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Act.8-65 襲撃〜枢機卿邸と王国軍〜 そして……。 scene.2 -血塗れの神父と蛇の信者-

<三人称全知視点>


「不覚を取った……彼、相当強いよ」


 「まさか、こんなに強いとは思わなかったよ」と笑いながらヨナタンは膝をついた。

 ヨナタンはかなりの剣の使い手で、実際その強さはシューベルトと張れるほどだ。その彼が一対一で不覚を取ったという事実はオニキス達に衝撃を与えた。


「おやおや、遅かったですね、国王軍の皆様。しかし、皆様も人が悪い。ヨナタン大司教なんか私の話を聞こうともせずいきなり剣を抜いてきたのですよ? 戦いの素人であること私に、酷いとは思いませんか?」


「どうせ後で口を割らせるんだ。戦いながら拷問をする必要はねぇだろ? ……それよりも、ヨナタンがやられているっていうのはどういうことだ? 素人がコイツに勝てる訳がねぇだろ?」


「ありゃありゃ、これは手厳しい。……私はお恥ずかしい話、国王軍の皆様に剣で勝てるほど強くはありませんよ。ただ、私には大いなる魔神の加護がある! かの神の信徒達は私に世界を混沌に陥れよと、全てを破壊して秩序を壊せと、そう仰いました。この世界は、実にィ、醜いッ! 古臭い社会、形成された共同体、全ては滅び去るべきです!」


「お前はフォティゾ大教会の枢機卿だろう?」


「……そんなクソ忌々しい教えはとうの昔に捨て去りました」


「コイツの言っていることは本当だよ。枢機卿アンブラル=グレルストンはこの地に引きこもるようになってから一度も礼拝していない。中央から離れたコイツは全てのお勤めを大司教や司教に任せ、公の場に出てくる時には耳栓していたくらいだ。……その不自然さの意味がようやく分かったよ。コイツはとうの昔にフォティゾ大教会を捨てていたんだ。……今のお前は、何者だ? 一体何を信仰しているんだい?」


「私は『這い寄る混沌の蛇』の教典である『這い寄るモノの書』に共感し、信徒となった蛇教徒。全ての秩序を破壊する偉大なる神の思し召しを実行する神の使徒です」


 ローザがヴィオの正体であると考えていたのは『這い寄る混沌の蛇』の信徒だった。

 このアンブラルの発言で『這い寄る混沌の蛇』がこの大陸にも手を伸ばしていることが判明し、ヴィオの正体が『這い寄る混沌の蛇』の信徒である可能性も高まった訳だが、情報交換をしていないこの時点ではアクア達の頭の中では「『這い寄る混沌の蛇』? 何それ?」と疑問が湧いていた。


「ローザお嬢様なら何か知っているかもしれませんね」


「いずれにしてもまずはコイツを捕まえないことには始まらないな」


 基本的には武装闘気を、使える者は覇王の覇気を使って強化をして、更にオニキスとアクアが味方に《昇華》をアンブラルに《弱体化》を掛け、更にアクアの《王国》で、アクア、オニキス、ファント、ジャスティーナ、バチスト、ヨナタンが漆黒の幻影を憑依して強化され、そこにオニキスの《騎士団》が重ね掛けされ、アクア、オニキス、ファント、バチストの四人が強化される。

 ファントが《鎧武者》を使い、圧倒的な防御力を誇る巨大な鎧を生成する《巨大鎧》をその身に纏った直後――アンブラルが剣先をファントに向けた。


武装解除(エクスペリ・アームズ)


 ファントの握っていた『王国騎士の剣(エスカリボール)』が吹き飛ばされ、《巨大鎧》は砕け散り、武装闘気と覇王の覇気は解かれ、ファントに掛けられていた強化の膨大なエネルギーが跳ね返ったファントに無数の傷を刻みつけた。


 「武装解除(エクスペリ・アームズ)」は敵の武装を解除する魔法で、持っている武器は吹き飛ばされ、あらゆる能力強化は無力化されて、無力化された強化分のダメージが衝撃となって跳ね返ってくるという極めて厄介な魔法だ。

 使用魔力も大したことがなく連発できる。この魔法の前では実質あらゆる強化が封じられ、武器を扱うことも容易ではない。唯一の欠点は単体魔法であることか。


 誰かが必死に積み重ねたものをいともたやすく破壊する『這い寄る混沌の蛇』らしい魔法である。


 実は『這い寄る混沌の蛇』のアポピスが開発した魔法の一つで『蛇の魔導書』に掲載されている無属性魔法である。

 魔法が使えないと言っておきながら、アポピスは「魔法のないルールの世界でも使い方さえ分かり、魔力を保有していれば魔法が使える」ということをちゃっかり認識しており、実は無数の魔法を開発していたのである。

 それを定吉の前で口に出さず、魔法を使えない風を装ったのは定吉に要らぬ情報を与えぬためか。無論、定吉も話半分で聞いていたため、どっちもどっちである。


「ローザお嬢様の『ディスターバー』系の魔法に似ていますね。強化全部無効化してくるっていうのは厄介だな」


「……ったく、クソ面倒くさい魔法を使いやがるな。要するに、武装しなきゃいいんだろ?」


 アクア達は一斉に武器を収めると、武装闘気なども解除して一気に地を蹴って加速した。


「それでは、狙ってくれと言っているようなものですよ。鈍い呪い(スロウ・カース)――暗黒瘴気(マイアズマ)


