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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-479 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜真夏の海と緑の試練の開幕〜scene.7

<三人称全知視点>


 エメラルダ・ヴェール・グリーンダイアモンドはミレーユ達に先駆けて海洋国マルタラッタに入っていた。

 ちなみに、エメラルダの到着時点では海洋国マルタラッタに必要最低限の諜報員しか配置されておらず、地下都市ケイオスメガロポリスにも追加人員が到着していないという状態である。それほどまでにエメラルダの海洋国マルタラッタ入りは早かったのである。……まあ、圓達多種族同盟側が増援の到着予定日を必要以上に早くし過ぎなかったというのも要因の一つではあるが。

 ……ミレーユとの船遊びがどれだけ待ちきれなかったのだろうか?


 ちなみに、エメラルダ到着時点で地下都市ケイオスメガロポリスにはミーフィリア、レミュア、桃花、篝火、美結、小筆、レナード、アルベルトが残留しており、この時点で地下都市ケイオスメガロポリスの九十五パーセントが解明されていた。

 残るは最重要地点である邪神の棲まう地下神殿の地下にあるラストダンジョンを残すのみとなっているが、こちらは圓達本隊が到着するまでお預けである。


 増援には追加派遣の臨時班員に選ばれたアクア、ディラン、エイミーン、マグノーリエ、プリムヴェール、スティーリア、ミリアム、雪菜、黒華が投入されるが、既にスクライブギルドはミーフィリア達の手によって壊滅しており、邪神神殿の地下にあるラストダンジョンにも多数の敵が控えている可能性は低いため、実際に活躍する場面があるかどうかは不明である。

 どちらかといえば、敵の逃げ道を防ぐための戦力という意味合いが強い。


 余談だが、海洋国マルタラッタへの臨時班派遣はない。こちらはビオラ商会合同会社の会長としてアネモネ姿の圓が諜報員達と連携して動くことが予定されている。ただし、ソフィスがアネモネの秘書として同行するため、彼女が海洋国マルタラッタに派遣される時空騎士(クロノス・マスター)であると言えなくもない。

 更に、ミレーユ達にはメイドとしてカレンの同行が決定している。当然、この二人も最終的には地下都市ケイオスメガロポリスに同行するため、最終的にはミーフィリア達残留組と追加派遣組に更に二人足されることになる。


 圓も「流石にここまでの戦力を集める必要は無かったかな?」と参加者一覧表を見て苦笑いを浮かべていた。


 さて、話を戻すとしよう。

 エメラルダは国の重鎮達の挨拶を面倒くさそうに聞き流しつつも、優雅な毎日を過ごしていた。


 唯一勝る点は造船技術のみ、国力や財力はダイアモンド帝国と比較することすら烏滸がましいほど。財力という一点だけを考えても海洋国マルタラッタは四大公爵家にも劣る弱小国である。

 本来は無礼千万な行いと取られても致し方ないものも、この地では黙認されてしまう。それほどの圧倒的な力の差がダイアモンド帝国と海洋国マルタラッタの間にはあるのだ。


 しかし、造船技術に関してはエメラルダも素直に認めるものである。

 グリーンダイアモンド公爵家が保有する大型帆船エメラルドジーベック号もまたこの国で建造された船だった。毎年、夏にエメラルダが使う時以外はずっと港に停泊していること船はグリーンダイアモンド公爵家専属の整備士達の弛まぬ努力によって極めて美しく優美な姿を保っている。


 鮮やかなエメラルドグリーン色に染め上げられた船体、フォアマストのみに横帆、残りにラテンセイルが張られた特徴的な三本のマスト、そして船首に取り付けられた荘厳な女神風の船首像(フィギュアヘッド)――その完成されたシルエットは、エメラルダを満足させるに足るものであった。



 ミレーユ一行が海洋国マルタラッタに到着する日、エメラルダはエメラルドジーベック号の船長室で優雅に鼻歌を歌っていた。

 ちなみに、この日の前日にはエメラルドジーベック号よりも遥かに高性能なステルス飛空艇のステルスイーグルが海洋国マルタラッタに待機し、多数の諜報員を海洋国マルタラッタ周辺に解き放ったのだが、勿論その事実にエメラルダは気づいていない。


「おっほほほ! まんまと嵌ってくださいましたね! ミレーユ様!」


 自分の企みが嵌ってくれたことがとても嬉しいのだろう。エメラルダは波で揺れる椅子の上で上機嫌に高笑いを上げていた。

 そんな彼女のもとに、一人の少女がやってくる。


 彼女の名はフィレン――幼少の頃よりずっとエメラルダの身の回りの面倒を見てきた、エメラルダより三歳年上の少女だ。


「失礼致します。エメラルダ様」


「あら……何か御用かしら。えーっと……」


「フィレンです。エメラルダ様」


「あら、そうでしたっけ? ごめんなさいね、一々使用人の名前は憶えないようにしておりますのよ」


 自分は選ばれた者で、最良のものを与えられるのも当然。味さえ良ければ紅茶の産地などに興味を持たぬように、使用人もまた身の回りの世話を完璧にするならば、誰であれ関係ない。

