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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-493 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜海賊団の襲来と、多種族同盟の内政干渉と、海洋国マルタラッタ国王の選択と〜scene.6

<三人称全知視点>


 海洋国マルタラッタの隔離島に幽閉された同胞を救うべくムシュマッヘ諸島に存在する海賊島を出発したティ=ア=マット一族はフルリグド・シップ一隻、ジーベック船七隻という船団で海洋国マルタラッタを目指していた。

 彼らは最大の拠り所であるティアマト海賊団船長タイダーラ・ティ=ア=マットを失い、若干の士気の低下があったが、ティアマト海賊団は船長不在でもしっかりと機能するようになっている。


 副船長であるノグィア・ティ=ア=マットが指揮権を握り、同胞奪還を成功させるべく仲間達を鼓舞して船を走らせる。

 ほんの少し前まで不安が船員達の間で渦巻いていたが、今は「同胞を必ず救い出す!」という熱気に包まれていた。


「ん?」


 しかし、そんな彼らの熱気を冷ますように暗雲が徐々に、徐々にだが立ち罩め始めていた。

 ピリピリと肌を突き刺すような何かに船員の一人が気づく。その数は徐々に徐々にと増えていく。


 最初は勘違いを疑った彼らだが、すぐにそれが勘違いではないことに気づく。

 ――海岸から漆黒の稲妻が迸っている光景を目にしたからだ。


「あれは……なんなんだ!?」


 何かは分からないが、それが海賊達を害するものであることを誰もが本能的に察した。

 そして、その力の奔流が決して抗えない力であることも。


「ふざけやがって!! 俺達は何もしてねぇってのに!! 本当に悪いのは俺達の同胞を隔離している連中の方だっていうのに!!!! くそっ、こんなところで終わりかよ!! 巫山戯るんじゃねぇぞ!!」


 あの力が放たれれば海賊船団など一瞬にして消し飛ばされてしまうだろう。

 あの海岸にはそれだけの力が渦巻いている。海賊達の常識では測れない、この世の物理法則を逸脱した理不尽という名の暴力に、海賊達は嘆く。


 しかし、嘆いたところで何かが変わることはない。

 副船長は直ちに撤退命令を下す。できるだけあの力から逃げるために、海賊島へと引き返す。

 「これは撤退ではない。勇気ある一時的な退却である。そして、今度こそ我々は同胞を救うために戻ってくるのだ!」、と、自らに言い聞かせるように。


 だが、その撤退という選択すらもティアマト海賊団には残されていなかった。


「「「――征国覇槍(セイコク・ハソウ)」」」


 埒外の覇王の霸気が炸裂し、国一つを征服してしまうほどの槍の形をした膨大な霸気の奔流が放たれた瞬間、海賊達は二人の男と呆れの混じった一人の女性の声を聞いた気がした。



「――目標……えっと、ティ=ア=マット一族の海賊団っスよね? 見気を使って捕捉したっス。相手は七隻と、母船と思われる大型の船が一隻の合計八隻。船は真っ直ぐこっちに来ているっス」


「まあ、予想通りの進路だな。よし! オルパタータダ! 予定通りやるぞ! レジーナ、手伝え!」


「ラインヴェルド陛下、僭越ながら……偉そうにレジーナさんを呼び捨てにしないでください。武装闘気と覇王の霸気を纏わせた『串刺しの竜舌蘭センチュリー・プラント』で二人纏めてブッ刺しますよ」


「おい、ふざけんなよ! なんで俺まで巻き込まれているんだよ!!」


「? ラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下ってセットですよね? 連帯責任ですよ、当然じゃないですか」


「いや! 俺とラインヴェルドは全然違うから!」


「というか、ユリア! お前って元はラピスラズリ公爵家の戦闘使用人だろ! 俺って要守護対象じゃねぇのかよ!!」


「えっと、今は退職してレジーナ様の妻兼夫ですからね。お二人の生死なんて私には些事ですわ」


「俺とオルパタータダの命、軽く見積もられ過ぎじゃねぇか!? というか、全く冗談じゃなさそうな顔をしているし! よし、やられる前にやれ! ってことで、先にユリアを仕留める!」


「ラインヴェルド、オルパタータダ、覚悟はできているってことかい!? あたしゃ、ユリアに手を出す相手には容赦しないよ!!」


「あの……ラインヴェルド陛下、オルパタータダ陛下、レジーナ様、ユリア様、そんな風に戯れあっていないで作戦を遂行するべきじゃないっスか? もうすぐ敵さん上陸するっスよ」


