Act.8-46 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.3 上
<三人称全知視点>
第二回戦第三試合、ヴェモンハルト率いるパーティは大胆な作戦を取った。
第一回戦では遂に攻め込まれることが無かった本陣にいたヴェモンハルトとスザンナが、二人で敵本陣を目指し始めたのだ。
今回のヴェモンハルトパーティの作戦はヴェモンハルトとスザンナの二人が各個撃破で回りながら撃破していき、アゴーギク、ケプラー、ヒョッドル、シュピーゲル、カトリーヌ、リサーナ、ミーフィリア、ホネスト、ヴィクトスは本陣で待機をするというものである。
一度に撃破できる数は相対的に減るものの、仮に倒された場合でも失点を大きく抑えることができる。……とはいえ、ヴェモンハルトとスザンナがこの第三試合でこの作戦を強行したのは、自分達も戦いたいという至極プライベートな理由であったが。
とはいえ、このトーナメントは参加者全員が戦いに触れ、思う存分暴れられなければ意味がないものだ。
ヴェモンハルトとスザンナのこの作戦はローザのトーナメントを開催した意図に沿ったものであると言えるだろう。
さて、ヴェモンハルトとスザンナが最初に遭遇したのはバルトロメオとソットマリーノの二人だった。
「おっ、マジか……大将の殿下が出歩いていいのかよ?」
「一回戦ではまともに戦えなかったからね。だから、二回戦では私とスザンナで動こうと思って。何か不都合があったかな?」
「いや、不都合っていうか……対策っていうか。【ブライトネス王家の裏の杖】の代名詞と言えるあの魔法の対策がそこまで上手くいってなくてな。このままだと俺もソットマリーノ殿下も一瞬でやられちまいそうだからな」
バルトロメオは『深海の主の聖剣』を構え、魂魄の霸気《剣》が【再解釈】によって変化した《戦騎士》の戦騎士の鎧型のエネルギーを纏う《幻騎士》と無数の剣を顕現し、縦横無尽に攻撃を仕掛けることができる《剣》を発動しながら苦笑いで答えた。
その隣ではソットマリーノが二振りのサーベルに武装闘気と覇王の霸気、激流を纏わせてヴェモンハルトとスザンナを動向を窺っている。
「「共振共鳴、真紅爆裂」」
「させるかよッ! ――領域支配!」
同属性の魔力に対象となる魔法を転写し、対象と同じ状態から同レベルの魔法を発動する「共振共鳴」によって増幅され、四倍になったスザンナが完成させた水魔法と火魔法の複合からなる対人殺傷魔法を最適化して効率を上昇させ、魔力消費を削減した対人殺傷魔法「真紅爆裂」に対し、バルトロメオが行ったのは小さな「マナフィールド」を作り上げるという行為だった。
遠距離で魔法を使用する場合、その魔力を術者の力で改変することで魔法を発動する。それは「真紅爆裂」も例外ではない。
「領域支配」とは厳密に言えば「マナフィールド」とは異なる。
大気中全ての魔力を支配する「マナフィールド」と魔力の膜を纏う「マナオーラ」の中間に位置するもので、自分の周囲の魔力を自分の支配下に置くことで、相手の魔法を無効化するというものだ。
より正確に言えば、術者を中心とした一定のエリアを、「事象が改変されない」という魔法で覆うことにより、相手の魔法による改変を阻止するというものである。
大気中の魔力を全て支配下に置き、どこからでも自分の魔法を発動できるようにする「マナフィールド」とは対照的な守りの魔法だが、一撃で暗殺を成功させてしまう「真紅爆裂」のような魔法には極めて効果的な対抗魔法である。
通常の「マナフィールド」であれば、干渉力が上回れば相手の「マナフィールド」を崩して魔力支配件を奪い取ることができる。一方、「領域支配」は改変されないという魔法が発動されている上から魔法を割り込んで発動しなければならないため、よりコストが嵩むことになる。
例えば、吹雪を発生させる魔法のちょうど真ん中に火を発生させる魔法を使用する時、実は魔法が発動されていない場所に魔法を発動する以上の魔力を消費してしまう。
「マナフィールド」を利用して魔力を取り込み、回復できる魔術師と異なり、自然回復に頼らなければならない魔術師にとってはこの消費が後々になって大きな差を及ぼすこともある。
バルトロメオとソットマリーノはその高い干渉力によって「真紅爆裂」の発動を阻止すると、そのままヴェモンハルトとスザンナに斬りかかった。
無数の《剣》が二人に襲い掛かり、ソットマリーノのサーベルから水の刃が連続して放たれる。
「「共振共鳴、爆裂領域」」
