Act.7-28 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.2 下
<三人称全知視点>
ローザからクラリスに支給されたのは、シャドウウォーカー共通の「影の歩行者の暗殺外套」と、銀のバングルだった。
-----------------------------------------------
・シルバーバングル
▶︎幻想級の聖なる力を宿したバングルとユニークシリーズのバングルを素材にしたバングル。
スキル:【多重魔法】、【魔力貯蔵庫】、【魔導賢者】、【超高速魔力回復】、【命を魔力に】、【魔力を命に】、【斥力場展開】、【破壊成長】
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:独創級
付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:クラリス/神話級化条件、付喪神度の最大化+武器に認められる】
-----------------------------------------------
-----------------------------------------------
・影の歩行者の暗殺外套
▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。
スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】
フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:独創級
付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:クラリス/神話級化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】
-----------------------------------------------
クラリスには武器の扱いの経験がなく、特訓の中で武器の扱いを習得をするのは流石に時間的に無理がある。
ローザはそこで武装闘気などの基本戦闘スキルの習得と並行して行われた魔法習得をクラリスに対してはより重点的に押し進めた。結果として、クラリスは他のメンバーが「マナオーラ」習得になんとか漕ぎ着けるという状況の中、たった一人「マナフィールド」の習得に至った。
「雷撃の弾丸」
先に攻撃を仕掛けたのはクラリスだった。放ったのは雷属性の魔力を圧縮し、一発の弾丸として放つ「雷撃の弾丸」――しかし、【多重魔法】の効果で弾丸の数は六発にまで上昇し、その全てが同時に放たれる。
「六重術式解放――第四防衛術式」
一方で、マグノーリエは瞬時に防衛術式を展開――時間的、空間的に断絶を一時的に発生させることで「雷撃の弾丸」による攻撃を全て無効化して見せた。
魔法に秀でているとされるエルフだが、人間の中にも同時に複数の魔法を行使できる者がいる。
相対的に「同時に幾つの魔法しか使用できない」と設定されているエルフの方が大きな制限を負ってしまっている。……この問題に、『スターチス・レコード』の製作段階で既に圓は気づいていた。
そこで、圓が設定したのが「人間とは異なる方式によって魔法を行使するのがエルフという種族である」という設定だった。複数の術式を同時に行使する技術と事象変換能力の二つに長け、魔力を最も上手く扱うことができる亜人種族――『スターチス・レコード』におけるエルフ像はこうして構築されたのである。
しかし、エイミーンの奥の手である「八重魔法全開放」が最大威力の切り札として使われている時点で既にお分かりだと思うが、エルフ達は長い歴史の中でその真の使い方を忘れてしまっていた。精霊に仮名を与え、それによって形を与えることで認識する術を失い、真の魔法の使う術を失い、エルフ達の戦力は全盛期から大きく弱体化したと言っても過言ではない。
現在のエルフ達の戦い方は、エルフ独自の複数の魔法術式を発動する能力によって人間の使用する魔法を再現し、そこに使用者のエルフの持つ属性と一致した魔法を発動しているに過ぎない。
言い換えるとエルフは、魔力を貯めることのできる魔力炉、体内に魔力を循環させる魔力回路、魔力に属性を付与する魔力変換器の他に、人間にはない術式器官を持っている……が、現在のエルフは術式器官を経由する決まった回路を通った後、通す必要のない魔力変換器を通して属性を付与した魔法を発動していた、ということになる。結果として、制限のみがつくことになってしまったが、プリムヴェールやミーフィリアのように人間式の魔法の才能を持っていた人もいるため、一概に劣化とは言えない。
また、術式器官を経由するエルフの方が戦術級魔法のような難易度の高い処理を行わなければならない魔法に適性を持っている。化物レベルの処理ができる一部のものを除けば、エルフが最も大規模な魔法に秀でていると言えるだろう。
一方で、エルフ固有の魔法はというと、魔力そのもので複雑な術式を編むことで大規模な事象改変を可能とする、というものだ。
その中にはユーニファイドで一般的な魔法と定義されるものでは時空属性に分類されるものも存在している。
