Act.7-20 影の歩行者達との邂逅 scene.1
<一人称視点・ラナンキュラス/ビクトリア・ S・ペンドラゴン>
革命軍の中でも最も名の知られた殺し屋集団――暗殺部隊シャドウウォーカー。
そのメンバーは、殉職と人員補充によって絶えず入れ替わっていて、『裏切りと闇の帝国物語〜Assassins and reincarnator』の開始時点で全部で五人。
一人目は帝器は抜けば刀のつけ根から露を発生させ、人を斬るときに勢いよく流れ刃の鮮血を洗い落とし、斬った場所から呪毒を流し込んでその毒で相手を即死させる「妖刀・叢雨」の使い手で青みがかった銀髪の長髪に蒼玉色の瞳を持つ少女プルウィア=ピオッジャ。
肉好きの大食らいで、野生児がかったところがある。
基本的に寡黙で無表情なため取っ付きづらいけど、感情の薄い立ち居振る舞いは上辺だけのもので、決して冷徹な性格などではなく、実際は優しく仲間思いな暖かい心の持ち主。
帝国の暗殺部隊出身で、幼少の頃から暗殺者として育てられていて、実力が非常に高く圧倒的なスピードと華奢な見た目からは想像がつかない重い斬撃を誇る。
二人目は蒼焔と呼ばれる通常の炎よりも安定していて温度の高い炎を纏わせることができる帝器「蒼焔大鎌」の使い手で、ピンク色の髪をツインテールにした桃色の瞳が印象的な桃色のドレスを纏った少女……ではなく、男の娘のホーリィ=グリムリッパー。
合法ロリな外見や可愛いモノ好きな趣味とは裏腹に、酒やタバコを好んでいる。
三人目は刀身の表面でサメの歯のような極小のトゲが刃を光り輝かせるほど高速で動き回る帝器「光刃細剣」の使い手で、銀髪のナイスミドルで鍛え上げられた筋骨隆々な体を持っているリヴァス=ライトレッド
ピトフューイの元部下で、彼女と共に革命軍に加わった。
熱いハートを持つ熱血漢で実直な性格。純粋な戦闘力だけでも洞察力や判断力にも優れている。決して脳筋タイプなどではない。
四人目は他人や動物等、様々なモノに変身できる能力を持つ帝器「魔法の手鏡」の使い手で、薄い赤色のロングヘアに橙色の瞳を持つ少女クラリス=チェルシー。
変装の名人で、メイクで容貌を変えることができる。お洒落が好きな普通の女の子という印象を持たれることが多く、彼女の正体が暗殺者だと見抜ける者は滅多にいない。
地方の一般家庭出身で、要領が良かったために地方の役所勤めの地位を獲得していたけど、安定した立場に満足せず玉の輿を狙っていた。しかし、仕事をしていくうちに帝国の腐り具合を知ることになり、腐った上層部を酒の席を利用して暗殺し、そのまま革命軍に合流したという過去を持っている。
五人目は暗殺集団シャドウウォーカーのリーダーを務める、レインボークリスタルの効果で七つの属性の弾丸を生成してランダムに放つことができる帝器「虹色拳銃」の使い手で、美しい銀髪をショートカットにしたイケメンな女性、ピトフューイ=スクロペトゥム。
過去の戦いで右目と右腕を失い、右目に眼帯を嵌め、右腕の義手をつけている。
最年少で帝国の将軍に上り詰めたけど、帝国の腐敗を実感して帝国軍を抜け、革命軍に加わる。
そこに、伝説の騎士団「真紅騎士団」の騎士団長で吸血鬼の王の骨を隕鉄と混ぜて打った、血を吸うたびに切れ味を増し、吸収した血液を操作することができる流星刀の帝器「血飢えた吸血剣」の使い手だった蒼の長髪と血のような真紅の瞳を持つ騎士、ヴェガス=ジーグルードの前世の記憶を持つ赤髪と紫紺の瞳を持つ男主人公か女主人公が加わった六人が異世界化に伴って何らかの変化が生じていなければ、今回の革命の重要なパートナーとなる暗殺部隊シャドウウォーカーの構成員ということになるねぇ。