 真紅の禍々しい魔法陣が展開され、乗った対象の身体を重くして敏捷を落とす効果が発動された。

 更に動きが鈍ったところに闇の瘴気を発生させて相手の身体を蝕む魔法が発動し、瘴気がアクア達に迫る。

 どちらも、『蛇の魔導書』に掲載されているものらしい厭らしい魔法だ。


 アクア達は全身に治癒闘気を巡らせ、息を止めて瘴気の中へと飛び込んだ。


「猪口才な、とっととくたばりなさいッ! 這い寄る石毒の蛇スリザリン・バジリスク! 石毒の蛇槍(バジリスク・ランス)


 石化効果を持つ黒い毒を蛇状に変化させ、地を這うように地面スレスレを走らせて襲わせる『這い寄る混沌の蛇』のアポピスが開発した魔法の一つで『蛇の魔導書』に掲載されている闇属性・毒属性複合魔法を見気を駆使してバチストが躱すと、ほぼ同時に石化効果を持つ黒い毒を槍状にして放つ『這い寄る混沌の蛇』のアポピスが開発した魔法の一つで『蛇の魔導書』に掲載されている闇属性・毒属性複合魔法をジャスティーナが裏武装闘気で瞬時に顕現した剣に神光闘気を一瞬流し込んで切り裂いた。


「ならば、瞬間現断(リアリティ・セクタム)!」


 ヨナタンを追い詰めて重傷を負わせたあらかじめ指定した地点に発動し、相手の魔法的防御の完全無効化して狙った対象を切り裂く『這い寄る混沌の蛇』のアポピスが開発した魔法の一つで『蛇の魔導書』に掲載されている無属性魔法を発動する……が、瘴気の中を見気と魔力を利用したソナーを駆使して移動していたアクア達は切断魔法が発動する魔力の流れの兆候を素早く感じ取り、器用に回避する。

 物体は切り裂かれ、生物を狙った場合は通常で切られた時と同じく血液が噴出する極めて強力な魔法だが、回避されれば意味はない。ただ、大量の魔力を消費しただけだ。


殻-邪悪の樹-(クリフォト)!」


 アンブラルが黒い種を放り投げた。邪悪の樹の種が急速に成長し、闇の枝を四方八方に伸びてアクア達に殺到する。

 アクア達は裏武装闘気の剣を作り上げて高速の斬撃で瞬く間に邪悪の樹の枝を破壊し、一気にアンブラルと距離を詰めた。


「ならば、死の方がマシだと思えるほどの苦痛を味わえッ! 苦痛の叫びスクリーム・クルーシオ


 アンブラルが剣先をアクアに向け、対象人物に、死の方がましだと思わせるほどの苦痛を与える『這い寄る混沌の蛇』のアポピスが開発した魔法の一つで『蛇の魔導書』に掲載されている暗黒属性魔法を放つ。


「死んだことがない奴が死の痛みを語るんじゃねぇよッ!」


 アンブラルの放った想像を絶する苦痛をアクアは耐え抜くと、鋭い眼光でアンブラルを睨め付け、再び顕現した裏武装闘気の剣で峰打ちを放った。

 アンブラルの意識が暗転する。ファントが取り出した「ローザが開発した魔法の発動を封じる魔導具の手錠と足枷」を嵌めると、後からやってきた騎士達に引き渡した。


 こうして、撃破されて拘束されたアンブラルはフォルトナ王宮の中央軍部の地下にある完全なる牢獄に移送されることになる。

 その牢獄は一部、拷問が許可されている凶悪犯罪用のものだが、アンブラルは決してあれ以上ことを話はしないだろう。


「まあ、ローザさんに来てもらった方がいいかもしれないな? 色々と引き出せる情報もあるかも知れないし」


「ついでにアイツが言っていたことも纏めておいた方がいいかもしれないな」



<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト>


「はぁ!? まあ、ヨナタンさんが神父として潜入しているって話は聞いていたけど、証拠を握ったのが昨日で、ついさっき移送が終わって拷問が始まっているとか聞いていないんだけど!!」


『そりゃ言ってないからな。お前が可能なら来て欲しいんだけど』


「……こっちは別件で驚かされてサプライズにお腹いっぱいなんだけど。ってか、どいつもこいつもいい歳こいて報連相できないとか本当にやめて欲しいよ」


『ん? 何があったんだ?』


「冒険者ギルドの本部長の前世がモネだった』


『……はっ? おい、それマジか!?』


「しかも、ラインヴェルド達は知っていたみたい」


『嘘だろッ!? なんでそんなクソ面白いことを黙っているんだよ、アイツ!?』


「知らんよ、お前ら似たもの同士だし、思考トレースできないの? ……とりあえず、そっちの牢獄に相部屋でもう一人突っ込む予定だから部屋開けとけって伝えておいて、頼める?」


『ん? よく分からないけど、いいぜ?』


「ってことで、フォルトナ王国に移送して二人纏めて拷問ってことでいいかな? できれば、ルイ=マギウスさんにも同席してもらいたいんだけど」


「分かりました、予定を入れられるか確認を取ります」


 夕刻、ヴァーナムと話をしながら茶を啜っていた時にオルパタータダから電話が掛かってきた。

 電話が掛かってくるのとほぼ同時にオニキスから届いたメールに『這い寄る混沌の蛇』の名前が載っていることに気づいたボクはどうせなら一緒に拷問した方が良くない? って思った訳。


 アンブラルは完全に黒だけど、ヴィオはグレー……まあ、ヴィオが『這い寄る混沌の蛇』の信徒じゃなかったとしてもどの道連中が動き出しているのは明々白々――あの【濡羽】に協力していたって時点で黒だからねぇ。……『這い寄る混沌の蛇』の教典『這い寄るモノの書』の写本すら見つからなかったからなぁ。どこに隠したんだか。

 まあ、これに関するラインヴェルド達への報告は後でいいかな? 別にボクだけ除け者にされたことに対して不貞腐れている訳じゃないよ? 多分。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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