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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-481 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜真夏の海と緑の試練の開幕〜scene.9

<三人称全知視点>


「ご機嫌よう、ミレーユ様」


「ああ。エメラルダさん、ご機嫌よう」


 船から降りてきたエメラルダに、ミレーユはドレスの裾を持ち上げて、にっこりと笑みを浮かべる。非の打ちどころのない、完璧な愛想笑いとカーテシーである。


「この度は楽しい旅行のお誘い、感謝致しますわ」


「何を言っておりますの、ミレーユ様。私達親友でしょう?」


 対してエメラルダは嬉しそうに、満面の笑みを浮かべる。

 ちなみにこちらには裏表はない。割と本気で、ミレーユと遊ぶ気満々なエメラルダなのであった。


「ところで、貴女は? どこぞの商人のようですけど」


「これはこれはご挨拶が遅れて……」


「ああ、名乗る必要はありませんわ。貴女のような一商人の名などわたくし、覚えるつもりはありませんから」


「……さいですか」


 微笑を浮かべつつも声のトーンが僅かに下がるアネモネと、アネモネの背後からミレーユに視線だけで射殺してしまいそうなほどの恐ろしい殺気の篭った視線を向けてくるソフィスにミレーユは怯えていたのだが、エメラルダには全く伝わっていなかったようだ。

 扇を広げて「おほほほ」と高笑いをしつつ、言外に「貴女如きがミレーユ様とお話しして良い筈がありませんわ。とっとと退散なさりなさいわ」という感情を込めて威圧する。


 と同時に、エメラルダの心中には「あんな者と楽しそうに談笑するなんて……ミレーユ様も付き合う相手はもっとしっかりと考えるべきですわ」という呆れの感情も渦巻いていたようだったが……。


「ただ、今回はビオラ商会合同会社の会長アネモネとしてではなく、多種族同盟議長のアネモネとして来訪していますわ。商売をしに来た訳ではありませんので、その辺りご理解くださると幸いです。それでは、私は皆様と違って暇ではないので失礼しますね」


 「バカンス気分のお前らと違って、ボク達は忙しいんだよ」という嫌味を一つ投下し、アネモネは会釈をして去ろうとする。

 その嫌味はエメラルダの逆鱗を的確に逆撫でた。「あの女商人、全く皇女や公爵令嬢に対する礼儀がなっておりませんわ! しっかりと矯正してやらなければいけませんの!!」と息巻いて「待ちなさい! そこの女商人!」と青筋を立てて呼びつけようとするが、その前に顔面蒼白のミレーユの「待ってくださいまし!」という切実な声が響き渡った。


「……どうなされました? ミレーユ姫殿下」


「はぁはぁ……。一つ確認したいことがありますわ。アネモネ様……貴女はビオラ商会合同会社のアネモネ会長として訪問した訳でもなく、ビオラ=マラキア商主国のような加盟国の君主として訪問した訳でもなく、多種族同盟の代表者として海洋国マルタラッタを訪問した、この認識に間違いはないかしら?」


「えぇ、ミレーユ姫殿下の認識に相違はありません」


「そして、その目的は……外交かしら? 多種族同盟は海洋国マルタラッタに対して何かしらの要求を突きつけようとしている。わたくしのここまでの推理に誤りはないかしら?」


 少しずつ慎重にパズルのピースを嵌めるように話を進めるミレーユを温かい目で見つつ、アネモネはにっこりと微笑を浮かべて「誤りはありませんわ」と答えた。


「エメラルダ様、貴女はティ=ア=マット一族という一族をご存知でしょうか?」


「えぇ、勿論ですわ。海はグリーンダイアモンド公爵家の領域(テリトリー)ですもの。恐ろしい海賊の一族ですわね」


「では、その彼らが隔離島に幽閉され、奴隷のように働かされていることはご存知でしょうか? ……ところで、エメラルドジーベック号。とても美しい船ですね」


「ふふふ、流石に商人……審美眼は備えているみたいですわね」


「……その船を作り上げたのは造船工場で奴隷のように酷使されたティ=ア=マット一族です。彼らの労働の上澄みがその船なのです」


「そんなこと、わたくしには関係のない話ですわ」


「……視線を背けるのであれば、それはそれで結構。ただし、事はダイアモンド帝国やペドレリーア大陸だけに留まらない話。だからこそ、海を隔てた大陸の我々がわざわざ遠征して動いているのですよ。……ティ=ア=マット一族は古来より『這い寄る混沌の蛇』と密接な関係にあった一族です。ただし、全てが『這い寄る混沌の蛇』と、邪教徒と繋がりを持っている訳ではない。その辺りを勘違いしてはいけない訳です。『這い寄る混沌の蛇』は弱者に虐げられる者に這い寄り、そして甘い言葉で唆す。強者を、権力者を潰すための武器を与える。……その隔離島の政策が正しかった間違いか、真相は私にも分かりません。もしかしたら、隔離島こそがティ=ア=マット一族を守るためのシェルターの役割を果たしていたのかもしれない。ですが、最早そんなことを言っていられる状況ではないです。隔離された同胞を救うために扇動されたティ=ア=マット一族の海賊達は既に動き出している。我々の目的は二つ、この地を襲う海賊達への対処。――そして、ティ=ア=マット一族の解放です」


