Act.8-44 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.2 己
<三人称全知視点>
ラインヴェルドとオルパタータダがラファールと遭遇したのは、丁度バダヴァロートを倒し終え、敵本陣を目指して移動しようとしていた時だった。
「さあ、どうする? ラファール、お前は先にどっちと戦いたい? 意見を尊重してやらないでもないぜ?」
流石に古代竜相手でも二対一で戦うというのは卑怯だよな? という前提で話すラインヴェルドに対し、ラファールは表情一つ変えぬまま。
『お二人でも一人ずつでも変わりません。そうですね、二対一で構いませんわ』
「――そう来なくっちゃな!」
ラファールの言葉に満足したラインヴェルドとオルパタータダがニヤリと笑った。
そもそも、この問答はある種の駆け引きとなっていた。
ラインヴェルドとオルパタータダはクソ面白い戦いを演じられればそれでいい。
このラファールとの戦いの中でラインヴェルド達が最高に面白いと思う選択肢はラファールが選んだ二人を相手に一人で戦うというものだった。
しかし、いくら相手が古代竜であっても二人の人間が寄って集って一人の古代竜の女性をボコボコにするというのは外聞が悪く、また無抵抗の望んでいない相手をボコボコにするというのは自分達の望むクソ面白い戦いではない。
勿論、一人一人相手にするという選択肢を選んでもラインヴェルドとオルパタータダはその意見を尊重した。それはそれでその戦いにあった最高の試合を演じればいいだけのことだからだ。
どちらにしろ最高の試合を演じるつもりであったが、ラファール自身がラインヴェルドとオルパタータダの望む二対一の勝負を選んだことに二人は満足していた。
「聖紋解放-グランド・クレスト-!」
ラインヴェルドの手の甲にブライトネス王家の紋章と瓜二つの青い紋章が浮かび上がった。
その顕現した青い紋章――聖紋が『国王陛下の燦煌双剣』に吸収される。
更に光と焔を混ぜて固めたような猛烈なエネルギーを纏わせる火属性と光属性の複合魔法「光焔之王剣」を発動し、その上から武装闘気と覇道の霸気を『国王陛下の燦煌双剣』に纏わせた。
オルパタータダが独創級の『国王陛下の月影双剣』を構え、武装闘気と覇王の霸気を纏わせ、ラインヴェルドとオルパタータダが戦闘準備を整えると、ラファールに左右から攻撃を仕掛けた。
『――暴風束ねし天龍の嵐剣』
暴風を収束したような五十メートルにも及ぶ巨大な風の刃を持つ剣に武装闘気と覇王の霸気を纏わせ、薙ぎ払う。
「――いい剣だ! やっぱりそう来なくっちゃな!!」
オルパタータダの『国王陛下の月影双剣』が巨大な風の刃を持つ剣を受け止めた。
覇王の霸気の衝突によって黒い稲妻が生じる。
『――ッ! これを受け止めますか』
「当たり前だろ? しかし、いいのか? 俺に掛かりきりだとラインヴェルドの攻撃に対応できないぜ?」
「【火焔流】、【炎帝】!」
オルパタータダが《冥府門》で転移した瞬間、『熾天煉獄の国王陛下』のスキルが二つ同時に発動され、灼熱の波と直径二メートルを超える灼熱の炎球が放たれた。
「暴風束ねし天龍の嵐剣」の暴風を解放し、灼熱の波を切り裂くと再び「暴風束ねし天龍の嵐剣」を顕現して灼熱の炎球を二つ両断し、そのまま三振り目の「暴風束ねし天龍の嵐剣」を顕現してラインヴェルドに斬り掛かった。
「暴風束ねし天龍の嵐剣」はラインヴェルドの『国王陛下の燦煌双剣』の左の太刀で受け止められ、黒い稲妻が走る。
「焔王の破壊狙連撃」
百発を超える対物ライフルの12.7x99mm弾クラスの威力を秘めた火弾がマシンガンのように高速で放たれ、「暴風束ねし天龍の嵐剣」に穴を開ける。
一発一発に武装闘気と覇王の霸気が込められた弾丸によって「暴風束ねし天龍の嵐剣」が脆弱化したところにラインヴェルドの斬撃が加わり、「暴風束ねし天龍の嵐剣」は一瞬にして砕け散ってただの空気に戻った。
『暴風竜の咆哮』
マイクロバーストにも匹敵する一つ一つが風の刃と化した暴風のブレスを放つラファールに対し、ラインヴェルドはニヤリと笑うと《支配者の門域》を発動して光の円形の領域を展開した。
そしてラファールの背後に回り込んで暴風のブレスをやり過ごすと、七つの魔法陣を同時に展開する。
「さて、この大魔法――耐えられるか? 神聖魔法・滅魔神聖領域」
七つの魔法陣が広がり、巨大な一つの神聖属性の魔法陣を作り上げた。嫌な予感を感じたラファールが竜の姿となって逃亡を図ろうとするも、それよりも先に魔法陣から光が溢れる。
