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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-488 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜海賊団の襲来と、多種族同盟の内政干渉と、海洋国マルタラッタ国王の選択と〜scene.1

<三人称全知視点>


 海洋国マルタラッタは一つの首都といくつかの小さな漁村によって構成される小国である。

 一応の王家はあるものの貴族はおらず、代わりにいくつかの商工業組合の長による議会――元老議会が設けられ、その構成員達が他国における貴族達の役割を果たしていた。


 商工業組合の中でも海運ギルドと船舶職人ギルドは規模が大きく、グリーンダイアモンド公爵家との関係も深いようだ。

 圓曰く、この船舶職人ギルドがティ=ア=マット一族を隔離島へと隔離し、労働力として酷使しているらしい。ティ=ア=マット一族の海賊団が最大の標的としているのもこの船舶職人ギルドなのだろう。

 それと同時に、隔離島からのティ=ア=マット一族を目指す圓達多種族同盟にとってもこの船舶職人ギルドは大きな壁として立ちはだかることになる。


 そして、船舶職人ギルドも国の中枢を担っている以上、海洋国マルタラッタと多種族同盟の対立も避けられないことなのだろう。それが穏便な方法なのか、将又武力に訴えるものになるかは定かではないが、この場をミレーユがルードヴァッハ達に一任した以上、その期待に応える必要はある。


 とはいえ、この段階で海賊達の襲撃が予想されるという情報や、多種族同盟の臨時班のメンバーや諜報員達が暗躍しているという情報を海洋国マルタラッタ側に開示する必要はないと考えていた。不確かな情報を与えたところで信じてもらえないというのもそうだが、ルードヴァッハ自身、本当に海洋国マルタラッタが信用に足るのか判断できないという部分も大きかった。


 圓によればティ=ア=マット一族を迫害し、隔離する政策を取ったのは間違いなく海洋国マルタラッタである。海洋国マルタラッタとティ=ア=マット一族の間に過去、どのような対立があったかは不明だが、現在という一点だけを切り取ればティ=ア=マット一族側には反乱を起こすだけの大義名分があるのではないか。

 どちらか片方のみに全ての責任があるという訳ではない。裏を返せば、海洋国マルタラッタとティ=ア=マット一族、双方とも加害者であり、同時に被害者なのである。


 ならば、どちらか一方を敵と定めて片方に肩入れするのは果たして良い選択だと言えるのだろうか? 「否である」、とルードヴァッハは否定する。

 いずれにしても、まず状況を正しく判断できるだけの情報を集めなくてはならない。しかし、海洋国マルタラッタ側にもティ=ア=マット一族にも外交のチャンネルがないこの状況下でルードヴァッハ達に集められる情報は少なく、とても何かを判断できる状況ではない。


 ならば、ルードヴァッハ達の役目とは、この状況下でできることは何なのか?

 一つ目は多種族同盟や海賊達も絡む近い未来に必ず起きるであろう有事に際し、ダイアモンド帝国側の人間として出席し、可能な限り人死が出ないように立ち回ることである。相手が相手だけにルードヴァッハにどこまでのことができるかは未知数だが、だからといって何も手を打たないという訳にもいかない。

 これに関しては現時点では何もできることはない。歯痒いことではあるが、ルードヴァッハ達にできるのは座してその時が来るのを待つのみである。


 それは、海洋国マルタラッタ側との外交のチャンネルを構築することだ。情報を集めるにしても、ミレーユが求めている「海産物の供給を確実なものにする」という目標を達成するためにも海洋国マルタラッタ側とは顔繋ぎをしておく必要がある。現在はグリーンダイアモンド公爵家が海洋国マルタラッタとの外交の窓口になっているため全く外交ルートがないという訳でもないが、ルードヴァッハ達が派遣されたという時点でグリーンダイアモンド公爵家だけでは不足と判断されているということは明白である。……それに、ティ=ア=マット一族の海賊団という目に見える脅威が間近に迫っている中、ダイアモンド帝国の帝都にいるグリーンダイアモンド侯爵を呼び寄せてパイプ役を依頼するというのは現実的な話ではない。それに、ミレーユならばともかくただの文官でしかないルードヴァッハに帝国貴族を動かすだけの力はない。


 つまり、この状況下で海洋国マルタラッタ側とやり取りができる外交ルートを構築しなければならないということである。ルードヴァッハにとってもなかなかの無理難題だ。

 とはいえ、全く策がないという訳ではない。


 海運ギルドと船舶職人ギルドはグリーンダイアモンド公爵家との結び付きが強く、交渉は現実的ではない。ならば、その他の元老議員とコンタクトを取り、海洋国マルタラッタ側との交渉の席を設けてもらおうと目論んだ訳だが……。


「困りますな、ルードヴァッハ殿。そういうお話は、グリーンダイアモンド公爵を通していただかなければ」


 その結果は、ルードヴァッハの予想していた以上に散々なものであった。流石に面会謝絶とはいかないが、そこから先の交渉は「グリーンダイアモンド公爵を通してもらいたい」の一点張りで話を進めることはできなかった。


「……困った。まさか、ここまで取りつく島もないとは。……多種族同盟が来ているとなれば、海賊襲撃まで秒読みの筈。せめて、それまでに海洋国マルタラッタ側との交渉の席を設けたかったが……時間が全く足りない」


