Act.5-88 フォトロズ最高峰での激突〜神祖の龍人vs白氷竜の古代竜〜 scene.1
<一人称視点・ラナンキュラス>
「神竜に捧ぐ神楽舞! 神竜の鼓動は癒しの音!!」
イベント職の神竜巫女が習得する攻撃を命中させるか敵の攻撃を回避する度にステータスを上昇させる特技と、毎ターン一定値の回復と敵にダメージを与えた際にその三分の一の体力を回復する脈動回復魔法を付与し、スティーリアと向き合う。
『姿を変えた? ……今度は竜の気配がするわね。油断ならないわ……氷雪の暴風』
手から吹雪を竜巻みたいに放ってきたねぇ……普通、人間体じゃ竜本来の姿よりも威力が落ちるけど、かなりの魔力が練り込まれている。
猛吹雪を圧縮して攻撃範囲を狭める代わりに威力を引き上げたということかな? いずれにしてもこの山の気候を変えてしまうほどの猛烈な氷属性の魔力、浴びたらかなりダメージを置いそうだねぇ。
「火竜の鍵爪の剣!」
イベント職の神竜騎士の効果で召喚した低級の火竜を『妖刀・紅月影』に纏わせて『氷雪の暴風』の竜巻に真っ向勝負を挑む。
流石は超越者の力――『氷雪の暴風』の竜巻もなんとか相殺できたみたいだねぇ。
「――竜滅斬刃!!」
『地上戦は厳しいですか……仕方ありません』
一気に距離を詰めたボクに対し、スティーリアは白氷竜としての本来の姿となり、一瞬で飛翔し、攻撃の範囲内から抜けた。
放った斬撃がドラゴンの姿に変わり、スティーリアに殺到する……けど。
『白氷竜の咆哮!』
その全てを悉く一発のブレスで無効化されちゃったみたいだねぇ。流石に古代竜の本気のブレス相手じゃこの程度の攻撃は無力化されるか……。
「完全龍化」
龍人の固有技能で黒龍と化し、スティーリアと同じ土俵に立った。さて、第二戦と参りますかッ!
『古代竜である私に同じ竜の姿で挑むとは……いい度胸ですね! いいでしょう、我が息吹の中で凍てつきなさい! 白氷竜の咆哮!』
そして、二発目のブレス……だけど、ボクが一度見た技に何の対策も考えずに空中戦を挑むと本気で思っているのかな?
ブレスの範囲ギリギリをブレスの周囲を螺旋状に回るように旋回飛行しながら突き進み、スティーリアの横に到達する。
『――そんなっ!?』
『――殺戮者の一太刀』
武器が無ければ放てない訳じゃない。暗殺者系四次元職の暗殺帝の奥義――殺戮者の一太刀。武器を大きく振り回して敵の首を刈るイメージの技を爪で代用して発動し、暗殺者系の攻撃特技の中でも最強クラスのダメージ出力を誇り、高確率の即死効果が付与されたまさしく暗殺者に相応しい技がスティーリアの首を刈り取った。
即死――首と胴体がバラバラになったスティーリアが地面に落下する。
ボクも地上に降り、アカウントをリーリエに変更――首と胴体をくっつけた上で「聖煌甦光癒」を掛けた。
◆
『参りましたわ……まさか、私のブレスをあんな簡単に回避してしまわれるなんて』
人間体の少女の姿に戻ったスティーリアが少し落ち込んでいた。恐らくあのカリエンテを一撃で粉砕したブレス――スティーリアの最大攻撃が全く通用しなかったことがショックだったんだろうねぇ。
「ボクも喰らっていたらちょっと危なかったからねぇ。回復掛けてHP維持をするのも面倒だったし普通に避けさせてもらったよ」
『……どちらにしろ、負けていたのですね。完敗ですわ……私、〝白氷竜〟スティーリア=グラセ・フリーレン=グラキエースは貴女様にこの身を捧げます』
「……別にそこまで思い詰めなくても良いと思うけどねぇ。改めまして、ローザ=ラピスラズリです。特殊な経歴だけど、ボクも含めて詳しい話は屋敷に帰ってからにしようか? スティーリアさんもそれでいいよね?」
少しずつ太陽も沈んでいっている。時は夕暮れ、流石にここで一晩を過ごすのはねぇ……できなくはないけど、毎日屋敷に帰るっていう約束は果たせなくなるし。
『わ、私のことはスティーリアと呼び捨てにしてくださいませ。ご主人様に、さん付けで呼ばれるなど、他に示しがつきませんわ!』
「ボクは別にどっちが上とかじゃなくて対等な友達みたいな関係がいいんだけどねぇ……それじゃあ、よろしくね、スティーリア」
『は……はい♡』
うん、なんかスティーリアが一瞬恋眼になった気がするけど……多分気のせいだよねぇ。
「親友って時々イケメンに見える時があるよな」
……ディラン、よく分からないことを真顔で言うなよ。そして、アクア達も同意するな……どう考えもイケメンなのはボクじゃなくてアクアでしょう!? というか、ボクはお淑やかな令嬢だからね! そもそも、ボクは攻略対象じゃないし、死にたくないからって男装なんかしないよ! それくらいだったらスザンナみたいにメイクで別人に変装して逃走…………あっ、これなら普通に破滅フラグから逃げられたんじゃない? うん、破滅する展開になったら別人になって逃走しよう、そうしよう。
◆
