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Act.8-15 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.4 丁

<三人称全知視点>


「風纏-クラック・ロード-。風爪神速剣-ストームマグナ・ヴェロシティ=十二倍速-! 風獣顕纏・暴風恐鳥-テンペスト-」


 剣に風を纏わせ、風を纏うことで速度を上げると、竜巻が変化した暴風の鳥を纏い、同時に無数の魔法陣を展開して暴風の鳥を顕現した。

 その全てに武装闘気を纏わせる完璧な布陣を展開したディーエル。


水纏う守護剣デリュージ・ガーディアン! 広がる水球(アクアスプレット)!」


 『近衛守護騎士の両装備レイピア・アンド・マインゴーシュ』に水を纏わせ、更にその上から武装闘気を纏わせたシモンが剣先から水の球を放った。


 この五年の間に、ローザは書肆『ビオラ堂』からエルフの大魔術師マリーゴールドという名義で『新汎用魔法全書』という本を発売した。

 これまでに蓄積した戦闘の映像などから新たな時代の汎用魔法として知られるべきだという魔法が集められたこの本にはマグノーリエのオリジナル水属性魔法を基にローザが改良を加えた広がる水球を撃つ汎用強撃水魔法も含まれていた。


 この『新汎用魔法全書』は今や魔法学園で使われる教科書の一つにもなっていた。

 王国宮廷近衛騎士団騎士団長であるシモンも戦力強化のために当然この魔法書を読み込み、書かれていた水魔法を全て習得していたのである。


「フォースキャンセラー! マジックキャンセラー! フォースキャンセラー! マジックキャンセラー! フォースキャンセラー! マジックキャンセラー! フォースキャンセラー! マジックキャンセラー!」


 プリムヴェールの細剣に月の魔力が宿り、振り下ろすと同時に月の魔力が小さな塊と化して水球へと命中した。

 次の瞬間――水球は魔力へと分解され、四散してしまう。


 プリムヴェールが細剣を振るう度に宿った月の魔力が次々と武装闘気を纏った暴風の鳥に命中し、武装闘気を剥ぎ取り、暴風の鳥を構成する魔力を試算させていく。

 遂にはディーエルの纏う風も武装闘気も剥ぎ取られてしまった。


 プリムヴェールの新たな魔法「フォースキャンセラー」と「マジックキャンセラー」はどちらも月の魔力を利用した無害化魔法である。

 「フォースキャンセラー」には特殊な月の魔力で気の流れやエネルギーなどを掻き乱すことで物理的な強化を打ち消す、「マジックキャンセラー」には特殊な月の魔力で魔力の流れを掻き乱し、魔法による強化を消し去るという効果がある。


 波長が違うため、両者を一つにした魔法は未だ完成せず、この魔法を見たローザが改良を重ねて完成させた「マジックディスターバー」、「フォースディスターバー」のように流れを掻き乱して暴発させることでダメージを与えることはできないが、魔法による強化や闘気を纏う戦闘が主流な現在の戦闘法にとっては「極大付与術アルティメット・エンチャート」と肩を並べるほど厄介な魔法だ。


「ロマンティシズム! クレセント・インペール」


 月の魔力を宿した細剣を構え、一瞬にして距離を詰めたプリムヴェールが無防備なシモンに向けて同時に五箇所に攻撃をされているように錯覚するほど高速で三日月状に五連突きを放った。


水撃の奔流(ハイドロバースト)


 咄嗟に武装闘気を纏ってプリムヴェールの攻撃を防ぎ、ヴェモンハルトのオリジナル水魔法を基にローザが改良を加えた汎用強撃水魔法を発動して青い魔法陣を展開し、その中心から猛烈な激流を収束して放つが、プリムヴェールは神速闘気を纏い、速度を上げて回避すると「フォースキャンセラー」を放って纏った闘気を無力化した。


「ルナティックストーム!」


 プリムヴェールの剣先から月の魔力の奔流を解き放たれる。

 武装闘気を剥がされて無防備になったシモンが耐えられる筈もなく、光線を浴びた箇所から焼き尽くされ、無数のポリゴンと化して消滅した。


 一方、薙ぎ払うように放たれた月の魔力の奔流をシモンと共に浴びたディーエルだが、暴風の鳥と武装闘気により体制を立て直していたことが功を奏し、内部のディーエルが無傷の状態で攻撃を耐え切ってみせた。


