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Act.8-13 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.4 乙

<三人称全知視点>


「焔獄追尾孤斬、焔獄爆裂孤斬、焔獄孤空連斬!!」


 ディーエルが靴裏から地面に展開した風の魔法陣から生じた暴風の鳥は全部で二十八体。

 その内、十体がレミュアに、十八体がオリヴィアとリィルティーナに殺到した。


 レミュアは剣に宿した焔を孤月状の斬撃として次々と放つ。

 追尾効果のある焔の斬撃を、着弾と同時に爆発する斬撃を、巨大な孤月状の焔の連撃を浴び、暴風の鳥が次々と撃破されていく。


 しかし、それもディーエルの想定のうち。


「瀑砂連弾、喰水撃剣」


 レミュアが弾丸並に硬化させた砂をディーエルに向かって放ちながら、火属性の魔法剣から土属性の魔法剣に切り替えた。

 攻撃した相手の水分を根こそぎ奪う凶悪な土の魔法剣だ。


「風獣顕纏・暴風恐鳥-テンペスト-」


 ディーエルは自らに風の魔法陣を展開し、暴風の鳥を纏うと、更に武装闘気で暴風の鳥をコーティングした上で神攻闘気、神堅闘気、神速闘気を自身の身に纏わせる。

 更に足から風の魔力を流し込んで魔法陣を展開し、武装闘気を纏った暴風の鳥を顕現する。


 ――その数、十体。ディーエル自身が纏った暴風の鳥を含め、十一体の暴風の鳥が次々とレミュアに迫った。


「砂塵嵐壁ッ!」


 レミュアは極小規模なハブーブを展開する土属性と水属性の複合魔法を暴風の鳥達を飲み込むように展開する。

 砂塵が水分を含んで降り注ぐ泥の嵐――その中を十一体の暴風の鳥は傷を負うことなく駆け抜けた。


「――ッ! やっぱり、武装闘気には通じないのね。それに、鎧を纏っている相手にこの魔法剣は相性が悪いわ! 焔獄撃剣!!」


 魔法剣を土属性から火属性に切り替え、巨大な炎を纏わせた上から武装闘気でコーティングして次々と襲い来る暴風の鳥に斬撃を放っていくレミュアだが、レミュアと暴風の鳥達の武装闘気が拮抗してなかなかダメージが通らない。


「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-!!」


 暴風の鳥達はディーエルが纏っているものを除いて次々とレミュアを巻き込み爆発した。

 発生した竜巻に巻き込まれたレミュアは無数の風の刃に切り刻まれ、無数のポリゴンと化して消滅する。


 一方、オリヴィアとリィルティーナの方はというと――。


 十八体の暴風の鳥達が二人へと迫っていた。


極大付与術アルティメット・エンチャート!」


 オリヴィアが再び風に付与を行い、局所的に猛烈な大気圧となった暴風の鳥達を押し潰した。


月堕としルナティック・コンプレッション


 リィルティーナがロックスとシャードンが隠れている壁ごと押し潰す勢いで空属性の魔力で重力に干渉して超重力を発生させる魔法を発動し、二人を潰しに掛かる。


 「月堕としルナティック・コンプレッション」は月の魔力の持つ引力を利用して重力を発生させる「ムーンフォース・コンプレッション」とは属性こそ違うが同種の魔法だ。

 「空魔法を使える聖女様なら習得しておくのが嗜みなんじゃないかな?」とローザから供給された魔法で、リィルティーナにとってはまさに奥の手である。提供された当初は「なんて恐ろしい魔法をサラッと供給するんですか!?」とツッコミを入れたが、今では数少ない空魔法の強力な攻撃魔法として重宝している。


 ちなみに、ローザの中には以前から「月堕としルナティック・コンプレッション」の構想はあったが、プリムヴェールがたった一人で別の属性で完璧に全く同じ仕組みの魔法を完成させた時は流石に驚いていた。