 高貴な者はかくあるべしという父の教えをエメラルダは忠実に守っていた。


「はい、存じております」


「……それで? 何かあったの?」


「はい。ミレーユ姫殿下が港に到着されたのですが、少し気になることが二点ほどありまして……まず、姫殿下がお連れの護衛のことなのですが」


「……護衛? ミレーユ様が護衛をつけていることは別段不思議でもなんでもないでしょう? 高貴な血筋なのですから、そのぐらいの意識でいてくださりませんと」


「はい、帯同されておられるのはいずれも皇女専属の近衛兵団――ミレーユ姫殿下が信頼を置くと言われる精鋭の皆様です。その点に関しては不審な点はありません……が、問題は船遊びにも五人ほど帯同されたいと仰られていることです」


「あら、そんなに? 一人、二人であれば分かりますけれど、流石に五人は少し多い気がいたしますわね。当家でもきちんと護衛の準備はしておりますのに」


 そもそも、グリーンダイアモンド公爵家は皇帝の忠実な臣下である。

 敵対的な外国の船に乗るならばいざ知らず、乗組員全員が味方といってもよい状況では些か戦力が過剰過ぎるのではないだろうか?


「……ふむふむ、なるほどなるほど……読めましたわ! 海賊なり海の魔物なり恐ろしいものが出てくることを恐れているんですわね。おほほほほ、案外、ミレーユ様もお気が小さい」


 以前、ルクシアから「エメラルダはミレーユから嫌われているのではないか」という指摘を受けたにも拘らず、そのことをすっかり忘れてしまっているエメラルダは見当違いな推理を披露する。

 まさか、自分が疑われているなどとは夢にも思っていないようだ。


 とはいえ、ギャラリーが増えること自体はエメラルダにとっては寧ろ喜ばしいことである。

 今回、エメラルダは二つの企みを仕掛けていた。一つは泳げないミレーユの姿を見て、笑ってやることである。周囲に近衛兵団所属の近衛兵達がいればミレーユの恥ずかしさも高まる筈だ。


 決して溺れさせようとか、そういった危ないことは考えていない。帝国貴族の大半は海と縁がない――そのため、水に顔をつけることもできないだろうなぁ、などと想像してその無様を笑ってやろうというだけである。

 そして、そんなミレーユにお姉さんぶって泳ぎのレッスンをしてあげるのが二つ目の企みである。

 先日ミレーユしてやられたことの復讐をしつつ、一緒に楽しく遊べるという素晴らしい作戦だったのだ。


 ……まあ、普通は笑われた相手が恩着せがましく泳ぎのレッスンに誘ってきたとしたら応じてはくれないだろう。どんなに聖人君主であっても自分の無様を笑われた相手に教えを乞うなどという屈辱的な行いを選択を取る可能性は限りなく低い。それこそ、何かしらのやむを得ない事情がある場合に限られるだろう。

 況してや、相手は基本的に心がかなり狭いミレーユである。そもそも、前提からして破綻していそうな策略だが、エメラルダは失敗に終わるとは考えていないようである。


 更に言えば、ミレーユは泳げないが決して水に抵抗がある訳ではない。風呂好きのミレーユが浴槽に頭から潜ってみるという誘惑に勝てる筈もなく、ミレーユも顔を水につけた経験は何度かある。

 泳いだ経験が圧倒的に不足しているだけであり、圓辺りにレッスンを受ければすぐにエメラルダほどではないにしても泳げるほどのポテンシャルはあるのだ。実はこの点においてもエメラルダの思惑は失敗しているのだが……。


「それで、もう一つの気になることとは何かしら?」


「……それが、港に到着したばかりのミレーユ姫殿下一行に近づき親しげに接する商人がいるようでして」


「……商人? ダイアモンド帝国の皇女に馴れ馴れしく接するなんて、全く礼儀がなっていませんわね。行って文句を言ってやりませんと!」


「そ、それは流石におよしになった方が良いのでは……」


「フィ……いえ、貴女、何を言っているのか分かっているのかしら!? 相手は高が一商人、寧ろ、毅然として対応しなければ帝国の威信に――」


「……相手はただの商人ではありません。つい先日、この大陸内で五大商会と呼ばれる者達の間で大きな変化がありました。五大商会の一角に数えられていたヴィクスン商会が、ある商会の傘下に降ったのです。その商会の名はビオラ商会合同会社――フィートランド王国にも支社を持ち、生徒会選挙ではミレーユ姫殿下に協力する形でセントピュセル学院への融資を提案したことでも知られています」


「……あの忌々しいエイリーン=グラリオーサなどという小国の小娘が懇意にしているという商人ですわね。ミレーユ様とも面識があるとか……あの女の友人というだけで嫌な予感がしますわ。絶対にお友達にはなれない相手ですわね」


「……噂によれば、アネモネ会長は海を隔てたベーシックヘイム大陸にある多種族同盟という国際互助組織の議長を務めている人物でもあるようです」


「……つまり、『多種族同盟――特にエイリーン=グラリオーサとは絶対に事を構えないように』という忠告はエイリーンが多種族同盟の議長であるアネモネと懇意の間柄だからということでしたのね。……まあ、『良くて公爵家の一角が永遠にこの世から消える。最悪の場合はダイアモンド帝国が地図上から消滅する』辺りは完全にサファルスが怯え過ぎなだけでしょう。いくら軍事力が優れていようと流石にそんなことできる筈がありませんわ!」


 サファルスの忠告がほとんど無駄になった瞬間である。

 楽観的が過ぎるエメラルダはミレーユとの楽しい夏休みを思い浮かべながら歌うように笑って船長室を後にした。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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