「解放して……どうしますの? ……ああ、そういうことですのね。アネモネ大統領閣下はラスパーツィ大陸の時と同様のことをなさろうとしているのですわね?」


「えぇ、海洋都市レインフォールの時と同様です。既に海洋都市レインフォールに囚われていたティ=ア=マット一族の皆様は多種族同盟で受け入れております。多くがビオラ=マラキア商主国に、一部はクレセントムーン聖皇国に移住しました。……ああ、紹介がまだでしたね。彼女もその一人です」


 アネモネを合図に合わせてフードを被った黒い影が飛来する。

 エメラルダの護衛と皇女専属近衛兵団の者達が同時に鞘に手を添えて臨戦体制を整えた。


「お初にお目に掛かります、ミレーユ姫殿下。私はグラリオーセ・ティ=ア=マット――ビオラ特殊科学部隊の第三研究所(ラボ)で研究員見習いをしております。以後お見知り置きを」


 フードを外すと現れたのはエメラルドグリーンに輝く長い髪だ。

 白磁のような白肌に、澄んだ海のような瞳。美しい顔立ちの女性だが、ただ一点、怪しく海蛇を象った刺青が仄暗く浮かんで見えるのが少し不気味に映る。


 グラリオーセも元々は海洋都市レインフォールの隔離島で造船業に奴隷の如く従事させられていた一人だ。

 解放後はビオラ=マラキア商主国に移住したが、そこで科学に興味を持ってビオラ商会合同会社の門戸を叩き、紆余曲折を経てビオラの闇に関わることとなった。


 余談だが、ビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局とビオラ特殊科学部隊はどちらも組織の肥大化に伴い組織の再編成が行われており、グラリオーセが配属された第三研究所(ラボ)もその再編成に伴って新設された組織である。


 まず、ビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局は組織の頭脳の役割を果たすビオラ商会合同会社警備部門警備企画課総司令部とビオラ商会合同会社警備部門諜報工作部の二つの組織に分岐し、ほとんどの諜報員達がビオラ商会合同会社警備部門諜報工作部に再配属されることとなった。これまで任務ごとにリーダーを決めていたものを完全に首脳部と諜報員で分けたという形である。

 とはいえ、首脳部であるビオラ商会合同会社警備部門警備企画課総司令部に残留した者達も諜報任務を全く行わないという訳でもない。まあ、ビオラ商会合同会社警備部門諜報工作部のメンバーに比べて現地で任務を遂行する機会は減るのだが。


 ちなみに、誰がビオラ商会合同会社警備部門諜報工作部に配属されたかは基本的に圓と白夜、シャルティローサ、そして諜報員本人のみが知っているという状態であり、諜報員同士でも情報の交換は禁止されている。

 ビオラ商会合同会社警備部門警備企画課総司令部の指示役は基本的に固定される形を取っており、その指示役は担当する者のみを把握、実行役は指示役のみを把握しており、例外的に直接の上下関係のみは分かる状態になっている。


 一方、組織構造を秘匿することのないビオラ特殊科学部隊の方は単純に研究者のグループを細分化しただけである。

 リーダーのシア、副官のリコリスは全体の統括者の立場のままであるが、新たに食客扱いだったカルファとルイーズが分化した研究所(ラボ)のリーダーに任命された。


 第一研究所(ラボ)はルイーズが、第二研究所(ラボ)はカルファが、第三研究所(ラボ)はフォルトナ王国出身のフェデリック=レポールがそれぞれ所長(ブレイン)に任命されており、グラリオーセはフェデリックの元で学んでいる。

 ちなみに、プリンセス・エクレールやルスワールは研究所(ラボ)には所属しておらず、かなり特殊な立ち位置にいたりする。兵器という扱いの「NBr(ニュー・ビーアール)-熾天(SERAPH)-」も同じく特殊な立ち位置だが、しっかりと自我を有して行動できるため、彼らともまた立ち位置が異なる。


「ああ、そうでした。あの隔離島の一件にはグリーンダイアモンド公爵家も絡んでいるとかいないとか、そんな噂も聞いたことがありましたわね。……それでは、これ以上長居をするとソフィスさんの怒りが沸点に達して大変なことになりそうなので私達はこれで。ミレーユ姫殿下、もしかしたらまた近いうちにお会いすることになるかもしれませんが……楽しい夏の思い出になることを心よりお祈り致しますわ」


 ソフィスとグラリオーセを伴って港から姿を消すアネモネに「これから地獄みたいなことが起こることが分かりきっているのに、あんなことを満面の笑みで言うなんて本当にドSですわ」と人知れず溜息を溢すミレーユだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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