「慌てるなんてルードヴァッハ殿らしくないね。……とはいえ、時間が足りないのは確かだ。もういっそ、圓殿達が全てをぶっ飛ばすのを待ってからの方が確実な気さえしてくる。彼女らはシナリオを熟知している……きっと適切な手を打ってくれるだろうからね。我々に取っても」


 ディオンの冗談なのか本音なのか分からない言葉にルードヴァッハも思わず同意したくなる……が、ミレーユから期待されて送り出されたことを思い出し、ルードヴァッハは何とか留まった。


「しかし、ミレーユ姫殿下の名前を持ち出しても交渉の余地がないなんて、それほどまでにグリーンダイアモンド公爵の影響がデカいってことですかい」


 ディオンと共に護衛を引き受けてくれているバノスがふとそんな呟きを口にするが、すぐに思案げな表情を浮かべた。

 ちなみに、ミレーユ達の護衛について行った面々以外の他の皇女専属近衛部隊(プリンセスガード)の面々は宿で休んでいた。今回、ミレーユ一行に同行したのはバノスを含めて三十名、このうちミレーユ達に同行していた二名とバノスを除いた二十七人が有事に備えつつ待機しているということになる。海洋国マルタラッタの戦力相手であれば問題なく対処できる戦力が残っているということになるが、多種族同盟の時空騎士(クロノス・マスター)や諜報員達の相手は流石に荷が重過ぎる。……まあ、彼らに関してはダイアモンド帝国でも最高クラスの戦力であるディオンでも勝利は絶望的な訳だが。


「……いや、しかし、これはかなり妙な話だ。本末転倒っていうべきか。うちらは非公式にしろ皇女殿下の遣い――どこぞの弱小貴族ならばともかく皇帝の一人娘の使者を軽く扱うのは、ちょいと引っ掛かる。仮にグリーンダイアモンド公爵家に多大な恩があったとしても、公爵と皇族を天秤に掛けたら皇族の方に軍配が上がるものじゃないんですか?」


 帝国四大公爵家の一角――グリーンダイアモンド公爵家。

 保有する財力も武力も、確かに小国にとっては敵に回したくない存在ではあるだろう。しかし、それはミレーユにも言えること。

 皇帝の娘たるミレーユの影響力は計り知れない。故に腹の中ではどうであれ、表面上は友好的な関係を築いておいた方が良い筈なのである。

 しかし、そのミレーユの名を持ち出してなお交渉は呆気なく打ち切られた。この対応の差は一体何が生み出しているのだろうか?


「バノス殿の言葉も一理あるが、絶対にあり得ないこととは言い切れないんだ。保守的な政治家はいる訳だしね。今の時点で利益を得ている者は現状を変えることを望まない。グリーンダイアモンド公爵との関係で利益を受けている者は、当然ながらその状況を変化させたくはない筈だ。当然、状況を変化させる要因になり得る我々は歓迎されないだろう。下手をすると公爵の怒りを呼ぶ結果になるからね。……しかし、それを踏まえてもやはりこの状況はおかしい」


「僕も同意見だよ。ここまで強硬に拒絶されるのはやはり不自然だね。帝国との繋がりをグリーンダイアモンド公爵家のみに絞ることの危険性に気づかぬ者ばかりではないだろう。……となると、別の理由があるのかもしれないな。……いや、随分とキナ臭い話になってきたね。まあ、既に圓殿が話していた隔離島の件や、圓殿が迫害されてきたティ=ア=マット一族の解放が可能であると確信している……逆説的に取れば、海洋国マルタラッタ側には圓殿に逆らえないような何らかの弱みがあることが想像できるという時点で何かあるのは間違いないことだけど」


 船舶職人ギルドにとってティ=ア=マット一族の解放は絶対に避けなければならない事態の筈だ。当然、彼らの思惑が強く反映される海洋国マルタラッタがそのような選択をするとは思えない。

 しかし、圓はティ=ア=マット一族の解放は確実に実行できると確信しているようだった。


 では、具体的にその手段は何か。多種族同盟の持つ圧倒的な武力、これを見せつければ確かに海洋国マルタラッタ側に逆らうという選択肢はない。だが、あの圓が本当に武力だけに頼った外交を行うだろうか? 交渉の席に着かせるために武力を行使する可能性はあっても、そこからはしっかりと言葉を交わして納得させる。それが、百合薗圓という人間のやり方だ。


 となれば、海洋国マルタラッタ側が多種族同盟側の要求を呑まなければならない何かがあるということだろう。ルードヴァッハ達が知らない海洋国マルタラッタの弱みとなり得る何かが。


「この辺りは考えてもまだ分からないこと。途中で知り得たらラッキーくらいで留めておいた方が良いだろうな。……話を戻して、帝国との繋がりをグリーンダイアモンド公爵家のみに絞ることの危険性だったな。確かに、現在の海洋国マルタラッタは、グリーンダイアモンド家の気分次第で帝国との繋がりが絶たれるという、極めて不安定な状況にあるのである。海洋国マルタラッタにとって帝国は良い取引先の筈。にも拘らず、この状況を放置していることは、確かに気になるな……」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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