 プリムヴェールにとっては完璧超人のローザを驚かせることができた数少ない思い出として心に刻まれている出来事だ。


 ロックスとシャードンは武装闘気を纏うとシャードンが発生させた高水圧の水撃を利用して超重力圏を抜け出す。

 しかし、それは「極大付与術アルティメット・エンチャート」の猛攻から身を守るための盾を失うことを意味していた。


怒りの鮫特攻アングリー・シャードン!!」


 シャードンの水属性の造形魔法で無数の鮫が生み出された。

 獰猛な空中を泳ぐ鮫はオリヴィアとリィルティーナを標的に定めると猛烈な速度で二人に殺到する。


「――聖光浄弾(ホーリー・ライト)!!」


 リィルティーナの手から無数の浄化の力を持つ聖光の弾丸が放たれた。

 射出と武装闘気を纏った弾丸は鮫の内部に撃ち込まれると同時に内部で爆発して中から粉砕する。


「――ッ! 燃え上がる斬撃ヒートアップスラッシュ!」


 シャードンの剣に炎が宿った。絶えず鮫を生み出し続けながら全身に武装闘気を纏い、神速闘気で敏捷を強化してリィルティーナの攻撃を躱しながら肉薄すると、燃え盛る剣を構えてそのまま斬り掛かった。

 咄嗟に『聖翼の神杖(アリ・ディ・ルーチェ)』に武装闘気と覇王の霸気を纏わせて受け止める……が。


「あまりにも卑怯な戦い方だが、リィルティーナ殿を倒すためには手段を選ぶ余裕はない。恨むなよ」


「私ってそんなに警戒するほど強くはないですけどね。……でも、このまま負けるつもりはありませんよ! 魂魄の霸気――《狼》」


 リィルティーナを包み込むように淡い青黒い輝きを放つ骨格のようなものが形成され始めた。

 淡い輝きの骨格は宛ら狼のようだ。


食いしん坊な鮫特攻グリーディー・シャードン


 「怒りの鮫特攻アングリー・シャードン」よりも二回りほど小さな鮫達が次々とリィルティーナへと喰らいついていく……が、リィルティーナの纏う謎の狼型のエネルギーがそれを阻んだ。

 骨格だけの狼が口を開けた。未完成かつ第三の戒め(グレイプニル)どころか第一の戒め(レージング)すら解除されていない極めて制限された状態でありながら、全てを呑み込むものの片鱗が鮫を猛烈な速度で飲み込んでいく。


「――ッ! 怒りの鮫特攻アングリー・シャードン!!」


 今度は確実に倒すためありったけの鮫達を生み出し、更にその全てに武装闘気を纏わせる。


高速魔力斬撃クイックオーラスラッシュ


 更に、全方位からの鮫特攻に加え、魔力と武装闘気を纏わせた剣による連続攻撃を《狼》の骨格へと叩き込んだ。

 武装闘気を纏っていないにも拘らず驚異的な強度を誇っていた《狼》もシャードンの連続攻撃を受け続ける中で破損していく。

 襤褸の翼のようなものが生え、《狼》が神滅狼(フェンリル)、或いは猟犬大君主(ミゼーア)の姿へと変化していく速度をシャードンの攻撃の速度が上回った。


炎の殺戮剣(ジェノサイド)!!」


 シャードンの剣に燃え盛る炎が宿り、振り下ろされるのと同時に無数の鰐へと姿を変えた炎の斬撃が「高速魔力斬撃クイックオーラスラッシュ」によって砕け散った部分から無防備となったリィルティーナへと殺到した。

 咄嗟に纏った武装闘気をも打ち砕き、灼熱の炎がリィルティーナの身体を焼き尽くす。


 黒焦げになったリィルティーナの身体は無数のポリゴンと化して消滅した。


「あれ? サーベルに纏った焔を斬撃に乗せて放つ超強烈な遠距離焔斬撃だった気がするが、鰐型の斬撃に変形なんてしたか? 鮫じゃねぇのか?」


 初めて剣を握った瞬間からまるで魂が覚えていた(・・・・・・・・・・)ように扱えた自分の最強の一撃の変化や寧ろ鮫以上にしっくり来ている鰐の形に妙に納得してしまっている自分自身に違和感を抱きつつも、シャードンは本領を発揮していれば確実に敗北に喫していた格上を撃破できたことに喜びを感じながらも、残る一人を撃破するまでは気を抜けないと思い直し、気を引き締め直してロックスの援護に向かった。



