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Act.7-37 帝国崩壊〜闇夜の下で絡み合う因縁と激戦に次ぐ激戦〜 scene.1 下

<三人称全知視点>


 中央フォトロズの一座に用意された中規模戦闘施設の一室に相当する地下戦闘施設に転移したスティーリアとアルバは無機質な灰色の部屋を塗り潰すような猛烈な吹雪と炎を巻き起こしながら戦闘を開始した。


「全身熔化ッ! 噴火流星群!」


 全身を熔岩へと変化させ、猛烈な噴火を発生させて生み出した無数の熔岩弾を、隕石の如くスティーリアに向けて放つアルバ。


氷雪の暴風壁ホワイトストーム・ウォール


 スティーリアの足元から無数の吹雪の竜巻が発生し、壁となって熔岩弾を防いだ。

 その威力は熔岩を一瞬にして冷やし、ただの岩へと変えてしまうほど。更に発生した吹雪の風の壁は堅牢で、熔岩を弾き返してしまうほどの無類の強さを誇っている。


氷の捕食者フロスト・ミニワイバーン


 三体の氷の翼竜がスティーリアの放った冷気から産み落とされ、吹雪を迂回するように左から二体、右から一体、それぞれ攻撃を開始した。


「連鎖噴火ッ!」


 熔岩の領土を伸ばし、次々と氷の翼竜に噴火を浴びせた。


「……ん?」


 熔岩に呑まれ、翼竜は跡形もなく蒸発した筈だ。

 しかし、熔岩に呑まれた地点から凍結が広がり始め、熔岩そのものを凍結させるという物理の埒外の現象がアルバの目の前で繰り広げられ始めた。

 三本の噴火は氷柱と化し、そのまま砕け散って冷気と氷片となる。


 その冷気もアルバの放った灼熱によって焼き尽くされてしまい、氷片も落下と同時に溶けて消えてしまった。


『あらあら……これは厄介ですわね。冷気で『凍結する大気(ダイアモンド・ダスト)』を発生させて氷漬けにして差し上げようと思っていたのですが』


「ふん、大口を叩くだけのことはあるということか。グランディネよりも強いかもしれんな。……帝国に仕えれば素晴らしい将となれただろうに、残念でならん」


『それこそ、くだらない反実仮想ですわ。ご主人様に忠誠を捧げる私が帝国の皇帝などという矮小で小賢しい存在の軍門に降るなど到底有り得ないこと。世界神を多勢に無勢で攻撃し、その力を簒奪した偽神に従うくらいなら、この世界を絶対零度の氷で覆った方がまだマシですわ』


「これ以上の皇帝の侮辱は許さんッ! 劫火熔撃砲ッッ!!」


白氷竜の咆哮ホワイト・ブリザード・ブレスロア!!』


 吹雪の壁が失われた灼熱と極寒が支配する世界の中心で、空中を一条の線の如く走る熔岩流とスティーリアの極寒のブレスが激突した。


「なっ、何!?」


『当然ですわ』


 拮抗するかに見えた熔岩流と極寒のブレスは極寒が熔岩を凍結させながら侵食するというアルバの予想外の方向へと進んでいく。

 圧倒的劣勢――アルバは知る由もなかったが、この状況は当然の帰結だった。


 最強の竜種とされる古代竜エンシェント・ドラゴンの一体――そのただでさえ高いポテンシャルを持つ存在が、ローザによって強化と最適化がなされ、誕生した氷使いの化け物。

 人の身であるアルバがこの人の形をした氷の厄災を相手に瞬間的にでも拮抗できたのは奇跡にも等しかったのだ。


「奥の手ッ! 過負荷(オーバーロード )ッ!」


 「溶岩宝石(マグマジュエル)」の奥の手である「過負荷(オーバーロード )」を発動し、限界までマグマの力を引き出すアルバ。

 押されていた熔岩流と極寒のブレスが少しずつ拮抗状態へと戻っていくが――。


『それがお嬢様が仰っていた奥の手というものですか。しかし、制限されていたマグマの力を引き出す奥の手はもって数十分――それ以上の使用は本体の肉体を蝕むのでございますよね? そのまま自爆を待つのも可能ですが、私はそのようなダラダラとした戦いを繰り広げるつもりは毛頭ありません。……ここからは接近戦で参りますわ』


 スティーリアの体が二つに分裂した。「白氷竜の咆哮ホワイト・ブリザード・ブレスロア」と「劫火熔撃砲」の拮抗が崩れ、スティーリアの身体が炎に飲み込まれた。

 無論、炎に飲み込まれたのは本物のスティーリアではない。彼女の正体は「極寒の分身(コールド・アバター)」で作られた氷像の偽物だ。


 そして、本体のスティーリアはというと――。


『武装闘気-黒腕-! 極寒の分身(コールド・アバター)!』


 スティーリアの身体が三つに分裂する。この内、二体のスティーリアは氷像だ。

 この氷像は本来のスティーリアの三分の一ほどの力しか持っていない。分身を使用することで本体の戦闘力が頭数で割った分低下するといったことはないためプラスしかならないが、戦闘力はスティーリア本体に遠く及ばないので、スティーリアの代わりを引き受けさせるということには無理があった。

 現に、アルバと拮抗状態を作り出していたスティーリアが分身と交代した途端、拮抗が崩れてスティーリアの氷像は蒸発してしまった。


「――熔噴爆撃拳!」


 両腕をマグマに変化させ、噴火によって生じたマグマをも拳に変え、マグマの拳による連続攻撃を仕掛けるアルバ。


『『『氷雪の暴風(ホワイトストーム)!』』』


凍結する大気(ダイアモンド・ダスト)


