Act.8-40 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.2 乙
<三人称全知視点>
「まさか、本当にバトルロイヤルの時のリベンジの機会が訪れるなんて思ってもみなかったわ」
マグノーリエとプリムヴェールは、森の一角でラインヴェルドとオルパタータダと遭遇した。
まだ多種族同盟に加盟した直後の頃に開催されたバトルロイヤルでマグノーリエはラインヴェルドに完敗している。
マグノーリエはその時の敗北の悔しさを未だに覚えていて、再戦の機会を求めていたのだ。
「……まあ、今回は俺だけじゃなくてオルパタータダもいるけどな? どうだ? 二対二で互いにどちらの連携が優れているか勝負しねぇか? プリムヴェールとマグノーリエのコンビは最強なのだろう?」
「ああ、私とマグノーリエさんは最強のベアで最高の親友だ。――二度もマグノーリエさんに恥をかかせる訳にはいかないからな。絶対に無様に負けを晒したりはしない」
「……プリムヴェールさん。そうだね、今回はプリムヴェールさんもいるんだから、二人で絶対に勝つわ!」
「盛り上がっているところ悪いんだが、今回は俺もいるからな? ラインヴェルドとは随分長い付き合いだ。最高の相棒っていう意味では俺とラインヴェルドもお二人さんに負けるつもりはないぜ?」
マグノーリエが『聖天樹の大杖』をプリムヴェールが『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』を、ラインヴェルドが『国王陛下の燦煌双剣』を、オルパタータダが独創級の『国王陛下の月影双剣』をそれぞれ構え、遂に戦いの幕が切って落とされた。
戦闘開始早々、四人は互いに「マナフィールド」を展開した。互いに互いの魔力領域を拡大させていった結果、拮抗し、事実上各々の魔法領域が固定される。
「聖紋解放-グランド・クレスト-!」
ラインヴェルドの手の甲にブライトネス王家の紋章と瓜二つの青い紋章が浮かび上がった。
その顕現した青い紋章――聖紋が『国王陛下の燦煌双剣』に吸収される。
更に光と焔を混ぜて固めたような猛烈なエネルギーを纏わせる火属性と光属性の複合魔法「光焔之王剣」を発動し、その上から武装闘気と覇道の霸気を『国王陛下の燦煌双剣』に纏わせた。
「結晶騎士軍!」
オルパタータダは自身の結晶属性魔法を発動し、無数の結晶の騎士を作り上げた。
火、水、風、土の四大属性に光属性を加えた五属性を扱えるラインヴェルドと同じく五つの属性を扱えるオルパタータダだが、その五つ目の属性は光ではなく現在は結晶属性と呼ばれているものだ。
オルパタータダは結晶属性に四大属性を付与することを基本戦術としている。「結晶騎士軍」には火、水、風、土の属性が付与され、それぞれの特徴を備えていた。
「水竜の竜巻」
マグノーリエは精霊術法を発動して水の竜巻を発生させ、覇王の霸気と武装闘気を纏わせて無数の結晶の騎士達へと放った。
結晶の騎士が次々と粉砕される中、『国王陛下の月影双剣』を構えたオルパタータダがマグノーリエへと斬り掛かってくる。
「月の力よ、我が武器に宿れ!」
その攻撃をオルパタータダとマグノーリエの間に割って入ったプリムヴェールが『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』で受け止めて防いだ。
武装闘気を纏った細剣はオルパタータダと激突した瞬間に黒い稲妻が周囲に迸る。
「…………もしかして、覇王の霸気か? 『王の資質』を持っているのはマグノーリエだけじゃなかったのか?」
「……ずっと私はマグノーリエさんの隣に立つに相応しい存在になりたいと思っていた。でも、このままでは足りないことは薄々承知していた。だから、私もローザに頼んで聖人の試練に挑戦させてもらっていたんだ。……運良く私も聖人になると同時に霸気を会得することに成功した」
「……しばらく緑霊の森を離れていたことがあったけど、プリムヴェールさんはその間に修行をしていたのね」
「マグノーリエさんと対等な関係になるために必要なことでしたから。……本当はここぞという時に切り札として使う予定だったが、『王の資質』を持つことがバレてしまった異常、出し惜しみをする意味はないな。――魂魄の霸気《月虹》」
プリムヴェールは白い虹のような七つの小さな輪を右腕に顕現した。
白い虹にはそれぞれ物理攻撃上昇、物理防御上昇、魔法攻撃上昇、魔法防御上昇、状態異常無効化、自己治癒促進能力、月属性魔法威力上昇の効果がある。
「マジックキャンセラー、フォースキャンセラー」
特殊な月の魔力で魔力の流れを掻き乱し、魔法による強化を消し去る魔法と特殊な月の魔力で気の流れやエネルギーなどを掻き乱すことで物理的な強化を打ち消す魔法が相次いでオルパタータダの『国王陛下の月影双剣』に命中し、武装闘気と覇王の霸気、纏っていた魔力を掻き消した。
「ダークマター・フォージ!」
「――ッ! 大結晶壁」
圧縮した暗黒物質を剣先から飛ばし、敵に命中させたところで解放するプリムヴェールが開発した「フェイク魔法」に分類される闇属性魔法をオルパタータダは結晶魔法で作り上げた壁を使って防ぐ。
「ローザのダークマターのフェイク魔法のバリエーションか。やっぱりなかなか厄介な魔法だよな」