 ロックスにとって、ローザを抜きに考えればこの大会の参加者で最も相性が悪い相手はオリヴィアであった。

 竜の巫女として埒外の魔力と付与術師(エンチャンター)としての高い資質を持つ彼女に掛かれば、光属性を付与した擬似聖剣も、闇属性を付与した擬似魔剣もただの剣に戻ってしまう。


 ロックスは聖剣エヴァンスカリバーと魔剣ジュラルスレイヴを一瞬にしてただのよく切れる剣に変えられてしまったところで、ようやくオリヴィアが他人の武器に付与された属性すら消し去ることができてしまうことに気づいた。


「どれだけ相性が悪いというのですかッ!」


 ならばと、ロックスは裏武装闘気を駆使して二振りの剣と頑丈な鎧を顕現する。

 オリヴィアの「極大付与術アルティメット・エンチャート」はたった一つで強化も弱体化も、属性解除も環境変化も自由自在なまさに鬼畜魔法だが、ロックスは裏武装闘気の武器や鎧に弱体化を掛けられないことを願い、神速闘気を纏ってオリヴィアに斬り掛かる。


「――極大付与術アルティメット・エンチャートッ!」


 大気に極寒が付与され、猛烈な吹雪がロックスに襲い掛かった。

 ロックスは裏武装闘気のフルアーマーで吹雪を凌ぎながらオリヴィアへと一歩一歩着実に近づいていく。


 一方、オリヴィアはロックスが猛吹雪の中を怯むことなく突き進んでくる姿に怯えていた。

 驚異的な万能魔法の使い手だが、転生者でもなく、戦いの経験もない平和な世界で育った竜の巫女――それがオリヴィアだ。


 父親であるナトゥーフに優勝報酬で日頃のお礼を込めて何かプレゼントをしたいと思い、思いっきり参加したオリヴィアだが、参加した当初はここまでの恐怖に陥いるとは想像もしていなかった。

 殺されないとはいえ、真正面から倒すという気迫を向けられた経験はオリヴィアにはない。次第に恐怖が思考を侵食し、魔法が満足に放てなくなっていった。


「悪いな、オリヴィアさん。貴女は恐ろしい……だから折角のチャンスを逃す手はないのでな」


 ロックスが二刀を振り下ろした……その時――ガチャンという音が響き渡り、オリヴィアが目を開けるとそこには砕け散った黒い二刀と。


「……ありゃりゃ、そりゃ無いですよ。折角のチャンスだったというのに……まあ、窮地の子を守るために駆けつけるのが子を思う親の理想なのかもしれませんが」


 大きく頼もしいオリヴィアの父親の背中だった。



『ごめんね、怖い思いしたよね?』


「ううん、大丈夫だよ! パパ」


「……感動の再会を邪魔して悪いんだが、俺は別に悪者でも何でもないからな? そこんところはちゃんと理解しておいてくれよ?」


 「というか、寧ろ俺の方が被害者だよな? 相性悪い相手と戦う羽目になった挙句、後ちょっとのところで古代竜エンシェント・ドラゴンの魔竜ナトゥーフが娘を守るために参戦してきて二対一とか……」と、己の今回の不運さを顧みて溜息を吐くロックス。


『なんか、ごめんね』


「まあ、仕方ないよな。元よりライバルに強敵がいることを理解した上で参加しているし、今回の相手だってローザ様達に比べれば遥かにマシに思える。強豪相手に勝利を掴もうって参加しているんだから、こういう状況を想定するべきだよな?」


 ロックスはリィルティーナを撃破して増援のためにこちらに向かってくるシャードンを一瞥し、覚悟を固めた。


「まあ、古代竜エンシェント・ドラゴンと竜の巫女と二対一っていう最悪の状況だけはどうにか回避できそうだから、泣き言を言ってはいられないな。……オリヴィアさん、この先勝ち残っていくってなれば戦いの恐怖に打ち勝たなければ行かなくなる」


 その行為は確実に敵に塩を送ることになる分かっていたが、ロックスはそれでもオリヴィアにアドバイスせずにはいられなかった。

 ロックスの騎士道精神がその指摘をせずに戦うことを許さなかったからだ。


「最強の古代竜エンシェント・ドラゴンと竜の巫女? 上等ですよ! 俺とシャードン殿なら絶対に負けません!」


 圧倒的な二人を前にしても、それでも自分が勝つことを微塵も疑わず、ロックスが不敵にニヤリと笑った。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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