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Act.8-157 西端の地ウォーロリア山脈帯の古代竜と精霊王 scene.2

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「文献には山エルフと森エルフという二つの名称が出てきたそうだわ。この森エルフというのは従来の森と共生するエルフ。一方、山エルフとは山で暮らし始めたエルフのこと……文献の執筆者は山エルフのことを『ドワーフに堕ちたエルフ』と見下していたそうだわ」


「それは……エルフが相当ドワーフを嫌っていたとは聞いていたけど、うん、なんというか……ディグラン陛下は笑って許してくれそうだけど、あんまりよろしくないからこの文献のことは火種にならないように隠しておこうか」


「師匠もそう言っていたわ。どの道、ドワーフにとっては旨みのない文献だし、わざわざ教えなくてもいいと思うのだけど。……その文献には、山エルフ達に土の精霊王が現れて助力をしてくれたと書いてあるのよ。精霊王という存在はエルフにとって重要な存在だから、帰国組もかなり迷った上で決断したんじゃないかしら?」


 しかし、戻ったエルフ達は滅びを迎えている。何があったかは分からないけど、サンクタルク王朝は滅びを迎えた。

 幼いレミュアを拾ったということだから、滅んでからはそれほど経っていないとは思うけど……もし、今も山エルフ達が生きているとしたら、結果として国を捨てた側の方が生き延びた、ということになるねぇ。


「しかし、イフェスティオの情報、全く当てにならなかったねぇ。……何が『土の精霊王は滅多に動かない。ローフェラの洞窟付近にいるだろう?』だよ……」


『し、仕方ないだろう! あやつは他の奴と比べても住処を滅多に変えないのだ! それに、「今の奴らの居場所は残念ながら分からないが、知っている限りの場所なら教えることもできるぞ?」と確かに私は言った筈だ』


 ……あっ、呼んでもないけど、勝手に自己弁護のために現れた。それでいいのかなぁ、精霊王。


『そもそも、二百年以上前の情報だからな!』


「まあ、自信を持って間違いないみたいに言っていたからちょっと言及しただけなんだけどねぇ。……この分だと、水の精霊王、闇の精霊王、光の精霊王についてもあんまり当てにならないと考えた方がいいかもねぇ」


『だから、そう言っているだろう! そもそも、精霊王といっても協力し合っている訳ではないのだ! 各々、自分のやりたいようにやっているというのが実像だからな。まあ、中には協力し合っている精霊王もいるだろうが……ほら、私達火の精霊は、その、エルフに嫌われている。森を燃やす私達は使役されることも無くずっとハブられてきたのだ! きっと、他の精霊達もあまり私達のことを良くは思っていないだろう!』


 なんかぼっち臭が漂っている精霊王だと思っていたけど、やっぱりコンプレックスが原因で他の精霊達にも近づかなくなってぼっちを拗らせているタイプか。

 ……紅羽は社交的だし、きっと火の精霊が全部が全部こういう感じじゃないとは思うんだけど。


「火っていうのは、確かに自然的なものとは思われにくいからねぇ。雷が落ちたところから山火事に発展し、灰は肥料となる。火も自然にはなくてはならないものなんだ。……ただ、やっぱり文明的なもの、恐ろしいものであるという認識はあるみたいだねぇ。実際、緑霊の森では最近になって火が使われてきているけど、まだ恐ろしいものだという意識が残っているでしょう?」


 あの後、ミスルトウも火の精霊王イフェスティオと契約したものの、エイミーン、プリムヴェール、マグノーリエの三人は火の精霊王との契約を拒否した。

 ミスルトウの場合は『神殺しの焔(レーヴァテイン)』の獲得が忌避感を無くすことに大きく貢献したようだけど……まだまだエルフの中で火が苦手という人は大勢いる。実際、エルフ族では火の魔法が使えても使わないという人がまだまだ多いからねぇ。


「人間は火と文字を獲得することで獣から進化したと言われている。火はそれだけ文明というものと深く関わっている一方、文明を破壊する力をも同時に持っている。かの邪神ナイアーラトテップがクトゥグアを恐れている理由も、一説には文明を焼き払う力があるからなんじゃないかと言われているくらいだからねぇ。だけど、それは水も風も土も同じ。光の面と闇の面というか、破壊的なところと便利なところのどちらも存在しているんだ。火がないと困ることも沢山ある。……そうじゃないかな?」


『うむ! その通りだ! 地震、津波、暴風……他の四大精霊が司るものにも恐ろしい面はあるのだ! ……しかし、まさか、土の精霊王が一部のエルフのためにわざわざ棲家を変えるとはな』


「そして、確実に古代竜エンシェント・ドラゴンも絡んでいるんだよねぇ。……まあ、なんとなく想像はつくよ。山の上という植物が育ちにくい環境で植物を育てるとなれば、豊穣の土地は欠かせない。後は、水と風……古代竜エンシェント・ドラゴンに水を司る者はいないし、風を司るラファールは今回の件に無関係となると、文献にあった土の精霊王の他に、水と風――二人の精霊王が絡んでいる可能性は十分にあり得る。――面白くなってきた!」


