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Act.7-29 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.3

<三人称全知視点>


 ピトフューイの修行相手に指名されたのはシェルロッタというメイドの少女だった。


 ローザが連れてきたメイドは全部で三人にいる。

 少年がそのまま女の子になったようなアクア、令嬢のような高貴さを感じさせるスティーリアに比べ、三人目のこのシェルロッタという少女は二人にも匹敵する超絶な美少女であること以外にさしたる特徴もなく、二人に比べれば地味な印象だった。


 しかし、小規模戦闘施設の一室で実際に相対すと、シェルロッタという少女がスティーリアやアクアとは別のベクトルでローザがわざわざこの暗殺任務の戦力に選ぶだけの強さを持っているということをひしひしと感じた。

 ローザから物のついでとばかりに説明された暗殺貴族ラピスラズリ公爵家――国にとって不都合な者達を抹殺してきた暗殺集団の存在。シェルロッタは最近ローザによってスカウトされ、その戦闘使用人の末席に名を連ねることになったそうだ。これは、使用人の中ではまだまだ新参者で大した実力がない……という捉え方をするべきなのではなく、戦闘使用人に選ばれるだけの力を持っていると捉えるべきなのだろう。


 この少女はローザによってスカウトされ、その後現当主のカノープスによって承認されて正式に戦闘使用人に採用されるほどの猛者なのだろう。その立ち居振る舞いには一切の隙がない。


「それでは始めましょうか? 私は大して強くありませんのでお役に立てるかどうか分かりませんが」


「……世迷言を。お前が強者なのは立ち居振る舞いを見れば分かる。謙遜はほどほどにするべきだぞ」


「そうでございますか? 私は本当に大して強くないのですけどね。お嬢様や旦那様(・・・)に比べれば――」


 シェルロッタは凪いだ空色の瞳をピトフューイに向け、黒い蝙蝠傘を構えた。傘を武装闘気が伝うが、黒い傘は黒いまま、武装闘気を知らない者には見分けがつかないだろう。

 対するピトフューイは眼帯を外して『裏切りと闇の帝国物語〜Assassins and reincarnator』時代には保有していなかった遠視、暗視、透視、過去視、並列未来視、記憶視の六視の力を持つ帝器「六視天眼(シックス・アイ)」の力を解放し、レインボークリスタルの効果で七つの属性の弾丸を生成してランダムに放つことができる「虹色拳銃レインボー・ハンドガン」をホルスターから抜き払って左手で構えると、義手を作動させた。


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・カラクリ義手

▶︎ピトフューイの義手が幻想級素材とユニークシリーズの籠手の力を得て生まれ変わったカラクリ義手。様々なギミックが搭載されている。


スキル:【斥力場展開】、【波動砲】、【無限弾薬庫】、【破壊成長】

ギミック:ワイヤーリール式ロケットパンチ、六連回転式銃、ドリル変型、触覚伝達機能。


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ピトフューイ/神話級(ゴッズ)化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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影の歩行者の暗殺外套シャドウウォーカー・コート

▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】

フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ピトフューイ/神話級(ゴッズ)化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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 ピトフューイがローザから送られた装備の一つはこのカラクリ義手だった。

 これまでの義手とは異なり様々なギミックが搭載されており、「虹色拳銃レインボー・ハンドガン」よりも強力な武器に仕上がっている。


七降龍星セブン・ドラゴン・ミーティア


 戦闘開始早々、火、水、風、土、金、光、闇――七属性の東洋竜を同時に顕現し、流星の如く空から降り注いだ。

 カルロスがシェルロッタにある意味で転生を果たし、属性適正や膨大な魔力に見合うだけの変換能力を得たことで完成させた大魔法――その一撃一撃が既に強力な魔法と言っても過言ではないほどの威力を秘めているが……。


「【波動砲】!」


 ピトフューイの義手の掌から収束された青いビームが放たれ、次々と竜を薙ぎ払っていく。

 青いビームを受けた部分は消し飛ばされ、残った部位だけでは身体を維持できなくなり、竜は次々と霧散していった。


「なるほど……これが【波動砲】の力か」


 【波動砲】――膨大な波動エネルギーを射出する高威力のスキルの力を身をもって体験したピトフューイの頬を冷や汗が伝った。


「国士無双」


 一方、その力を脅威と認識したのはシェルロッタも同じだった。

 シェルロッタに転生し、更にローザから平行世界という概念の存在を聞かされ、ようやく完成に至ったシェルロッタ自身の究極の時空魔法を発動し、ピトフューイの猛攻に対抗する。