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
その日の夜、ラピスラズリ公爵家にて――。
今晩の夕餉にはラインヴェルド、ノクト、バルトロメオ、ヴェモンハルト、スザンナ、レイン、ルクシア、エイミーン、ミスルトウ、ヴェルディエ、メアレイズ、オルフェアの最早固定メンバーが追加参加している。
カトレヤも最早ラインヴェルド達はいないものとして考えているようで一人で優雅に食事を楽しんでいた。
しかし、死んだ魚の目でラインヴェルドとエイミーンを睨んでいるミスルトウ、メアレイズ、オルフェアの三人といい、自分は関係ないとばかりに我関せず食事しているノクトとヴェルディエといい、無駄にテンションの高いラインヴェルドとエイミーンといい、随分とバリエーション豊かな食卓だねぇ……しかし、こんなに沢山人がいるのにテーブルマナーがなっていない人が一人もいないって凄いねぇ。
『無様ですね。あの火竜帝を称して暴れまくっていた駄龍が新人メイドとして最下層にいるとは』
『わ、我も好きでやっているのではないのだ! ただ、我はローザ様のご命令で仕方なく……』
『メイドとして一通り教養を学びなさいとジーノ様に教育をお願いしてくださっているのは、ローザお姉様が私達のことを想ってのことです。その慈悲を無に帰すということですか?』
『――ひ、ひッ!?』
カリエンテは随分と欅達に絞られたみたいだねぇ。しかし、カリエンテとエヴァンジェリンのメイド姿、本当に最高だねぇ♡ 眼福眼福♡ あっ、別に欅達が可愛くないってことじゃないよ♡ みんな違ってみんないい、九人の女の子に囲まれてボクは幸せ者だねぇ♡ そこにスティーリアが加わるともっと最高になるけど……スティーリアとカリエンテって仲が悪いからねぇ。仲良くなってくれたらいいカップリングになると思うんだけどねぇ♡ ねぇ、君もカリエンテとスティーリアのカップリングって最高だと思わないかな♡
「ジーノさん、カリエンテとエヴァンジェリンはどうだった?」
「お二人ともマナーの方はあまりお得意ではないようですね。ローザお嬢様のご要望とあれば根気強くメイドとしての立ち居振る舞いを仕込ませて頂きますが?」
「勿論、そのつもりだよ? メイドの立ち居振る舞いというのは淑女の立ち居振る舞いにも通じることだからねぇ。それに、いい経験にもなると思うからねぇ。……ところで、スティーリアのこともお願いしていいかな?」
『――そんなッ!?』
『ガハハハハッ!! 笑っていられるのも今のうちだぞ! 特にジーノ執事長の紅茶講座は地獄だぞ!!』
「ジーノ執事長の紅茶講座は本当に地獄だよな。今まで正解できた試しがないよ……まあ、それはアクアも同じだけどな」
「悪かったわね。紅茶なんて飲めればなんでもいいだろッ!!」
「あはは、本当に親友らしいよな。俺にも紅茶の良し悪しなんて分からねぇぜ、というか、そんなの知っている必要あんのかよ? 美味しけりゃいいだろ?」
「確かに、紅茶は珈琲に比べて外れが少ないけどねぇ。でも、紅茶の特性を理解して使い分けるということもできるからねぇ。……うん、そうだねぇ。折角これだけ人数がいるし、ちょっと遊んでみようかな?」
マナーは維持したまま食事の速度を上げてアクア、ディランの二人に続けて夕食を済ませ、一人で厨房へ。
そして、厨房でアクアとディラン用の追加の料理を作ると、夕餉の席に参加している全員分の紅茶を二杯用意した。
「はい、お待たせしました! まずはアクアとディランさんの追加料理。鍋プリンもあるよー」
「おっ、サンキュー! あっ、その骨付き肉は半分こだな!」
「ディランこそ、先に全部食うなよ。……それで、お嬢様。その大量のAとBと書かれた紅茶は一体なんなんですか?」
「えっ、これ? ミニ・紅茶講座みたいなものかな? 一つはスペシャル・ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコーのダージリン、五十グラムで銀貨一枚程度、もう一つが五十グラムで大銅貨三枚程度のブライトネス王国産の紅茶。まあ、流石にこの違いくらいは分かるよねぇ?」
まあ、ほぼほぼ某芸能人の品格をチェックする番組だけどねぇ。
参加者はカノープス、カトレヤ、ネスト、ジーノ、ヒース、ヘイズ、サリア、スティーブンス、ヘレナ、エリシェア、カレン、ナディア、ニーナ、クララ、ジェイコブ、ジミニー、アルバート、パペット、カッペ、ヘクトアール、エリオール、フェイトーン、ダラス、アクア、ディラン、欅、梛、櫁、椛、槭、楪、櫻、エヴァンジェリン、カリエンテ、スティーリア、琉璃、ラインヴェルド、ノクト、バルトロメオ、ヴェモンハルト、スザンナ、レイン、ルクシア、エイミーン、ミスルトウ、ヴェルディエ、メアレイズ、オルフェア……ミスルトウ、メアレイズ、オルフェアの四人は相変わらず死んだ魚の目だけど。本当に大丈夫かな?
