Act.7-27 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.2 上
<三人称全知視点>
ところ変わって、アクアとディランがイリーナとプルウィアと戦っていた小規模戦闘施設とはまた別の小規模戦闘施設の一室で、リヴァスはプリムヴェールと対峙していた。
スラムの屋敷で実現しなかった対戦カードだ。
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・神竜の鱗鎧
▶︎レイドランクモンスターの神竜から低確率でドロップする幻想級の鎧とユニークシリーズのドラゴンメイルとが合わさったことで生まれた神竜の力を宿す鎧。
スキル:【竜槍創造Ⅹ+Phantasmal】、【城塞之王】、【超軽量化】、【自己回復】、【身体強化】、【破壊成長】
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:独創級
付喪神度: 0/99,999,999,999【該当者:リヴァス/神話級化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる+守るべき者のために戦う】
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・影の歩行者の暗殺外套
▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。
スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】
フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:独創級
付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:リヴァス/神話級化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】
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しかし、この対戦カードはローザがリヴァスの装備を作った時点でローザが当初期待していたレイピア使い対決からはかけ離れたものになっている。
リヴァスのメインウェポンは「光刃細剣」から「神竜の鱗鎧」のサブウェポンである「竜槍」にシフトしていった。リーチの長い槍の方がリヴァスの性質に合っていたのだ。
現在は槍メインで戦い、槍で戦いにくい近距離の間合いに入られてしまったら「光刃細剣」を扱うという戦闘スタイルを構築している。
一方でプリムヴェールは「ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル」を使った突きや払いと月属性の大魔法を組み合わせた典型的な魔法剣士タイプだ。
中には戦術級魔法も持ち、遠近共に一切の隙を見せない戦闘スタイルを構築している。
多彩な攻撃手段を持つプリムヴェール相手に、リヴァスがどう立ち回るか――これが今回の戦いの焦点になるだろう。
「ルナティック・ラスト・エリクシール。ヒロイズム。ロマンティシズム。メガロマニア」
戦闘開始早々、プリムヴェールは大いなる月の加護により発動している間のあらゆる状態異常を回復、無効化し、傷を癒す月属性の回復魔法、自身の身体能力や治癒能力を前借りするという月属性の特殊な付与術式、大気中の魔力を支配する「マナフィールド」の魔法、自身の刀身に月属性の魔力を宿す効果と自身の月属性魔法攻撃の威力を上昇させる効果を付与するという月属性の特殊な付与術式を次々と発動して万全の態勢を整えた。
「サングリッター・アタック・スペシャライゼーション!」
対するリヴァスは光属性の魔力を全身に行き渡らせ、体の細胞を光属性の魔力で活性化させた。「サングリッター・アタック・スペシャライゼーション」は回復能力のない純粋な身体強化で、使用中は飛躍的に破壊力とスピードが上昇するが、強制的に身体強化をするため長時間使用すると負荷に耐えきれなくなり、細胞が崩壊し始めるというデメリットを抱えている。
リヴァスが唯一適性があったのは光属性だった。しかし、遠距離の対象に対する魔法発動の適正が著しく低かったリヴァスは遠距離の対象への回復魔法の発動ができず、彼唯一の光属性回復魔法である「サングリッター・マキシマム・ヒーリング」も光属性の魔力を全身に行き渡らせて瞬時に傷を消し去るほどの治癒効果と体力回復効果を発揮するという、あくまで個人を回復させるレベルに留まっている。
「サングリッター・マキシマム・ヒーリング」を応用して皮膚接触で直接光の魔力を流して回復させることもできるが、それでも回復を主軸にすることができるほどという訳ではない。
もしリヴァスが女性であれば、殴ることで回復させるイロモノ……珍しいタイプの聖女として地位を築いていた……かもしれないが、そのような反実仮想はここまでにして――。
「サングリッター・エンチャート」
光属性の魔力を武器に宿して破壊力を上げる光属性付与魔法を「竜槍」を強化するリヴァスに対し、プリムヴェールは細剣を掲げると、そのまま勢いよく振り下ろし――。