「これは一体どういうことだ? 辺境の村々で何も知らずに乗った乗客を帝都のスラム街で奴隷として売り捌く馭者と、その馭者役の男に金を払って雇っている商人がいると聞いて討伐に来たんだが……そのおっさん達が討伐対象の貴族と馭者だろ? ってことは、俺達の同業者か? それに俺とプルウィアのことも知っているみたいだし……革命軍の関係者か?」
「ボスからそんな人達がいるとは聞いていない。……貴女達、何者?」
「妖刀・叢雨」の鞘に手を掛けるプルウィアと、「光刃細剣」を構えるリヴァス――まあ、正しい判断だろうねぇ。相手が何者か分からないのだから警戒するのは至極当然のこと。
「スティーリアさん、一つ頼まれてくれないかな? この屋敷の地下に捕まっている奴隷が数十人いるみたいだから保護してもらいたい。行き方は――」
『存じておりますわ。廊下の突き当たりにあった床下へと続く隠し階段の奥ですわね。保護した奴隷はいかがなさいましょう?』
「基本的な方針はメンタルケアが必要な人に関してはナタクの村の時と同じパターンだねぇ。アレッサンドロス教皇が承諾してくれたから、近々完成する修道施療院で心の傷を癒してもらう。軽度で社会復帰ができそうな人は記憶魔法で今回の一件の記憶を削除した後で可能なら日常に戻ってもらうのもいいんじゃないかなぁと思うけどねぇ。まあ、基本的には本人達のご希望に沿ったものにすればいいんじゃないかな? 日常に戻りたいなら戻れるように支援するし、帝国を離れたいなら本国で居場所を提供すればいい……と言っても、ボクの伝がある就職先しか選べないけど」
「随分と優しい対応だな、ナタクの村の連中とは雲泥の差……これに関しちゃ、ちょっと親友の意図が測りかねているんだが、説明頼めるか? ってか、そもそも記憶消去魔法なんて、そんなものあったか?」
「まず、ナタクの村関連はあの取り巻きの女性達以外はボクにとっては黒だった。取り巻きの女性達には申し訳ないことをしたと思っているけどねぇ。ボクの大切な人の家族を酷い目に遭わせた奴らに慈悲なんて掛けたくないからねぇ。まあ、それでも殺されずに普通に生活できているだけマシと思ってもらいたいけど。この場合、夫と息子を殺されたアトハさんが被害者でありながら横暴を見逃した加害者であるという微妙な立場だからかなりグレーだったんだけど、まあそれはそれとして……。罪のない完全被害者の取り巻きの女性に呪いを掛けたのは、正直申し訳ないと思っているよ。ただ、本来知ってはならない事実を知ってしまった以上は手を打っておかないといけなかったからねぇ。記憶消去という方法もあるにはあったけど、彼女達の場合は手遅れだった。身体に刻まれた快楽や苦痛、心の傷、そう言ったものは記憶を消したとしても完全に消えることはない。記憶消去後も身体に纏わり付く。既に身体の一部になってしまったものを無かったことにする、なんてことは不可能だからねぇ。だから、どんなに辛くても、その全てを抱えた上で前を向いて生きて欲しい、残酷だけどボクにはそれ以外の手を打てなかった。ただ、今回の件はナタクの村の件とは違って晴らす恨みもないし、長期間に渡って与えられた苦痛――心の傷も浅く、まだ記憶消去でどうにかできるレベルにあると思う。確認していないから断言はできないけどねぇ。で、記憶消去魔法だけど、これは魔素というエネルギーを使用する魔法少女の固有魔法と同じ系統の能力という分類になるねぇ。まあ、元々は最初の魔法使いによって完成された呪文や儀式によって魔素をエネルギーにして様々な現象を引き起こす技術が法儀賢國フォン・デ・シアコルの魔法で、それを特化させたのが魔法少女の固有魔法なんだけど。今のところ、ボクの知る限り現実世界で長期的な記憶の消去ができる能力は法儀賢國フォン・デ・シアコルの魔法しかない。……これに関しては前世では全くと言っていいほど才能が無かったんだけど、また今回も例の如く例のように調整が入って使えるようになっていたねぇ」
