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Act.8-64 襲撃〜枢機卿邸と王国軍〜 そして……。 scene.1 -中央軍と警備隊の死闘-

<三人称全知視点>


 ――あちらこちらから溢れる悲鳴、巻き起こる混乱、そして死闘。


 混沌とした戦場に裏門から中央軍銀氷騎士団第一師団長ファンマン=ロィデンス、騎馬総帥レオネイド=ウォッディズ、中央軍第十二師団長のミゲル=セラヴィスが率いる銀氷騎士団、近衛騎士隊、騎馬隊、兵――かき集められて混沌とした混成部隊が乗り込んだ頃、アクア達も塀を乗り越えて聖堂区画に乗り込んだ。


「あの塀を軽々と乗り越えてきやがっただとッれ!?」


「ありゃりゃ、前門と後門に分かれて中央が手薄になったと思ったが、まだまだいるなぁ。聖堂騎士」


「ここは俺達に任せてください! よしっ、いけウォスカー!」


「うむ。まずはあの邪魔な盾を崩すか」


「ははっ、何が『優柔優秀なエリートの聖堂騎士団』だ。編成崩しゃあ、一気にガタガタになるぜ」


 一斉に盾を構え、防御してきた聖堂騎士達にウォスカーが武装闘気を纏った剣で砲弾のような威力の斬撃を放った。

 盾が打ち砕かれた瞬間を狙い、素早く走り込みながらファイスが防御の崩れた聖堂騎士達を数人吹き飛ばした。


雨纏誅刺(ウテンチュウシ)


 『王国騎士の剣(エスカリボール)』に水の魔力と武装闘気、神光闘気を纏わせ、神攻闘気、神堅闘気、神速闘気を纏うと地を蹴って聖堂騎士に肉薄すると、激流を細い錐状に変化させて騎士を鎧ごと刺し貫いた。


図書館の守護者アーカイヴ・ガーディアン! 月銀の纏光クレール・ド・リュンヌ


 ジャスティーナは月属性のオリジナル魔法で光属性魔法に対する耐性を低下させる代わりに強力な身体強化と耐久力強化を行い、銀色の月属性の魔力を纏わせて聖堂騎士達を斬り裂く。


「大した強さではありませんね。ガッカリですわ」


「ジャスティーナさん、そりゃトーナメント参加者達と比較したら可哀想だぜ」


 こいつら程度、武装闘気を纏わせた斬撃だけで十分だろ? と思っているファントはアクア、オニキスと共にウォスカー達が崩した中へと勢いよく雪崩れ込んでいく。

 教会が防衛のために立ち上げた聖堂騎士団は、神への忠誠心のもと暗殺から拷問までしてのける。本来は手を抜いて対処すべき相手ではないのだが、ファント達にとっては欠伸が出そうなほど戦力に絶望的な差があり過ぎた。


 シューベルトからも手を抜くなとは指示されていた。

 ――降伏を示すのであれば、話は別だが。


 とはいえ、オニキス達の役割は聖堂騎士達の殲滅ではなく、枢機卿アンブラル=グレルストンの確保だ。

 突破して中に乗り込むことが最善であり、一人ずつ聖堂騎士達を叩き潰す必要はない。


「邪魔だッ! 道を開けろッ!!」


「嘘だろ……! あの女みたいな男の子、とんでもなく強いッ!?」


「誰が女みたいな男の子だッ!? 私は女だ、なんで男装と思い付かないんだよ!?」


「あはは、超ウケる! もう一人の親友は見た目は女の子なのにな? 本当に目が節穴だよな、こいつら」


「おい、ファント。それどういう意味だ?」


「だって中身はまんまオニキスじゃねぇか?」


 いつものメイド服ではなく共通の騎士装備のアクアが、ファントにジト目を向けるが、ファントは「あはは、ウケる」と笑い続けていてまるで効果がないようだ。

 心臓を狙い、容赦なく殺しに掛かってきた騎士達を逆手に構えた剣で首を切り落として即死させる。流れるように戦闘に戦闘を重ねながらアクア達が枢機卿邸に乗り込んだのは開始から十分が経過した頃だった。


「ぐぬぬ、やはり一番乗りはアイツらか」


「まだ負けが決まった訳ではありません!」


 「師団長のために――ッ」「うおぉぉ!」と闘志の漲った雄叫びを上げて活躍している第六師団を横目で見たファントは「相変わらずだな、あの師団は」と嬉しそうに笑った。



 枢機卿邸を奥へと進み、馬車二台分以上の幅がある大きな階段を駆け上がる。

 後方から破壊音が響いてきた。どうやら、前門と後門から進軍している部隊もかなりの速度で侵攻しているらしい。


「なんだっ、あの小さい奴は……!」


 真っ先に弾丸のように突撃していくアクアに待機していた聖堂騎士達が困惑の視線を向けるが、アクアは止まらずに駆け抜けた。質問に応える義理はない。剣を振って邪魔をしてきた聖堂騎士を斬り返し、奥を目指す。


 階段を駆け抜け、曲がり角の廊下を走り、階段が見えなくなったところに配置されていた聖堂騎士の奇襲を躱して盾ごと武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣で刺し貫いた。

 だが、ここで妙なことが起こる。刺し貫かれた筈の聖堂騎士が斬撃を放ってきたのだ。


 アクアは素早くバックステップで距離を取って聖堂騎士の攻撃を躱すが、その瞬間には床が砕けるほどの速度で踏み抜いた聖堂騎士が大量出血する腰の傷を庇うこともなく埒外の斬撃を叩き込んできた。