 ピトフューイは「虹色拳銃レインボー・ハンドガン」の引き金を次々と引き、火、氷、雷、風、木、光、闇の弾丸が次々と放たれた。


「九蓮宝燈」


 シェルロッタは莫大な魔力を凝縮した九つの透明な魔力弾のうち、七つの魔力弾を全ての弾丸を撃ち落とし、二つの魔力弾を操作して左右からピトフューイに挟撃を仕掛ける。

 更に蝙蝠傘を閉じたまま構え、地を蹴って加速――同時に【超加速】を発動して速度を上げると傘をそのまま剣のように振るった。


「【超加速】!」


 咄嗟にピトフューイは【超加速】を発動して魔力弾の挟撃とシェルロッタの斬撃を回避――そのまま義手のギミックの一つである六連回転式銃と【無限弾薬庫】を組み合わせて弾丸を連射した。


「裏武装闘気-黒盾-」


 シェルロッタは裏の武装闘気によって盾を作り出してピトフューイの弾丸の雨を無力化――そのまま盾を顕現しながら傘を構え、ピトフューイに迫る。


「【波動砲】!」


「それでは私は倒せませんよ……ッ!?」


 シェルロッタは【波動砲】の砲撃を裏武装闘気の盾で防ぎ切れると踏んでいたようだが、ピトフューイの【波動砲】は盾をあっさりと消し飛ばし、そのままシェルロッタを撃ち抜いた。


「……やったか?」


 しかし、次の瞬間にピトフューイが目にしたのは五体満足、傷一つないシェルロッタの姿だった。


「どういうことだ? 確かに撃ち抜いた筈だが……」


「ええ、確かにピトフューイ様は私を撃ち抜きましたわ。ですが、私は無傷のまま戦いの場に立っている。つまり、ピトフューイ様の攻撃で私は仕留められなかったということですわね」


「何らかのギミックか……だとしたら、あの国士無双という魔法か?」


「ご明察。国士無双とは、時空魔法の強大な干渉力を利用することで同時に存在する平行世界の自分にダメージを押し付けることができるという魔法ですわ。更に過去や未来の修正力によって押しつけた平行世界の自分自身に対するダメージすらも抹消し、瀕死のダメージや死亡したという事実すらも無効化することができる……アフターケアもばっちりですわね」


「それはまた……随分と規格外な魔法だな。全く勝ち筋が見えん」


「ローザお嬢様曰く、完璧には程遠い魔法なのだそうですよ? この魔法を事前に発動しておかなければ効果はなく、魔法維持にも膨大な魔力を必要とし、平行世界に対して同時に攻撃する類の攻撃を無効化することもできない……あくまで点による攻撃を面で補って無効化する魔法の域を出ないそうです。……そもそも、この魔法を維持したまま魔法を使うのってかなり大変なのですよ? 九蓮宝燈十二発分の魔力しかキープできなくなるのですから」


「……それでも化け物だと思うが」


「……本当に、私はもう人間をやめてしまっているのかもしれませんわね」


 もし、ローザがシェルロッタのこの呟きを聞けば「魔力保有量に関しては一切弄っていないからその人間を辞めたレベルの膨大な魔力は君の生来のものであって、究極調整体アルティメット・ドリーカドモンになってから後天的に得た性質じゃないからねぇ。ボクのせいにされても困るんだけど」と抗議の声を上げただろうが、この場にはいないため後々に映像を確認したローザに小言を言われるだけで済むだろう。


「……一つ提案があるのだが、いいだろうか?」


「何でしょうか? 私のできることであれば」


「その魔法の突破口を探しても革命には全く意味がないと思うのだが……国士無双を使用しないで今後の模擬戦は戦ってもらえないだろうか?」


「まあ、確かにローザ様も平行世界の自分にダメージを押し付ける類の帝器は存在しないと仰っていましたし、今回の修行で攻略する意味はありませんわね。……ですが、私だけが制限を受けるというのは不公平だとは思いませんか? そうですね……威力も確認できたことですし、私との模擬戦中は【波動砲】の使用禁止……ということでいかがでしょうか?」


「…………仕方ない、それで手を打とう」


 こうしてそれぞれ禁止事項を追加して模擬戦を再開する二人。

 だがしかし、これは完全なリスタートではなかった。


 左手のレースの白手袋を外し、少女の指には似つかわしくない異様に厚みのある黄色く鋭利に尖った爪を露わにする。メイド服の袖から覗く手首から手全体にかけて、筋肉の筋をビキリと立たせて脈打たせ――。


「少しだけ、前世(・・)の片鱗をお見せしょうか?」


 裏の人間が持つ特有の空気感を既に纏い、ゾッとするほどの冷たい双眸をピトフューイに向けた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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― 新着の感想 ―
[一言] > ローザが連れてきたメイドは全部で三人にいる。  過半数がTSという闇。まあ主人からしてそうだからなぁ。 > 「……やったか?」 →やってない。
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