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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-482 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜真夏の海と緑の試練の開幕〜scene.10

<三人称全知視点>


(……グリーンダイアモンド公爵家がティ=ア=マット一族の隔離島幽閉に関わっていたこととか、聞きたいことが沢山ありましたのに……本当に勝手な方ですわね)


 目の前にいるエメラルダも全く関知していない話だったのだろう。全く反応がなかったところを見ると、何も知らなかったらしい。


「ところで、ミレーユ様は護衛を沢山連れていらしたとか……」


 エメラルダはアネモネ()が居たことなどすっかり無かったことにして話を続けるつもりのようだ。

 ミレーユはそんなマイペースなエメラルダに少しだけ呆れつつ、圓が落としていった数々の爆弾発言のことは一旦忘れてエメラルダとの駆け引きに集中することにした。


「えぇ、その通りですわ。その中から五名ほど同行を許可頂きたいのですけれど」


 まあ、実際には皇女専属近衛兵団どころか修行を経て闘気と八技の使い方を多少なり習得しているリオンナハト達ですら敵わないほどの実力者であるカレンが同行するため、正確には護衛の数は六名である。

 ただ、手の内を明かすような真似をするつもりは更々なく、本人もあくまでメイドの一人として同行するため、ミレーユもわざわざ藪蛇を突くような真似はしない。


「うーん、ミレーユ様のご要望ですし、わたくしも叶えたいのは山々ですけど……わたくしの船に乗る男性は、皆容姿端麗でなければなりませんのよ?」


 それから誇らしそうな顔で背後に護衛達を呼び寄せる。確かに、エメラルダが好みそうな見目麗しい青年達である。


「……確かに容姿は美しい部類に入るかもしれませんが、練度は全然ですわね。まさに、張りぼての護衛ですわ。うーん、百点満点中の二点ってところかしら? まあ、リオンナハト殿下やアモン殿下、カラック様やマリア様の方がまだ戦力になりそうよね。まっ、執事長(ジーノさん)に比べたら全然お子ちゃまだけど」


 などとカレンが小声で批評していたが、無論エメラルダ達には聞こえない。

 なお、瞳孔の開いた肉食獣のような顔をしたカレンの表情を見たリオンナハト、アモン、カラックの三人は僅かに後退り、ルードヴァッハの護衛をしていたディオンは「楽しそうな話だね。もし、こういう状況でなければ一戦交えたかったところだよ」と感想を口にした。


「えぇ、私も同意見よ。この中でディオンさんが一番イイ男ですもの。でも、残念、私は執事長一筋なのよ。いい加減子供扱いしてくる執事長に一発入れて見返してやりたいわ。……というか、貴方は近い将来、良い縁に巡り逢えることになっているからそもそも対象外ね。確かお相手は……これは言ってはいけなかったわ」


「……言ってくれても別に構わないよ?」


「……そういう話をするとうちのお嬢様って怖いのよ」


「まあ、僕も別に聞くつもりはないよ。未来は分からない方が楽しいからね」


 ディオンとカレンがそんなやり取りをしている間にもエメラルダとミレーユの攻防は続いている。


「確か、皇女専属近衛兵団(プリンセスガード)は荒くれ者の方達も多いとか? 近衛としての風格といいますか、そういうものをもっと気にされた方が良いのではないかしら?」


 ミレーユを小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、ミレーユを慕う皇女専属近衛兵団(プリンセスガード)を貶すエメラルダの態度に近衛達が一斉に剣呑な顔をした。

 背後から沸き立つ圧のような感覚と、それを上回るディオンの発する圧力にミレーユは戦わなければならない場面であると察した……否、戦わなければ命が危ないと怯えたミレーユは近衛達の士気と自らの命を守るために全力でエメラルダと戦う覚悟を決めた。


 ミレーユにとって近衛兵達は、前の時間軸以来の数少ない味方である。編入されたディオンの元部下達も前の時間軸では戦死してしまっていたため、ミレーユ的に含むところはない。寧ろ無駄な戦いから、ミレーユの手で救われた彼らの士気は、なかなかのものにまで高まっている。

 それをわざわざ下げる必要もないし、そんなことをすれば自分の身が危うくなる。降りかかる火の粉は払わなければならない……というか

ここで下手な対応をすればディオンとの関係に亀裂が走ることになるため絶対に避けなければならない。


 ミレーユは怯えの感情を全力で押し殺した上で毅然とした顔で口を開いた。


「あら? わたくし、別に彼らが近衛に相応しからぬ者だなどとは思っておりませんのよ? わたくしの身を守る護衛は強者揃いですし、とてもとても頼りになる方々ですわ」


 これには、ディオンもにっこり。背後から掛けられていた最も強い圧力が消えたことを悟り、ミレーユはホッと胸を撫で下ろす。

 ミレーユが皇女専属近衛兵団の面々に対するヨイショを見せたことで、皇女専属近衛兵団の高過ぎる士気は更に高まった。チョロい者達である。まあ、ミレーユの言葉自体は嘘偽りのないミレーユの本心であることに間違いはないため、何も問題はないのだが。


