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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 6. フォルトナ王国擾乱〜戦闘メイドと逃亡癖のある大臣に転職した最強の漆黒騎士と副団長、自らの死の真相に挑みます〜

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Act.6-33 ドゥンケルヴァルトの開拓村と、魔女の森の魔女の女王様と弟子 scene.1 上

<一人称視点・アネモネ>


 ブライトネス王国正妃暗殺事件から三日後――同行者のミスルトウに一日分の予定を開けてもらうことができたその日、ボク達は領地になったドゥンケルヴァルトに視察に訪れていた。


 ちなみに、フォルトナ王国は多種族同盟に正式加入した。……加盟国の一つであるブライトネス王国は正妃暗殺事件で深刻なダメージを負った筈だけど、国政と多種族同盟の仕事は完全に切り離されているということなのか、同盟国のフォルトナ王国の参加するその日にブライトネス王国が欠席する訳にはいかないからということなのか、国王のラインヴェルドも普通に参加していたからなぁ。

 まあ、ラインヴェルドはシャルロッテを全く愛していなかったし、寧ろ邪魔だとすら思っていたからねぇ……微妙な政治権力の均衡を取るためのお飾りの妻だった訳だから、その死になんの感情も動かないのも分かるけど、もうちょっと取り繕ったらと思う、まあいつも通り真面目な国王モードではあったけど。


 煽りを食ったアーネストの忙しさがいつもの比じゃなかった。多分、今回の一番の被害者はアーネストなんじゃないかな? ……今回はボクに多大な責任があるから他人事では済まされないんだけど。

 実際、内宮の宰相室に赴いて彼が関係各所に対応している間に書類の束を完成させるくらいしかできなかった訳だけど、アーネストは「手伝わせてすまなかった」と謝られてしまった……これ、マッチポンプじゃんと思ったけど、説明すると場が更に混乱するから黙っておいた。


 多種族同盟の文官も、今回の騒動の火消しを手伝っていたのでミスルトウもなかなか休みを取れなかった。メアレイズとか、ブチギレてたなぁ……いつからキレキャラになったんだろう?

 まあ、そんなこんなで無事に火消しも終わり、ようやくミスルトウを連れ出せるようになったのが今日ってことになるねぇ。


 今回の同行者は、アクア=テネーブル、ディラン・ヴァルグファウトス・テネーブル、庭師のエリオール=ジィルディー、ビオラ商会幹部のモレッティ=レイドリアス、エルフ族長補佐のミスルトウ=オミェーラと海上都市エナリオスの使節団に同行できなかった埋め合わせにぜひ同行させて欲しいと願い出たマグノーリエ=メグメル、プリムヴェール=オミェーラ、そしてサボりのエイミーン=メグメルの八人……まあ、エイミーンはサボりっていうよりは面白いことないかなぁ、って感じだろうねぇ。別に大して面白いことはないと思うけどなぁ。



 ドゥンケルヴァルトは、広大な魔女の森ウェネーフィカ・ネムスと未開拓の荒地、草原――その自然そのものの土地を開拓するための名も無き開拓村からなる辺境の地だ。

 この一帯は旧ニウェウス王国に分類されるけど、強大な魔物の巣窟と化している魔女の森ウェネーフィカ・ネムスと呼ばれているこの広大な森の魔物が森を出て開拓した村を襲うのではないかという危惧と、そもそも土地に旨味がないことからニウェウス王国時代から好き好んでこの地を開拓して領地にしようと思う者は居なかったみたい。この領地を任される領主は他の貴族達から本気で哀れまれるほどで、この地を任される領主は出世街道を大きく外れることとなった。


 この地がフォルトナ王国領になってからは、領主不在のまま捨て置かれた。国の援助が一切ない代わりに税も徴収されない土地ということで、最初はかなり人の流入があったそうだけど、その旨味の無さと生活の苦しさから次第に人口が減少していった。今、開拓村の人口は百人弱……彼らは人が去っていく中でも真面目に開拓を取り組んできた者達だ。


 正直、彼らが税を徴収し私腹を肥やす領主という存在が着任することをどう考えているかは分からない。勝手を知らない余所者が来て甘い汁を啜りに来たことに怒りを覚えるか、それともこの辺境の地に飛ばされた貴族を哀れむのか。


