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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-464 大商会時代の前日譚〜ペドレリーア大陸より、二つの使節団の来訪〜 scene.2

<三人称全知視点>


 一商会と一国家による使節団派遣からかれこれ一ヶ月が経とうとしていた。

 全く別の目論見で派遣された港湾国セントエルモとシーワスプ商会の使節団だったが、同時に同じ大陸から派遣されたということもあってすぐに打ち解けて良い関係を構築していた。互いに惜しみなく情報を交換したため、双方は自分達のみで得られる以上の情報を得られてほくほく顔である。


 しかし、その関係もまもなく終焉を迎えることになりそうだと思うと、キロネックスは少しだけ物寂しさを感じていた。


「ヴォルノ団長。そちらは近々帰国するのでしたね」


「えぇ。多種族同盟各国の協力や、他ならぬシーワスプ商会の皆様からの情報提供もあって、予想していた以上の情報を得ることができました。こちらも一通り集めるべき情報を集め終えたことと、レポートを送った本国からの勅令もありまして、一度本国に戻ることになります。……まあ、私は次の使節団の一員として再度派遣されることになりそうですが」


「しかし、今度は正式な国家としての使節団派遣。それも、既に上層部によって決まったルートをなぞることになるでしょうから、こうして互いに情報を交換するのもこれで最後になりそうですね」


「いやいや、このご縁は今後も大切にしていきたいと思っておりますよ。決して、この使節団を最後に両者の関係が終わる訳ではありませんからね。……しかし、キロネックス殿、顔色があまりよろしくありませんな」


 ヴォルノはキロネックスがあまり芳しい表情をしていないことを言及した。恐らく、この表情は情報を交換してきたヴォルノとのしばしの別れを悲しんでいるだけでは無さそうである。


「ご厚意でビオラ商会合同会社以外の商会も色々と視察させて頂きました。ブライトネス王国のジリル商会と、マルゲッタ商会。フォルトナ王国のルーグザルト商会とナグモース商会。ラングリス王国のフォリラーズ商会。ムーランドーブ王国のザグヴァルド商会。ユミル自由同盟を中心に活動しているル・シアン商会。……決して侮れない商会ではありますが、それでも勝ち目は十分にありました。しかし、ビオラ商会合同会社には、全く弱点がありません。その万能さ、層の厚さ、それがよく分かりました」


 ビオラ商会合同会社の様々な部署を回ったからこそ、キロネックスにはビオラ商会合同会社が鉄壁の牙城と恐れられるだけの力を有していることが嫌というほど分かっていた。

 かつて、アネモネ相手にライバル宣言をしたのがどれほど身の程知らずだったかと思い知らされると同時に、その言葉を撤回する権利を完全に逸してしまったことを今更ながらキロネックスは後悔していた。


 しかし、同時にラインヴェルドの気持ちが分からないという訳でもない。

 寧ろ、自分以上にビオラ商会合同会を知りながら、ビオラ商会合同会社と袂を分かつ決意をして、翠光エルフ国家連合ヴァンヤール州に本社を構えるアルヴヘイムインダストリアルという企業を仲間と共に立ち上げたシリェーニと言葉を交わし、アネモネの理想を知ったことで、ビオラ商会合同会社のライバルであると胸を張って言える商会にシーワスプ商会を成長させたいという気持ちは強くなっている。


 だが、それでも気持ちだけではどうにもならない。シリェーニは「たった一点でもビオラに勝る武器を見つけられればそれで十分」だと言っていたが、その武器すらどこにあるか分からないというのが現状である。

 シリェーニにとって、それはエレクトプラズマという特別な魔物だった。その鍵を見つけたからこそ、シリェーニは独立の道を選ぶことができたのだろう。


 しかし、その武器が果たしてペドレリーア大陸にあるのだろうか? その保証はどこにもないのである。


「……ベーシックヘイム大陸では香辛料が育てにくいようです。それに、ペドレリーア大陸にしか存在しない農産物や海産物もいくつかあります。特に、魔物がいない分、海産物も豊かです。しかし、これだけではインパクトに欠けてしまいます。種類が違うといっても、ベーシックヘイム大陸に代用できる品がある場合が大半ですからね。それに、問題はまだあります。輸送のルートです」


「輸送ですか? やはり、海運しかないのではありませんか?」


「確かにその通りですが、ベーシックヘイム大陸とペドレリーア大陸の間にはかなりの距離があります。ビオラ商会合同会社は地下鉄を拡張し、海底トンネルを作る構想を立てているようなので、完成すれば物流は大きく発展することになると思いますが」


「ビオラ商会合同会社の技術に頼っていては、ライバルとは言えないということですか。それに、最短での輸送が可能な空間魔法も秘技に相当するもの。この二つは使えないものと思った方が良いでしょうな。……となると、今必要なのは新たな輸送手段ということですか」


