Act.8-151 王子宮筆頭侍女レイン=ローゼルハウト子爵令嬢のお見合い scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
アスカリッド、エリーザベト、翡翠の三人が帰ったところで、ボクもようやく予定していた実験に取り掛かることにした。
レイン先輩のお見合いが近々行われる。実際、統括侍女麾下の王宮の侍女を含め、精鋭がその会の進行役等として頑張ってくれることになっているし、王太后様、ヒゲ殿下、アーネスト宰相閣下、シモン王国宮廷近衛騎士団騎士団長の四人が立ち合いをしてくれる予定になっているんだけど、今回の件を発端とも言えるボクが参加しないというのはねぇ……と思ってねぇ、いや、野次馬的な意味で。
ただ、ローザ=ラピスラズリとして参加するのはちょっと違うと思うし、アネモネはもう面が割れているから謎の侍女として働くのは控えた方が良さそう。
じゃあ、いっそ新しいアカウントを作ったらいいんじゃないか? と思ってねぇ。
ベースにするのは、『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』のミレーユ姫のアカウントデータ。そこに、究極調整体のデータやエンノイアから抽出したアイオーンのデータ、ラナンキュラスのアカウントデータとカリエンテとスティーリアからご好意で提出してもらったデータを融合し……。
名前:エミリア=ソピアーナーヴァ
種族:真聖なる神々、古代竜、氷炎竜、龍人(神祖)
称号:ー
職業:剣帝(剣士系四次元職)、征夷侍大将軍(侍系四次元職)、大魔導帝(魔法系四次元職)、暗殺帝(暗殺系四次元職)、神竜騎士(イベント職)、神竜巫女(イベント職)、神子(神職系四次元職)、聖女(イベント職)
LV:99,999
HP:200,000(+210,000(+210,000(+220,000(+230,000
MP:180,000(+190,000(+190,000(+200,000(+210,000
STR:600,000(+610,000(+610,000(+620,000(+630,000
DEX:200,000(+210,000(+210,000(+220,000(+230,000
VIT:200,000(+210,000(+210,000(+220,000(+230,000
MND:200,000(+210,000(+210,000(+220,000(+230,000
INT:490,000(+500,000(+500,000(+510,000(+520,000
AGI:300,000(+310,000(+310,000(+320,000(+330,000
LUK:300,000(+310,000(+310,000(+320,000(+330,000
CRI:600,000(+610,000(+610,000(+620,000(+630,000
CHA:300,000(+310,000(+310,000(+320,000(+330,000
▼
職業のデータはリーリエなどから抽出しつつ……まあ、こんなところかな?
ミレーユと同じ白金の髪をミレーユ姫とは異なり(ちなみにミレーユ姫はショートカット)ロングに伸ばし、瞳の色はスティーリアと同じ深海色の瞳。
顔の造形はラナンキュラスに近い美形ではあるものの、カリエンテ、スティーリア、エンノイアの要素が混ざり合って……正直、ラナンキュラスからエミリアとの繋がりを認識するのは難しいんじゃないかな?
