Act.5-5 聖なる十字架は技術革新の扉を開くのだろうか scene.1 下
<一人称視点・リーリエ>
「それで、この後はどうすれば?」
「そうだねぇ……とりあえず、自分に掛かった時間を加速させるイメージをして、剣に魔力を流してみて」
「こう……ですか?」
「で、そのままワイバーンに向かって走って斬りつける!」
青いオーラのようなものを纏ったヴェルナルドが踏み込んだ……と思ったら猛スピードでワイバーンに突撃していった……いや、踏み出したら予想以上のスピードが出たって感じだねぇ。
時間加速……どうやら成功したみたい。あっ、ヴェルナルドがワイバーンに激突して、斬撃を喰らわせる前にワイバーンの装甲が砕け散って、その衝撃で戦闘不能になった。ついでにヴェルナルドが血だらけだ……。
「治癒」
一応、回復系職業の初期に獲得できる基本的な回復魔法を掛けておく。別に大した怪我でもないし、これで十分。
「これで、とりあえずは実験終了。お疲れ様、ヴェルナルドさん」
「……死ぬかと思いました。……ですが、リーリエ様のお力になれたのであれば幸いです」
とりあえず、狂信者その二はスルーして。
「それで、今回の件で重要なことが分かったと思うんだけど」
「……リーリエ様が求めておられた時空属性の魔法の使い手が不要になったということでございますね?」
「いや、そっちはそっちで続けてもらいたいけどねぇ。……これはあくまで保険だし。ただ、これで個人個人のポテンシャルに左右される魔法の希少性というものはほぼ無くなった。重要なのは保有する魔力の量……変換すれば属性は変化させられるけど、魔力の量を補うことはできないからねぇ」
……まあ、そっちはそっちでドーピングするって手もあるけど。
「それじゃあ、約束通り武器を作ろうか。さっきサンプルにもらったロザリオを素材にさせてもらってもいいかな?」
「「リーリエ様のお心のままに!!」」
……本当になれないねぇ、こういうの。
【完成予測】を発動して、ロザリオを最も最適な形で神聖護光騎士に相応しい武器に再構成し直すか、その答えを模索する。
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・天上光聖女教のロザリオ
+
・カレトヴルッフ
+
・花結晶・改+魔10×2
+
・虹結晶・改+堅10×2
+
・玉鋼・改+堅10×10
+
・妖精の粉・陽属性×3
+
・神水晶+20
+
・アトランタイト×2
=
・天上聖剣エンピレオ=レイ
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・花結晶・改+魔10×100
+
・虹結晶・改+堅10×100
+
・神水晶・改+堅10×100
+
・アトランタイト+堅10×100
=
・至高結晶
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見えた……けど、なかなか素材の難易度が上がっているねぇ。
触媒用の至高結晶も含めてかなりの出費だ……まあ、【複製錬成】の効果で増殖させること自体は簡単だから問題はほとんどないんだけどねぇ……魔力消費くらいしか。
必要な材料を揃えつつ、錬成を効率的にするために一旦比咩小百合のアカウントに変更して、材料を揃えてから目標の天上聖剣エンピレオ=レイと至高結晶に錬成し直す……よし、完成。
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・天上聖剣エンピレオ=レイ
▶︎ 天上光聖女教の女神の加護によってブリテン島の正当な統治者の象徴とされる伝説の剣が生まれ変わったもの。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:幻想級
付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:指定なし/神話級化条件、付喪神度の最大化+武器に認められる+聖剣に聖職者に相応しい聖なる力と高潔さを認められる】
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完成した幻想級装備にローザの光属性の魔力を使って「属性再染魔法」を掛けて至高結晶を変化させたクリスタルパーツを嵌め込んで完成……ってあれ? 予想以上に光属性が強かったんだけど……でも、ローザって強力な闇属性と微弱な光属性を持っている悪役令嬢だった筈……まさか。
「マキシマム・セレスティアルレイ」
……えっ、嘘でしょ。というボクの感想とは裏腹に、悪役令嬢ローザの「ブラックホール」と対になる主人公がレベル99で覚える固有最上級光魔法が、ワイバーンとかドラゴン系その他諸々を纏めて吹き飛ばした……マジで。
その後、パーティに加えたヘンリーがレベル99で覚える「プロミネンス・バースト」を含め、色々試してみたけど全部成功してしまった…………ナンナンダ悪役令嬢ッテ。