「フォースキャンセラー! マジックキャンセラー!」


 しかし、一度完全に無力化された戦法がプリムヴェールに通じる訳がない。


「これで決着をつけさせてもらう! ダークマター・フォージ」


 プリムヴェールの剣先から漆黒の塊が放たれ、無防備になったディーエルに命中する。

 漆黒の塊は命中と同時に猛烈な速度で膨張すると、暗黒物質の奔流と化してディーエルを呑み込んだ。


 プリムヴェールが月属性以外に闇属性にも適性があったことから、ローザの「ダークマター」を基に編み出したオリジナルの「フェイク魔法」――この「ダークマター・フォージ」の場合は攻撃範囲こそ狭いが、本家の「ダークマター」やローザの「ダークマター・フェイク」や「ダークマター・フラグメント」、そしてもう一つの自身のオリジナル「フェイク魔法」の一つ「ダークマター・カンタフェイト」と全く同じ威力を秘めている。

 その猛烈な力に耐え切れる筈もなく、ディーエルは闇に飲み込まれた瞬間にはポリゴン化する間も無く完全に消滅していた。



 ところ変わって、琉璃のいる本陣に程近い森でモーランジュとパーンがラファールと遭遇していた。


 名前(NAME):ラファール=ウラガン=トゥールビヨン

 種族(SPECIES)古代竜エンシェント・ドラゴン暴風竜(ストーム・ドラゴン)

 所有(owner):リーリエ

 HP:40,000,000

 MP:40,000,000

 STR:10,000,000

 DEX:60,000,000

 VIT:20,000,000

 MND:60,000,000

 INT:60,000,000

 AGI:20,000,000

 LUK:8,000,000

 CRI:20,000,000

 ▼


 ラファールもまた、この五年の間に新たな力を得ている。そういう意味では、他の古代竜エンシェント・ドラゴンと同じく強敵だが、武力による支配を嫌う性格から長年戦いから距離を置いてきたラファールは戦闘狂なカリエンテや、涼しい顔で容赦ない戦いをするスティーリア、魔法使いの天敵である魔竜ナトゥーフに比べればまだマシと思える相手だった。


『……私は戦いを好んでいません。ナトゥーフに誘われて参加してはみましたが、何故わざわざ武力を振るい合うのか、理解できません』


「まあ、そう言われると……なんというか、返答に困るよな」


 平和主義なラファールらしい大会全否定の発言に、さてどうしようかと考えを巡らせるモーランジュとパーン。


「確かに、平和を願うラファール殿には理解できないかもしれないな。……平穏な、血の流れない平和な日常を誰もが願っている、それは紛れもない事実だ。だが、この世界にはまだまだ未知数な危険が燻っている、それもまた事実なんだ。避けられぬ戦いもあるのだから、平和を守るために常日頃から爪を研いでおかなければならない。なんて、ご大層なことを並べ立てたが、この大会に参加している奴の目的は様々だ。本気で優勝して商品を――願いを叶えてもらう権利を得たいと思っている奴や、単にまだ戦ったことのない強敵と戦いたい奴、日頃の仕事のストレスをここで晴らそうと思っている国王陛下……まあ、理由は様々だ。ただ、一種のガス抜きの場になっているのは確かだな。ラファール殿からすれば悪趣味かもしれないが、カリエンテ殿のように戦いを好む者もいることも知っていて欲しい。……まあ、折角だからラファール殿も何かの願いを叶えてもらうために戦ってはいかがか?」


『そういえは、ローザ様は大会の優勝チームの願いを叶えると仰っていましたね。……最近、趣味でお菓子作りを始めたのですが、優勝したら、是非ローザ様に食べて頂きたいですわね』


「……ラファール殿、その願いは普通にローザ殿にお願いすれば叶えてもらえるのではないか?」


 ――全然欲がないですね。私の「ローザ様に超高性能な新しい武器を作って頂きたい」という願いが邪なもののように思えてきますよ、とラファールの全く欲のない考えに僅かに後ろめたさを感じるパーン。

 しかし、パーンも虎視眈々と優勝を狙っている一人だ。

 勝ち上がって優勝して、胸を張って願いを叶えてもらう――そこに後ろめたいことはどこにもないと思い直し、パーンは武器を構えた。


『――暴風束ねし天龍の嵐剣(クサナギ)