「えぇ。……一つプランはあるのですが、それも再現しようとすれば特殊なコアと呼ばれる部品が必要になるらしく、それが自然に産出されないことから、ビオラ商会合同会社でも非売品となっているとのことです。飛空艇というそうですが、そうした空の輸送方法があれば良いのですが……」


 魔法が普及しているベーシックヘイム大陸でも空を飛ぶ乗り物は夢物語のように扱われているらしい。実際、飛空艇の存在を知る者達も、飛空艇の技術を使わずに空を飛びたいとなれば、アネモネ会長の知恵を借りるしかないと口を揃えて言うほどであった。

 空を飛ぶ魔物の力を借りるという手もあるにはあるが、特殊な体術を用いる方法と同様に重い荷物を運ぶのには適さない。


「……今の今まで開発されていないとなると、そもそも不要と判断されたのでしょうね。実際、一つの大陸であれば鉄道だけで事足りるでしょうし。いえ、空間魔法が普及していたので、そもそも鉄道すら不要だと考えられていたのでしたね」


「今のペドレリーア大陸にも、ベーシックヘイム大陸にも問いの答えはないのかもしれません。可能性があれば、やはりビオラ商会合同会社の図書館……正直、これだけは頼りたくなかったのですが」


 できるならばビオラ商会の力を、アネモネの知恵を借りずに成し遂げたかったが、最早なりふり構っていられない状況であることをキロネックスは薄々察していた。

 キロネックスはヴォルノに挨拶をした後、単身、ビオラ中央図書館へと向かった。



 ビオラ中央図書館はキロネックスの予想を遥かに超える広さだった。

 この中から本当に目当ての本を見つけられるのかと不安になりつつ、まずキロネックスが向かったのは入り口付近に設置されているカウンターだった。

 貸し出し処理専用の場所が三箇所、返却処理専用の場所が四箇所設置されている他、図書館の案内や施設利用に必要な図書館利用カードの発行や複写に関する事務を行っている場所が二箇所の計九ヶ所が設置されており、それだけ利用者が多いことが窺える。ちなみに、セルフの貸し出し用カウンターも三箇所設置されており、かなり手厚い設計になっているようだ。


「はじめてのご利用ですね。図書カードは作られますか?」


 キロネックスの対応をしてくれたのは、名札にエリカと書かれたブロンドの美しい女性だった。


「いえ、ひとまず今は大丈夫です。初めまして、シーワスプ商会のキロネックスと申します」


「これはどうもご丁寧に。シーワスプ商会の会長様ですね。私はエリカと申します。まだ司書の資格をとっていないアルバイトではありますが、どうぞよろしくお願いします」


 司書の資格を持たないと聞き、少しだけ不安になったキロネックスだが、すぐにその不安が杞憂であったことを知ることとなる。


「実は空を飛ぶ乗り物に関する記述のある書物を探しておりまして」


「なるほど……飛空艇の再現は不可能だと思いますので、そうなると航空機に関する書物でしょうか。航空科学などの専門書が必要となりそうですね。となると……。キロネックス様、いかがなされますか? 幾つか本を見繕ってくることもできますが、本の種類も多いため、航空機関連の書籍が集まっている棚まで案内した方が良いかもしれません」


 あまりにも早いレスポンスに驚きながらも、キロネックスはエリカに航空機関連の書籍が置かれている棚への案内をお願いした。


「ところで、お願いすれば必要な書籍を集めて頂くこともできたのですか?」


「えぇ。私もこの図書館にある本は一通り目を通していますので、お力になることはできたと思いますよ」


「す、全てですか!?」


「図書館の中ではお静かにお願いしますね。えぇ、はい。司書補佐として働くのなら本に関する疑問質問に全てお答えできなければならないと思っておりまして……それに本には様々な知識が詰まっていて面白いですから、決して苦は無かったのですよ。ただ、アネモネ会長に話したらかなり驚いていましたね。図書館の本を読破しているのは、アネモネ会長を除いてはソフィス=アクアマリン伯爵令嬢しかいないようです。ああ、こちらですね。このあたり一帯が航空機関連の書籍となります。複写と貸し出しも可能ですが、貸し出しは一度に十冊まで、複写は研究目的である場合に限り、書籍の三分の一までとなりますのでよろしくお願いします。……それと、これは図書館司書の領分を超えたものですが、かなり高度な技術で再現は困難を極めると思います。私も読んだところで実際に作れるとは思えませんでした。もし、本気で完成させたいのであればドワーフ族の力を借りるのが良いかと思います」


 その後、エリカは職務に戻っていった。

 キロネックスはその後、案内された棚の本を順番に読み始めるが、膨大な冊数のため一日では読み終わらず、二日目以降は社員達を導入したものの必要な本を精査し終えるまで五日ほど時間を費やすこととなった。

 目的の本を集め終えたキロネックス達はカードを作って本を借り終えると、ルクシアとエリカのアドバイスに従ってド=ワンド大洞窟王国へと向かう。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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