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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-494 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜海賊団の襲来と、多種族同盟の内政干渉と、海洋国マルタラッタ国王の選択と〜scene.7

<三人称全知視点>


 海洋国マルタラッタの王城は突如として激しい揺れに襲われた。

 尖塔の一つが暴力的な力に晒され、破壊されたことをカルダリア・ダルズ・マルタラッタは騎士の一人からの報告で知った。


「……一体、何が起きている」


 敵の正体は不明、尖塔を破壊するほどの暴力の正体も不明。そのような状況下において適切な対応は闇のベールに包まれた不明な部分を明らかにすることでもある。

 しかし、調査を進めるということはそれだけ危険が増すということも意味する。これが、ダイアモンド帝国やライズムーン王国のような強力な戦力を持つ国であれば別だが、海洋国マルタラッタは弱小国家である。


 それにカルダリア自身、ティ=ア=マット一族の女性との許されざる恋に落ちた一件から「何もしない」という方針を確立している。

 このような異常事態でもガルダリアは行動に移すという決断を選び取ることができなかった。


 ティ=ア=マット一族に対して偏見を持ち続ける海洋国マルタラッタの民への怒りと、そもそもティ=ア=マット一族を虐げる側とした『這い寄る混沌の蛇』の思惑に乗りたくはないという感情の板挟みになった男はこれまでと同様に静観の姿勢を取った。


「……お父様ぁ、一体何が起きているのぉー」


 父親から何も期待されていないことを幼い頃に悟り、「何も期待されず自分が生きることになんの意味もない……ならば、自分の享楽のためだけに生きよう」と心に決め、姫として興味を持つべき国際情勢にも社交にも全く興味を示さずいつものほほんとしている第一王女アウロニア・メルラ・マルタラッタも、この異常事態には流石に動揺しているようだ。普段のぽやぁんとした声に、僅かばかりの動揺が見てとれる。

 カルダリアは答えない。アウロニアには考える必要がないことであるから……という以上に、その答えをカルダリアは持ち合わせていないからだ。


「よっ! 海洋国マルタラッタの傍観君主! この俺、ラインヴェルド様が来てやったぜ!!」


 その答えは意外なところから唐突にやってきた。

 王宮を守る僅かばかりの兵に武器を向けられても平然とした表情で剣を担ぐ二人の男。

 その男達――ラインヴェルドとオルパタータダの背後には青筋を立てたレジーナとユリアの姿もある。


 ちなみに、アルティナは諜報員達と共にティアマト海賊団の拘束に向かっているため、この場にはいない。

 そこに、ルードヴァッハ、ディオン、バノスも遅れて到着。更に諜報員に引き継ぎを行ったグラリオーセも姿を見せる。


「まさか……あれは、ティ=ア=マット一族」


 隔離されている筈のティ=ア=マット一族が何故この場にいるのか? と疑問に思ったカルダリアだったが、すぐにその思考は吹き飛ばされることになる。


「ルードヴァッハに、ディオン、後バノスだったか? しかし、遅いなぁ、まだ役者が揃っていない……圓の奴、遅くねぇか?」


「失礼ながらラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下……一体何考えているんですか!? こんなこと作戦には無かった筈ですが」


「ん? ティ=ア=マット一族出身者か? 見覚えないな。どっちの所属か……って、諜報員ぽい雰囲気じゃないし、ビオラ特殊科学部隊の所属か?」


「第三研究所(ラボ)所属のグラリオーセ・ティ=ア=マットですわ!! って、今それは関係ないですわよ!! 一体何やっているんですか、この阿呆君主共!!」


「アハハハ、見かけ大人しそうな美女なのに意外と毒舌なんだな。決まっているだろ? 「面白そうだったからやった、反省はしていない!!」」


「……はぁ、こんなことをして一体どう落とし所を見つけるつもりなんですか!?」


「「それは、親友がやってくれるだろ?」」


「――ラインヴェルド陛下、オルパタータダ陛下、揃いも揃って一体何考えていやがるんだよッ!!」


「「おっと、来やがった!!」」


 空から吸血姫の翼を羽搏かせ、飛翔するリーリエ。

 その手に握られた『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』に尋常ならざる覇王の霸気が乗せられていることを目視で判断したラインヴェルドとオルパタータダは同時に膨大な覇王の霸気を剣に乗せた。


 リーリエとラインヴェルド、オルパタータダの剣は決して触れ合うことなく拮抗――その衝突の余波で膨大な霸気が迸る。

 騎士達のほとんどが意識を失い、遠くにいるカルダリアとアウロニアすら意識を持っていかれそうになるほどの膨大な霸気。それほどの暴力的な力に晒され、城内は阿鼻叫喚の事態に陥る。


 味方サイドではルードヴァッハが真っ先に気絶し、バノスも意識のほとんどが持っていかれそうになった。

 ディオンすら堪えるので精一杯という有様である。

 グラリオーセは意識を保っていたものの、完全に涙目になっており、レジーナも覇王の霸気を放ってユリアと自分の周辺に向けられる覇王の霸気を相殺しつつ、ラインヴェルドとオルパタータダに怒りの視線を向けている。


「……まあ、お前らが来たらどうせこうなるとは思っていたよ」


「流石は親友! よく分かっている!!」


「ざけんな!!」


「本当に何を考えているのですか!? この件はしっかりと王太后様と王妃殿下にお伝えしますからね。オルパタータダ陛下、貴方もですよ! 王妃殿下にしっかりお伝えしますから!!」


「……えっ、それ親友じゃなくてソフィスが言うの? ってか、おいそれ禁止級だろ! なぁ、ソフィスさん。俺達もう既にアウトラインギリギリなんだって! これ以上報告されるのは流石にマズいからやめてもらえないか?」