 対して、スティーリアと分身達は吹雪の竜巻をマグマを巻き込むように発生させると、吹雪の雪をダイアモンドダストに見立てて「凍結する大気(ダイアモンド・ダスト)」を放った。

 氷は伸ばされたマグマの拳諸共大気を凍結させる。更に凍結によって生じた氷はマグマの腕を遡るようにアルバ本体へと迫った。


 アルバは「溶岩宝石(マグマジュエル)」の効果を解除することでマグマと自身を切り離し、態勢を立て直そうとするが――。


氷上の舞(アイス・ダンス)


 地面を冷気で凍らせ、摩擦係数を下げたスティーリアが、地面を滑るようにアルバに迫り、そのまま武装闘気を纏った手でアルバの腹部を抉りに掛かった。

 咄嗟にアルバは「全身熔化」で身を守ろうとするも、スティーリアの武装闘気はアルバの実体を捉えて腹の中に埋め込まれていた「溶岩宝石(マグマジュエル)」を抉り取り、更にスティーリアが身体に纏わせた冷気がアルバの身体を蝕み始めた。


『チェックメイトですわ』


 アルバの身体が見る見る凍結していく。白い羽の意匠が施されたナイフを拾ったスティーリアが《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》の光に消えていく中、アルバを包み込んでいた氷に亀裂が走り、砕け散って無数の氷片となった。



 ほぼ同刻、アルバとスティーリアの戦闘に使用されたのとはまた別の地下戦闘施設では、【雷将】トネール=フードゥルと椛、槭、楪、櫻の七星侍女(プレイアデス)四姉妹との戦いが繰り広げられていた。


 椛達もスティーリアと同じく帝都の中心部にあるトネールの屋敷に潜入し、最初は主人であるローザの指示に従い説得を試みたのだが、椛達を賊だと判断したトネールは全く聞く耳を持たず「霹靂籠手サンダー・ガントレット」から雷撃を迸らせて攻撃を仕掛けてきた。

 そこでやむを得ず説得を中断して意識を戦闘に切り替え、周りに被害を出さないために《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》で帝都から転移したのである。


「帝国を脅かす輩は一人残らず黒焦げにしてやろう。裁きの霹靂!」


『……話が通じそうにないわね。槭、楪、櫻、まずは話ができるまで削るわよ!』


『『『了解です! お姉様!!』』』


 武装闘気を全身に纏わせた椛達は「星砕ノ木刀」を作り出して四方から同時攻撃を仕掛ける。


 「霹靂籠手サンダー・ガントレット」を掲げて雷を打ち上げ、無数の落雷を落とした。椛達は裏武装闘気の盾で防ぎ、或いは武気衝撃で弾き、着々とトネールとの距離を詰めていく。


「一瞬で片付くと思ったのだが、案外手強いな」


『……私ももう少し楽だと高を括っていたのですけどね。相手を殺さず、説得するために生かす戦いをするというのは難しいですわね』


「この期に及んで手加減とは、随分と舐められたものだ」


『えぇ、戦いに向かう姿勢には相応しくない、甘い考えであることは承知の上ですわ。しかし、それがお姉様の――ご主人様の命とあれば遂行するのが妹であり、メイドである私達なのです』


「それを理解した上で私を殺さずに交渉のテーブルに着かせようというのか。シャドウウォーカーの新入りを自称していたが、実際は違うな?」


『えぇ、私達のお姉様は都合がいいからシャドウウォーカーに協力しているのであって、シャドウウォーカーや革命軍と目的が完全に一致している訳ではございません。お嬢様の今回の目的は皇帝に簒奪されたものの奪還ですが、その過程でシャドウウォーカーが遂行する革命に力を貸しています。それが、ルヴェリオス帝国のためになると確信しておられるからです』


「……ほぅ」


 トネールが「霹靂籠手サンダー・ガントレット」を完全に停止させ、椛に鋭い視線を向けた。


「そのお前達の主君は、いや、お姉様(・・・)だったか? その女はシャドウウォーカーによって革命が成功した未来がルヴェリオス帝国にとって最良だと確信しているのか? その理由は何だ? いや、それ以前に事情がさっぱり分からん。お前達が何者か? どういった理由で皇帝の殺害を求めるのか? 革命を成功させた未来でお前達の主君は何を望んでいるのか?」


 ようやく交渉の場が整った。しかし、椛達の表情は硬いままだ。

 本番はここからだ。トネールを納得されられなければ、トネールを味方に引き入れることは不可能になる。


 椛は包み隠さず、これまでのローザの軌跡と世界の真実、皇帝達の起こした所業とローザの望む帝国の未来を一つ一つ丁寧に説明した。


「……これはまた、随分と荒唐無稽な話だな」


『信用するしないはトネール様がご自由になさってください』


「確かに、そう言われると納得できる部分は多い。……なるほど、腐敗した国を変えるか。そのやり方には賛同できかねるが、腐敗した国を変えられるなら革命軍につくのも一つの手か。いや、ローザ嬢の願いは革命後の帝国を支える立場になって欲しいということだったか? この国の皇帝以上に、この国を憂いているのが誰なのかよく分かった。……だが、話を全て信じることはできん。私は自分の目で見たものしか信用できんのでな。もう一度帝都に戻り、帝国の行く末を見届けさせてもらう。だが、革命軍が、シャドウウォーカーが、この国の腐敗させる要因と成り果てたのなら、私は腐敗の元凶を断ち切る。それと、今回の帝国と革命軍の戦いはどちらにも肩入れはしないからな」


『えぇ、それで構いませんわ。それでは戻りましょうか? 帝都へ』

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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[気になる点] > シャドウウォーや革命軍と目的が完全に一致している訳ではございません。 → シャドウウォーカーや革命軍と目的が完全に一致している訳ではございません。 [一言]  氷は別体(旧字?)の…
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