「それに、近衛兵団から同行して頂くのは二人だけですわ。後は、わたくしの友人の方たちですの」


 そして、その上でミレーユはマウントを取りに行く。


「はっ? 友人……それは一体……」


 困惑したエメラルダの顔が次の瞬間、ミレーユの予想通り固まった。


「この方達ならば、流石にエメラルダさんのお眼鏡にも適うのではなくて?」


「なっ、なっ、何故、リオンナハト王子が? それに、そちらにいるのは、プレゲトーン王国の王子殿下ではございませんのッ!?」


 ミレーユの連れてきた二人の王子にエメラルダが黄色い悲鳴を上げる。

 ミレーユの評する通り、エメラルダは面食いだ。三度の飯よりもイケメンが好きという割とミーハーな性格をしている。故に、きちんとセントピュセルの男子生徒の情報を仕入れているのだ。

 年下だけど、リオンナハト殿下はアリ。従者のカラックさんもなかなかではないかしら……これは、もしかしなくても狙い目!? などと思っていたのだ。前時間軸の一切偏見のないミレーユとどっこいどっこいの思考回路である。


 とはいえ、流石にイケメンを三人同時に見た時の衝撃は計り知れないものたったようだ。

 ふらーと倒れそうになるエメラルダを全力で支えに行くイケメン達。雌雄が決したことを悟ったミレーユはニッコニコで優越感に浸る。


「実は、アモンとリオンナハトは、わたくしのことを心配して護衛を買って出てくださいましたのよ。船遊びにご一緒することを許して頂けるかしら?」


 白旗を上げて受け入れるエメラルダと、楽しそうにトドメを刺すミレーユを楽しそうに見ていたカレンだったが、ふと、何かを感じ取ったのか海の沖の方へと視線を向けた。


「カレン様、どうかなさいましたか?」


「様付けはおやめください。ライネさん、貴女と私は同じメイド――同格としてこれから航海をすることになります。……そうですわね、とても馴染み深い気配が海の方からしたのですわ。……この忙しい時期に一人だけバカンスを楽しんでいるお狐様の気配が」


 ライネの問いに、カレンは嫣然と微笑みつつ答える。



 ――時は少し巻き戻る。


 メアレイズとサーレにヘイト増産兵器の如き置き土産を置いて失踪したアルティナはというと、エナリオス海洋王国の首都である海上都市エナリオス、その海岸にいた。

 美しい砂浜、群青色の美しい海。そして、水着を纏い、肌を晒す様々な種族の美男美女。


 そんな常夏のビーチにパラソルを立て、真っ白なビーチチェアに座り、サングラスをかけてトロピカルジュースをストローで飲むのは狐人族の美しい女性である。

 そのスタイルのよい身体を惜しげもなく晒し出し、赤の扇状的なビキニに身を包む姿は多くの男達の虜にしているようだ。中にはアルティナの美しさに見惚れ、彼女に睨まれる彼氏の姿もある。


 勿論、そんなアルティナをナンパしようとする輩も…………ん?

 確かにアルティナの周辺には多くの男達が集まっていた。しかし、海に似つかわしくない鎧を纏った騎士達であり、明らかに女性をナンパする目的でやってきた見るからに軽薄そうな男とは対極に属する者達である。


「――アルティナ閣下! いい加減にお戻りください!! 絶対にメアレイズ閣下とサーレ閣下がブチ切れます! それに、多種族同盟でも仕事をしている政司長のヴィアベル様だって」


「だーかーら、ウチは完全なるフリー! どこの役職も持たない自由人なんスよ! 年中バカンスみたいなウチを妨げる権利はエナリオス海洋王国の軍部にはない筈っスよね!!」


「いえ、我々にはしっかりと大義名分があるのです! 多種族同盟の文官の皆様には頑張って頂かなければならないのです。その士気を下げるような真似をなされるなど言語道断! せめて、置き手紙を残さなければ良かったものを……とにかく、ブライトネス王国の王宮にお戻りください! でなければ、我々も実力行使を!!」


「ああっ! もう、全然話が通じないっス! ここで時空騎士(クロノス・マスター)の特権を行使したら絶対に国際問題になってそれはそれで帰った時に圓師匠辺りにめっちゃ怒られる気がし……こうなったら三十六計逃げるに如かず、っス!!」


「――ッ! アルティナ閣下を逃すな!!」


 しかし、本気のアルティナは素早く海人族、魚人族、人魚族からなる騎士団、更には観光客の一部のドワーフやエルフ、獣人族の者達が加勢するも結局アルティナを取り逃がしてしまった。

 その後、完全に追われる身となったアルティナは遠くへ遠くへと逃げ、誰も来ないムシュマッヘ諸島の無人島の一つに滞在していた。……しかし。


「いい加減、ヤシの実とトロピカルフルーツ生活にも飽きたっス。ってか、どこっスか! ここ!! こうなったら見気を使って人が居そうなところを探して、そこで情報収集を……あっ、近くに人がいっぱいいる場所があるみたいっスね! 早速行くっス!」


 その場所が海洋国マルタラッタであることをアルティナが知るのは、もう少し先の話である。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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