「なんというか……真面目な顔をしてアルティナに事実を言われるのって……なんかムカつくよな」


「奇遇だな、ラインヴェルド。俺も同意見だ」


「……心外だけど、あたしも同意見だよ」


「私もレジーナ様と同様です。なんだか、嫌な気分になりますね」


「四人揃ってどういうことっスか! 泣くっすよ! 年甲斐もなくないてやるっスよ! 子供みたいにわんわん泣いてやるっスよ!!」


「……まあ、でもこのまま待っていても意味はないわね。――それで、ラインヴェルド、オルパタータダ、一体どうするつもりなんだい?」


「三人で征国覇槍(セイコク・ハソウ)を放って軽く威圧してやればいいだろう。その混乱に乗じてアルティナが海賊達を無力化、海岸に上陸させるってのが妥当か?」


「妥当な訳ないだろ、巫山戯んな! ウチの仕事の比重が重過ぎるじゃねぇか! っス!!」


「アハハハ! 語尾忘れているじゃねぇか。マジウケるんだけど!!」


「ってか、やっぱり取ってつけたような語尾だと思っていたけど、事実だったんだな!」


「なっ、なんのことっスか? さっぱり分かんないっス。で、流石にウチだけで制圧は厳しいと思うんスけど……実力じゃなくて物理的に」


「では、私はレジーナ様と一緒に戦えないようなのでお供しますわ。……レジーナ様と一緒に戦いたかったのに」


 恨みがましい視線を向けてくるユリアに、ラインヴェルドとオルパタータダは揃って「怖えよ」と口にする。まあ、実際には全くこれっぽっちも怖がっていないのだが。


「では、我々が残る船の船員を制圧致しますわ」


「よろしくお願いするっス」


 いつの間にか姿を見せたビオラ商会合同会社警備部門諜報工作部――実働部隊所属の諜報員達の言葉にアルティナは全く驚く素振りを見せずに返答した。

 ちなみに、アルティナの索敵に諜報部隊フルール・ド・アンブラルの諜報員は入っていなかった。つまり、敵であればアルティナは気づく前に討ち取られていた訳だが、それに関しては何の恐怖も抱いていないようである。……大丈夫なのか、それで。


「……ん? というか、それなら『征国覇槍(セイコク・ハソウ)』とか打ち込む必要ないっスよね? 直接、ウチらが乗り込んで制圧すれば終わりじゃないっスか?」


「珍しいこともあるものね、アルティナさんが真実に到達するなんて」


「レジーナ様、真面目な口調でそういうこと言われると本当に傷つくんスが……ウチって馬鹿じゃないっスよ! そこんところ間違えないでもらいたいっス!! ウチは心の底から自由を愛する自由人なんスよ!!」


 アルティナが文句を言っていたものの作戦自体が変更されることはなく、ラインヴェルド、オルパタータダ、レジーナの三人が「征国覇槍(セイコク・ハソウ)」を撃ち、怯んだところにアルティナ、ユリア、諜報員達が攻め込んで海賊達を無効化するという作戦が正式に採用されることとなった。


「それじゃあ、一丁やるか!」


「おうよ! とびっきりの霸気、放ってやろうぜ!」


「いいかい! 今回はあくまで威嚇だよ! 絶対に当てるんじゃないよ!!」


「「「――征国覇槍(セイコク・ハソウ)!!!!」」」


 膨大な霸気が無数の黒稲妻と化して迸る。二つの剣とレジーナの持つ杖から放たれた膨大な霸気は球体と化した。

 そして、ラインヴェルドとオルパタータダが剣を前方に向かって横薙ぎし、レジーナが杖を振り上げた瞬間――収束していた膨大な武装闘気と覇王の霸気は巨大な槍と化して前方へと解き放たれた。


 巨大な槍は海賊船団の少し上を擦り抜ける軌道で飛んでいく。

 当たるかどうかのギリギリの場所を狙って放たれた覇王の霸気は狙い通りティアマト海賊団の母船――フルリグド・シップのメインマストの上擦れ擦れを削っていく……筈だった。


 しかし、ここでレジーナ、ユリア、アルティナ、諜報員達――誰もが予想していなかった現象が引き起こされる。

 フルリグド・シップのメインマストを狙って真っ直ぐ放たれた筈の覇王の霸気の奔流が突如として右方向へとズレていったのだ。最初は見間違いかと思っていたレジーナ達だったが、覇王の霸気の奔流が半円を描いてレジーナ達の方向に矛先を変えると、流石に「見間違い」などとは言っていられなくなる。


「なっ、なな、何やっているっスか!?」


「あー、暴発して変な方向に飛んでっちまったなー」


「ラインヴェルド、オルパタータダ、二人して目を逸らすんじゃないよ! さっきの『征国覇槍(セイコク・ハソウ)』を放つ時に変な霸気の流れがあった……それをあたしが見抜けなかったとでも言っているのかい!?」


「でも、それを言うならレジーナだって共犯だろ? 一緒に『征国覇槍(セイコク・ハソウ)』を撃ったんだからな!」


「――ッ!? 嵌められたわ!!」


「最初から狙っていたのですね。……度し難い。レジーナ様、大丈夫です。私がレジーナ様は無実だと圓様に証言しますから」


「まあ、でもそんなことしなくても圓師匠なら信じてくれると思うっスけどね。この二人の信用、多分とっくの昔に地に堕ちているっスから。それに、諜報員の方々も一部始終を見ていたっスから言い逃がれはできないっスよ!」


「「信用が失墜しているアルティナ、お前だけには言われたくないぜ!!」」


 珍しく真面目なことを言ったのに、明らかに悪戯で済まない破壊行為をしたラインヴェルドとオルパタータダに二人揃って言い返され、「なんだかなぁ」という顔になるアルティナだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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