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Act.8-117 フォルトナ=フィートランド連合王国建国前夜 scene.1 上

<三人称全知視点>


 残る対戦カードであった正統派の騎士剣術を使うミゲルと『剣聖』ダラスの試合は熾烈を極めたが、ミゲルが辛勝……した直後に、オルパタータダを撃破したローザに圓式を放たれて撃破された。

 リオンナハトとラインヴェルドの試合もローザの予想以上に白熱したが、やはりラインヴェルドの方が何枚も上手でラインヴェルドが勝利し、その後ローザとリオンナハトと以上の死闘を繰り広げたが、圓式には対応できず撃破された。


 試合で負けたラインヴェルド、オルパタータダはもう暫く続きそうな試合を闘技場の入り口付近で眺めていたが、そこにリオンナハトが声を掛けてきた。


「ローザ嬢からお聞きしたのだが、お二人は国王としては優れた人物だと聞いている。これから良き王を目指すのなら是非話を聞いておくべきだと聞いたのだが」


「ローザがマジでそんなこと言っていたのか? 俺達は別に良い王ではないと思うけどな」


「それは、私もそう思っている」


「なんかそれはそれで……まあ、親友が言いたいことも分かるぜ。政治面では失敗したことがないと、そう言いたいんだろうぜ? 剣を握って戦場に立ちながら、政治も行う国王という意味では確かにお前の理想に近いかもしれない。……ただ、俺も決して間違えないという訳じゃねぇんだ。……特に女性問題ではダメダメでなぁ」


 こういう人だから女性に関しても適当で、多くの問題を抱えているんだろうと考えていたリオンナハトだが、ラインヴェルドとオルパタータダの答えは全く予想外のものだった。


「随分と昔に、国王陛下と第一から第六の王子達、第一から第三の王女達、正妃と側妃三人に至るまでたった一人も残らず毒殺された事件が起きた。第七王子だった俺は王位継承の順番が回ってこないことを悟り、元々国王向きの人間ではないからと早々に冒険者として隣国の王子達とパーティを組み、王宮を離れていたんだが、その事件があったせいで国王に即位せざるを得なくなった。その頃には俺にも愛している女性がいたんだが、その人は平民だった」


 旅の途中で王都に一時期滞在し、立ち寄ったジリル商会で一目惚れし、諦めきれず、メリエーナに告白したラインヴェルド。

 当初は、王子としての立場を捨ててジリル家に婿入りすることを考えていたが、毒殺事件と血の粛清を経て立太子して王太子にならざるを得なくなる。


「俺はメリエーナを貴族に養子入りさせたりと様々な手を尽くした。だが、王族の立場はそれを許さなかった。……国のバランスを整えるために二つの公爵家からそれぞれ令嬢を娶り、嫉妬した片方の令嬢が暗殺者を雇ってメリエーナを殺された。その結果、娘のプリムラやメリエーナの生家の人達には随分と悲しい思いをさせてしまったな。俺はその件でローザから恨まれているんだ」


「まあ、俺も似たようなもんだ。俺は第三王子として生を受け、内心自分に王位継承権が回ってこないと考えていたから、早々に旅に出て冒険者となった。しかし、当時の国王が会食で他の者達が躊躇した得体の知れない貝を「旨い旨い」とお代わりをした挙句、毒に中ってそのまま死亡しちまってな。隣国の支援を受けた第一王子派と元老院を中心に形成された第二王子派が王位継承を巡って内乱を起こし、その煽りを食って第三王子だった俺を殺そうと動いたどちらかの陣営の暗殺者に暗殺を仕掛けられた。その時に俺は国王となる決意を固めてラインヴェルドとレジーナに助力を求め、力尽くで内乱を平定し、度重なる粛清で第一王子と第二王子、腐っていた元老院派や他国と繋がっていた貴族を一掃して国王になった」


 その際、オルパタータダは元老院の議長を自らの手で殺すなど、容赦無く自らの手を血で汚している。


「俺は幼い頃、舞踏会で出会った男爵令嬢のアーネェナリアに一目惚れし、その後何度か交流を重ねる中で仲も深まり、相思相愛になった。冒険者になって旅を始めた俺だが、いつかは王子の立場を捨ててあいつと結ばれたいと思っていたんだ。まあ、第三王子なんて居てもいなくてもいいと思っていたからな。当時の俺には婚約者もいなかったし、実際にそれで問題は無かった。だけど、俺が国王として即位するとなれば話は別だ。男爵令嬢という位の低かった彼女を正妃にはできず、秩序崩壊寸前の国を安定させるためにフォルトナ王国の古くからある名家の二つの公爵家の令嬢をそれぞれ娶らざるを得なくなった……彼女は身体が弱くて第三王子の息子を産んですぐに亡くなったが、亡くなるまではずっと公爵家出身の側妃からいびられて相当辛い目に遭わせちまった。まあ、正妃の方が擁護に回ってくれていたからまだブライトネス王国に比べればマシだったのかもしれないけどな。……って、辛いことにマシもクソもねぇか。……リオンナハト殿下、お前はきっと国王として愛を捨てるべきだったと思っているだろう? ローザも、俺やラインヴェルドが最終的に愛している人を傷つけ、追い込んでその子供達にも苦しい思いをさせたことを相当悲しんでいる……もっといい方法があったんじゃないかって。……それでも、何度やり直したってきっと俺はアーネェナリアを選んだだろうし、ラインヴェルドもきっとメリエーナ嬢を選んだだろう。自分の気持ちを蔑ろにしてまで国に尽くすことは俺には到底できなかったし、不器用な俺達にはそのもっといい方法っていうのを見つけることはできなかった。……正しいばかりじゃ解決できないこともきっとある。感情っていうどうしようもないものもあるし、きっと自分の大切なものと国王としての立場を天秤に掛ける時が来ると思う。そんな時は一度立ち止まってよく考えてみるといい。そして、友を頼れ。お前には俺達と同じように信頼できる友がいるんだろ? それと、アドバイスするなら俺達みたいな奴を反面教師にしろ。まあ、俺に言えることはそんなところかな?」