 ラファールの手に暴風を収束したような五十メートルにも及ぶ巨大な風の刃を持つ剣が生まれ、振り下ろされた。

 モーランジュとパーンは神速闘気を纏って回避するが、ラファールは振り下ろした暴風の剣を僅かに持ち上げると、そのまま横薙ぎした。


「サルヴァトーレ流暗殺歩術 影疾蛇執」


 姿勢を低くして横薙ぎを回避すると同時に地を這う蛇が如く低い姿勢のままジグザグに移動しながらラファールへと迫るモーランジュ。


「影魔法・影蛇縛り(シャドウ・サーペント)! 雷魔法・這い寄る雷蛇(サーペント・ボルト)


 ラファールの足元の影から無数の影の蛇が出現し、ラファールを拘束した。

 更に五つの指から雷蛇型の電撃を五つラファールに向けて放つ。


『――暴風竜の咆哮テンペスト・ドラゴン・ブレスロア


 小賢しい攻撃は無意味だとでも言わんばかりに影を引き千切ると、マイクロバーストにも匹敵する一つ一つが風の刃と化した暴風を、モーランジュへと放つ。

 武装闘気をその身に纏い、ラファールの攻撃を耐え抜こうとするモーランジュだったが、覇王の霸気が練り込まれたブレスを耐え抜くことはできず、武装闘気があっさりと砕け散るとそのまま無数の風の刃をその身に浴びて切り刻まれながら吹き飛ばされた。


 モーランジュを撃破され、孤立無援となったパーンはローザによって改良されて新たな力を得た『戦槍シュラハト』を構えると体勢を低くして下半身のバネを一気に解放し、突進すると同時に槍に武装闘気を纏わせ、ラファールに向かって渾身の突きを放った。


「ドヴェルグ流槍術一式 疾風之突」


 軍部の最高司令官であるパーンはド=ワンド大洞窟王国で第二位の実力者だった。

 そのパーンはこの五年の間に発見された調息法を使った解脱とは異なる手段で仙人、聖人、或いは英霊と呼ばれる存在に至る方法――限界まで魂を鍛えることで殻を破り、覚醒する――でドワーフから侏儒仙に至った一人である。


 ちなみに、現在まで亜人種族の中で(・・・・・・・)覚醒に至ったのはディグランとパーン、獣王ヴェルディエの三人で、ディグランとパーンは侏儒仙に、ヴェルディエは獣仙へと至っている。

 獣仙に至ったヴェルディエは獣王を辞して獣皇として獣王の上に立つ存在となっており、その後は獣王決定戦で優勝したメアレイズ、アルティナ、サーレ、イフィスの四人が獣王になっている。

 無理矢理参加させられた挙句、優勝してしまったメアレイズは「全力で辞退するでございます!」と最後まで抵抗したが、結局、獣人族最弱を返上して最強の獣人族の一人になってしまった。


 余談だが、ローザはヴェルディエの獣皇就任に伴い、名誉獣王から終身名誉獣帝へと格上げされてしまった。実質、ユミル自由同盟の陰の最高支配者であることには変わりない。


 仙人として覚醒し、身体能力が大きく向上したパーンはラファールとの距離をほぼ一瞬で縮めて突きを放った……が、その穂先は尋常ならざる速度で突き出された右の人差し指でいとも容易く受け止められてしまった。

 風を纏ったラファールの指はピクリとも動かない。


「――雷聖刺突槍撃セイント・サンダー・ディスチャージ


 パーンの槍から聖なる力を宿した雷撃が放たれた。仙人に覚醒したことで覚醒した聖属性――光属性の上位互換と言える属性――の魔力を雷撃に込めることで驚異的な威力となった聖なる稲妻だ。

 元々、パーンの雷属性はパーンをド=ワンド大洞窟王国第二位たらしめる彼の代名詞と呼べる雷撃は聖属性により更に強力な力となっており、並みの相手なら一撃で黒焦げにしてしまう。


『――颶風結界(テンペスト・ドーム)


 場合によっては武装闘気すら貫通する雷撃をラファールは風の防壁を展開するだけであっさり無効化すると、暴風を収束したような五十メートルにも及ぶ巨大な風の刃を持つ剣を無理矢理力技で収束し、一振りの剣を生み出した。


『――暴風束ねし天龍の嵐剣(クサナギ)


 ラファールが無慈悲に暴風の剣を薙ぎ払うと、パーンの身体は真一文字に腹部から切り裂かれ、傷口から解放された暴風に切り刻まれて無数のポリゴンと化す間も無く消滅した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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