「…………ああ、これ検証しなかったボクが悪いってことだよねぇ。……まさか、シャマシュ聖教教会のステータスがほとんど引き継がれて、その上元の世界の技能の適性があり得ないくらい上昇しているっていうチートっぷりで、その上ローザそのもののスペックを向上させてくるとか思わないじゃん……なんなの、悪役令嬢じゃなくてチート令嬢なの!? 三分の一くらいは努力していないから余裕でチート扱いされそうじゃん!!」
「……落ち着いてくださいませ! リーリエ様は元々規格外でございますから、今更新しい要素が一つや二つ加わったところで一緒でございます!」
「……アレッサンドロス教皇臺下、それ、褒めてない。……とりあえず、これで実験は終了。複製した天上聖剣エンピレオ=レイを適当な本数用意して、光属性と時空属性を込めた至高結晶のクリスタルパーツを用意しておいたから、できるだけ早めに使いこなせるようにしてねぇ」
「はっ、承知致しました! 御尊主様の御心のままに!!」
……本当に慣れないねぇ……はぁ、早く家に帰ろう。
◆
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
「――という事情がありまして、暫くしたら他種族との国交樹立を目的とした使節に参加することになりますわ。最大で七年ほどかかる大仕事ではありますが、屋敷と分家屋敷と旅先の往復になりますので夜はこちらに戻ってきますのでご安心ください」
「カノープスからローザが大変なお仕事を任されたって聞いていたけど、七年も顔を見られないということがなくて本当に良かったわ」
まあ、確かにカトレヤのいう通り年頃の娘の成長を見届けることができないのって親としては辛いよねぇ……親になったことがないから流石に実感したことはないけど。
……その点については娘溺愛派のカノープスも同じだろうねぇ……まあ、あくまでクソ陛下の命令第一だから使節団参加に反対することはないし、溺愛もボクが転生者だって分かってからは目に見える形ではされなくなったけど……寧ろ、対等な存在として見ている節があるよねぇ、溺愛し、庇護する対象じゃなくてさ。
「……流石ですね、姉さん。……いつになったら追いつけるのかな? ……やっぱり無理だよね」
ネストが遠い目をしている……うーん、別にハイスペックな攻略対象なんだからすぐにお姉ちゃんなんて超えていくと思うんだけど……えっ、お前は規格外過ぎるって? 私は『普通』の公爵令嬢です! ……って、これ違う子だった。
「ところで、ネスト。お勉強は順調かしら?」
「はい……といってもまだ始めたばかりですが。一刻も早く姉さんに追いつけるよう頑張っています」
「ネストが頑張っていることはジーノから聞いて知っているよ。……まあ、ローザと比較してもしょうがないから、ネストはローザに追いつくんじゃなくて、別の強さを見つけた方がいいと思う。ローザより強くならなくても彼女を支える方法はいくらでも……いくらでもあるのかな? 流石に思いつかないけど、まあ、ローザは人一倍努力した上に元々天才だからね」
いや、天才とかじゃないから! あの本好きを拗らせた変態みたいな奴を天才って言うんだから……というか、あれは天災の方だねぇ。モブのフリまでしてタチが悪い。
「ところでいつまで令嬢のフリをするんだい? 私達はローザの正体……というより前世かな? を知っている訳だから、別に令嬢のフリをする必要はないと思うのだけど」
「お父様? お忘れかもしれないですが、私は公爵令嬢ですよ? ……まあ、気を遣って令嬢口調にしていたけど、必要ないなら戻すよ。……それから、お父様。今日、ちょっと面白い実験をして、それ関連で魔法省に昼頃行くつもりだからアポ取りお願いできないかな? それと、ネストにもそれ関連で用事があるから、明日の朝食の後にボクの部屋に来てもらえないかな?」
「僕はいいけど……お勉強、休んでもいいの?」
「ローザの頼みが優先だからね。分かった、魔法省へはジーノに連絡をさせておくよ」
「委細承知致しました、旦那様」
「ところで、馬車は必要かな? 流石に歩いて行く訳にはいかないだろう?」
「まあ、アネモネとして行くつもりだし、使節団として使う予定の『精霊の加護持つ馬車』を使う予定だから馭者は必要ないかな? あれって使うと精霊の馭者がついてくるし」
「アネモネは突如彗星の如く現れ、世界で唯一のSS+ランク冒険者、ビオラ商会の商会長として活躍する規格外の謎の人物として知られているし、今更おかしなことの一つや二つ増えても問題はないと思うよ」
「……本当は一つや二つどころではありませんけどね」
裏の世界を知らないカトレヤにとっては常識が何度壊されたかってレベルの話だったと思うからねぇ……まあ、仕方ないよ。
その後、夕食を食べ終えたボクは一人で入浴を済ませ(アクアが突撃しようとしてきたみたいだけど、ジーノが止めたらしい……別に減るものじゃないし、どっちでもいいんだけど)、布団に入って「E.DEVISE」で小説を書いていたら気づいたら朝になっていた……あっ、徹夜しちゃったねぇ。平常運転か。
お読みくださり、ありがとうございます。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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