Act.5-3 聖なる十字架は技術革新の扉を開くのだろうか scene.1 上
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
「E.DEVISE」の使い方を一通り教え、実際に触ってもらった後、ボク達は普通のお茶会に戻った……普通のお茶会ってなんだっけ?
「普通のお茶会って一体何をするんだろうねぇ?」
「さぁ……私はまだ一度もお茶会に呼ばれたことがありませんので、勝手なイメージですが、ご令嬢達が笑い合いながら内心で腹の探り合いをしている怖い場所というイメージですね」
「…………そういうものなのか?」
「まあ、概ねそういうところだろうねぇ」
誰が好きとか、そういう恋話チックなことをしながらも、自分が好きな相手を射止めるために恋敵の粗を探し、蹴落とす。……後は陰湿な類のイジメとか……やっていることって《鬼斬機関》が言うところの人から成った方の鬼の所業と愛さないよねぇ。
「まぁ、そういう場所に後々は出ないといけないとなると溜息を吐きたくなるよ……」
「てっきり、ローザ様はそういう場所に慣れていると思っておりましたが……そもそも高い話術をお持ちのローザ様はスペック的にどう考えても孤立するとは思えませんし、万が一爪弾きになどされたら報復が怖そうですが」
一体ボクをどんな存在だと思っているのかねぇ……もしかしなくても:大魔王?
「まあ、公爵家という立場的に見ても、まあイジメられることはないだろうけど……女同士の腹の探り合い、蹴落とし合いなんてなんて生産性のないって思うし、そもそも殿方に興味がこれっぽっちもないからねぇ。寧ろイケメン死すべし派だし……あっ、前世がイケメンじゃなかったからっていう腹いせじゃないし、男嫌いって訳でもないけどねぇ。ただ、男を恋愛対象として見られないというか、それ以前にずっと想い人がいるというか……まあ、彼女と再会できるかどうか分からないんだけどさ」
「……それでは、お兄様ではダメなのですね」
何がダメなのだろうか? ……もしかして、ボクとニルヴァスをくっつけようとか企んでた? HAHAHA……そんな訳ないよな。そんなことしたってソフィスには自分が義妹になるっていうくらいのメリットしか…………正気?
「しかし、前世から好きな相手とは……なかなかロマンチックですね!」
「お兄様の言う通りですわ!! 前世から同じ人を恋い慕っているなんて、本当に物語みたいにロマンチックです! ……確かに、現時点でローザ様と家族になれる可能性が低いというのは悲しいことですが……ですが、ローザ様の恋は友人として応援したいです! ……でも、やっぱりお兄様のことを……やっぱり、ダメですか?」
何度売り込んでもダメだよ? 上目遣いでも…………ついつい良いって言いたくなるけど、ダメなものはダメなのよ。
「そもそも、攻略対象の超美形で頭脳明晰な魔性の伯爵様とボクなんかが釣り合う訳ないでしょう?」
「いや……そもそもローザ様と釣り合う存在などこの世……どころかこの世界を飛び出して探しても見つからないと思うのですが」
買い被りだって……別にボクって大した存在じゃないって。……えっ、過剰過ぎる卑下はかえって嫌味だって??
「…………さて、どうしようか? 恋話っていっても、大したネタはないし……ボクの惚気話を聞いても仕方ないよねぇ」
「……それはそれで聞きたいような。前世のローザ様の恋、一体どのようなものだったか気になりますから」
「……恥ずかしいからやめておくよ。……やっぱり、緑霊の森への旅の話をするのが一番かな?」
その後、紅茶やお菓子に舌鼓を打ちつつ、緑霊の森までの旅での出来事を暈すところは暈しながら話した。
「やっぱり規格外ですわ……流石はローザ様」
「まあ、ローザ様だからな。別段驚くことはない……驚くことはないが」
「「ボードゲームって楽しそうですね!? 是非私達にもプレイさせてください!!」」
ああ……伝聞でも発動しちゃうのか。ボードゲームの誘惑……もしかして、ボードゲームカフェとかやったら流行る? 大倭秋津洲は海外に比べてボードゲームが根差しにくい土壌だとは言われていたけど、そういえばここって西洋式? の異世界だからねぇ……あまり娯楽もないし、流行ってもおかしくはないのか。
その後、三人で同人ゲームとして発売された各プレイヤーが協力者の助力を受けて姫にラブレターを届けることを目的とするというストーリーが設定されているカードゲームなどをして暫く遊んだんだけど……これって、正しい貴族子女のお茶会の光景なのだろうか?