 ボク達の到着に気づき、出迎えたのは一人の青年だった。マメだらけの働き者の手で、彼もまた自らの手でこの地を開拓してきたことがありありと伝わってくる。


「お初にお目に掛かりますわ。アネモネ=ドゥンケルヴァルトと申します。数日前にオルパタータダ陛下からこの地を与えられ、領主として着任することになりました。本日は視察のために参りましたが、今後はモレッティ=レイドリアスさんがこの地の領主代理を務めることになりますので、私のことはまあ、別に忘れてくださって構いません」


「これはご丁寧に。私はこの村の青年団の代表をしているルイス=サヴォーノと申します。この村には村長というものがおりませんので、村の代表として新しく着任される領主様のお出迎えをさせて頂こうと思ったのですが。……つまり、領主様ではなく今後はモレッティ様が代理としてこの地を治めるということでしょうか?」


 ルイスの頭では現実世界では室町の守護と守護代のような関係――こっちの世界だと領主と領主代のような関係を思い浮かべたんだろうねぇ。

 こちらの世界でも王都に住む貴族が領地を信頼できる部下を領主代に任命して統治させることはよくあること。というか、貴族のほとんどがそんな感じなんだけど、ボク達の場合はそうじゃないんだよねぇ。


「いえ、私にも他に仕事がありますのでこの領地に掛かりきりという訳には参りません。この地の運営は恐らく、このような事態に代表として領主を迎えたルイスさんが行うことになると思います」


「まあ、混乱しますよね? 順番に説明させて頂きますので、後ほどルイスさんから村の皆様にご説明をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「……はぁ」


 さて、生返事とはいえ承諾は得たので早速説明を始めるとしますか。


「まず、私は皆様から直接税を徴収致しません。語弊がある言い方ではありますが、税はしっかりと徴収致します。領地をフォルトナ王国から任された以上、私は国に対して税を納めなければなりませんからね。勿論、皆様が開拓を頑張り、そこから重税を貸して甘い汁を啜るなどということは致しません。従来の領地経営というものはそういうものですが、この地でそれをやれば反感を買うだけですからね。今まで自分達で頑張ってきたのに、突然領主が派遣されて美味しいところだけ持っていかれたら苛立ちを覚えるのは当然のこと。……では、私はどのような方針でこの地を治めるかといいますと、まず皆様には私が会長を務めているビオラ商会という会社の社員になって頂きます。おかげさまで隣国で三大商会の一角に数えられているそこそこ有名な商会です。まあ、私はただのお飾りの会長ですが」


 モレッティをはじめとする同行者達が「こいつ何言ってんの?」って視線を向けてくるけど、実際にそうでしょう? 仕事を幹部のみんなに丸投げしているんだから。


「皆様には労働に見合った賃金をお支払いたします。その賃金は源泉徴収、労働組合に所属している場合は労働組合費、企業年金、健康・労働保険料を引いたものが手取りとなります。源泉徴収は税金、労働組合費は労働組合の組織運営のための費用、企業年金は企業退職後、毎年定期的・継続的に給付される金銭を支払うための費用、健康・労働保険料は労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行う健康保険料と業務災害及び通勤災害に遭った労働者又はその遺族に給付を行う労働保険料の複合費です。ちなみに、労働組合とは誠実な契約交渉の維持・賃上げ・雇用人数の増加・労働環境の向上などの共通目標達成を目的とする組織なのですが、全く活動していないんですよね。ほとんど体裁を整えるための形骸化したものになりつつあるのですが、何故かベースアップ等の賃金の引上げや労働時間の短縮などといった労働条件の改善を交渉する労働運動が一切行われないんですよ。春闘起こして企業側……というか、ビオラ商会の場合は会長の私ですが、賃金の引上げや労働時間の短縮などを求めてもいいと思うのですが」


「ビオラ商会は福利厚生に隙がない、働くには素晴らしい環境ですから、これ以上のものを求めるような事態は起きないと思いますよ。現在、社内では労働組合の必要性が議論の俎板に上る機会も増えています」


「……モレッティさん、労働組合の必要性を問うって異常事態ですからね。今後のことを考えても残しておくように伝えておいてください。労働者が企業と闘う必要がある時がいずれ来ると思いますから」


