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Act.8-150 公爵邸への三人の訪問者 scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 姫さま――プリムラとルークディーンのお見合いを兼ねたお茶会は無事に終わり、ルークディーンが厳しい鍛錬の末にドMになるというルートも近衛のアルベルトへの手紙と偶然王都にローザの姿で買い物に行っていた時に遭遇したルークディーン自身への忠告でどうにか回避できそうだ。

 ……いや、本当に偶然だったんだよ? こればかりは仕組んだとかないからねぇ?


 姫さまの婚約者がドMとか「それならゲームにお前がそういう設定を仕組まなければ良かっただろう?」という批判は聞き流して、断固として「ノー!」と言いたいし、そもそもドMはモネとヴァーナムだけで十分……ってか、正直あいつ二人もいらないんだけど。


 アルベルトからのこまめな手紙(まず間違いなく、プリムラとルークディーンの関係を盤石にするためにボクの力を借りたいだけなのだろう。本当にこんな小娘にまで気を遣わないといけないなんて本当に頭が下がるねぇ)に返信しつつ(無論、イケメンであっても男には興味がないんで、淡白で事務的な内容になっているけど)、アルマが社交界デビューをする重要なイベントである王女殿下の誕生日パーティまでは別段大きなイベントもないので(ルークディーンからアルベルトと三人で姫さまへのプレゼントを選びたいので、都合がつく時に一緒に買い物をして欲しいそうなので、ある意味それもイベントかもしれないけど……というか、それってどこかでローザとして有給貰わないといけないってことだよねぇ? 破綻来たすし)、王女宮筆頭侍女としていつも通りの生活を送っています。


 ……まあ、実際は直近で物凄い重要なイベントが引き起こされる予定なんだけど、今回、それにローザは(・・・・)不参加の予定なんだよねぇ。


 ということで、本日も王女宮筆頭侍女としての仕事を終え、ついでにビオラの事務仕事と各領地の見回りと、新作のロリィタの製作と納品とか、今週発売予定の新作小説とか連載小説とか週刊漫画とか、その他諸々の提出とかを終え、ようやくラピスラズリ邸に戻ってきたところで、帰りを待っていたように三人の訪問者がやってきた。


「アスカリッドさんとエリーザベトさんはまあ、お似合いだからいいとして――」


「ローザ、お似合いとはどういう意味じゃ!?」


「いや、そのまんまの意味なんだけどねぇ。そこに翡翠さんっていうのはまた面白い組み合わせだと思って。とりあえず、誰でもいいんだけど、こうなって経緯とボクを訪ねてきた理由を話してくれないかな?」


「カリエンテ殿に案内してもらったが、あまり王都の観光は楽しくなかったことは話だな? そのことをエリーザベトに話したら案内をかって出てくれたのじゃ。しかも、今回は食事一辺倒ではなく観光地巡りの他に、服や雑貨といった可愛らしく趣味の良いお店を沢山紹介してくれたのじゃ!」


 「どうじゃ! この服可愛いじゃろ!」と見せつけてきたロリィタを見て何とも言えない表情になってしまう。

 この甘ロリに分類されるロリィタはラズリーヌさんが店長をしている『Rosetta』で販売されているもので、最近ではビオラ傘下の『Rosetta』内で作られたオリジナルブランド商品や、こういった服を愛好する人々が立ち上げた新ブランドの商品も販売されているのだけど、このアスカリッドが持っているロリィタは明らかに『ミルキーウェイ』……つまり、ボクのブランドなんだよねぇ。


「エリーザベトさん、もしかして、知ってて誘導した?」


「さ〜ぁ? なんのことでしょ〜か〜?」


「? 何かあったのか?」


 ……面倒ごとになっても仕方ないし、アスカリッドには黙っておこう。


「とりあえず、観光は充分に楽しめたので満足しておる。さて、これからどうしようかと考えていたのじゃが……」


「そういえば、オルゴーゥン魔族王国に戻らなくていいの? 親御さん……というか、魔王様も可愛い娘がいなくなって今頃血眼になって探しているんじゃない?」


「……まさか、ローザ!? もう用事が済んだならとっととオルゴーゥン魔族王国に帰れと言うのではあるまいな!?」


「いや、言わないけど……帰りたければ帰ればいいし、残りたいなら残ればいいんじゃないかな? そもそも、アスカリッドさんは家出して来た身でしょう? その家出がいつまで続くかは知らないけど、できるならオルゴーゥン魔族王国との関係が今まで以上に拗れないようにして欲しいかな?」


「……まあ、帰国するつもりは更々ないが、どこかで連絡くらいは入れなければならないと思っている。そうなれば、魔王はすぐにこのブライトネスに侵攻してくるだろう。正直、ローザであれば魔王軍なんぞに苦戦などしないだろうが……今は別の問題がいくつも浮上しているのだろう?」


「いくつも、というか、主に『這い寄る混沌の蛇』関連だねぇ。まあ、正直、今魔王に来てもらうのは得策ではないかな。当面の間は魔王への接触は無しで、時期を見てアスカリッドさんに手紙を書くなどして連絡してもらうということでいいかな? ……それで、考えていたってことは何か決まったから報告しに来たってことだよねぇ? 別に、ボクはアスカリッドさんの上司でもなんでもないから報連相はいらないけど」