琉璃も興味があるみたいなので参加するそう。真月は山登りで疲れたため、今も影の中で寝続けている。
実はどちらの紅茶にも疲労回復とストレス軽減を付与してあるんだよねぇ。これを飲んで少しは疲労を軽減してもらえたらいいんだけど……あっ、ミスルトウ、メアレイズ、オルフェア、レインの四人にねぇ。この四人にはノクトやヴェルディエみたいに中立を貫いてクソ陛下達に振り回されないように立ち回るってことができないし。
「それじゃあ、全員に行き渡ったかな? AとBの紅茶を飲んで、高い方の紅茶だと思った方をあげてね」
一緒に配ったAとBの札を全員が飲み終わったタイミングであげてもらい、結果は……。
「正解はBです!」
「こっちの紅茶の方が美味しいと思ったのよ。今度お茶会で出してみたいわ。ローザ、お願いできるかしら?」
「お姉様、正解しました!」
正解者はカノープス、カトレヤ、ネスト、ジーノ、ヘイズ、サリア、スティーブンス、ヘレナ、エリシェア、ナディア、ニーナ、クララ、ジェイコブ、ジミニー、アルバート、パペット、カッペ、ヘクトアール、エリオール、フェイトーン、ダラス、欅、梛、櫁、椛、槭、楪、櫻、スティーリア、琉璃、ラインヴェルド、ノクト、バルトロメオ、ヴェモンハルト、スザンナ、レイン、ルクシア、エイミーン、ミスルトウ、ヴェルディエ、メアレイズ、オルフェア。
間違えたのがヒース、カレン、アクア、ディラン、エヴァンジェリン、カリエンテという結果になった。
「なんか陛下とエイミーンさんがしれっと正解しているのがちょっと苛立つねぇ。普段からいいもの飲んでいるんでしょう?」
「おい、ローザ。俺達が一体何をしたっていうんだよ! 今回は面白味なもなく捻りもせずに美味しい方を選んだのになんで苛立つんだ!」
「そんな、あんまりなのですよぉ〜! 折角正解したんだから褒めるのですよぉ! 甘やかすのですよぉ!!」
「そうだぜ! ということで、ローザ。なんかクソ面白いことしやがれ!」
『まさか、この程度の違いも分からないとは。流石の馬鹿舌ですね、カリエンテ』
『な、なんだとッ! 正解できたからって威張りやがって、どうせマグレだろッ! もう一度勝負だ!!』
「ヒース、カレン、アクアが間違いましたか。……どうやら私の教えが足りなかったようですね。食事が終わりましたら私の部屋に来てください。みっちり紅茶講義をさせて頂きます。ディラン公爵も一緒にいかがですか? 拒否権はありませんが」
「おい、相棒。逃げるしかねぇな!」
「ああ……と、その前に鍋プリンを完食して……よし、逃げるかッ!」
「おい、アクア! 一人だけ逃げるなよッ! ジーノ執事長の拳骨を喰らうのはお前もだ!」
「いい機会ですわ! ジーノ、今日こそは貴方を倒してみせますッ!」
『わ、私に紅茶の利き茶ができる訳なかろうッ! ずっと迷宮で迷宮統括者をしてきたのだぞ! こんな勝負無効だ!』
荒れてるねぇ……一気に煩くなった。紅茶って優雅に楽しむものだと思うけどねぇ、なんでかなー?
とりあえず、何もクソ面白いものが思いつかなかったのでクソ陛下を拉致ってフォトロズ大山脈地帯に『全移動』して好きなだけバトってあげた。食後の運動にはなったかな?
お読みくださり、ありがとうございます。
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もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