スザンナが完成させた水魔法と火魔法の複合からなる領域魔法を最適化して効率を上昇させ、魔力消費を削減した領域魔法「共振共鳴」によって四倍となり、水の刃を一瞬にして気化させる。
「劫火の剣、疾風の矢撃、水撃の奔流、岩石の鉄槌、光燦の回転渦!」
「極寒の棺柩」
更にヴェモンハルトがローザによって改良された自身のオリジナル火魔法、風魔法、水魔法、土魔法、光魔法を発動してバルトロメオの《剣》を確実に撃ち落としていき、スザンナが開発したオリジナル氷魔法を基にローザが改良を加えた汎用強撃氷魔法が大気諸共一瞬にして《剣》を凍結させていく。
「天からの一撃」
ヴェモンハルトが圧縮した風を鉄槌のように降らせる汎用風魔法「蒼穹衝槌」を基にローザが改良を加えた汎用強撃風魔法を発動し、圧縮した風を鉄槌のようにバルトロメオとソットマリーノの上に降らせた。
魔法内部で魔法を発動するのは魔力の消費が著しく、相手以上の干渉力も必要となるが、範囲外から魔法を発動すれば問題なく攻撃することができる。
武装闘気の硬化によって風魔法の一撃を耐え抜いたバルトロメオとソットマリーノだったが、そこでヴェモンハルトとスザンナの攻撃が終わった訳ではない。
「「マナフィールド!!」」
ヴェモンハルトとスザンナが強引に魔力を支配し、少しずつ魔力の支配領域を広めていく。
やがて「領域支配」の範囲にヒビが入り始め、少しずつ少しずつヴェモンハルトとスザンナの魔力に塗り替えられていった。
そして、「領域支配」が不安定になったところを狙って再びヴェモンハルトとスザンナが「共振共鳴」を発動して四倍の「真紅爆裂」を放つ。
今度はバルトロメオもソットマリーノも抗えず、一瞬にして真紅の泡と化して爆裂四散した。
◆
結局は爆裂四散したバルトロメオとソットマリーノだが、ヴェモンハルトとスザンナ相手には寧ろ善戦した方であった。
ヴェモンハルトとスザンナが次に遭遇したのはイリーナ、クラリス、プルウィア、ネーラ、ヴァルナーのルヴェリオス共和国組だったが、バルトロメオとソットマリーノ戦から学んだヴェモンハルトとスザンナが「領域支配」を使われる前に「共振共鳴」と「爆裂領域」のコンボを駆使してあっさりと撃破した。
イリーナ、プルウィア、ネーラ、ヴァルナーの四人は剣技や武技を基本戦術としている。
全体的に魔法の比重が限りなく低いパーティだったため、「領域支配」を仕掛けられるのが「マナフィールド」の心得があるクラリスたった一人であったこともこの結果に大きく影響していたと言えるだろう。
イリーナの《箱猫》でも広範囲攻撃を回避することはできず、裏の見気を駆使して気配を消していたヴェモンハルトとスザンナを発見することができなかったため、唯一「領域支配」を使えるクラリスの行動が遅れた。
そのため、五人は無防備を晒してあっさり撃破されてしまったのである。
しかし、ここでヴェモンハルトとスザンナは一つの失態を演じた。
イリーナ達の戦いの場にアクアとディランが居合わせてしまったのだ。
ディランの《影》の力を駆使して戦場を移動していたアクアとディランは敵の本陣を目指す途中、偶然イリーナ達とヴェモンハルト達の戦いに遭遇し、イリーナ達が「爆裂領域」であっさりと撃破されたのを確認すると、すぐにヴェモンハルトとスザンナ撃破のために動き出した。
「――黒影の抱擁」
「――ッ! 仕掛けてきたか!」
バトルロイヤルで戦闘経験のあるスザンナが《影の世界》内部から干渉し、ヴェモンハルトとスザンナの影から無数の腕のようなものが伸び始めたのを目視し、ヴェモンハルトと共に空歩を駆使して上空へと上り始めた。
その二人を影の腕が追いかける。
「スザンナ、《影の世界》の入口を発見しました」
「ヴェモンハルト、飛び込むぞ」
「――させるかッ!!」
《影の世界》から【天使之王】によって天使化し、天使の加護によって聖なる光を纏ったアクアが飛び出した。
「行ってこい、相棒!」
埒外の速度であっという間にヴェモンハルトとスザンナの高度に到達したアクアが『光を斬り裂く双魔剣』に【劇毒之王】の「劇毒之纏剣」を発動して劇毒を纏わせ、圓式基礎剣術の不可視の斬撃を放とうとする。
「爆裂領域」
しかし、それよりも先に魔法を発動準備を整えたスザンナの液体分子の振動によって対象の水分を加熱し、体内の血液の液体成分である血漿が気化させ、その圧力で筋肉と皮膚が弾け飛ばす魔法がアクアを一瞬にして真紅の泡へと変えた。
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