表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜
1337/1337

Act.9-483 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜出航! エメラルドジーベック号〜scene.2

<三人称全知視点>


 ミレーユ達を乗せたエメラルドジーベック号は出港した。

 しっかりと張った帆が、程よく吹いた風を掴まえて船はどんどん加速していく。


 天気は快晴。雲一つない青空からは強い陽射しが注がれる。

 今年は様々な要因が重なって冷夏となっているが、それでも照りつける陽射しが弱いという訳ではない。


 そんなジリジリと焼けるような陽射しを浴びてミレーユの黄金の髪は美しく輝いていた。

 甲板を吹き抜ける少し強めの潮風を受け、その美しい白金色の髪が踊るように揺れる。


「清々しい気持ちですわ! まるで風と一体になって飛んでいるみたいですわ!」


 看板に立ったミレーユは両腕を大きく広げて身体全身で風を感じて、朗らかに微笑んだ。乗る前にエメラルドジーベック号に抱いていたことは既に記憶の彼方に飛んでいってしまっているらしい。

 だが、素直に心の底から船旅を楽しめているのはミレーユとライネ、エメラルダ達だけのようで――。


「――ッ!? この気配はまさか!?」


「アモン、君も感じたんだな。……まあ、あれほどの霸気だ。見気を会得していて気付かない者などいないだろう」


「……ラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下のお二人。それとは別に両陛下に比肩する気配を持つ人物が一人いるようですね」


「……お三方とも見気をとてもよく鍛えているわね。お嬢様の恋人候補で王女宮では片腕を務めているソフィス様より直々に闘気を学んだだけのことはあるわ。残りは恐らくレジーナ様と……恋人のユリアさ……ユリア様ね。……本来、今回の臨時班任務には参加しないことになっていたし、お嬢様とも約束をしていた筈だけど、お嬢様や旦那様の目を盗んでレジーナ様達を巻き込んでペドレリーア大陸まで渡った、というところでしょうね。国家と王家の安寧を守る毒剣たる我らラピスラズリ公爵家にとってはしっかりと一つところに留まって守られて頂きたいものだけど、同時に王族の意思を尊重するのも【ブライトネス王家の裏の剣】の役割、なかなか難しいところね」


「……しかし、いいのかい? 本来、君達の最優先事項は君達の国の国王陛下だろう? ……いや、ボクとしてはラピスラズリ公爵家の戦闘使用人殿が居てくれた方が心強いのだけど」


「本来であれば、ミレーユ姫殿下やリオンナハト殿下、アモン殿下よりも私達の陛下を優先すべきところだけど、海洋国マルタラッタには既に多くと諜報員が配置されているわ。今更、私が言っても意味がない。……それよりも、圓お嬢様やミレーユ姫殿下が私に期待している役割を全うすることが大切だと思うのよ」


 それに、ラインヴェルドやオルパタータダはカレンよりも強い。更にそんな二人と肩を並べる実力者で本人にとっては不本意だろうがラインヴェルド達の保護者役も担えるレジーナもいる。

 ここで自分が出しゃばる必要がないと判断したカレンは当初の予定通りミレーユ達の護衛に専念することにしたようだ。


「……はぇ?」


 海洋国マルタラッタに突如として現れたラインヴェルド達について話をしていたカレン達だが、突如として現実に引き戻されることになる。

 気の抜けたような声と共にミレーユが海へと投げ出されたのだ。


 ここ最近、圓との地獄のような修行とその後の体型キープのための運動に明け暮れていたミレーユには若干のストレスが溜まっていたのだ。

 久しぶりの解放感に身を委ねてしまうのは、仕方のない話だろう。……ただ、それでも些か調子に乗り過ぎではあったが。


 ミレーユが油断し切っていたその時、一際高い波が、船の横から叩きつけてきた。……まあ、仮に油断していなかったとしても耐え切れたかどうかは不明だが、その波によって船が丘に上ったと錯覚するほど大きく浮き上がり、次の瞬間、重力によって大きく落下した。その緩急に油断していたミレーユが耐えられる筈もなく、あっさりとミレーユは海に投げ出されてしまったのである。


「――ッ! 危ないッ!」


 アモンがミレーユに駆けつけようとするが、ラインヴェルド達のことを話していて気付くのがワンテンポ遅れたため、ミレーユの身体が投げ出されるまでにミレーユを抱き止めることはできなかった。