「うむ、あのテーマパークでエリーザベトを招待したじゃろ? その時から考えていたのじゃが、我も聖属性魔法を習得してみようと思うのじゃ」


 ……ほう、それは興味深い話になって来たねぇ。


「魔族は光属性魔法を操る聖女や修道士と相性が悪い。無論、それだけではなく人間の宗教はほとんどの場合、我々魔族を悪と認知していることも厄介なのじゃが……もし、闇属性の適性を有する者が多い魔族が聖属性を獲得することができたとしたら、それはつまり無敵になったということではないか!?」


「……いや、光と闇を習得したとしても無敵にはなれないけど……」


 即死とか、消滅とか、時空とかあるからねぇ……。


「まあ、実際に興味深い試みだとは思うよ」


「そう言ってもらえると思っていたぞ! ということで、しばらくはこのブライトネス王国とフォトロズ大山脈を往復して聖人の修行をしたいと思っている。ついでに、王都で稼ぐ手立ても見つかったしな」


「……稼ぐ手立てって?」


「うむ! 『Rosetta』に行った時に店長のラズリーヌさんに『専属のモデルになってくれませんか?』とお願いされたのじゃ。不定期で店員として働く、後は新作ができた時にカタログのモデルになるという内容で、二つ返事で引き受けたのじゃ!」


 あっ……ああ、うん、そうなんだねぇ。

 バイトとはいえ、アスカリッドがビオラ系列の店舗の社員になるとは……予想外の展開だねぇ。


「それで、翡翠さんはどうしたのかな?」


『私も以前から聖属性魔法に興味を持っていました。そこで、天上の薔薇聖女神教団の総本山に聖人の修行の方法についてお聞きしに行ったところ、筆頭枢機卿猊下から丁度エリーザベト様が聖人の修行なされているとお聞きしまして……そこで、エリーザベト様に先達になって頂けないかと相談しに参ったところ、丁度ローザ様の元に向かうとお聞きしたので同行したのでございます』


「それで、エリーザベトさんは二人の弟子入りを了解したの?」


「私は〜、お二人の弟子入りを心より歓迎致しますわ〜」


「ということみたいだよ。良かったねぇ、二人とも」


「『はい(はいなのじゃ)!』」


「そうそう、ドミティアさん、リヒャルダさん、ベラトリックスさん、サトゥルニナさんに頼まれて迷宮をエヴァンジェリンさんの迷宮と同じように改装したんだけど、もし聖人に至ったら三人で腕試ししてみたらどうかな? それと、アスカリッドさんにこれを渡しておくよ」


「これは……『時空魔導剣クロノスソード』!? つ、つまりローザは我を時空騎士(クロノス・マスター)に任命してくれるということか!? しかし、我は多種族同盟非加盟国のオルゴーゥン魔族王国の魔王の娘で……」


「ボクはアスカリッドさんを仲間だと思っているんだけどねぇ……それとも、ボクの認識が間違っているのかな? ……まあ、それはそれとして、この『時空魔導剣クロノスソード』は一応ボクの権限でプレゼントするけど、将来オルゴーゥン魔族王国が多種族同盟に加われば、オルゴーゥン魔族王国が保有する一振りという扱いになる。まあ、それも確定していない未来の話だからねぇ……アスカリッドさんにとってはどこ組織の保有かということは別に重要なことではないだろうし、気にしなくていいと思うよ。ということで改めて、アスカリッドさんを時空騎士(クロノス・マスター)に任命する。改めて説明するまでもないとは思うけど、時空騎士(クロノス・マスター)とは国家等から『時空魔導剣クロノスソード』を与えられた存在で、非常時には国家の軍の指揮から独立し、その非常時の戦争を好転させるために尽力することが求められる。力を与えられたものは、それ相応の働きを求められるということだねぇ。この時空騎士(クロノス・マスター)には多種族同盟から基本給与が支給される他、敵を討伐した際にはその強さに応じて臨時報酬が支払われる。ちなみに、これらは多種族同盟の予算から七割、スポンサーのビオラから三割を支給しているよ。まあ、黙って毎月決まった給与がもらえる訳だし、非常時も別に命を賭けて戦えとは言わない。寧ろ、死にそうなら全力で逃げること。勝てない相手には絶対に挑んではいけないし、その相手に勝てる強さを持つ人を頼ればいい。まあ、無理強いはしないし、アスカリッドさんが良ければだけどねぇ」


「こんなチャンスまたとないのじゃ! このアスカリッド・ブラッドリリィ・オルゴーゥン、謹んで時空騎士(クロノス・マスター)の役目、引き受けさせて頂く!」


 遅かれ早かれ、アスカリッドと出会った時点でどこかのタイミングで『時空魔導剣クロノスソード』を渡すつもりでいた。ただ、それが今になったというだけ。

 喜んでくれているみたいだし、良かったなぁ。


 時空騎士(クロノス・マスター)は今や一種のステータスとなりつつある。国家公認の実力者、希少な時空魔法を与えられた存在というのはそれだけでかなりの影響力があるからねぇ。

 まあ、力があるからこそ、その力を濫用する者の手には渡らないように心がけているんだけど。


 一応、ほとんどの国で時空騎士(クロノス・マスター)の地位をかけた決闘のシステムが存在しているのだけど、決闘そのものが行われたという記録はあまりなく(そもそも、誰が時空騎士(クロノス・マスター)であるかを公表していないからねぇ)、その数回も全て現職の方が勝利している。……まあ、それだけ時空騎士(クロノス・マスター)に選ばれる人は強いということなんだよ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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