 もし、そうなら四大精霊王と全て契約することができるようになるよねぇ!? ……まあ、流石にそんなに上手くはいかないと思うけど。


『でも、ラングリス王国の入山許可がないとウォーロリア山脈帯には入れないのよね?』


「まあ、それはどうにかなるよ。……ナトゥーフさん、その古代竜エンシェント・ドラゴンさんには話を通してあるのかな?」


『行ったときに少しだけ圓さんの話はしておいたよ。楽しみに待っているって言っていたから……多分、大丈夫だと思うけど』


「なんというか……個性的な方で、ちょっと言葉をそのまま信じていいのか分からないの」


「まあ、今から考えても仕方ないし、とりあえずメンバーを集めて……今からでも大丈夫かな?」


「えぇ、私の方は大丈夫よ。師匠も大きな用事は無い筈だし大丈夫だわ」


『ボクとオリヴィアも大丈夫だよ?』


「それじゃあ、アルティナさんも含めて今から集めて行こうか?」


「ちょ、ちょっと待ってくださいっス! ウチはただお茶休憩に来ただけで――「しっかり休憩したんだから、その分しっかり働こうねぇ」鬼っス! ここに鬼がいるっス!」


 失礼な! 小豆蔲さんはそんなに酷くないぞ!!

 えっ、論点が違うって?



<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 結局、エイミーン、ミスルトウ、プリムヴェール、マグノーリエ、ミーフィリア、レミュア、ナトゥーフ、オリヴィア、アルティナというメンバーになった。アルティナは「ウチって関係ないっスよね!」と今でも抗議の声を上げているけど……いい加減疲れてこない?


 ボク達が向かったのはラングリス王国の王宮。とりあえず、騎士団詰所に向かい、エルセリス近衛隊長兼騎纏卿(全騎士団を統率する他国でいうところの総隊長)にクラウディアへの取り次をお願いした。


 許可が出て向かった先は謁見の間……ではなく会議室。


「本日はどうなさいましたか? ……あれから革命の後処理や人事異動など、なかなか国が落ち着かないので忙しいのですが。流石に手伝ってくださるということは――「それは内政干渉になるからねぇ。まあ、頑張って」ですわよね……」


 少ししょんぼりした顔になるクラウディアだけど……もし、ボクが悪い人なら簡単につけ込まれるよ?


「革命の解決でクラウディア陛下には一つ貸しがあったよねぇ?」


「えぇ、その件では大変お世話になりましたので……てっきり、ローザ様はあの件について貸し借りの話を出してくるとは思いませんでした。それで、わたくしに何を求めていらっしゃるのですか? 勿論、領土の割譲や爵位などではないことは分かっておりますが……かなりの人数ですし、エルフ族が若干多い? でも、獣人族も? さっぱり分かりませんわ」


「あっ、ウチは関係ないっスよ! お茶を飲んでいたら勝手に連れてこられたっス!」


「それは、まあ!」


「言っておくけど、別にボクが悪いとかそういう話じゃなくて呼んでもないのに勝手におやつだけ御相伴に預かりに来たんだから、その分しっかり働いてるもらいたいっていう話でねぇ。で、肝心な目的の方なんだけど……ウォーロリア山脈帯の入山許可を人数分もらいたいんだよねぇ。ほら、一流冒険者でも国の許可無しじゃ登っちゃいけないんでしょう?」


「なんだ、そういうことでしたか? 実力的に見てもローザ様でしたら何も問題はありませんわ。ラングリス王国に被害をもたらすようなことがあっても、全て殲滅して無かったことにしてしまいそうですし」


「……クラウディア女王陛下はボクをなんだと思っているんだろうねぇ。今日はスティーリアさんや欅さん達――従魔を連れてきていないから決戦対応モードじゃないんだよ?」


「ですが、スティーリア様の協力抜きでも『這い寄る混沌の蛇』の手勢を全滅させておりましたわよね? ……早急に、皆様の入山許可書を用意させて頂きます。こちらを登山道を封じる門守所の役人に見せれば通行は可能ですわ」


「ありがとうねぇ」


「礼には及びませんわ。……ところで、一つお願いしたいことがあるのですが、あの山はわたくし達からすれば未開の地です。戻ってきてから時間がある時で構いませんので、彼の地について分かったことをお聞かせ頂けないでしょうか?」


「勿論だよ。それじゃあ、行ってくるねぇ」


 その後、ラングリス王国最西端の地に辿り着き、入山許可書を門守所の役人に見せた。

 門が開き、いよいよ登山の始まりだ。ちなみに、ここ数十年は開いたことがないらしく、この扉が開くのを見たのは門守所の役人も初めてだったらしい。……そのせいか、単にメンテナンスを怠っていたからなのか、門が錆び付いていて、なかなか開かなかった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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