「絶対にやめません! お二人が圓様に迷惑を掛けたことは報告します……というか、もう既にしましたわ」


「……ああっ、クソ手遅れか。というか、なんでフォルトナ=フィートランド連合王国のイリスとシヘラザードとも連絡手段を持っているんだよ?」


「今、それは関係ないでしょう? たく、君達のせいで散々だよ……まあ、結果として交渉の席は設けられたからいい、のか?」


「そうだろそうだろ? 俺達に感謝してくれていいんだぜ!!」


「それだけはないよ。……折角色々と考えていたプラン台無しにされたことには違いないし。……さて」


 ラインヴェルドとオルパタータダの不意をつき、今回の恨みと言わんばかりに一発ずつ覇王の霸気を纏ったボディーブローを浴びせたリーリエは痛みで思わず座り込むラインヴェルド達を無視してカルダリアとアウロニアのいる王城の窓の方へと視線を向ける。


「初めまして、カルダリア国王陛下とアウロニア王女殿下、多種族同盟より参りましたリーリエと申しますわ。単刀直入に申し上げます。本日は二点ほどお話ししたいことがあって参りました」


「……そういうことであれば、事前に議会や議員を通して頂きたいのだが」


「お話ししたいことがあって参りましたわ。王城への登城をお許し頂けないでしょうか?」


 覇王の霸気の黒稲妻を迸らせ、微笑を浮かべる吸血姫という名の異形の魔物。

 そのような存在のお伺いを立てているように見せ掛けた決定事項を突きつける言葉にカルダリアが断れる筈もなく、カルダリアは項垂れてリーリエ達の登城を許可した。



 海洋国マルタラッタの王城――謁見の間にて。


 玉座に座ったカルダリアはリーリエ、ソフィス、グラリオーセ、ラインヴェルド、オルパタータダ、レジーナ、ユリア、ルードヴァッハ、ディオン、バノスと対面していた。

 海洋国マルタラッタのほとんどは議会で行われており、他国からの訪問者もダイアモンド帝国のグリーンダイアモンド公爵家の者達くらいなのでこれほどの者達がこの謁見の間に集まるのは前代未聞のことである。


 多種族同盟、ダイアモンド帝国、海洋国マルタラッタ――海を越えて集結した者達が一堂に会するこの歴史的瞬間をアウロニアは扉の隙間から見守っていた。その隣には遅れてきたアルティナの姿もある。


「……それで、多種族同盟だったな。海を越えた先にある大陸の者達がこの地に何の用だ。生憎とこの地は何もない小国だ」


「何もない……ねぇ。ボクはねぇ、総てを知っているんですよ。そんなボクを前にして、何もない……ははっ、笑えるねぇ。何もないならわざわざ大量の諜報員をこの地に潜入させる筈がないじゃないか」


「……既に内政干渉をしてきているということか。とはいえ、我が国は小国――何も打てるではない。グリーンダイアモンド公爵家に相談するのが無難か」


「失礼ながら陛下……おやめにやった方が良いと思いますよ。我々に海賊紛いの刺客を向けるのと彼らに敵対行動を取るのでは訳が違う」


「なんと! 愚かなことを。……ルードヴァッハ殿は帝国の知恵者と聞き及んでいたが、まさか、貴公、そのような下賤な者共の言うことを真に受けているのではあるまいな」


「……うーん、まあ尋問する必要すらなく事実なんだけどねぇ。要するに君にとっては邪魔だったんでしょう? イエローダイアモンド公爵家との盟約を嗅ぎ回るルードヴァッハさん達が……それとも、ミレーユさんの方かな? 君の本質は現状維持主義だ。ティ=ア=マット一族の女性と恋に落ちた、まだ王妃だった女性と結婚する前のことだねぇ。しかし、この国の唯一の王子であった君にティ=ア=マット一族との結婚など許されていない。ティ=ア=マット一族を差別し、不当に扱う民をそれはそれは憎んだろうねぇ。ただ、そのティ=ア=マット一族に対する不当な扱いは元を正せば『這い寄る混沌の蛇』が仕組んだものだ。ティ=ア=マット一族――『這い寄る混沌の蛇』の一派が憎悪を増幅させ、海洋国マルタラッタを滅ぼすための舞台装置として作り上げたもの。真実を知った君には選べなかったのだろう? 民を滅ぼす道も、ティ=ア=マット一族を滅ぼす道も。君にとって、この均衡こそが、現状こそが望むものなのだろう。だからこそ、この均衡を破壊してしまうミレーユさん達が恐ろしかった、違うかい?」


「……お前は、一体何を知って」


「そこのアウロニアさんには大変申し訳ないけど、彼は未だに初恋を引き摺っているって訳。……まあ、不器用な人ではあると思うよ。最愛の女性とその息子にしか愛情を向けられない。不条理な世界を恨むこともなく、愛することもない――それ故にこの世界に何も影響を与えたくないと考える君にとって世継ぎを産まないということは不自然であり、海洋国マルタラッタの歴史に大きな影響を与える一大事だ。君はそれを危惧して結婚し、子を成した。そして、『愛を求める妻』に、自分では愛を与えることができないと分かっていたから、誠意をもって離縁を突きつけたんじゃないかな? ……そんな君にこんなことを突きつせるのは少々酷なことは承知しているんだけど」


 父親に愛されていない理由を知り取り乱すアウロニアと、自分の全てを見透かした異形の者――吸血姫のリーリエに衝撃を受けるカルダリアだったが、次のリーリエの言葉で二人は更なる衝撃を浴びせかけられることになる。


「ボクの二つの目的の一つ、それは君達にある情報を伝えるためなんだ。――君の大事な大事な子供、タイダーラ・ティ=ア=マットは死んだよ」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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