないですわ! オホホホホ」


「……藪蛇になるから何も言わないでおこう」


「あら、それはどういうことかしら? プリムヴェールさん?」


「それ、口に出さなければ良かったのにねぇ。全く、馬鹿正直なんだから。まあ、その真面目で堅物なところも可愛いんだけどねぇ」


「プリムヴェールさんは渡しませんよ?」


「そんな凄みのある笑顔を見せなくていいよ? ボクが百合に割り込む訳がないじゃん。……本当に将来、尻に敷かれそうだねぇ、プリムヴェールさん」


 この百合っプルは圧倒的にマグノーリエが強いからねぇ。


『なるほどなるほど! ロイーゼに用があるのか! フハハハハ! とっとと出てくるが良い、小娘!』


『はっ、はひ! ぼ、ボクに用事ですか!?』


『おっ、出てきよったか! 久しぶりだな! ロイーゼ・ヴラフォス!!』


 濃い茶色の髪をジャギーにした、トパーズのような瞳の少女が姿を見せた。ドレス姿の土の精霊王は少し怯えている……気の弱い性格なのかもしれないねぇ。


「初めまして、ローザと申しますわ。もう大体ご承知だとは思いますが、私と契約を結んで頂けませんか?」


『……ぼ、ボクと契約を結びたいということは、他の精霊王とも契約を結びたい……ということ、だよね?』


「まあ、そうなりますね……」


『ん!? もしや、お前他の精霊王と連絡を取り合っていたのか!? 私だけ除け者にするとは!! どういうことだ!!』


『くっ、苦しい……』


 襟元を掴んでぐんぐんと揺らすイフェスティオ……まあ、何となく想像がついていたこととはいえ、彼女からしたら何でと言いたくなる状況だよねぇ。

 精霊王同士のやり取りだから、ポーチュラカ達はどうしたものかと困っている。……助け舟を出すしかないかな?


「ローザ嬢、流石にこれは助け舟を出した方が良さそうですね」


「ミスルトウさんのいう通りだねぇ……とりあえず、イフェスティオ、少し落ち着こうか?」


 無音で近づいて襟首を掴んでいた指を外すと、そのままお姫様抱っこをして連れ帰ってきた。


「これは絵になるのですよぉ〜」


「無駄にイケメンっスよね。ローザさんって……って、なんでウチだけ睨まれるんスか!」


『それで、ロイーゼよ! 汝はどうするつもりだ! 別段、契約したところでずっとこの地を離れることになるのではなかろう? まあ、この地は既に汝が居なくとも棲みついた精霊共の力で問題なく稼働するであろうが』


『そ、それはそうなんだけど……でも、他の精霊王の居場所を教えていいものなのか。それに、精霊王が一個人に力を貸すというのもどうかと思うの』


『貴様、それは私に対する当て付けか!!』


「はいはい、大人しくしようねぇ」


 お姫様抱っこされながら暴れるイフェスティオに覇王の霸気をぶつけて黙らせつつ、さて、どうしようかと思考を巡らせる。


『じゃあ、ボクと戦って実力を示せたら契約をしてあげるよ。勿論、希望者全員とね。そうだね……ボクの方はボクとポーチヴァ君。そっちはどうする?』


 エイミーン、ミスルトウ、プリムヴェール、マグノーリエ、ミーフィリア、レミュア、ナトゥーフ、オリヴィア、アルティナ……この中で今回、精霊契約をするつもりのエイミーン、ミスルトウ、プリムヴェール、マグノーリエ、ミーフィリア、レミュアのいずれかにお願いするというのがベターだけど(ボク一人で暴れてもいいんだけど、折角だからねぇ)。

 ……よし、決めた。


「あっ、嫌な予感がするっス!」


「アルティナ君、ここに来てもやることないって思っていたよねぇ。暇で暇でしょうがないって。だから出番を作ってあげるよ」


「三十六計逃げるに如かずっス!」


「しかし、アルティナは逃げられなかった」


 さて、これで二対二だねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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