ってか、八賢人や最初の魔法使い並みに法儀賢國フォン・デ・シアコルの魔法を使えるってどれだけ過保護なんだって話だよねぇ。まあ、あんまり趣味じゃないから積極的に採用していくつもりはないけど。
「ボク達が何者なのか、何が目的かは後でしっかり説明させてもらうよ。ボク達の目的の一つは君達との接触だからねぇ。まあ、今のところは君達の敵ではない、と言っておこうか? 端的に説明すれば、ボク達は帝国の敵で、帝国を倒すために君達――暗殺集団シャドウウォーカーに協力したいと思っているけど、革命軍や君達暗殺集団シャドウウォーカーに面識はなく、革命軍全体に協力を申し出るつもりもない……まあ、極めて怪しい人間であることは間違い無いだろうねぇ。信じるか信じないかは君達次第だけど、とりあえずリーダーのピトフューイさんに取り次いではもらいたいかな? 後でアジトに押しかけてもいいけど、折角遭遇できたんだしさ? そっちの方が建設的だと思うけどねぇ」
「なんでもお見通しってことか? 悪いが怪しい奴をアジトに入れる訳にはいかねぇんだ。それに、その言葉を信じる根拠もない。……仲間を危険に晒す訳にはいかねぇし、ここは戦うしかねぇだろうな」
「……同意。分が悪いけど、戦うしかない」
「まあ、そうなるのも仕方ないかぁ。……アクア、プリムヴェールさん、二人の相手を頼んでいいかな? プルウィアの刀は斬った場所から呪毒を流し込んでその毒で相手を即死させる「妖刀・叢雨」――流石に斬られることはないだろうけど、念のために武装闘気を纏って呪毒の侵入を防ぐことをおすすめするよ。リヴァスの「光刃細剣」はサメの歯のような極小のトゲが刃を光り輝かせるほど高速で動き回る細剣――まあ、独創級の武器が打ち合いで壊れることはないだろうから心配はないけど、一撃でも受けたら致命傷になりかねないから気を付けてねぇ」
「分かりました。俺の相手はプルウィアさんですね。……その代わり、後で美味しい料理用意してくださいよ? 暴れたらお腹空きますから」
「アクアは動かなくてもお腹減るよねぇ。……後で美味しい料理を用意するつもりだから楽しみにしてねぇ」
「異議あり! 親友の相棒を務められるのは俺と親友だけだ。例えプリムヴェールさんだとしても、相棒の隣は譲らないぜ!」
「私も何故選ばれたのかさっぱり分からないのだが……」
「わ、私だって! プリムヴェールさんの隣は譲りたくありません!!」
……二人とも相棒のことが好き過ぎるなぁ。まあ、ボクもアクアとディランのペア、プリムヴェールとマグノーリエのペアしかないと思っているけどねぇ。
いい配置だったと思ったんだけどなぁ、残念。
「じゃあ改めて、アクア、ディランさん、よろしくねぇ。プルウィアさんとリヴァスさんもそれでいいかな?」
「いや、俺は別に誰かと戦いたいという希望はないからな? ……なんか調子狂うぜ」
「……どちらにしろ、全員倒さなければ危険を排除することはできない。誰から始めても結局結果は変わらない――全員葬る」
アクアとディラン、プルウィアとリヴァスが相対し、戦いが始まった。
さて、ボクの方もこの二人の処分をしないといけないねぇ……。
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