いつの間にか《蒼穹の門》で転移してきたラインヴェルドの剣をプリムヴェールが「マジックキャンセラー」を纏わせた剣で受け止め、続けて「フォースキャンセラー」を放ってあらゆる強化を剥ぎ取った。
「勿論、これだけではないぞ? ダークマター・カンタフェイト!」
圧縮した暗黒物質を剣先から飛ばし、ラインヴェルドの足元に命中させると同時にそこから暗黒物質を顕現して勢いよく地面から噴き上げた。
「いや、危なかったぜ。……当たっていたらキツかったかもしれないな」
暗黒物質に呑まれた筈のラインヴェルドは、ニヤリと人を食ったような笑みを浮かべた。
その足元には漆黒の魔法陣が展開されていたが、すぐに地面に溶けように消えていってしまう。
「今のは《蒼穹の門》ではありませんね。……オルパタータダ陛下の魔法? ですか?」
「マグノーリエさん、惜しいな。こいつは俺の魂魄の霸気――《冥府門》の能力だ。事前に魔法陣を展開しておくことで門と門を繋いだ転移も可能だが、基本的には《冥府門》によって生じる冥域という領域から穴を開けて移動するっていう使い方だな」
「……なるほど、ディラン殿の《影》と《蒼穹の門》のいいとこ取りのような能力か」
「これで四人の魂魄の霸気が出揃ったって訳だな」
手札は当然多いに越したことはない。いかに手札を隠し、最善のところで切るかということはこの戦いだけではなくトーナメント全体に大きく影響する。
勿論、隠していざという時に使うべきだが、そのいざという時を見失うと後生大事に取っておいて、結局使わないまま出し惜しみして負けたという最悪の結果になりかねない。
ラインヴェルドやオルパタータダが好む戦いとは単純な力と力の衝突ではなく、こういった駆け引きを含めたものだ。
ただやられるだけの的であったならば楽しくはない――ラインヴェルドやオルパタータダにとって、切り札の駆け引きができ、かつ自分達に拮抗するほどの力を持つプリムヴェールやマグノーリエは正しく最高の好敵手であった。
「しかし、恐ろしいなその魔法。武装闘気や覇王の霸気まで解除されるとは。全く、ブライトネス王国国王であることを証明する聖紋まで消しとばされるかと思ったぜ」
「ラインヴェルド陛下、ここはいくらでも取り返しのつくバーチャルな空間だから問題ありませんが、外の世界ではそんな大切なものを戦闘に使わない方が思います」
「大丈夫大丈夫。まあ、ぶっちゃけ無いなら無いで適当に王権の象徴を捏造すればいいだけのことだろ?」
そんな雑な扱いでいいのか? と呆れた表情を向けるマグノーリエとプリムヴェール。
「……まあ、この魔法に関してはローザ殿の方が上だがな。私では解除するだけだが、ローザの場合は意図的に暴発させることもできるからな。……流石に二つの異なる波長を両立させる魔法はローザであっても完成までしばらく掛かるということだが」
「……ローザ曰く、元々ブライトネス王国とフォルトナ王国は一つの国だったそうだ。俺とオルパタータダが似ているのも、元々は同じ一人の人間だったからというそうだ……なんか気が合うなって思っていたんだが」
『……同族嫌悪にならなくて良かったな』
「ん? 何か言ったか? まあ、そんな感じで魔法面で大きく秀でたブライトネス王国、剣術面で大きく秀でたフォルトナ王国って感じになったみたいだ。まあ、つまりうちは世界有数の魔法大国だったんだ。……そのブライトネス王国の天才達、秀才達、努力家達、そう言った人々が長きに渡って積み重ねてきたものをアイツはたった一人で軽々と積み上げてしまった。素知らぬ顔で世界の常識を打ち砕いていくところがアイツのクソ素晴らしいところなんだけどな。……アイツのことはあんまり比較対象として考えない方がいいぞ? 贔屓目に見ても、魔法に秀でたエルフの中でもプリムヴェールとマグノーリエは強い。……本当にクソ面白い戦いだよな? 最高の気分だぜ」
ラインヴェルドは獰猛に笑った。国王らしからぬクソな笑顔を浮かべ、マグノーリエとプリムヴェールに新たな口撃を放つべく口を開いた。
「マグノーリエ、お前の切り札は対象範囲に存在する概念の一時的な書き換える『第零改変術式』、別の座標に存在する物体と空間を指定し、空間ごと転移させる『第一転移術式』、一定範囲の魔力を封じることで範囲内での魔法使用を不可能にする『第二封印術式』、範囲内の魔力同士を対消滅させることで大規模な破壊をもたらす『第三魔滅術式』、時間的、空間的に断絶を一時的に発生させることで一切の攻撃を遮断する究極の物理防御『第四防衛術式』の五大術式だな。最大で一段階術式の数を増やすことができる一般の『補助結晶』があれば、七重術者までだが、ローザ謹製の『刻印高純度補助結晶』で十重術式レベルにまで上昇させることができるってエイミーンの奴が自慢していたぜ? まあ、流石にローザでも四段階上げるのが限界みたいだけどな。……プリムヴェールがいるところで魔法を封じるとは思えないし、だとすると『第二封印術式』以外の四つか。魔力を滅茶苦茶消費する大魔法をどれだけ有意義に使えるのか楽しみだぜ! クソ楽しませてくれよ!」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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