「第四防衛術式」もその一つだ。ローザがこの世界では散逸してしまった技術を自身のメモ書きから再現した五大術式の一つであり、「六重術式」以上の適性を持つ者が行使することができる。
時間的、空間的に断絶を一時的に発生させることで一切の攻撃を遮断する究極の物理防御であるこの術式の他に、対象範囲に存在する概念の一時的な書き換えを行える「十重術式」以上の適性が求められる「第零改変術式」、別の座標に存在する物体と空間を指定し、空間ごと転移させる「八重術式」以上の適性を持つ者が行使することができる「第一転移術式」、一定範囲の魔力を封じることで範囲内での魔法使用を不可能にする「六重術式」以上の適性を持つ者が行使することができる「第二封印術式」、範囲内の魔力同士を対消滅させることで大規模な破壊をもたらす「九重術式」以上の適性を持つ者が行使することができる「第三魔滅術式」――いずれも並大抵のエルフでは行使できないものであり、エイミーンでも「第一転移術式」、マグノーリエでも「第二封印術式」と「第四防衛術式」の行使が限界だが、それでも習得するか習得しないかでは歴然の差が出るほどの途轍もない力である。
「デリュージ・カノン」
マグノーリエが杖を構えた。圧縮した激流を杖先から放たれ、クラリスに殺到する。
激流には神光闘気が練り込まれていた。治癒闘気の究極系であるこの力は、恒星の光と同じ性質のエネルギーを最大まで強化することによって治癒の力として使うことはできなくなった代わりに攻撃版の外活闘気として使う場合は治癒闘気以上の威力が見込める。完全攻撃特化と化した暴力的な生命エネルギーは、吸血鬼ではない対象をも火傷させるほどの力を有しており、水や金属を伝導させることが可能な性質を利用すれば立派な攻撃手段となる。
クラリスは瞬時に「魔法の手鏡」で鼠へと姿を変えることで攻撃を躱した。
しかし、そのまま姿を元に戻すような隙を与えるほどマグノーリエは甘くない。
「アクアスプレット」
杖先から神光闘気を練り込んだ水球を次々と打ち出す。この水球は地面に命中すると同時に広がり、小さな水溜りを作った。その中を神光闘気が雷のように迸る。小さな鼠となったクラリスが触れればひとたまりもないだろう。
「アクアスプレット」を全力疾走で躱しながら「魔法の手鏡」の変身を解除すると、クラリスは再びバングルに手を添えた。
「霹靂砲!」
「ピュアウォーター・バリア」
雷属性の魔力を超圧縮して砲弾として射出したクラリスに対し、マグノーリエは水のバリアを生成して砲撃を弾いた。
ただの水ではなく超純水に限りなく近づけた水はほとんどの電気を通さず、クラリスの雷撃を無効化することに成功したのだ。この超純水生成には高い魔力操作の技倆が必要であり、マグノーリエの魔力制御の練度が高いことを裏付けている。
「マナフィールドッ! エアロジャベリン」
「霹靂の半球」
大気中の魔力を支配して四方八方から放たれた風の槍を、「マナフィールド」を発動して大気中の魔力の支配権の一部を取り返したクラリスが生成した雷のドームが受け止め、無力化する。
「雷光の螺旋」
そのままクラリスは雷の螺旋を放って攻撃する魔法を発動し、「マナフィールド」の領域をマグノーリエに向かって放った。
「えいっ!」
しかし、可愛らしい掛け声と共に武装闘気と覇王の霸気を纏った「妖精女王に捧ぐ聖天樹杖」に殴られ、武気衝撃と覇王の霸気の衝撃によって雷の螺旋はその形状を保つことができずに霧散する。
「雷光の竜撃」
間髪入れずに強大な雷の体を持つ竜を飛ばすクラリスだったが、放った雷竜も「妖精女王に捧ぐ聖天樹杖」に殴られて霧散した。
「…………もう大技を仕掛けるしかないわね」
「大技なら大技でお相手します!」
「霹靂の領土!」「暴狂の下降気流!」
クラリスが発動したのは「マナフィールド」状態でしか扱えない戦術級魔法で指定した領域に雷を一斉に奔らせて焼き尽くす「霹靂の領土」、対するマグノーリエが発動したのは猛烈なマイクロバーストを発生させる風属性戦術魔法の「暴狂の下降気流」だった。
マグノーリエを巻き込むように一斉に雷撃が降り注ぎ、クラリスを猛烈な風が襲い、壁まで吹き飛ばす。この一撃でクラリスは瀕死の重傷を負い、体の全身からポリゴンが溢れ出していたが辛うじて命を繋ぎ止めていた。
一方、マグノーリエはといえと……。
「これは……かなり危なかったですね」
武装闘気と覇王の霸気で武装を貫き、雷はマグノーリエにダメージを与えていた。
だが、防御が功を奏したためクラリスほどのダメージは負っていない。
「生命の息吹」
そのダメージも白い癒しの風で傷を癒すマグノーリエのオリジナル風属性回復魔法によって全て綺麗さっぱり消え失せる。
「【森土支配】――大自然の蔓蔦! ――【妖精乱舞】!!」
成す術が無くなったクラリスを地面から生えた蔦や蔓が縛った。【森土支配】の効果で身動きを取れなくなったクラリスに、「妖精女王に捧ぐ聖天樹杖」から放たれた青や赤、緑や黄色、紫や橙色――色とりどりのデフォルメしたような妖精が武装闘気を纏って黒く染まり、殺到する。
クラリスのHPゲージが吹き飛び、クラリスの身体が無数のポリゴンと化して戦場から姿を消した。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