魔法陣から生じた巨大な光の柱は瞬く間にラファールを飲み込んだ。あらゆる魔を滅する力を宿した神聖浄化魔法はラファールを一瞬にして消し飛ばしてしまう。
ただの人間であっても立ち所に浄化……ではなく、消滅してしまうほどの威力を秘めた魔法だ。
しかも、その本質は魔物を浄化するための魔法――ある意味で魔物の王たる古代竜に抗う術は無かった。
◆
第一回戦以降、ナトゥーフとオリヴィアは二人で行動していた。
第一回戦のようなオリヴィアを危険に晒すような事態を防ぐためだ。
敗北したところで死にはしないトーナメントでは少々過保護に思えるが、それがナトゥーフの親心なのだろう。
それに、竜の巫女ではあるものの機動力という面ではナトゥーフに劣るオリヴィアがナトゥーフと共に探索するというのは機動力的面から見ても、戦力という意味で見ても理に適っている。
戦術的に見ても、ナトゥーフとオリヴィアの行動は間違っているものではない。
そのナトゥーフとオリヴィアが遭遇したのは、レジーナとミーヤのコンビだった。
立場こそ違えど同じ魔物と人間という組み合わせ――その戦いは開始早々から極めて短時間のものでありながらも熾烈を極めたものになったが、途中、ナトゥーフとオリヴィアの形成を大きく不利にする出来事が起きる。
ディグランとヴェルディエがこの戦いに途中参戦したのだ。
「極大付与術!」
「なるほど、『月堕とし』や『ムーンフォース・コンプレッション』に似た魔法の使い方だな。しかし、その程度では我を止められんぞ?」
「極大付与術」により局所的に増加した大気圧を物ともせず、ヴェルディエはナトゥーフとオリヴィアと距離を詰めてくる。
すぐ隣には「燦く星、宙より堕ちる」を発動し、猛烈な聖なる光が凝縮された天体を顕現し終え、攻撃の準備を整えたディグランの姿もある。
「悪いけどこれは勝負だからね! 文句を言うんじゃないよ!」
更に「熾焔の騎士像」を発動して、感応魔術を施した炎の騎士像を二万体以上顕現したレジーナが数百億~数千兆電子ボルトにまで加速された電子をいつでも発射できるように準備を整えた三本の尻尾を持つ猫耳の黒髪の少女――ミーヤの姿もある。
「さあ、これで終わらせてもらうよ!」
『そうだね、最後に勝つのはボク達だ。――大人しく勝ちを譲ってね! 龍神の怒號』
古代竜であるナトゥーフの己の渾身全力のブレスを収束した一撃を放つが、狙いがバレバレの攻撃を避けることは容易だ。
「極大付与術」
しかし、そこにオリヴィアの力が加われば話は変わってくる。オリヴィアの付与によってブレスが拡散され、レジーナ、ミーヤ、ヴェルディエ、ディグランのいる四方向へと放たれた。
「ふん、甘いね! 前回の試合をしっかりと観戦して勉強しなかったのかい!?」
しかし、そのブレスが四人を撃ち抜くことは無かった。
ナトゥーフとオリヴィアはそこでようやく自分達がかつて実力者である真月を無防備にした『催眠術』に掛かっていることに気づく。
これまでの戦いでミーヤは『催眠術』を全く使わなかった。恐らく、『催眠術』という切り札から二人の意識を遠ざけていたのだろう。
時既に遅し、この時点でヴェルディエはナトゥーフに肉薄しており、「震雷八卦掌」を放つ準備が整っていた。
「いくら魔竜と言えど、魔法攻撃を背後から喰らっては食えぬだろう? 英雄覇纏! 朧黎黒流・疾風覇薙」
覇王の霸気と武装闘気、更には英雄覇気という抵抗力が弱ければ術者に屈服して心酔してしまうほどの圧倒的な魔法闘気を魂魄の霸気《英雄王》によって武器に纏わせ、聖属性の魔力を纏わせると横薙ぎすると同時に解放して猛烈な光の真一文字斬りを背後から放つディグランと、正面から「震雷八卦掌」を放ったヴェルディエによってナトゥーフが撃破されたのとほぼ同時にオリヴィアの方は「燦く星、宙より堕ちる」の光条、数百億~数千兆電子ボルトにまで加速された電子を放つ「滅崩放電咆吼」、「熾焔の騎士像」の軍勢、そして「影箒」に跨ったレジーナ自身の攻撃に晒されていた。
いくら魔法の付ける外すの天才でもこれほどの魔法を同時に相手し、的確に捌けるだけの力はない。
オリヴィアは抵抗したものの「熾焔の騎士像」を僅かに魔力に戻すのがせいぜいで、そのまま無数の攻撃を浴びてポリゴン化する間も無く消滅した。
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