「考え過ぎじゃねぇか? 親友(アネモネ)の会社が社員を使い潰すことは絶対ないと思うぜ? それから、ビオラ商会は三大商会の一角なんて言われているが、商会の収める税の総額は他の商会どころか領主貴族が国に収める税すら超えているからな? ブライトネス王国の税収の四分の一はビオラ商会からのものだって資料もあったぜ? お前らって実は高額納税者だからな?」


 まあ、ビオラ商会は企業規模が大きいからねぇ。未だに独占状態の分野も多いし、投資の返済とかもあるから会社としては結構な額を稼いでいる。勿論、その中には新たな事業を始めるための資金として使われるものもあるけど、社員に支払う給料は階級も関係はしてくるけど、末端で月収で三十三万ARC、ここにボーナスが上乗せられ、勿論有給休暇あり。労働時間の設定は基本的に九時五時の八時間で一時間の休憩を必ず挟む。

 一応残業代も出すけど、基本的に残業はしてもらいたくないからねぇ……残業代は安めに設定して、時間内に仕事を終わらせて持ち帰りはしないことをできるだけ徹底してもらっている。これは基本的に幹部も同じだけど、仕事と趣味の線引きが曖昧なラーナは二十四時間働いているからねぇ、まあ気持ちは分からない訳でもないし、細やかだけど残業代は支払っている……毎回返金させられ掛けるけど。

 まあ、ビオラ商会の話は一旦ここまででいいか。


「まあ、これまでの生活よりは幾ばくか楽になるのではないかと推測しています、断言はできませんが。この開拓村の未開拓地域を開拓し、ビオラ商会の支店や、ビオラ商会が新たにこの開拓村で始めたいビジネスの準備を進め、この開拓村の皆様にはそのお手伝いをして頂き、給料を支払う、という方法を考えております」


「この地に領主様が赴任されると決まった以上、私達開拓民には領主様の意向に逆らうことはできません。……他のみんなには私から事情を説明しておきます」


 まあ、基本的にどこの世界でも税金は領主や地方公共団体、国家等に強制的に徴収されるもの。それを拒む手立ては存在しない……特に中世ヨーロッパ的な世界観では。


「ところで、この村の近くに魔女様が住んでいるとお聞きしたことがあるのですが、一応領主として赴任した訳ですしご挨拶をさせて頂きたいのですが。一応ご近所様ということになりますからね」


「魔女様のこともご存知なのですね。魔女様は魔女の森ウェネーフィカ・ネムスにお弟子さんと住んでおられます。この村の魔物除けの結界を管理してくださっている恩人ですが、少々頑固な方ですからくれぐれもいざこざは起こさないでください。……魔女様のお力をお借りできなくなれば村の維持も困難になりますから」


「少々頑固? あの人は頑固っていうか、人使いの荒い婆さんだろ? まあ、婆さんっていうほど歳はいってないし、ラインヴェルドやオルパタータダと同世代だけどさ。まあ、大丈夫じゃね? 最悪親友(アネモネ)が時間巻き戻して被害をどうにかしてくれるって、なっ?」


「ディランさん、なんで戦闘前提なのかな? ってか、魔女様の性格って本当に頑固で偏屈なの? エリオールさん」


「私が知る訳がないですよ。というか、お嬢様、なんで私を連れてきたんですか? 農業に関係するとかどうとかでミスルトウさんと一緒にとりあえず連れてきたということでしたが、別に庭師は私以外にもいますよね? 働かないヘクトアールとか……お嬢様、もしかして私に何かを隠して――」


「それじゃあ、行きましょうか? 私も魔女のお弟子さんに関しては情報を得ていないので楽しみですし、レッツゴーです!」


 エリオールを驚かせるのは、魔女の森ウェネーフィカ・ネムスに着いてからのお楽しみだよ?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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― 新着の感想 ―
[一言] >まあいつも通り真面目は国王モードではあったけど。 →まあいつも通り真面目な国王モードではあったけど。 >>真面な? > まとも、のつもりでしたが、まじめの方が良さそうですね。  真面(ま…
[気になる点] > まあいつも通り真面は国王モードではあったけど。  真面な? > 私は国に大して税を納めなければなりませんからね。  国に対して?
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