見た目的には目立つかもしれないけど、度の入っていない伊達眼鏡と長い髪を上手く調整して変な風に見えないように顔の一部を隠して、最後に侍女のお仕着せを来てしまえばもうどこからどう見ても普通の侍女……まあ、ちょっと無理があるかもしれないけど。
よし、完成。それじゃあ、この格好でレイン先輩のお見合いに紛れ込もう! ……と、その前に一応統括侍女のノクトに事情を伝えておこうかな? まあ、仮にボクだってバレてもアネモネの前例があるし、取り乱すことないと思うけど。
◆
<三人称全知視点>
レインのお見合いはヴェモンハルトに伝えられないまま実行に移されつつある。
とはいえ、お見合い自体が秘密裏に実行されているという訳ではないので、ヴェモンハルトもかなり早い段階で情報を収集し終えていた。
「……どうした、ヴェモンハルト? 頭を抱えて」
第二王子のルクシア、第三王子のヘンリー、第四王子のヴァン、第一王女のプリムラ――愛する弟達と妹の隠し撮りの写真で埋め尽くされた、正しくブラコンとシスコンを拗らせたヤンデレな変態の部屋と化した自室の隠し部屋(実は彼らが処分した私物などをこっそり拝借して蒐集する行為にも手を染めており、この隠し部屋の机の引き出しの中にはこれら蒐集物が収められている……御用されてもおかしくない犯罪者である)で、ヴェモンハルトは珍しく頭を抱えていた。
その隣には、ヴェモンハルトの婚約者であるスザンナの姿もある。
ヴェモンハルトが頭を抱えている問題は、スザンナにとっても極めて重要な問題であった。
「しかし、あのレインがお見合いか……何者かの意図を感じるな」
「ああ、そう思ってお婆様に話を聞いたら今回の件の全貌が掴めたよ。今回の件、やはりローザ嬢が絡んでいるようだ。……王子宮の侍女の一人である子爵令嬢のアルマの借金問題を解決する対価として、レインのお見合いを実行に移すことになったようだ」
「元々、レインは良縁を結ぶことを目的として行儀見習いから侍女になった。それを優秀だからと出世させ、婚期から遠退かせた責任は我らにあると言える。……しかし、願いを叶えられない者達に対して頗る優しいローザ嬢らしい行動だな。それを世間では対価とは言わないのだが」
レインはローゼルハウト子爵家の六女として生を受けた。
このローゼルハウト子爵家はブライトネス王国の貴族の中でもピジョット侯爵家と共に子沢山な家として知られており、ローゼルハウト子爵家では四女以降は自分達で良縁を結ぶようにという方針が取られている。
そのまま家に残るという選択を取ることはできないため、婚期を逃すことは死活問題だ。
……無論、侍女として誰とも結婚して生きていくこともできるだろうが、風聞的にはあまりよろしくない。
そのレインの婚期を遠退かせた原因はレインをヴェモンハルトの専属侍女兼王子宮筆頭侍女に抜擢したラインヴェルド、そして優秀な人間だからと束縛し、婚期を遠退かせたヴェモンハルトとスザンナにある。
それに、王子宮の筆頭侍女という立場は王子のお手付きになれる可能性が高いからこそ羨望を集めており、そのため嫉妬の視線に晒されることになるのだ。まあ、そのような可能性が高いからこそ、当然人選はしっかりとなされており、不祥事を起こすような人物はまず採用されず、上の地位に上がることもできないことになっているので、お手付きを狙う者達が王子宮に近づくことは不可能なのだが……。
つまり、レインにとって王子宮筆頭侍女という仕事は他の侍女達が羨むようなものなどでは断じてなく、寧ろ婚期を遠退かせるブラックな仕事だったのだ。
それを理解していたローザは遅かれ早かれこのような行動に出ていただろう。寧ろ、ここまで動かなかったという方が不思議なくらいだ。
「……まだ、シャルロッテ王妃の時のように処分されない分だけ良かったと思った方がいいかもしれないな」
あの時もローザは姉の無念を晴らしたいという願いを持つカルロスの味方だった。
彼女の投資家として活動の根底には、そのような願いがあっても叶えられるだけの何かが足りない者達を助け、応援したい……そのような気持ちがあるのだろう。損得勘定だけで動かないローザが唯一求めるものがあるとすれば、それは笑顔であり、願いを叶えられたという満足感だ。
「……つまり、私達はローザからすれば悪人という訳か」