「ムーンライト・フレア」
月属性の炎の塊をリヴァスに向けて放った。
「竜槍」を武装闘気でコーティングし、更に光を纏わせた「竜槍」を一薙ぎして炎の塊を吹き飛ばし、【超加速】してプリムヴェールに肉薄しようとするが――。
「ルナティック・バースト!」
「ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル」の剣先から収束した月属性の魔力をビームのように放った。
リヴァスは「竜槍」での防御に失敗し、【城塞之王】の効果でダメージを軽減したが――。
「ムーンフォースピラー! ムーンフォース・メテオストライク!」
防御のために足を止めたリヴァスにプリムヴェールは容赦なく戦術級魔法と大魔法を叩き込んだ。
地面からは月光の猛烈なエネルギーが氾濫して噴き上がり、上空からは月光の流星が一つ降り注ぐ。
「サングリッター・ファイナル・エクステリオン!」
光り輝く斬撃を拡散させることで前方広範囲に攻撃し、聖なる浄化効果の斬撃領域を展開する「サングリッター・エンチャート」により光を付与した武器を使って発動する必殺技をリヴァスはプリムヴェールに向かって放った。
「サングリッター・エンチャート」の効果が終了し、「竜槍」への付与が消える。
リヴァスが防御ではなくプリムヴェールへの攻撃という一手を打った理由は、全ての攻撃からダメージを受け付けなくなる緊急防御技、【無敵要塞】があったからだった。
再使用まで二時間を有する奥の手を行使してまで攻撃に転じた理由は、プリムヴェールに放った「サングリッター・ファイナル・エクステリオン」によってプリムヴェールに【無敵要塞】を使わせることで切り札を相殺できるという目算があったからだった。
「なるほど、いい作戦だな。だが、それでは私は倒せないぞ?」
プリムヴェールの周囲を淡いオーラのようなものが包み込んでいた。そのオーラに阻まれ、リヴァスの渾身の一撃は全く通じず、その美しい肢体には傷一つついていない。
「武装闘気の派生系の一つ――武纏昇気だ。更に神堅闘気で強化して防御を固めている。念のために金剛智證通も使用したが、どうやら必要なかったようだな。さて、今度はこちらから行かせてもらおうか? 神境智證通――千羽鬼殺流・貪狼!」
両足に仙氣を纏うことで通常では考えられない速力や跳躍力を得る仙術で敏捷を上げた状態で、おおぐま座α星の名を冠する鬼斬の技で爆発的な踏み込みにより一瞬でトップスピードに達し、「ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル」を構えた。
「千羽鬼殺流・九星!」
逆袈裟、左薙ぎ、左切り上げの三角、右切り上げ、右薙ぎ、袈裟切りの三角で六芒星を描き、唐竹、逆風、刺突を放つ宋の時代の道教の書『雲笈七籤』二十四巻「日月星辰部」の北斗七星と輔星、弼星と併せた北斗九星の名を冠する鬼斬の技を放った。
「光刃細剣」で反撃に転じる間もなく霊力と月の魔力を込めた斬撃を次々と浴びせられていき、最後の刺突を浴びせられたところでポリゴンと化して消滅していく。
リヴァスが倒されたのとほぼ同時にプリムヴェールも小規模戦闘施設の外に転送された。
「素晴らしい戦いだった。二日目でここまでとなると、最終日には敵わなくなってしまうかもしれないな」
「いやぁ、もしかしたら勝てるかもと思ったんだが、やっぱり強いなぁ。だが、次こそは勝たせてもらうぜ?」
「……私もローザ達との旅で鍛えられてきたという自負がある。簡単に負ける訳にはいかないからな、次も勝たせてもらうぞ」
プリムヴェールとリヴァスは気持ちを切り替えると、二回目の模擬戦のために小規模戦闘施設に入っていった。
◆
一方、プリムヴェールの親友であるマグノーリエはというと、二人が使っているものとはまた別の小規模戦闘施設で相対していた。
相手はシャドウウォーカーで唯一戦闘能力皆無の暗殺特化の暗殺者であるクラリスだ。
他人や動物等、様々なモノに変身できる能力を持つ「魔法の手鏡」で潜入し、隙を見せたところを針を使って暗殺するという手法で次々と暗殺を成功させてきた。
しかし、このままでは能力を見破られたら一気に不利になることや、もし逃走困難な戦闘が発生した場合にクラリスには一切攻撃手段がないままでは生き残れないということから、ローザはクラリスにも攻撃手段の獲得が必要だと判断し、シャドウウォーカーの強化の中でも一際力を入れてクラリスの強化に取り組んだ。
『裏切りと闇の帝国物語〜Assassins and reincarnator』の主要メンバーの設定は全て圓が書いた初期設定を基にしたものであり、良くも悪くもローザはそれぞれのキャラクターのコンセプトと弱点を把握していた。
クラリスの強化を行う際に戦闘能力の獲得を最優先したのは理に適っていると言えるだろう。
「それでは、始めましょうか?」
「よろしくお願いします」
クラリスは銀のバングルが嵌った右手を前に突き出し、マグノーリエが「妖精女王に捧ぐ聖天樹杖」を前に突き出し、熾烈な魔法使い同士の戦いが幕を開けた。
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