 それぞれの大切な者と国王としての立場の板挟みになり、結局、大切な人を失ってしまった二人の国王。

 「あまり参考にしてはいけない破天荒で悪餓鬼のような国王達だなぁ」と思っていたリオンナハトは、大切な人との愛を選び、結局報われることがなかった不器用な二人にちょっとだけ同情した。



<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ>


 試合の最終的な勝者はボクだった。最後に残ったアクアと圓式で激闘を繰り広げ、二十分くらい掛けて勝利……やっぱり、強いなぁ、アクア。

 その後、リオンナハト、カラックの二人とはここで別れ、続くダイアモンド帝国ではレイドール辺土伯爵ではミレーユ、ライネ、ルードヴァッハ、ディオン、マリアを下ろし、そのままフィートランド王国に向かった。


 フィートランド王国の王宮の上空付近から『飛空艇ラグナロク・ファルコン号』から飛び降りて王宮の中庭に降りたボク達。

 当然、警備の兵達が集まってきたけど、ティアミリスに睨まれて深夜にも関わらずすぐに国王達を叩き起こすために走って行った。

 ……この国で誰が一番権力を持っているかよく分かるねぇ。


 学園は既に新学期に突入しており、フィートランド王国の第一王子のギルヴァーム・ウーノ・フィートランド、第二王子のジェファス・ドゥーエ・フィートランドは不在。

 ちなみに、ミレーユ達を学園に直接送り届けても良かったんだけど、できればファーストコンタクトはフォルトナ=フィートランド連合王国樹立にしたいと思っていたからそれぞれの国から再度出発してもらうことにした。


 謁見の間に現れたのはフィートランド王国の国王ユリジェス・ロワ・フィートランドと王妃のベルティーユ・レーヌ・フィートランド、そして大臣のマルキオン・ジェルバフ侯爵をはじめとした忠臣が集結していた……とはいえ、ここにいる人達の発言権は皆無に等しそうだけど。


「本日より、このフィートランド王国はフォルトナ王国の従属国となる。異論は認めん」


 ティアミリスの一方的な宣言に、一瞬だけ静寂に包まれた謁見の間だけど、意を決したユリジェスが玉座から立ち上がり、ティアミリスを見つめる。その手は震えていた……一応、実の娘なんでしょう?


「私は、ティアミリスの願いを叶えてきたつもりだ。軍の指揮権も与え、この国は小国でありながらも強くなった。……流石に横暴が過ぎる。何故、フォルトナ王国だったか? 見ず知らずの海を越えた国に従属せねばならんのだ! 我らはこの地に住む民や貴族の纏め役としてこの国を統治している。民の信頼を裏切るよう真似、断じてする訳にはいかん!」


「ならば問おう、フィートランド国王。俺はこの国を強くした。俺が総隊長になる以前のこの国など一瞬で捻り潰せるほどにな。だが、俺は満足していない。これっぽっちもな。貴様は俺以上にこの国を強くできるか、何か考えがあるならお聞かせ願おう」


 実の父親に向けるものとは思えない鋭い殺気を湛えた瞳にユリジェスはたじろぐ。


「ティアミリス……貴女は何故、そんなに力を求めるのかしら? 戦いは何も生まないわ」


「愚かな考えだな、ベルティーユ・レーヌ・フィートランド。……俺の前世はフォルトナ王国の騎士だった。騎士団を任されるくらいの強さは持っていた。フォルトナ王国は剣術においては最強の名に相応しい国だった。その国がたった数日で滅ぼされた。戦いは何も生まない、確かに正論だ。だが、俺達がそうでも相手が戦う気ならどうする? 文明を破壊し、混沌を招くことを望む連中――フォルトナ王国を滅ぼした連中は、このペドレリーア大陸に根を張っている。国の長として民を守る意思があるというなら最善を選べ。元々、俺にこの国に対する愛国心などカケラもない。滅ぼされたいなら一向に構わん。俺は『這い寄る混沌の蛇』で連中を根絶やしにするために研鑽を続けるだけだ」


 ……意外にもティアミリスには愛国心、親に対する愛情があったんだねぇ。口は悪いけど、見捨てることだってできたのに、ティアミリスは強引なやり方だけどしっかりと説得しようとしている。

 ツンが多すぎるツンデレかな?


「……フォルトナ王国のオルパタータダ陛下、少し話をさせてもらいたい。庇護下に入ることで得られるメリット、こちらから出さなければならないもの、様々なことを勘案してどうするべきか決める」


「――国王陛下ッ!」


「まあ、こっちも相当無礼なことを言っているつもりはある。発案者はティアミリスなんだけどな……俺、別に国交が作れればそれでいいんだと思うけど。……色々と取り決めをすることはあるだろうけど、一つだけこの場で約束できることがある。俺の庇護に入った以上、そのことを後悔するようなことはしないし、させないつもりだ」


 その後、オルパタータダとユリジェスは応接室に入っていき、謁見の間は静寂に包まれた。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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