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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-471 大商会時代の前日譚〜エナリオス海洋王国とカエルラ〜 scene.3

<三人称全知視点>


 冒険者ギルド本部で一つのアイディアを得たカエルラは翌週の休日にド=ワンド大洞窟王国へと向かった。

 既に先週の時点で謁見依頼を出していたので、謁見の間まではすんなりと入ることができた。まあ、カエルラにとってはここからが本番なのだが。


「久しいな。使節団の時に謁見の間で会って以来か」


「ご無沙汰しております、国王陛下」


 ル・シアン商会の行商人がドワーフ族の王族に会う機会はごく稀である。ほとんどの場合、城下で商品を販売して終わりだ。

 実のところ、カエルラにとっての最初の登城は臨時班に同行した時だった。しかし、国王であるディグランと面識ができたからと言ってカエルラやル・シアン商会への対応が変わることはなく現在に至っている。


 決してカエルラがディグランへの対応をサボっていた訳ではない。そもそも、カエルラにはディグランに面会する権利が与えられていなかったのである。

 それを理解しているディグランはそれ以上、この話題を続けることは無かった。


「さて、ル・シアン商会を抜けてビオラ商会合同会社へと入ったのだったな? 正直驚いだぞ。接点はほとんど無かったとはいえ、ドワーフ族と獣人族……特に犬人族との繋がりは深い。我も汝らがどういった種族かは熟知しているつもりだった」


「えぇ……陛下のお考え通り、私も我々にはル・シアン商会以外の選択肢はないと、そう思い込んでおりました。その先入観は我らに掛けられた呪いと言っても過言ではないかもしれません。その呪いをアネモネ会長に解いてもらった結果、私はこの場にいるということになります。……そして、私はその恩人への恩を仇で返すような真似を行おうとしている訳です」


「……謁見を希望した理由を記した手紙は読ませて頂いた。安心するが良い、我は決して汝の行いが恩を仇で返すような行為であるとは思っておらぬ。茨の道であることを承知の上で足を踏み出そうという気持ちは崇高なものだ。与えられた恩に報いるためというならば尚更。……我も別の角度で圓殿への恩を返すつもりがある。シリェーニ殿とも約束をしたからな」


「シリェーニ殿とお会いになったのですね」


「……どうやら、単にアネモネ殿に恩を返したいというだけではないようだな。まあ、良い。さて、手紙の返事だが、条件付きで許可を出そう。ノーツガンド工房との交渉は認めるが、我から力添えをするつもりはない。自力で工房長の心を射止めるが良い。……その代わりという訳ではないのだが、我が国に会社を置いてはもらえないだろうか? 本社でなくても構わん、支社でも良いぞ」


「……申し訳ございません。まだ、肝心の海人族の皆様との交渉はしていないのです。その説得に必要な交渉材料を集めている段階でして……会社をどこに置くかというところまで話が進んでいないのです」


「そうであったな……急いてしまった。いや、実はな。我が国の税収を増やしたいのだ。ブライトネス王国やフォルトナ王国、狡いとは思わぬか? ビオラ商会合同会社ほどではないにしても、我が国も優秀な商社を抱えておきたいのだ。シーワスプ商会とお主達……また、互いにライバル関係になるだろうが、我にとってはどちらが勝っても旨味のある状況を作りたい。シーワスプ商会とは既にその条件で話を進めている」


 「……やはり、流石はドワーフ族の王。強かな人だな」などと思いつつも、別にカエルラにとって損のある話でもないので、「その話は会社構想が具体的になりましたら」と答えておいた。勿論、カエルラ自身に反対の意思がないことを伝えるのも忘れない。


「健闘を祈る、夢を抱きし若者よ!」


 ディグランの言葉に背中を押され、カエルラはノーツガンド工房へと向かった。



「キタキタキタキタキタキタキタキタ!! インスピレーション!! 実に前衛的(アヴァンギャルド)なアイディア!! 前に来た……なんじゃったか? 海を越えてきた人間の商人達と違ってユーモアというものが分かっているようじゃな!!」


 不安な気持ちでノーツガンド工房に足を踏み入れたカエルラを待っていたのは、テンションのブレーキが完全に壊れてしまった工房長のジュードル=ヴォン=ノーツガンド=ダ=ド=ワンドだった。


「銀河鉄道自体は既存のアイディアじゃ。しかし、その再現方法はこの世界の神、百合薗圓殿すら詳細は知らないときた。空を飛び、海を走る、縦横無尽な軽便鉄道! 実に、実に再現し甲斐がある。一体どのような技術で創り上げるのか、今からでもワクワクが止まらん!! よし、ありとあらゆる技術を試すのじゃ!! 搔き集められるだけ全ての技術を!! ということで、カエルラとやら、期待しておるぞ!!」