「おい、大丈夫か!? もう一人の相棒!!」


「あァッ! 大丈夫だッ! 【天使之王】――天使化!」


 天使化して顕現した白い光の翼を駆使して高速で聖堂騎士に肉薄したアクアは聖堂騎士が斬撃を放つ前に武装闘気と覇王の霸気を纏わせた『光を斬り裂く双魔剣(カレドヴールッハ)』で騎士の首を切り落とした。

 今度こそ聖堂騎士は動かなくなるが、後方から聖堂騎士達がゆっくりと進軍してきた。


 表情が乏しく、眼光鋭い騎士は一階を警護していた聖堂騎士達とは明らかに雰囲気が異なる。


「アクアさん、どう思います?」


「身体強化が為されている様子ではなかった。どちらかというと本来庇う筈の傷を庇わず、強引に攻めてきた感じだな。捨身というイメージが一番合う」


「なんらかの術が掛けられているのは間違いないでしょうね。とりあえず、倒していけばいいと思いますわ」


「まあ、結局そういうことになりますね。月銀の纏光クレール・ド・リュンヌ


雨纏循延(ウテンジュンエン)


 ジャスティーナは『王国騎士の剣(エスカリボール)』に銀色の月属性の魔力を纏わせて聖堂騎士に斬り掛かり、バチストは『王国騎士の剣(エスカリボール)』に纏わせた水の魔力を大きく引き伸ばし、循環させることで大きな流れを作り出すことで宛ら回転鋸のように水の刃を変化させると、武装闘気を纏わせた回転鋸のような水の刃を飛ばして聖堂騎士の胴を真っ二つに切り裂いた。

 

 一斉に盾を構え、防御してきた前方の聖堂騎士達をウォスカーが武装闘気を纏った剣で砲弾のような威力の斬撃を放って吹き飛ばし、盾が打ち砕かれた瞬間を狙い、素早く走り込みながらファイスが防御の崩れた聖堂騎士達を数人吹き飛ばした。

 吹き飛ばしても立ち上がってくる騎士をアクア、オニキス、ファントが『王国騎士の剣(エスカリボール)』を手に突撃しながら容赦なく首を落としていき、バチストとジャスティーナがその後を追い掛ける。

 先には行かせないと追い掛ける聖堂騎士達の前にウォスカーとファイスが立ち塞がった。


「こっから先に行きたきゃ、この隊長補佐、副隊長補佐の最強コンビを倒してから行きやがれ!」


「うむ、ここから先には通さん」


 ファイスがニヤリと笑い、ウォスカーが紳士然とした笑みをにっこりと浮かべた。

 そこに悪意は感じられないのに、一目見て「あ、堪忍袋が切れてる」という表情だ。しかし、フォルトナ王国の若い騎士なら本能的な冷気を感じ取って血の気が引きかねないウォスカーと相対しても聖堂騎士達は全く臆す素振りすら見せずに斬撃を繰り出す。


「全ては聖神フォティゾのためにッ!」


「「「「「全ては聖神フォティゾのためにッ!」」」」」


 その斬撃すらフェイクだと気づいたのは、口を真一文字に閉ざしていた聖堂騎士の一人が「忠誠の言葉」を口にした瞬間だった。


「ウォスカーッ! 退避だァッ!!!!」


 ファイスの叫びを聞いたウォスカーがファイスを抱えてアクア達の方へと走った瞬間――フォティゾ大教会の聖職者達の中で受け継がれた奥の手の自爆魔法「最後の忠誠ラスト・ロイヤルティー」が発動し、内部から聖騎士達を燃やし尽くすように無数の爆発が巻き起こった。



 ウォスカーとファイスが請け負った二階の廊下以降には聖堂騎士達の姿は無かった。

 恐らく、彼らが枢機卿邸に配置された最後の防波堤だったのだろう。


 アクア、オニキス、ファント、ジャスティーナ、バチストの五人は廊下を走った。

 途中、最後で大爆発が巻き起こったが、五人は歩みを止めない。

 ウォスカーとファイスがあの程度でやられるとは思わないからだ。


 そもそも自爆魔法「最後の忠誠ラスト・ロイヤルティー」の存在は事前の会議で情報が共有されていた。そのキーワードも含めて事前に伝えられていたのだから、軍事のことに関しては真面目に覚えるウォスカーとファイスが忘れていることはないだろう。


「でも、まさか実際に使うとは思わないよな。てっきり信教を忘れていたんじゃねぇかと思ったが」


「どうなんでしょう? その点、私はずっと疑問に思っていました。なんだか歪みがあるように思えるのですよね」


「つまり、バチストはフォティゾ大教会の敬虔な信徒達が敬虔な信徒のままフォルトナ王国崩しに加担したいって言いたいのか? だけど、フォティゾ大教会はフォルトナ王国で唯一信仰されている宗教で、国家との繋がりは大きいだろう? なんでわざわざ足場を自分達で崩そうという真似をするんだ?」


 アクアが男言葉で疑問を口にする。これはここにいる誰もが思っている問いの代弁だった。

 今回の件は明らかにおかしい。まるで、何者かの意図によって歪められているように、明らかにフォティゾ大教会の反乱分子達の向かっている方向が信仰している筈のフォティゾ大教会の利益と食い違っている。


 爆撃の音が消えた後、アクア達の耳朶を剣戟が打った。


「誰か一番乗りがいるのか?」


 アクア達はそのままドアノブごと引きちぎられ(・・・・・・)、扉が開けっ放しになっている枢機卿の執務室へと飛び込んでいく。

 その先に居たのは――。


 老いにさしかかった白髪交じりの髪、どっしりとした印象のある贅肉の付いた身体に、高価な上級聖職者の衣装を纏い、黒い刀身の剣を握った枢機卿アンブラル=グレルストンと――。


 血塗れの剣を持ち、返り血と自分の血で染まった白を基調とした神父服を纏うヨナタン=サンティエの姿があった。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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