「元々、私は酷いことをしている自覚があったが。正直、彼女は素晴らしい人材だ。彼女は手放すには惜しい。そんな彼女の存在に甘えてしまっていた。彼女の幸せや気持ちを踏み躙り、ただ、最良の人材として扱ってきた。ローザ嬢はそのツケを今精算するべきだと言っているのだろう。今回の場合、レインの望みは良縁を結ぶこと……今回のお見合いだけで決めなければならないということではないだろうが、確実に話は進むことになるだろう。だが、もし、今回のお見合いで相手が見つかれば……」
「最悪、彼女が侍女を辞す可能性もあるということか……」
ヴェモンハルトにも、スザンナにとっても、レインは気心の知れた相手で、信頼に足る仲間だ……少なくとも二人はそう思っていた。
レインの頑張りで成功した任務も数多くある。
『……少しは彼女のことも考えてやればいいのではないか? なかなか良縁を結べないのは間違いなく仕事が多いからだろ?』
『……まあ、そうなんだろうけどね。でも、一々新しい人に説明するのって面倒だし、実際にレインはきっちり仕事をしてくれるからね。それに、頼りになるから手放したくないし』
『……ならば、いっそ側室に迎えてやればどうだ? 半ばお手つきにしたようなものだろ? ……流石に私もこうやって振り回されて婚期を逃していくのは可哀想だと思うぞ』
『愛のない結婚って辛いとは思わないかい? まあ、尊い犠牲ということで』
『……やはり、クソ陛下の息子はクソ殿下か』
かつて、冗談めかして行ったやり取り……そこに今回、二人は真剣に向き合わなければならなくなったのである。
「……私は、ヴェモンハルト――お前の婚約者だが、別に他に側室が何人いようと興味はない。勿論、正妃という立場にもな。寧ろ、お前には国王になってもらいたくないと思っていたよ……大好きな魔法の研究の時間が減ってしまう」
「相変わらず魔法ヲタクだな。……だが、スザンナ的に側室がアリだとしてもだ……レインの気持ちはどうなる? そもそも、私はレインのことを愛してはいないんだぞ? それなのに……不誠実じゃないか?」
「……私はお前を愛していないぞ? その趣味は気持ち悪いと思っている。それは、お前もそうだろう? ただ、気心が知れているから、お互いの趣味を邪魔しないということで婚約者になった。……レインが愛ある結婚を望んでいるなら別だ。そうなれば、レインが真に好きな相手を応援すべきだし、結婚を機に侍女を辞めるとなれば止める手立てはない。……だが、彼女ももう子供ではない。そんなキラキラとした御伽噺のような恋に憧れてはいないのではないだろうか? 彼女の結婚願望の大元は家族に迷惑を掛けないため……そして、子爵令嬢として子爵家と結婚相手の家との間に繋がりを作らなくてはならないという義務感によるものだと思われる。何ら不思議なことではあるまい……この国の貴族がそういうシステムでこれまでやってきたのだから、そうやって考えるのは至極当たり前の傾向だ。第一王子と良縁を結べる、王家と繋がりを作れるというのは、その条件を満たして余りある。後は、彼女の気持ちだが……これは、彼女がどう思っているかに懸かっているな。……レインが私達のことを嫌っていなければ、あの仕事に苦痛以外の何事かを感じていたとすれば、ヴェモンハルト……お前にも勝機はある筈だ。好きか嫌いではなく、背中を預けるに足る人間か……そういったビジネスパートナーのような感覚で結婚相手を選んではならないのだろうか? ……勿論、彼女を娶る以上はお前に彼女を幸せにさせ、結婚して良かったと思わせる責任が生ずるが。……お前は、どうしたいんだ?」
「……今からでもきっと間に合う筈だ。――行ってくる」
ヴェモンハルトが急いで席を立って統括侍女の執務室の方向に向かって走っていく姿を見届けながら、スザンナはふと「ここまでが全て計算ずくだったのではないか」と思い至り、「最も信頼できる仲間を繋ぎ止めるために必死になっている」ヴェモンハルトの表情を思い浮かべ、微笑んだ。
「これもまた、一つの愛の形ということか」
それは、燃え上がるような情熱的な愛ではないかもしれない。
だが、心から背中を預けられるという信頼感は、その愛に決して劣るものではないのではないか。
そう、スザンナには思えてならなかったのだ。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