 そう言い残すとジュードルは工房の奥へと姿を消してしまった。どうやら、すぐにでもアイディアを紙に書き記していくつもりらしい。


「……工房長がとんだご無礼を」


「副工房長殿、ご無礼などとんでもありません。正直、断られるかと思っておりました」


「あれほど楽しそうな工房長は久しぶりに見ます。このところ、ずっとつまらなそうでしたから……そうでした。工房長が希望しているものは、恐らくルヴェリオス共和国にあると思います。帝器というものを聞いたことがありますか?」


「えぇ、存じております。なるほど、その技術を……ですか?」


「交渉をより成功へと導くためにはルヴェリオス共和国の協力は必要不可欠だと思います。どうか、よろしくお願い致します」


 ジュードルの協力も得られ、これで一先ず下準備は終わったと安堵していたカエルラだったが、残念ながらまだ終わりではないらしい。

 少しだけがっかりしながらも、カエルラは副工房長にお礼を言って工房を後にした。



 それから更に一週間後、カエルラの姿はルヴェリオス共和国にあった。

 先週、工房での交渉を終えて自宅に戻ったところでルヴェリオス共和国の首相宛に謁見を希望する手紙を送っていたので、今回も謁見の間まではスムーズに通された。


 しかし、ここからが本番である。特に、今回はルヴェリオス共和国の秘宝とも呼ぶべき帝器の技術、これを教えてもらいたいとお願いしに行くのだ。

 既に前例があったド=ワンド大洞窟王国の国王との交渉よりも未知数な部分が多いため、カエルラもド=ワンド大洞窟王国の時以上に緊張していた。


「ようこそ、ルヴェリオス共和国へ。……この場合、ビオラ商会合同会社のカエルラ殿ではなく単にカエルラ殿と呼ぶべきか。私はピトフューイ=スクロペトゥム、この国の首相をしている」


「お気遣いありがとうございます。本日はただのカエルラとして参りました」


 楽な姿勢を取る許可が出たところで、恭しく頭を下げていたカエルラは頭を上げて謁見に応じてくれたピトフューイに感謝の言葉を述べた。


「……さて、どうしたものか。既に書状は読ませて頂いたが、正直返答に困っているのだ」


「やはり、帝器はルヴェリオスの秘宝……門外不出ですか」


「いいや、それを言うなら既に圓殿が帝器や皇牙に関する情報をほとんど握ってしまっている。まあ、それを抜きにすれば専売特許と言えるかもしれないが、返答に困っている理由はそこではない。実は私もある商人から国内での新商会設立を打診されているのだ。……ただ、ルヴェリオス共和国の商会の大半はルヴェリオス帝国時代に罪を犯していなかった商会ということになる。その数はルヴェリオス帝国時代の百分の一にも満たない数だ。まあ、それだけルヴェリオス帝国が腐敗していたということだな。商業という分野において、ルヴェリオス共和国は多種族同盟内で最も出遅れていると言っても過言ではない。幸い、革命後に志を持って商売を始めた商人達も順調に育っている。……とはいえ、まだ植物で言えば芽が出たばかりという状況、将来有望ではあるが、そこに全てを賭けるというのも少し危険過ぎるのではないかと思ってな。私も圓殿には多大な恩がある。その恩を返したい気持ちに偽りはない。……既に希望のある若い商人達には私の希望は伝え、できる限り期待に応えたいという返答はもらった。その際、帝器の技術を使いたいという打算は受けていない。……まあ、決して減るものでもないし、後に希望する商会が現れれば条件付きで情報公開をすれば良いか。……では、カエルラ殿、この件に関しては議会に掛けさせてもらう。私の一存では決められないが、できるだけのことはさけてもらう」


「ほ、本当ですか!? よろしくお願いします!」


「もし、議会で情報開示の許可が出れば我が国の秘密機関……ということになっている帝器及び皇牙研究開発部門より帝器や皇牙に関する情報提供や技術協力をさせて頂きたい。ただし、その場合、こちらも何らかの利益を享受できる形にしてもらいたい」


「既に交渉を終えているド=ワンド大洞窟王国からは国内に本社か支社の設置と納税を条件として出されました」


「ふむ、旨みのある話だ。流石はディグラン陛下、抜け目がない。……具体的な契約内容については議会で決めてからにはなるが、参考にさせてもらおう」


 その後、カエルラはピトフューイにお礼を言って謁見の間を後にした。


 それから十日後、カエルラの自宅に一通の手紙が届く。それは、ルヴェリオス共和国の議会でカエルラの希望が通ったことを伝えるものであった。


 ド=ワンド大洞窟王国とルヴェリオス共和国――重要な二つのピースを手にしたカエルラはエナリオス海洋王国へと赴く。

 新商会が設立するかどうかの分岐点――運命の一日が、今、始まろうとしていた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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