◆
<一人称視点・リーリエ>
「ようこそお越しくださいました! リーリエ様!!」
翌日、ボクはアレッサンドロスの招きに応じ……という訳ではなく、後々に変なプレッシャーを掛けられると面倒なので天上光聖女教……別名『天上の薔薇聖女神教団』の総本山に来ていた。
まあ、理由は「そのお美しいお姿を壁画に描かせて頂けないでしょうか?」という教会に飾る壁画を描きたいという話ねぇ……そして、総本山には明らかに凄腕と思われる教団絵師達が居た。
まあ、これならものの数時間で終わると思ったんだけど…………。
「わ、私ではこれほどまでに神々しい玉体を絵にすることなど絶対に不可能です!! どうか、どうかご容赦を!!」
「嗚呼、女神様!! 貴女様のお姿を描くことなど……わ、私には」
……甘かった。
他も似たり寄ったりで、教団絵師達は揃って使い物にならなかった。そして、アレッサンドロスも「当然であろう」と自信満々にしているけど……はぁ……それじゃあボク帰れないことになるよねぇ。いつまで拘束する気なの?
「仕方ないねぇ……ボクが描くよ。そっちの方が早いだろうし」
「……よろしいのでございますか?」
「じゃなかったらいつまで経っても帰れないでしょう? 代わりに、それ相応の見返りをもらいたいからねぇ……ほら、ボクとクソ陛下で襲撃を仕掛けた時に「聖極十字光」って技を受けたんだけど……ああ、あれは効いたよ」
「――ッ! 大変申し訳ございません! あの頃はまだローザ様の偉大さを理解していなかったのでございます!!」
「いや、別に偉大でもなんでもないんだけど……あのロザリオについてちょっと気になったことがあってさ、あれの説明をしてもらえないかな? ついでにサンプルももらいたいんだけど」
「ま、まさか!? 遂にリーリエ様も天上の薔薇聖女神教団に入信して頂けるのですか!?」
「そんな訳ないでしょ!? ボクを崇めるのは別に勝手にすれば良いけど、あくまで君達に関してはノータッチ、そういう方針だから!!」
まあ、宗教画くらいは描くよ? 面倒だし……そういえば、昔、どっかの宗教団体から絵の依頼を受けたなぁ……どこだったっけ? なんか、入信を勧めてくるわ、男の娘を否定するわ、色々と難癖つけて報酬を払わないわで腹が立ったから化野さんに「好きにして良いよ」って言ったからねぇ……あれってどうなったんだっけ? ああ、メタンニトリルをばら撒いて終了したんだ。あれで支部一つが崩壊して……で狂信者が一向一揆みたく襲ってきたんだけど、月紫さん達が軒並み全滅させたんだっけ? まあ、別に過ぎたことだしどうでもいいか。
「しかし……本当によろしいのですが? 御尊主様は自らのお姿を確認されず」
「別にいつも鏡で見ているからねぇ……完全記憶があるから自分の姿くらいきっちり記憶しているし……あっ、画材は選ばせてもらうよ」
ちなみに、この世界の宗教画で使われる絵具は顔料に卵、又は卵と油、或いは卵と油と水を混ぜる卵テンペラ、牛乳やチーズに含まれるリンタンパクの一種であるガゼインを使ったガゼインテンペラ、動物の皮膚や骨から生成した接着剤である膠を使った膠テンペラの三つ……なんだけど、今回はテンペラに取って代わった油絵具や、水彩画に使われる水彩絵具、アクリル絵具などを使う……のではなく、統合アイテムストレージから取り出した天然の岩絵具と使い慣れた画材。
これらを使い、「吸血姫の翼」で空を飛びながら壁や天井に描きつつ、新たに天井に嵌め込んだステンドグラスとの調和を目指す。
下の宗教画家達は驚いているようだった……けど、果たしてボクの絵に驚いていたのか、空を飛んでいることに驚いていたのか……まあ、後者だろうねぇ。
「まあ……こんな感じかな? 適当にやってみたけど」
「まさか、ここまで素晴らしい壁画を描いて頂けるとは!? 何から何まで大変申し訳ございません……我々信徒が不甲斐ないばっかりにご不快な思いをさせてしまいました!」
教皇アレッサンドロスは大袈裟に壁画を褒め称えつつボクに不快な思いをさせたとかなんとかで謝罪し、宗教画家達は常識を打ち壊されたように打ちのめされたような表情をしている。
「「「「「「…………どうか、私達を弟子にしてください!!」」」」」」
……ッ! 怖っ! 何その有無を言わなさい迫力! 狂信者怖っ! 特にその狂信がボクに向いているとか、怖っ! 助けて月紫さん!! 化野さん!! ……まあ、百合薗グループも一種の宗教みたいな謎の忠誠心みたいなものはあったんだけどさ。
そして、条件反射的に「はい!」と言ってしまったために一流に絵を教える羽目に……これって、釈迦に説法じゃない? まさに。
「それでは、お約束通りロザリオのサンプルと、このロザリオについての説明をお願いできませんか?」
「はい! 畏まりました!!」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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