 このままではミレーユが海に落ちてしまう。そんなことはさせないと、アモンは神速闘気を纏って空歩を使ってミレーユを追おうとするが……。

 そんなアモンの横を一陣の風の如く駆け抜ける人影があった。


「あら? 大丈夫かしら? ミレーユ姫殿下」


「たっ、助かりましたわ! カレンさん!」


「お役に立てて何よりですわ。ただ、折角のチャンスを奪ってしまったことについては、ほんの少しだけ心苦しいですけどね」


 カレンはミレーユが海に落ちるギリギリでキャッチすると、空中を走りながらエメラルドジーベック号へと戻った。


「大切な人は決して離してはいけませんわ。次は必ず貴方自身の手でミレーユ姫殿下をお守りください」


「……ありがとう、カレン殿。……いや、本来はボクが助けなければならない場面だった。本当に不甲斐ないよ」


「まあ、揃いも揃って別のことに意識を向けていましたし、致し方ないのかもしれませんね。……とはいえ、仮にお話ししていなくても美しいミレーユ姫殿下の姿に見惚れて出遅れたでしょうけど」


「――なっ!」


 いかにも初心そうに顔を赤らめるアモンと釣られて恥ずかしそうに頬を染めるミレーユにカレンはにっこりと微笑んだ。



 一方、船首にて一部始終を見ていたエメラルダはというと、ミレーユを助けたカレンに対して複雑な表情を浮かべていた。

 あのままではミレーユが海に落ちて溺れていたかもしれない。そのミレーユを落下から救ったメイドは従者として為すべきことを成したと言えるだろう。……いや、空中を走って主君を助けるのはメイドの仕事の範疇を超えているし、カレン自身はミレーユのメイドではないのだが。


 だが、あれはアモンが助けるべき場面だった。カレンの行動はそれを横から掻っ攫ったという形である。あのまま行けば二人は良いムードになりそうだったのだから、カレンの存在はある意味でお邪魔虫になったとも言えるだろう。


「……あのメイド、あのまま行けば良いムードになりましたのに、本当に空気が読めませんね」


 ……そして、エメラルダにとっては後者の方が重要だったらしくカレンに対して悪印象を抱いていた。


「ですが、その後すぐに立ち去ったのは良い判断ですわね。メイド風情がお二人の関係を邪魔するなどあってはなりませんわ。しかし……うふふふ、ミレーユ様、お楽しみ頂けているようで何よりですわ。高貴なる血を持つ者にとって生涯の伴侶探しは義務ですものね。てっきり、リオンナハト殿下の方が好みなのかと思っておりましたけど、プレゲトーン王国の王子殿下……確かアモン王子でしたかしら? あちらの方がお好みなんですのね。ふむ、どちらにしても面食いですわ。うふふ」


 ひょいっとミレーユを持ち上げて、舳先の一段高いところに立たせ、「どうだい? 先ほどより、飛んでいる気分が味わえたかな?」などと言ってミレーユと甘いムードになっているアモンの姿を微笑ましく見ていたエメラルダだったが……。


「でも、私のことを放っておくのは少しだけ気に入りませんわね。後でしっかり虐めて差し上げないと……お顔に水をかけて差し上げますわ!」


 ミレーユに構ってもらうべく気合いを入れるエメラルダである。……とその時、音もなくフィレンがやってきた。


「失礼致します、エメラルダ様」


「あら、フ……ではなく、メイド、なにか御用かしら?」


「はい……それが実は船長が、今日、明日中に嵐が来るので、島に停泊するのは控えるべきだ、と申しておりまして……」


「……まぁ、嵐が?」


 しかし、空は快晴そのものである。とてもこれから嵐になりそうな雲行きではない。


「……船長の気のせいではないのかしら?」


「ですが……しかし」


「それに、この私が船遊びに来ておりますのに? そのように良くないことが起こると、貴女、本当に思っておりますの?」


「そ……それは……。申し訳ございませんでした。過ぎたことを申しましたことをご容赦ください」


「分かれば良いのですわ。それでは、船長には予定通りにするようにと伝えて頂戴」


 そう指示を出すと、エメラルダは楽しげな歩調で船首の方に向かっていった。

 その背を見つめて、深々と溜息を吐くフィレンに気づくことなく。



「あらあら、本当に愚かな娘ね、グリーンダイアモンド公爵令嬢。熟練の船長は航海の専門家。その海に精通する者の意見を無視するなんて本当に愚かとしか言いようがないわ。でも、そうでなければ物語は進まない。嵐の中、辿り着いた島でいよいよ試練が始まるわ。さあ、ダイアモンド帝国の本来の歴史(・・・・・)と向き合う緑の試練、その果てでミレーユ姫殿下とグリーンダイアモンド公爵令嬢は何を感じ、どんな選択をするのかしら? 今からとても楽しみだわ」


 瞳孔を開き、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべ、カレンは遠く彼方に浮かぶ試練の地に視線を向ける。

 その瞳にはミレーユ達の未来を暗示するように無数の漆黒の暗雲が映っていた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